最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第785話 幼女は憎き敵を許せない
ソフィはいらぬ事を口走ったとばかりに、片目を閉じて後悔するような表情を浮かべた。
「お主にはまだ伝えていなかったが、あやつはどうやらエヴィの……、我の配下の居場所を知っているようでな。その為に案内させようと思って、牢に入れておるのだ」
「ソフィ様、その世界に跳ぶのに必要な座標さえ聞き出してしまえば、その世界を知らずとも他の者でも跳ぶことは可能ですよ」
「そうしようと思ったのだがな。あやつは座標を言う代わりにと、交換条件を提示してきたのだ」
レアはソフィの言葉に眉を寄せながら、誰が見ても一目で分かるような、不機嫌そうな表情を浮かべ始めた。
「交換条件ですかぁ? そんな条件なんて呑まずに『金色の目』でも使って操り、強引に吐かせてしまえばよろしいんですよぉ」
あの場で聞いていたワケでは無いというのに、親であるフルーフと同じセリフを吐くレアであった。
「そうしようと思ったのだがな。あやつに吐かせる寸前に『呪縛の血』を自分に使用して黙秘権を行使しよったのだ」
傍で聞いていたユファは、その言葉に首を傾げながら『魔王城の牢には昔から結界が張られていて、魔法は使えない筈だけど』と、呟いているがレアは間髪入れずに『呪縛の血』を魔力を使わずに発動する裏技を当然の如く口にする。
「『呪縛の血』は魔法では無く呪文。魔力を介さずに『金色の目』に意思を込めて呪いを発動すれば、契約の執行は果たされる……。という事ですよねぇ?」
その言葉を聞いたソフィは目を丸くして、レアを感心するように見る。
(成程、発動羅列を介さずに詠唱代わりに意思を『金色の目』に込めたってわけね)
ユファはレアが口に出した言葉を冷静に分析して『呪縛の血』を自分の知識を使いながらようやく、呪文の手段から可能なのだと結論を出すのだった。
「その通りだ。あやつは自分が自由になる事を条件に、エヴィの居る世界の座標を交換条件に出してきよったのだ」
レアはその言葉に舌打ちをしそうになるのを堪えながら、何とも言えない表情でソフィを見る。その様子に内心ではソフィを睨みつけて舌打ちをしたかったのだろうと、誰が見ても理解出来る程だった。
「全く、ヌーっていう魔族はっ! ほんっとーに面倒な奴ですねぇ……!」
ソフィ程の力量があれば呪文を行使する前に、止める事も十分に出来る筈である。
それをせずにヌーに『呪縛の血』を使わせたという事は、心のどこかでこの大魔王はヌーを自由にさせてやりたいと考えたのだろう。
レアはとても頭が良く回転も早い。口には決して出す事はしないが、直ぐにその結論に達するのだった。
レアはソフィとはそこまで長くはない付き合いだが、優しい性格なのはよく理解しているし、その性格のおかげでソフィを怯えずに信頼出来るようになった。
――だが、自分の全てを奪ったヌーの事となれば話は別である。
レアの中ではヌーという魔族は、大切で大切で仕方の無い親を奪った憎き敵なのである。如何に主であったソフィとヌーの間に何らかの事情があったとしても、レアにとってはそんな事は関係が無い。
そして大魔王ヌーが抜け目の無い魔族だという事は、レアもよく理解している。既にヌーが自由を得るために、次の手を用意している事だろう。牢から出た時点で魔力が使えるようになり、ヌーは更に自由への選択肢を増やす事となる。
折角捕らえる事が出来た敵をむざむざと自由にさせてなるものかと、レアはどうにかしなければと、考え始めるのであった。
そしてそんな思案顔を浮かべるレアを見ながらソフィもまた、レアが何かを企んでいるという事を察する。
(今回ばかりは確かにヌーはやり過ぎておる。レアやフルーフがどのような結論を下そうとも我は手を出さずに静観する他あるまい)
大魔王ヌーもまたソフィの願望を叶うに足る存在である事は間違いないが、フルーフやレアを優先するのは、ソフィにとって当然の事だった。
「お主にはまだ伝えていなかったが、あやつはどうやらエヴィの……、我の配下の居場所を知っているようでな。その為に案内させようと思って、牢に入れておるのだ」
「ソフィ様、その世界に跳ぶのに必要な座標さえ聞き出してしまえば、その世界を知らずとも他の者でも跳ぶことは可能ですよ」
「そうしようと思ったのだがな。あやつは座標を言う代わりにと、交換条件を提示してきたのだ」
レアはソフィの言葉に眉を寄せながら、誰が見ても一目で分かるような、不機嫌そうな表情を浮かべ始めた。
「交換条件ですかぁ? そんな条件なんて呑まずに『金色の目』でも使って操り、強引に吐かせてしまえばよろしいんですよぉ」
あの場で聞いていたワケでは無いというのに、親であるフルーフと同じセリフを吐くレアであった。
「そうしようと思ったのだがな。あやつに吐かせる寸前に『呪縛の血』を自分に使用して黙秘権を行使しよったのだ」
傍で聞いていたユファは、その言葉に首を傾げながら『魔王城の牢には昔から結界が張られていて、魔法は使えない筈だけど』と、呟いているがレアは間髪入れずに『呪縛の血』を魔力を使わずに発動する裏技を当然の如く口にする。
「『呪縛の血』は魔法では無く呪文。魔力を介さずに『金色の目』に意思を込めて呪いを発動すれば、契約の執行は果たされる……。という事ですよねぇ?」
その言葉を聞いたソフィは目を丸くして、レアを感心するように見る。
(成程、発動羅列を介さずに詠唱代わりに意思を『金色の目』に込めたってわけね)
ユファはレアが口に出した言葉を冷静に分析して『呪縛の血』を自分の知識を使いながらようやく、呪文の手段から可能なのだと結論を出すのだった。
「その通りだ。あやつは自分が自由になる事を条件に、エヴィの居る世界の座標を交換条件に出してきよったのだ」
レアはその言葉に舌打ちをしそうになるのを堪えながら、何とも言えない表情でソフィを見る。その様子に内心ではソフィを睨みつけて舌打ちをしたかったのだろうと、誰が見ても理解出来る程だった。
「全く、ヌーっていう魔族はっ! ほんっとーに面倒な奴ですねぇ……!」
ソフィ程の力量があれば呪文を行使する前に、止める事も十分に出来る筈である。
それをせずにヌーに『呪縛の血』を使わせたという事は、心のどこかでこの大魔王はヌーを自由にさせてやりたいと考えたのだろう。
レアはとても頭が良く回転も早い。口には決して出す事はしないが、直ぐにその結論に達するのだった。
レアはソフィとはそこまで長くはない付き合いだが、優しい性格なのはよく理解しているし、その性格のおかげでソフィを怯えずに信頼出来るようになった。
――だが、自分の全てを奪ったヌーの事となれば話は別である。
レアの中ではヌーという魔族は、大切で大切で仕方の無い親を奪った憎き敵なのである。如何に主であったソフィとヌーの間に何らかの事情があったとしても、レアにとってはそんな事は関係が無い。
そして大魔王ヌーが抜け目の無い魔族だという事は、レアもよく理解している。既にヌーが自由を得るために、次の手を用意している事だろう。牢から出た時点で魔力が使えるようになり、ヌーは更に自由への選択肢を増やす事となる。
折角捕らえる事が出来た敵をむざむざと自由にさせてなるものかと、レアはどうにかしなければと、考え始めるのであった。
そしてそんな思案顔を浮かべるレアを見ながらソフィもまた、レアが何かを企んでいるという事を察する。
(今回ばかりは確かにヌーはやり過ぎておる。レアやフルーフがどのような結論を下そうとも我は手を出さずに静観する他あるまい)
大魔王ヌーもまたソフィの願望を叶うに足る存在である事は間違いないが、フルーフやレアを優先するのは、ソフィにとって当然の事だった。
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