最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第790話 強い向上心に気勢を持つ大魔王
これまで強い者達と戦い続けて来たラルフが、信じられない程に強くなっているのを数値で確認した事で、喜びの笑みを浮かべていたソフィだったが『朱火』と呼ばれる狐の妖魔の戦力値を『漏出』の魔法で測った事で、その笑みを消してしまう。
ラルフの戦力値も十分に魔族で言えば立派に大魔王領域の下限を越えている。しかし朱火の戦力値はそれすら嘲笑うかの如く、更なる上の領域である30億を越えているのである。
戦力値30億といえばこのリラリオの世界の調停者であった龍族、その始祖であるキーリが、かつて龍化を果たした時よりも上であった。
当然その頃のキーリと今のキーリでは比較をすることは出来ないが、それでも30億という数値はその出会った頃のキーリの戦力値すらも上回っている。
数億程の誤差であっても、圧倒的な戦力差が生まれるというのに、戦力値が6億のラルフと30億の朱火では余りにも差がありすぎる。
ラルフがいくら成長をして魔族でいえば、大魔王程の強さになったとはいえ、これでは勝負にはならないだろう。
ソフィはちらりとユファの方に視線を向ける。元々ラルフを鍛えていた師であるユファが、この状況で何も言わない事がソフィには気に掛かったのである。その視線に気づいたユファは、なんとソフィに笑みを向けるのだった。
(お主も止めようとはせぬのか)
ソフィは『金色のメダル』を渡す程、ユファを信頼しその性格を熟知している。
自分の弟子を見捨てるような真似はしない彼女が、平然としている様を見て、ソフィはどうやらまだ、
何かあるのだろうと判断するのだった。
信用しているサイヨウが試合を行おうとし、信頼している配下が試合を見守ろうとしているのだ。ならばこれ以上ソフィが何も言う事は無いだろう。ソフィはそう結論を下した後、戦力値コントロールで、自分の戦力値を高め始める。
この形態で『二色の併用』を使ってはいるが、それでもある程度は、この形態の上限近くまで戦力値を高めなければ、このレベルの試合の観戦すらままならないかもしれないと考えたのである。
どうやらフルーフが懸念を抱いていた通り、この世界ではソフィ自身の力が、何故か抑えられてしまうようだと、ソフィはようやく、力の上昇の必要性を自覚し始めたのであった。
ラルフの周囲の空気にラルフ自身の魔力が交わる様子も無く、ごく当たり前のようにラルフは青を纏うのだった。それを見てソフィは感嘆の声をあげる。明らかにこれまでのラルフのオーラの型造りでは無い。
(成程、オーラを先に具現化するのではなく、先に頭でどれくらいの規模のオーラを自分の周囲に纏わせるかというのを連想し、形となった状態をそのまま現実に張り付けるような感覚。つまりは『レパート』の世界の『理』を用いて魔力を使っておるのだな)
ソフィはラルフのオーラの纏い方を見ながら、自分も『レパート』の『理』の魔法を使う時の手順を思い出し、その結論に至るのだった。
「この短期間で、よくぞここまで自分のモノにしたものよ」
ソフィは出会った頃のラルフを思い出す。既にミールガルド大陸で初めて出会った時でさえ、ラルフの才能を見抜いていたソフィだった。
しかしそれでも直ぐに強くなれると理解はしていたが、あっさりと『青』を体現し、ここまで短期間で練度を上げきるとは思わなかった。そしてそれはラルフだけでは無く『金色』を体現したリディアも同義である。
ラルフやリディアの素質は凄まじく、少し前に特異を開花させた『ミデェール』に勝るとも劣らぬと断言出来る。まさに数千年に一人の逸材と呼べる程の素質の持ち主が、一気にここまで集まってみせたのである。
(一年やそこらでここまで強くなれる人間など我はこれまで見たことが無い。戦力値100万や1000万に満たぬ人間だった者達が、一年で億を越えるというのだぞ? では、数十年先にはどうなっておるのだ?)
ソフィは紅羽と戦うリディアや実に練度の高い『青』を纏って見せたラルフを見て多幸感に包まれる。
『青』や『二色の併用』というオーラは体現さえしてしまえば、直ぐにその恩恵を実感する事が出来る。たとえオーラの練度が1.5倍程であっても、通常の状態とは比較にもならない。だからこそ寿命の長さを利用し、魔族は横着して少しずつ『青』の練度をあげていく者達が多いのである。
同じ魔族であっても、レアのようにフルーフの教えを尊寿して頑張る者や『魔』の魅力自体に取りつかれて研鑽を欠かさない者は、多く居る横着する者達より早く強くなる事が出来る。
ではそんな魔族より寿命が短い人間が、強くなろうとするならば、否応なしに毎日の研鑽が求められる。しかしアレルバレルの世界の人間達は、既に多くの者が強くなる事を諦めている。
既にあの世界では数千年と生きる魔族達が『ソフィ』や『ダルダオス』。それに『九大魔王』といった指標となる者が存在し、生き残る為に研鑽を続けているからである。
魔族の数百、数千、数万分の一程の寿命しか持たず、アレルバレルの世界の人間達が生まれた時には、既に大魔王達と埋められない程の戦力差というものがある。
――誰が強くなろうとするだろうか。
だが、この世界の人間ラルフやリディアは強くなる為に必要な、明確な目標を持っている。
リディアは最強の大魔王である、ソフィを斬るという大きな目標が。
そして同じくソフィの配下であるラルフは、ソフィを追いかけるリディアに、追いつき追い越したいという目標がある。強くなる事を諦めた者達など、見ている暇はないのである。
ソフィが本当に好きな人間というのは、こういった向上心と、目標を持つ信念のある人間が好きなのであった。
――かつての最強の人間、エルシスに続く者達であると言える。
「いかんな……。堪える事に必死になってしまいそうだ」
今のソフィは第二形態となっている為、通常状態よりも興奮状態にあり、好戦的な性格になっている。
力強い信念と芯の強い者達が目の前で研鑽しているのである。それを見て多幸感に包まれているソフィは、無意識に昂る事で膨れ上がる魔力を必死に抑えるのだった。
そしてそんなソフィの前でラルフは、青4.5の練度まで完璧にコントロールして見せたのだった。
【種族:人間 名前:ラルフ・アンデルセン 年齢:24歳
状態:通常 魔力値:121万 戦力値:6億4350万 所属:ソフィの配下】。
↓
【種族:人間 名前:ラルフ・アンデルセン 年齢:24歳
状態:『青』練度4.5 魔力値:545万 戦力値:28億9575万】。
ラルフの戦力値も十分に魔族で言えば立派に大魔王領域の下限を越えている。しかし朱火の戦力値はそれすら嘲笑うかの如く、更なる上の領域である30億を越えているのである。
戦力値30億といえばこのリラリオの世界の調停者であった龍族、その始祖であるキーリが、かつて龍化を果たした時よりも上であった。
当然その頃のキーリと今のキーリでは比較をすることは出来ないが、それでも30億という数値はその出会った頃のキーリの戦力値すらも上回っている。
数億程の誤差であっても、圧倒的な戦力差が生まれるというのに、戦力値が6億のラルフと30億の朱火では余りにも差がありすぎる。
ラルフがいくら成長をして魔族でいえば、大魔王程の強さになったとはいえ、これでは勝負にはならないだろう。
ソフィはちらりとユファの方に視線を向ける。元々ラルフを鍛えていた師であるユファが、この状況で何も言わない事がソフィには気に掛かったのである。その視線に気づいたユファは、なんとソフィに笑みを向けるのだった。
(お主も止めようとはせぬのか)
ソフィは『金色のメダル』を渡す程、ユファを信頼しその性格を熟知している。
自分の弟子を見捨てるような真似はしない彼女が、平然としている様を見て、ソフィはどうやらまだ、
何かあるのだろうと判断するのだった。
信用しているサイヨウが試合を行おうとし、信頼している配下が試合を見守ろうとしているのだ。ならばこれ以上ソフィが何も言う事は無いだろう。ソフィはそう結論を下した後、戦力値コントロールで、自分の戦力値を高め始める。
この形態で『二色の併用』を使ってはいるが、それでもある程度は、この形態の上限近くまで戦力値を高めなければ、このレベルの試合の観戦すらままならないかもしれないと考えたのである。
どうやらフルーフが懸念を抱いていた通り、この世界ではソフィ自身の力が、何故か抑えられてしまうようだと、ソフィはようやく、力の上昇の必要性を自覚し始めたのであった。
ラルフの周囲の空気にラルフ自身の魔力が交わる様子も無く、ごく当たり前のようにラルフは青を纏うのだった。それを見てソフィは感嘆の声をあげる。明らかにこれまでのラルフのオーラの型造りでは無い。
(成程、オーラを先に具現化するのではなく、先に頭でどれくらいの規模のオーラを自分の周囲に纏わせるかというのを連想し、形となった状態をそのまま現実に張り付けるような感覚。つまりは『レパート』の世界の『理』を用いて魔力を使っておるのだな)
ソフィはラルフのオーラの纏い方を見ながら、自分も『レパート』の『理』の魔法を使う時の手順を思い出し、その結論に至るのだった。
「この短期間で、よくぞここまで自分のモノにしたものよ」
ソフィは出会った頃のラルフを思い出す。既にミールガルド大陸で初めて出会った時でさえ、ラルフの才能を見抜いていたソフィだった。
しかしそれでも直ぐに強くなれると理解はしていたが、あっさりと『青』を体現し、ここまで短期間で練度を上げきるとは思わなかった。そしてそれはラルフだけでは無く『金色』を体現したリディアも同義である。
ラルフやリディアの素質は凄まじく、少し前に特異を開花させた『ミデェール』に勝るとも劣らぬと断言出来る。まさに数千年に一人の逸材と呼べる程の素質の持ち主が、一気にここまで集まってみせたのである。
(一年やそこらでここまで強くなれる人間など我はこれまで見たことが無い。戦力値100万や1000万に満たぬ人間だった者達が、一年で億を越えるというのだぞ? では、数十年先にはどうなっておるのだ?)
ソフィは紅羽と戦うリディアや実に練度の高い『青』を纏って見せたラルフを見て多幸感に包まれる。
『青』や『二色の併用』というオーラは体現さえしてしまえば、直ぐにその恩恵を実感する事が出来る。たとえオーラの練度が1.5倍程であっても、通常の状態とは比較にもならない。だからこそ寿命の長さを利用し、魔族は横着して少しずつ『青』の練度をあげていく者達が多いのである。
同じ魔族であっても、レアのようにフルーフの教えを尊寿して頑張る者や『魔』の魅力自体に取りつかれて研鑽を欠かさない者は、多く居る横着する者達より早く強くなる事が出来る。
ではそんな魔族より寿命が短い人間が、強くなろうとするならば、否応なしに毎日の研鑽が求められる。しかしアレルバレルの世界の人間達は、既に多くの者が強くなる事を諦めている。
既にあの世界では数千年と生きる魔族達が『ソフィ』や『ダルダオス』。それに『九大魔王』といった指標となる者が存在し、生き残る為に研鑽を続けているからである。
魔族の数百、数千、数万分の一程の寿命しか持たず、アレルバレルの世界の人間達が生まれた時には、既に大魔王達と埋められない程の戦力差というものがある。
――誰が強くなろうとするだろうか。
だが、この世界の人間ラルフやリディアは強くなる為に必要な、明確な目標を持っている。
リディアは最強の大魔王である、ソフィを斬るという大きな目標が。
そして同じくソフィの配下であるラルフは、ソフィを追いかけるリディアに、追いつき追い越したいという目標がある。強くなる事を諦めた者達など、見ている暇はないのである。
ソフィが本当に好きな人間というのは、こういった向上心と、目標を持つ信念のある人間が好きなのであった。
――かつての最強の人間、エルシスに続く者達であると言える。
「いかんな……。堪える事に必死になってしまいそうだ」
今のソフィは第二形態となっている為、通常状態よりも興奮状態にあり、好戦的な性格になっている。
力強い信念と芯の強い者達が目の前で研鑽しているのである。それを見て多幸感に包まれているソフィは、無意識に昂る事で膨れ上がる魔力を必死に抑えるのだった。
そしてそんなソフィの前でラルフは、青4.5の練度まで完璧にコントロールして見せたのだった。
【種族:人間 名前:ラルフ・アンデルセン 年齢:24歳
状態:通常 魔力値:121万 戦力値:6億4350万 所属:ソフィの配下】。
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【種族:人間 名前:ラルフ・アンデルセン 年齢:24歳
状態:『青』練度4.5 魔力値:545万 戦力値:28億9575万】。
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