最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第765話 サイヨウの式神
キーリから贈り物を貰って上機嫌で空を飛んでいたレアは、気になっていた事を口にする。
「ねぇねぇキーリ? ラルフちゃん達がそのサイヨウって人と修行をしているのは分かったけどぉ、どうして貴方たちの警備の持ち場をレイズ城から離れる必要があったのぉ?」
「ああ。サイヨウって奴がいれば、城の警備の必要が全くないからな。龍族は機動力も高いから、遊ばせておくくらいなら別の場所を警備させようって事なんだろうよ」
「ふーん……。アンタにそこまで言わせるなんてねぇ?」
どうやらサイヨウという人間は、余程の大物らしい。
キーリはこの世界の調停者であった頃より、遥かに強くなっている。
そのキーリにそこまで言わしめるサイヨウという人間に、レアは興味を持ち始めるのだった。
「ああ、あのサイヨウってのはただの人間じゃないぜ? 俺や今のお前が、本気で戦っても勝ち目は無いだろうからな」
「え?」
流石に今のキーリの言葉は聞き捨てならなかった。
確かに自分は『代替身体』という身体を用いている為、本来の身体より弱くなっているが、キーリは本来の強さのままなのである。この世界の調停者であった頃より、今は更に強くなっている筈にも拘らず、そのキーリが自分より、サイヨウという人間の方が強いと断言する。レアは驚きを隠しきれなかった。
「それは……、どういう……」
レイズ城へ向かいながら空の上で話をしていた二人だったが、遂にレイズの本国に到着してレイズ城付近に辿り着くと、レアは出しかけた言葉を呑み込んだ。
(ん……? ラルフちゃんが何かと戦ってい……、えっ!?)
レイズ城にある中庭には確かに結界が張ってあった。
結界の規模は現在のレアの放つ事の出来る規模とそこまで遜色は無かった。しかしレアが驚いた理由は結界では無い。城の中庭に魔物のような出で立ちをしている謎の物体が、ラルフと戦っていたからである。
「ちょ、ちょっとキーリ! レイズに魔物が入り込んでるわよぉ!」
「ああ、心配するなレア。あれはサイヨウの『式神』らしいぜ」
「式神……? あの魔物は、サイヨウって人が生み出した物ってことぉ?」
「んーまぁその認識で間違いは無いだろ。あの式神たちは、レイズ魔国を襲う事は無いから安心しろ」
ソフィの配下であるアウルベアのベアと、同じくらいの大きさの一つ目の鬼だったり、全身が毛むくじゃらのレアと同じくらいの大きさの珍妙な生物だったりと、見た目がそれぞれ違う『式神』という魔物のような者達が、数体程ラルフと戦っているのであった。
レアは『漏出』をラルフと戦っている式神達に試みる。
しかし式神達に魔力の反応が無く、戦力値も測定不能と表記されていた。
「『漏出』での反応は無いけど、あの魔物達信じられない程強いわよぉ……」
『代替身体』の身になってからも研鑽を毎日続けている、レアの戦力値は5000万を越えている。
『漏出』で戦力値が測定不能と出るという事は、今のレアの『代替身体』の通常状態より、あの式神達の方が強いという事を意味している。
「知ってるよ。俺もサイヨウの式神と戦った事があるからな」
レイズ城の上空でラルフと戦う式神達を見つめながら、そう静かに呟くキーリであった。
……
……
……
ラルフは『青のオーラ』を纏いながら器用に三体の式神達の攻撃を躱し続けている。
「ラルフ殿。距離をとるときの目線は常に前、出来るだけ全体が見渡せるようにされよ!」
「くっ……!」
腕を組んでラルフの戦闘を見守るサイヨウは、檄を飛ばしながらそうアドバイスを告げる。
そしてラルフは右手に『青』を集約すると、迫って来た一つ目の鬼の棍棒を躱すと同時、その腕を目掛けて拳を突き入れる。
「グアアアッ!!」
一つ目の鬼の右腕の肘関節がボキリと折れる音が聞こえたかと思うと、激痛で鬼は苦しみの声をあげた。
しかしその背の高い一つ目の鬼の影からすっと何かが現れる。
――毛むくじゃらの式神であった。
どうやら一つ目の鬼の背後に隠れて、機を伺っていたのだろう。
毛むくじゃらの式神は、ラルフを捕えようと、自身の長い体毛を数本伸ばして来た。ラルフはその伸ばされた式神の毛の一本を逆に掴み思いきり引っ張る。毛むくじゃらの式神は、ラルフに吸い込まれるように身体を引き寄せられる。そしてラルフの間合いまで身体を引っ張られた式神は、先程の一つ目の鬼と同じように、ラルフの『青』の拳に、顔面を思いきり殴り飛ばされて消し飛んだ。
「見事! しかしまだ残っておるぞ! 気を抜きなさるなよ!」
サイヨウがそう言葉を放つと同時、地を這っていた蛇がラルフに飛び掛かってきた。
ラルフは蛇の口を華麗に躱すと、その蛇の胴を『青』を纏った両手で掴むと、そのまま右手をぶらりとさせた一つ目の鬼に向けて放り投げた。
苦しんでいた鬼の式神の目に蛇が当たると、痛みで再び鬼は声をあげた。ラルフは態勢を立て直し、軸足に力を込めると『妖精の施翼』の『魔法』を使う。
移動速度が急激に増したラルフは、思いきり地を蹴って苦しんでいる鬼の元へ突っ切る。
そして式の鬼の脛を思いきり蹴り飛ばすと、鬼は激痛で片膝を地面に就こうとする。すると当然ラルフにも鬼の胴体に手が届くようになる。ラルフは両手を『青』で纏い指を伸ばして、鬼の脇腹に思いきり突き入れた。
「ギャアアアッ!!」
悶絶といった表情と声をあげながら鬼はそのまま床に倒れようとするが、その顔を目掛けて思いきりラルフは右足で蹴り飛ばした。鬼の首は、胴から千切れて吹っ飛んで行った。
そのまま鬼は痙攣を起こしていたが、ボンッという音と共に身体が消えてやがて一枚の札となった。
「……」
サイヨウは何も言わず、そのまま成り行きを見守る。
ラルフは式神を札に戻した後も気を抜かず、何かを探すように視線を床に這わせる。
そして目当てのモノを見つけると、再び駆け出して床に手を伸ばして何かを掴みあげた。
「シャアアアッ!!」
ラルフは左手で掴みあげた蛇を固定し、右手に『青』を纏って手刀で蛇の首を跳ばした。
一つ目の鬼の時のようにボンッという音と共に、蛇は一枚の札へと戻るのだった。
「うむ、見事なり!」
そこでようやくサイヨウは笑みを浮かべて頷くのだった。
ラルフとサイヨウの式神の戦闘を上空から見ていたレアは思わず声を出す。
「あ、あれがラルフちゃん……!?」
レアは一連のラルフの動きを見て明確に、これまでの彼では無いと判断するのだった。
……
……
……
「ねぇねぇキーリ? ラルフちゃん達がそのサイヨウって人と修行をしているのは分かったけどぉ、どうして貴方たちの警備の持ち場をレイズ城から離れる必要があったのぉ?」
「ああ。サイヨウって奴がいれば、城の警備の必要が全くないからな。龍族は機動力も高いから、遊ばせておくくらいなら別の場所を警備させようって事なんだろうよ」
「ふーん……。アンタにそこまで言わせるなんてねぇ?」
どうやらサイヨウという人間は、余程の大物らしい。
キーリはこの世界の調停者であった頃より、遥かに強くなっている。
そのキーリにそこまで言わしめるサイヨウという人間に、レアは興味を持ち始めるのだった。
「ああ、あのサイヨウってのはただの人間じゃないぜ? 俺や今のお前が、本気で戦っても勝ち目は無いだろうからな」
「え?」
流石に今のキーリの言葉は聞き捨てならなかった。
確かに自分は『代替身体』という身体を用いている為、本来の身体より弱くなっているが、キーリは本来の強さのままなのである。この世界の調停者であった頃より、今は更に強くなっている筈にも拘らず、そのキーリが自分より、サイヨウという人間の方が強いと断言する。レアは驚きを隠しきれなかった。
「それは……、どういう……」
レイズ城へ向かいながら空の上で話をしていた二人だったが、遂にレイズの本国に到着してレイズ城付近に辿り着くと、レアは出しかけた言葉を呑み込んだ。
(ん……? ラルフちゃんが何かと戦ってい……、えっ!?)
レイズ城にある中庭には確かに結界が張ってあった。
結界の規模は現在のレアの放つ事の出来る規模とそこまで遜色は無かった。しかしレアが驚いた理由は結界では無い。城の中庭に魔物のような出で立ちをしている謎の物体が、ラルフと戦っていたからである。
「ちょ、ちょっとキーリ! レイズに魔物が入り込んでるわよぉ!」
「ああ、心配するなレア。あれはサイヨウの『式神』らしいぜ」
「式神……? あの魔物は、サイヨウって人が生み出した物ってことぉ?」
「んーまぁその認識で間違いは無いだろ。あの式神たちは、レイズ魔国を襲う事は無いから安心しろ」
ソフィの配下であるアウルベアのベアと、同じくらいの大きさの一つ目の鬼だったり、全身が毛むくじゃらのレアと同じくらいの大きさの珍妙な生物だったりと、見た目がそれぞれ違う『式神』という魔物のような者達が、数体程ラルフと戦っているのであった。
レアは『漏出』をラルフと戦っている式神達に試みる。
しかし式神達に魔力の反応が無く、戦力値も測定不能と表記されていた。
「『漏出』での反応は無いけど、あの魔物達信じられない程強いわよぉ……」
『代替身体』の身になってからも研鑽を毎日続けている、レアの戦力値は5000万を越えている。
『漏出』で戦力値が測定不能と出るという事は、今のレアの『代替身体』の通常状態より、あの式神達の方が強いという事を意味している。
「知ってるよ。俺もサイヨウの式神と戦った事があるからな」
レイズ城の上空でラルフと戦う式神達を見つめながら、そう静かに呟くキーリであった。
……
……
……
ラルフは『青のオーラ』を纏いながら器用に三体の式神達の攻撃を躱し続けている。
「ラルフ殿。距離をとるときの目線は常に前、出来るだけ全体が見渡せるようにされよ!」
「くっ……!」
腕を組んでラルフの戦闘を見守るサイヨウは、檄を飛ばしながらそうアドバイスを告げる。
そしてラルフは右手に『青』を集約すると、迫って来た一つ目の鬼の棍棒を躱すと同時、その腕を目掛けて拳を突き入れる。
「グアアアッ!!」
一つ目の鬼の右腕の肘関節がボキリと折れる音が聞こえたかと思うと、激痛で鬼は苦しみの声をあげた。
しかしその背の高い一つ目の鬼の影からすっと何かが現れる。
――毛むくじゃらの式神であった。
どうやら一つ目の鬼の背後に隠れて、機を伺っていたのだろう。
毛むくじゃらの式神は、ラルフを捕えようと、自身の長い体毛を数本伸ばして来た。ラルフはその伸ばされた式神の毛の一本を逆に掴み思いきり引っ張る。毛むくじゃらの式神は、ラルフに吸い込まれるように身体を引き寄せられる。そしてラルフの間合いまで身体を引っ張られた式神は、先程の一つ目の鬼と同じように、ラルフの『青』の拳に、顔面を思いきり殴り飛ばされて消し飛んだ。
「見事! しかしまだ残っておるぞ! 気を抜きなさるなよ!」
サイヨウがそう言葉を放つと同時、地を這っていた蛇がラルフに飛び掛かってきた。
ラルフは蛇の口を華麗に躱すと、その蛇の胴を『青』を纏った両手で掴むと、そのまま右手をぶらりとさせた一つ目の鬼に向けて放り投げた。
苦しんでいた鬼の式神の目に蛇が当たると、痛みで再び鬼は声をあげた。ラルフは態勢を立て直し、軸足に力を込めると『妖精の施翼』の『魔法』を使う。
移動速度が急激に増したラルフは、思いきり地を蹴って苦しんでいる鬼の元へ突っ切る。
そして式の鬼の脛を思いきり蹴り飛ばすと、鬼は激痛で片膝を地面に就こうとする。すると当然ラルフにも鬼の胴体に手が届くようになる。ラルフは両手を『青』で纏い指を伸ばして、鬼の脇腹に思いきり突き入れた。
「ギャアアアッ!!」
悶絶といった表情と声をあげながら鬼はそのまま床に倒れようとするが、その顔を目掛けて思いきりラルフは右足で蹴り飛ばした。鬼の首は、胴から千切れて吹っ飛んで行った。
そのまま鬼は痙攣を起こしていたが、ボンッという音と共に身体が消えてやがて一枚の札となった。
「……」
サイヨウは何も言わず、そのまま成り行きを見守る。
ラルフは式神を札に戻した後も気を抜かず、何かを探すように視線を床に這わせる。
そして目当てのモノを見つけると、再び駆け出して床に手を伸ばして何かを掴みあげた。
「シャアアアッ!!」
ラルフは左手で掴みあげた蛇を固定し、右手に『青』を纏って手刀で蛇の首を跳ばした。
一つ目の鬼の時のようにボンッという音と共に、蛇は一枚の札へと戻るのだった。
「うむ、見事なり!」
そこでようやくサイヨウは笑みを浮かべて頷くのだった。
ラルフとサイヨウの式神の戦闘を上空から見ていたレアは思わず声を出す。
「あ、あれがラルフちゃん……!?」
レアは一連のラルフの動きを見て明確に、これまでの彼では無いと判断するのだった。
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