最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第831話 偶然か必然か
ソフィ達は加護の森を出た後、道なりに歩みを進めながらシクウに案内されて、ケイノトへ向かっている。もうここまで来ればケイノトまでは目と鼻の先であり、たとえシクウと言う道案内人が居なくともここからはソフィ達だけでも辿り着けるだろう。
ここに来るまでの道中にソフィ達が崖下に顔を覗かせたあの場所で、実はソフィ達がこの世界に来る事になった目的の配下である『エヴィ』が崖の向こうの森の先にあった洞穴に居たのだが、ソフィ達は気づく事が出来ずに、ケイノトの町の近くまで来てしまっていた。
しかしそれもまた仕方の無い事ではあった。あの崖を挟んだ向こう側は、ケイノトとは別の町の勢力圏だとシクウに告げられた事も大きかったが、それ以上の理由の一つに『イダラマ』というエヴィと行動を共にしている『妖魔召士』が、彼らの存在を稀薄にさせる結界を施していた為である。
イダラマが完全に異界と遮断させる程の結界を張っていれば、逆にその違和感にソフィ達が気づく可能性もあったが、人除け程度の結界であったことが逆に町に妖魔を近づけないようにしようと、人間達が張ったのだろうとソフィ達に思わせてしまったのである。
イダラマは『妖魔召士』の中でも相当の上位の魔力を持っている為、本気で結界を施せば異界と遮断させる程の結界を張る事は可能であった。
しかしそれをしない理由としては、先程ソフィに違和感を感じさせる可能性があると述べたように、ケイノトの町の実力者たちである『サテツ』や『ゲンロク』達にイダラマ達の居場所がバレる可能性がある為であった。
偶然ではあったが何か一つでもキッカケがあれば、このタイミングでソフィは、エヴィと直ぐに再会する事が出来て、そのままアレルバレルの世界へと戻る事が出来た可能性もあったのだが、現実はそう上手くはいかなかったようである。
再び両者は離れる事となり、ソフィはそのままケイノトの町へと案内されてエヴィと再会するという機会を失ってしまうのであった。
そしてようやくソフィ達は、高い山の上にあった森から、ケイノトの町が見下ろせる所まで降りて来る事が出来たのだった。
(どうやらケイノトとやらに辿り着いたようだな)
(ああ。それでここからどうするんだ?)
ソフィとヌーが歩く速度を緩めながら小声で話始めたが、前を歩いているシクウには聞こえていないようでこれまで通りの速度で歩いていく。少しずつソフィ達とシクウの間に距離が開き始めるのだった。
(このままあいつと町の中に行くのは、流石に不味いんじゃねぇのか?)
ソフィとヌー達は森の中で前を歩くシクウの属する組織の連中と戦っている。最初に出会った複数人の者達は町に戻っているだろうし、既に自分達の事は広まっているだろう。そこにシクウと共に町の中に入れば、どうなるかは火を見るより明らかである。
出来ればひっそりと町の中に入り情報を集めてエヴィを探し出し、そのままこの世界を離れるのが最善だと考えるとするならば、シクウを『金色の目』で操って一人で組織の元に向かわせて、シクウの仲間達に無事を知らせて何も無かったように振るませた後、自分達が中に入るべきだろう。そう考えたソフィだったが、そこで背後から『テア』が声を掛けてきた。
「――」(邪魔なら私が殺してやろうか?)
テアは死神の言葉で話すが、ソフィはその言語を理解出来なかった。どうやら契約を交わしているヌーにしか死神のテアの言葉は通じないらしい。
「何と言っているのだ?」
「ああ。ここまで来ればもう奴は用済みだろうから、こいつが奴を殺そうかと言ってきている」
「……」
その言葉にソフィは目を丸くしてテアの方を見る。
「――」(も、もしかして怒っていますか? 差し出がましい事を言ってしまって申し訳ないです)
既に死神のテアはソフィを自分より格上の存在だと認めている。自分が短絡的な発言をした事でソフィに怒られるかもしれないと考えたテアは、ソフィに謝罪をしながらヌーに、何とか弁明してくれとばかりに視線を向けるのだった。
「クックック、別にこいつはてめぇに対して何とも思ってねぇよ。だがまぁそんな発言を繰り返し行えば、てめぇは消されるかもしれねぇがな」
テアはヌーの言葉に怖気が走り、顔を青くしていた。
「何を言っているか分からぬが、ひとまずあやつを殺すくらいならば、操って我達の事を忘れさせるぐらいでいいだろう。下手に殺してしまえば、その後が面倒な事になるしな」
最悪ケイノトの町の『退魔組』を全て敵に回してしまう。そうなればエヴィを探す事も困難となる事は間違いなかった。
「ああ。さっさと『天衣無縫』を探さなきゃならねぇしな?」
どうやらソフィの意図を汲み取ったであろうヌーは、静かに前を歩くシクウを見るのだった。
「じゃああやつを先に行かせるが、それでよいな?」
「ああ、勝手にしろ。俺はてめぇを元の世界に戻す為だけについてきているだけだ。面倒事は全部お前に任せる」
ヌーは面倒くさそうにそう告げると、それで会話は終わりだとばかりに歩を進める速度をあげるのだった。
「クックック、もう少し我との会話を楽しんでくれても良いでは無いか」
そう言ってソフィは自分の後ろに居た『テア』に視線を向けながら『なぁ?』とばかりに同意を求めると、テアは苦笑いを浮かべながらソフィが何を言っているか分からず、困った表情のまま首を傾げるのだった。
ここに来るまでの道中にソフィ達が崖下に顔を覗かせたあの場所で、実はソフィ達がこの世界に来る事になった目的の配下である『エヴィ』が崖の向こうの森の先にあった洞穴に居たのだが、ソフィ達は気づく事が出来ずに、ケイノトの町の近くまで来てしまっていた。
しかしそれもまた仕方の無い事ではあった。あの崖を挟んだ向こう側は、ケイノトとは別の町の勢力圏だとシクウに告げられた事も大きかったが、それ以上の理由の一つに『イダラマ』というエヴィと行動を共にしている『妖魔召士』が、彼らの存在を稀薄にさせる結界を施していた為である。
イダラマが完全に異界と遮断させる程の結界を張っていれば、逆にその違和感にソフィ達が気づく可能性もあったが、人除け程度の結界であったことが逆に町に妖魔を近づけないようにしようと、人間達が張ったのだろうとソフィ達に思わせてしまったのである。
イダラマは『妖魔召士』の中でも相当の上位の魔力を持っている為、本気で結界を施せば異界と遮断させる程の結界を張る事は可能であった。
しかしそれをしない理由としては、先程ソフィに違和感を感じさせる可能性があると述べたように、ケイノトの町の実力者たちである『サテツ』や『ゲンロク』達にイダラマ達の居場所がバレる可能性がある為であった。
偶然ではあったが何か一つでもキッカケがあれば、このタイミングでソフィは、エヴィと直ぐに再会する事が出来て、そのままアレルバレルの世界へと戻る事が出来た可能性もあったのだが、現実はそう上手くはいかなかったようである。
再び両者は離れる事となり、ソフィはそのままケイノトの町へと案内されてエヴィと再会するという機会を失ってしまうのであった。
そしてようやくソフィ達は、高い山の上にあった森から、ケイノトの町が見下ろせる所まで降りて来る事が出来たのだった。
(どうやらケイノトとやらに辿り着いたようだな)
(ああ。それでここからどうするんだ?)
ソフィとヌーが歩く速度を緩めながら小声で話始めたが、前を歩いているシクウには聞こえていないようでこれまで通りの速度で歩いていく。少しずつソフィ達とシクウの間に距離が開き始めるのだった。
(このままあいつと町の中に行くのは、流石に不味いんじゃねぇのか?)
ソフィとヌー達は森の中で前を歩くシクウの属する組織の連中と戦っている。最初に出会った複数人の者達は町に戻っているだろうし、既に自分達の事は広まっているだろう。そこにシクウと共に町の中に入れば、どうなるかは火を見るより明らかである。
出来ればひっそりと町の中に入り情報を集めてエヴィを探し出し、そのままこの世界を離れるのが最善だと考えるとするならば、シクウを『金色の目』で操って一人で組織の元に向かわせて、シクウの仲間達に無事を知らせて何も無かったように振るませた後、自分達が中に入るべきだろう。そう考えたソフィだったが、そこで背後から『テア』が声を掛けてきた。
「――」(邪魔なら私が殺してやろうか?)
テアは死神の言葉で話すが、ソフィはその言語を理解出来なかった。どうやら契約を交わしているヌーにしか死神のテアの言葉は通じないらしい。
「何と言っているのだ?」
「ああ。ここまで来ればもう奴は用済みだろうから、こいつが奴を殺そうかと言ってきている」
「……」
その言葉にソフィは目を丸くしてテアの方を見る。
「――」(も、もしかして怒っていますか? 差し出がましい事を言ってしまって申し訳ないです)
既に死神のテアはソフィを自分より格上の存在だと認めている。自分が短絡的な発言をした事でソフィに怒られるかもしれないと考えたテアは、ソフィに謝罪をしながらヌーに、何とか弁明してくれとばかりに視線を向けるのだった。
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