最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第827話 ケイノトまでの道中
ソフィ達は人間の町であるケイノトを目指して、退魔士達に襲われた加護の森の中を歩いている。この森に降り立った当初はまだ明るく青い空が広がっていたが、今はもう真っ暗で夜空に星がよく見えていた。どうやらこの森には今も結界が張られているようだが、魔族の好んで使う結界とは、また効果が違うようにソフィは感じられる。
しかし『リラリオ』の世界でラルフが使っていた人払いの結界ともまた違い、結界が張られているという感覚は分かるのだが、その実どういう結界なのかまでは、ソフィでも分からないのだった。
「この森はかなり広いようだが、この結界は妖魔に対して何か影響を及ぼす類の結界なのかな?」
ソフィは目の前を先導して歩いているシクウに話しかける。するとシクウは立ち止まって、何かを思案するような表情を浮かべた。
「魔族の方もこの結界を感知出来るのですか? 確かにこの森には上の方々がかつての『妖魔団の乱』以降に、この森全域に魔除けの結界を施して頂きました。力の弱い妖魔達は、この森にあまり近づけないようにする結界です」
「魔除け……か」
ソフィ達のような魔族には効果を及ぼさないのか、それともソフィ達が力の弱い者達では無いからなのか、結界の効力が自身に影響があるとは思えなかった。
「全く無意味だと思うがな。無駄な事をするのが好きな人間らしいな」
鼻を鳴らしながらヌーは人間を小馬鹿にするような事を言うのだった。その言葉にシクウは眉を寄せたが、特に何かを言うでもなく、再び前を向いて歩き始めた。
実はこの結界だが本当のところは全く効果が違う。完全にはソフィ達の事を信用していないシクウが魔除けの効果などといって、全くのデタラメを口にしただけであった。
本当の効果は森に現れた人間以外の存在を『退魔士組衆』に知らせるものであり、その結界のお陰でこうして、加護の森に多くの退魔士が集まったのである。
しかし立て続けにソフィ達によって退魔士達が敗れた為『特別退魔士』のタクシンからの指示によって、ミカゲは『式』を通じてこの森へは個々では入らないようにと『退魔士組衆』に伝えている。
そんな事も知る由も無いシクウはこの結界を感知して、誰かが来ないものかと時折見渡しているのだった。
……
……
……
シクウがソフィ達をケイノトへと案内している頃。同じ『退魔士組衆』であるミカゲは、サテツの居る退魔組衆の屯所に向かっていた。
屯所のある建物に近づくにつれて『退魔士組衆』の同志達の姿がちらほらと見るようになり、上位の退魔士であるミカゲを見て頭を下げて行く。
急いでいるミカゲはそんな者達に、軽く手を挙げるだけであまり相手をしない。
ミカゲがケイノトの町を必死に走っていく姿を他の退魔士たちは何事なのだろうかと、首を傾げて見送るのだった。
普段であればタクシンが戦場へ出向いているのであれば、何も心配する事も無いのだが、そのタクシン直々に上へ連絡してこいとミカゲに指示を出している。そんな異例とも呼べる自体だが、そのタクシンと戦う二人組と直接戦い、彼の『式』である『擬鵺』もやられてしまっているのである。緊急の状態であることは、他の者よりも余程理解しているのである。
嫌な予感を胸に抱きつつもミカゲは、ようやく見えてきた退魔組衆の建物を見て、小さく息を吐くのだった
『退魔士組衆』の総本山と呼べる場所。ミカゲが退魔組衆の屯所の玄関の扉を開ける。
屯所の中はとても狭く部屋の襖が取り払われている為、玄関の扉を開けるとすぐに中の様子が見渡せる造りになっている。更にその奥の部屋には扉があるが、そこはこの屯所を預かる主『サテツ』の部屋である為に、他の者達は許可なく入る事が出来ない。そのサテツの部屋の前の一室に、多くの退魔士達が各々雑談を交えていた。
「おかえりなさい、ミカゲ様」
一人の退魔士がそう口にすると、一斉に中に居た退魔士たちがミカゲの方を向いた。そしてミカゲの顔を見ると慌てて他の同志達も椅子から立ち上がり、頭を下げながら挨拶をする。
『上位退魔士』であるミカゲは、中に居た『下位』や『中位退魔士』にとっては上官にあたる。
退魔組の中では階級が下の者は上の者には決して逆らえない。
戦闘などの作戦時では階級が全てであり、上官の命令には、絶対服従といった厳しい世界であった。
ミカゲはこちらに向けて頭を下げている同志達を見て、軽く頷いた後に口を開いた。
「サテツ様はおられるか? 直ぐにお伝えしたい事がある」
ミカゲがそう言うと退魔士たちが一斉に、最初に挨拶を口にした『イツキ』という若い退魔士を見る。
「サテツ様は部屋に居られますが、先程、例の会合から帰ってこられたところなので、いつものように荒れていますが、それでも今すぐに会われますか?」
イツキの言葉にミカゲは嫌そうな顔を浮かべたが、タクシンから緊急の言伝を仰せ遣っている事を思い出して渋々と頷いた。
「分かりました。少々お待ちください」
イツキはそう言うと『サテツ』に知らせに部屋の奥に消えていった。
しかし『リラリオ』の世界でラルフが使っていた人払いの結界ともまた違い、結界が張られているという感覚は分かるのだが、その実どういう結界なのかまでは、ソフィでも分からないのだった。
「この森はかなり広いようだが、この結界は妖魔に対して何か影響を及ぼす類の結界なのかな?」
ソフィは目の前を先導して歩いているシクウに話しかける。するとシクウは立ち止まって、何かを思案するような表情を浮かべた。
「魔族の方もこの結界を感知出来るのですか? 確かにこの森には上の方々がかつての『妖魔団の乱』以降に、この森全域に魔除けの結界を施して頂きました。力の弱い妖魔達は、この森にあまり近づけないようにする結界です」
「魔除け……か」
ソフィ達のような魔族には効果を及ぼさないのか、それともソフィ達が力の弱い者達では無いからなのか、結界の効力が自身に影響があるとは思えなかった。
「全く無意味だと思うがな。無駄な事をするのが好きな人間らしいな」
鼻を鳴らしながらヌーは人間を小馬鹿にするような事を言うのだった。その言葉にシクウは眉を寄せたが、特に何かを言うでもなく、再び前を向いて歩き始めた。
実はこの結界だが本当のところは全く効果が違う。完全にはソフィ達の事を信用していないシクウが魔除けの効果などといって、全くのデタラメを口にしただけであった。
本当の効果は森に現れた人間以外の存在を『退魔士組衆』に知らせるものであり、その結界のお陰でこうして、加護の森に多くの退魔士が集まったのである。
しかし立て続けにソフィ達によって退魔士達が敗れた為『特別退魔士』のタクシンからの指示によって、ミカゲは『式』を通じてこの森へは個々では入らないようにと『退魔士組衆』に伝えている。
そんな事も知る由も無いシクウはこの結界を感知して、誰かが来ないものかと時折見渡しているのだった。
……
……
……
シクウがソフィ達をケイノトへと案内している頃。同じ『退魔士組衆』であるミカゲは、サテツの居る退魔組衆の屯所に向かっていた。
屯所のある建物に近づくにつれて『退魔士組衆』の同志達の姿がちらほらと見るようになり、上位の退魔士であるミカゲを見て頭を下げて行く。
急いでいるミカゲはそんな者達に、軽く手を挙げるだけであまり相手をしない。
ミカゲがケイノトの町を必死に走っていく姿を他の退魔士たちは何事なのだろうかと、首を傾げて見送るのだった。
普段であればタクシンが戦場へ出向いているのであれば、何も心配する事も無いのだが、そのタクシン直々に上へ連絡してこいとミカゲに指示を出している。そんな異例とも呼べる自体だが、そのタクシンと戦う二人組と直接戦い、彼の『式』である『擬鵺』もやられてしまっているのである。緊急の状態であることは、他の者よりも余程理解しているのである。
嫌な予感を胸に抱きつつもミカゲは、ようやく見えてきた退魔組衆の建物を見て、小さく息を吐くのだった
『退魔士組衆』の総本山と呼べる場所。ミカゲが退魔組衆の屯所の玄関の扉を開ける。
屯所の中はとても狭く部屋の襖が取り払われている為、玄関の扉を開けるとすぐに中の様子が見渡せる造りになっている。更にその奥の部屋には扉があるが、そこはこの屯所を預かる主『サテツ』の部屋である為に、他の者達は許可なく入る事が出来ない。そのサテツの部屋の前の一室に、多くの退魔士達が各々雑談を交えていた。
「おかえりなさい、ミカゲ様」
一人の退魔士がそう口にすると、一斉に中に居た退魔士たちがミカゲの方を向いた。そしてミカゲの顔を見ると慌てて他の同志達も椅子から立ち上がり、頭を下げながら挨拶をする。
『上位退魔士』であるミカゲは、中に居た『下位』や『中位退魔士』にとっては上官にあたる。
退魔組の中では階級が下の者は上の者には決して逆らえない。
戦闘などの作戦時では階級が全てであり、上官の命令には、絶対服従といった厳しい世界であった。
ミカゲはこちらに向けて頭を下げている同志達を見て、軽く頷いた後に口を開いた。
「サテツ様はおられるか? 直ぐにお伝えしたい事がある」
ミカゲがそう言うと退魔士たちが一斉に、最初に挨拶を口にした『イツキ』という若い退魔士を見る。
「サテツ様は部屋に居られますが、先程、例の会合から帰ってこられたところなので、いつものように荒れていますが、それでも今すぐに会われますか?」
イツキの言葉にミカゲは嫌そうな顔を浮かべたが、タクシンから緊急の言伝を仰せ遣っている事を思い出して渋々と頷いた。
「分かりました。少々お待ちください」
イツキはそう言うと『サテツ』に知らせに部屋の奥に消えていった。
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