最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第816話 死神貴族テア
ヌーの使役した六体の死神はタクシンとその『式』である『幽鬼』達の手によって、幽世と送り返されてしまった。
四体の幽鬼たちは、残ったヌーに視線を向ける。どうやらこのまま一気に片をつけようというのだろう。タクシンが目で合図を送ると、幽鬼たちは一斉にヌーに向かっていった。
しかしその直後、迫りくる幽鬼達を追い返すように、ヌーの周囲にバチバチと魔力の圧が迸り始めた。そしてヌー自身がこれまで体験した事の無い程の大きな魔法陣が目の前に出現する。
「俺の魔力をこれだけ費やしてやったんだ。ありがたく思えよ? 『死神野郎』!」
ヌーがそう呟くと同時に、膨大な魔力と引き換えに一つの契約が成った。
――呪文、『死司降臨』。
『スタック』されたヌーの魔力の大半がその巨大な魔法陣に吸い込まれていった後、その魔法陣は高速回転を始めた。
――そして『死司降臨』が発動された。
『仮初増幅』によって大幅に上昇させた魔力。しかし増幅させなければ、普段のヌーの魔力ではこの呪文は発動出来ない。それ程までに膨大な魔力を費やしてようやく『死司降臨』を発動出来たのであった。
そして遂に召喚に応じた死神が『現世』に出現する。
――その死神は小柄な身体をした可憐な少女だった。髪を左右の高い位置で束ねており、両肩に掛かっている。片方の目に黒い眼帯をしており、そして何よりも目が行くのはこの少女の死神が持つ得物の鎌であろう。これまで使役した死神の持つ鎌とは比べ物にならない程に大きかった。
他の『神格』の低い死神達とは違い、この少女は肌なども生前の時の状態のようであった。
「――」(久しぶりだな? 親愛なる大魔王)
この小柄な死神は『ダール』の世界でヌーと一度会っている。その時は大魔王『フルーフ』の使役した『死神皇』がフルーフを守る為に部下であるこの『死神』を呼び出して、そして敵であった『ヌー』と戦ったのであった。
「この前は世話になったな。お前も色々と俺に言いたい事はあるだろうが、今度は俺がお前を召喚し、お前はそれに応じたんだ。俺が契約主だからな。精々手を貸してもらうぞ?」
「――」(やれやれ。久しぶりの現世の生活は過激になりそうだぜ)
その少女の死神は器用に大きな鎌をクルクルと回した後、肩に乗せながら首を傾げて口を開いた。
「――」(まぁいいよ。死神皇様と戦うワケじゃないんだったら、お前に協力してやるよ)
死神はそう言うと、契約主として大魔王ヌーを認めた。
「ククククッ! ではお前は周りの雑魚共を頼むぞ。俺はアイツとやるからよ」
ヌーは少女の死神に、こちらを見ている四体の鬼とやるように指示し、自分は『金色のオーラ』を再び纏わせながら『タクシン』を睨みつけるのだった。
「――?」(この私に雑魚の相手をさせるなんて、とっても贅沢な真似をしてるって自覚しろよぉ?)
「ククククッ! そんなセリフは少しでも役立ってから言えよ? 死神」
契約主となったヌーと軽口を交わし合い、小柄で桃色の髪を二つに束ねる少女は、薄く笑みを浮かべる。
「――」(私をそこいらの死神と一緒にするなよ。私は爵位を持つ死神貴族『テア・デューク』だ)
自分の事をテア・デュークと名乗った死神は、ヌーに『テアと呼べ』と暗にそう告げるのであった。
…………
「また新たに呼び出したようだが、今度はたった一体。どうやら奴の魔力も枯渇しかけているとみたぞ」
タクシンはそう言うと、幽鬼達に新たに現れた死神を襲うように操る。四体の鬼達は自我を完全に失っており、タクシンの思うが侭に唸り声をあげながら死神貴族の『テア』に襲い掛かっていった。
幽鬼たちは自我を失うのと同時に痛覚を失っている。つまりいくら相手に攻撃を加えられようが、止まることなく敵に襲いかかる。それも同時に四体も操っている為、同時に複数の幽鬼を相手にしなければならない。
タクシンは先程と同じように、今度の小柄な死神も即座に倒せるだろうと確信している。一斉に唸り声を上げながら突進していく幽鬼達に、死神貴族の『テア』は全く動く気配が無い。
その様子にタクシンは幽鬼達の前に『テア』が委縮しているのだと判断するのだった。
そして幽鬼達はその巨大な体に似合わず、意外に速い速度を保ったまま『テア』に近づいていく。
テアは肩に乗せるように持っていた鎌を右手へ持ち替えると、大きくその鎌を水平に構える。
「「グルアアッ!」」
自我を失い敵を屠る事しか考えていない幽鬼達は、一斉にテアに向かって攻撃を仕掛けるのだった。
「――」(あーあ。私の間合いに入っちまったなぁ……)
――テアがそう呟いた直後、その場から忽然と彼女の姿が消えた。
「何……?」
タクシンは突然テアの姿が消えたように見えて視線を周辺に這わせる。ひゅっという風を切る音が、タクシンの耳に届いた。
――『死刑執行』。
テアが四体の幽鬼達の背後に現れたかと思えば、次の瞬間には幽鬼達の首が四体同時に胴から刎ね飛ばされる姿が、タクシンの視界に映し出されるのだった。
「――」(じゃあな、下界の屑共)
最後にテアがそう呟くと、幽鬼達の胴体に小さな黒い渦のような物が出現する。
テアが空いている左手で指をパチンと鳴らすと、幽鬼達は一斉に『死神貴族』の手によって、この世から消え去るのだった。
……
……
……
四体の幽鬼たちは、残ったヌーに視線を向ける。どうやらこのまま一気に片をつけようというのだろう。タクシンが目で合図を送ると、幽鬼たちは一斉にヌーに向かっていった。
しかしその直後、迫りくる幽鬼達を追い返すように、ヌーの周囲にバチバチと魔力の圧が迸り始めた。そしてヌー自身がこれまで体験した事の無い程の大きな魔法陣が目の前に出現する。
「俺の魔力をこれだけ費やしてやったんだ。ありがたく思えよ? 『死神野郎』!」
ヌーがそう呟くと同時に、膨大な魔力と引き換えに一つの契約が成った。
――呪文、『死司降臨』。
『スタック』されたヌーの魔力の大半がその巨大な魔法陣に吸い込まれていった後、その魔法陣は高速回転を始めた。
――そして『死司降臨』が発動された。
『仮初増幅』によって大幅に上昇させた魔力。しかし増幅させなければ、普段のヌーの魔力ではこの呪文は発動出来ない。それ程までに膨大な魔力を費やしてようやく『死司降臨』を発動出来たのであった。
そして遂に召喚に応じた死神が『現世』に出現する。
――その死神は小柄な身体をした可憐な少女だった。髪を左右の高い位置で束ねており、両肩に掛かっている。片方の目に黒い眼帯をしており、そして何よりも目が行くのはこの少女の死神が持つ得物の鎌であろう。これまで使役した死神の持つ鎌とは比べ物にならない程に大きかった。
他の『神格』の低い死神達とは違い、この少女は肌なども生前の時の状態のようであった。
「――」(久しぶりだな? 親愛なる大魔王)
この小柄な死神は『ダール』の世界でヌーと一度会っている。その時は大魔王『フルーフ』の使役した『死神皇』がフルーフを守る為に部下であるこの『死神』を呼び出して、そして敵であった『ヌー』と戦ったのであった。
「この前は世話になったな。お前も色々と俺に言いたい事はあるだろうが、今度は俺がお前を召喚し、お前はそれに応じたんだ。俺が契約主だからな。精々手を貸してもらうぞ?」
「――」(やれやれ。久しぶりの現世の生活は過激になりそうだぜ)
その少女の死神は器用に大きな鎌をクルクルと回した後、肩に乗せながら首を傾げて口を開いた。
「――」(まぁいいよ。死神皇様と戦うワケじゃないんだったら、お前に協力してやるよ)
死神はそう言うと、契約主として大魔王ヌーを認めた。
「ククククッ! ではお前は周りの雑魚共を頼むぞ。俺はアイツとやるからよ」
ヌーは少女の死神に、こちらを見ている四体の鬼とやるように指示し、自分は『金色のオーラ』を再び纏わせながら『タクシン』を睨みつけるのだった。
「――?」(この私に雑魚の相手をさせるなんて、とっても贅沢な真似をしてるって自覚しろよぉ?)
「ククククッ! そんなセリフは少しでも役立ってから言えよ? 死神」
契約主となったヌーと軽口を交わし合い、小柄で桃色の髪を二つに束ねる少女は、薄く笑みを浮かべる。
「――」(私をそこいらの死神と一緒にするなよ。私は爵位を持つ死神貴族『テア・デューク』だ)
自分の事をテア・デュークと名乗った死神は、ヌーに『テアと呼べ』と暗にそう告げるのであった。
…………
「また新たに呼び出したようだが、今度はたった一体。どうやら奴の魔力も枯渇しかけているとみたぞ」
タクシンはそう言うと、幽鬼達に新たに現れた死神を襲うように操る。四体の鬼達は自我を完全に失っており、タクシンの思うが侭に唸り声をあげながら死神貴族の『テア』に襲い掛かっていった。
幽鬼たちは自我を失うのと同時に痛覚を失っている。つまりいくら相手に攻撃を加えられようが、止まることなく敵に襲いかかる。それも同時に四体も操っている為、同時に複数の幽鬼を相手にしなければならない。
タクシンは先程と同じように、今度の小柄な死神も即座に倒せるだろうと確信している。一斉に唸り声を上げながら突進していく幽鬼達に、死神貴族の『テア』は全く動く気配が無い。
その様子にタクシンは幽鬼達の前に『テア』が委縮しているのだと判断するのだった。
そして幽鬼達はその巨大な体に似合わず、意外に速い速度を保ったまま『テア』に近づいていく。
テアは肩に乗せるように持っていた鎌を右手へ持ち替えると、大きくその鎌を水平に構える。
「「グルアアッ!」」
自我を失い敵を屠る事しか考えていない幽鬼達は、一斉にテアに向かって攻撃を仕掛けるのだった。
「――」(あーあ。私の間合いに入っちまったなぁ……)
――テアがそう呟いた直後、その場から忽然と彼女の姿が消えた。
「何……?」
タクシンは突然テアの姿が消えたように見えて視線を周辺に這わせる。ひゅっという風を切る音が、タクシンの耳に届いた。
――『死刑執行』。
テアが四体の幽鬼達の背後に現れたかと思えば、次の瞬間には幽鬼達の首が四体同時に胴から刎ね飛ばされる姿が、タクシンの視界に映し出されるのだった。
「――」(じゃあな、下界の屑共)
最後にテアがそう呟くと、幽鬼達の胴体に小さな黒い渦のような物が出現する。
テアが空いている左手で指をパチンと鳴らすと、幽鬼達は一斉に『死神貴族』の手によって、この世から消え去るのだった。
……
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