最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第730話 ソフィに印象づける魔族
ミデェールが金色のオーラを纏い始めたその瞬間、ソフィは模擬の試合直前だというのに、ミデェールと、そのミデェールを守るエイネの方に意識を向ける。
(ほう……。あの若さで金色の体現者か!)
ソフィは『漏出』でしっかりとミデェールを確認するが、若い魔族に見合った戦力値で『上位魔族』程の戦力値しか映し出されなかった。
このアレルバレルの世界でのソフィは通常形態であっても、リラリオの通常形態とは違い、大魔王領域の力を有している。
そんなソフィの『漏出』の効力は、ミデェールの戦力値を正確に映し出している。
もしミデェールがソフィにさえ気取られない卓越した戦力値コントロールが出来るとすれば、表記通りの数値ではないだろうが、その可能性は相当に低い。つまり金色の体現者ではあるが、その才能だけが先走っているような状況なのだろう。
ソフィはミデェールともう一度話をしてみたいと考えて、試合を熱心に観戦しているミデェールと、エイネの元へと近寄っていくのだった。
…………
ブラストの試験開始を知らせる声によってBクラスの『選定』がついに始まった。ブラストによって結界の効力で施設は広がっているが、試合開始と同時に更に参加者と観戦者の間に線引きをするように、ブラストは別の結界を張り巡らせる。
その結界の内側で、一斉に魔族達はリーシャに向かっていった。
この選定の結果次第では、名誉ある『序列部隊』に入る事が出来る為、Bクラスの魔族達は意気揚々といった様子であった。
「さて、じゃあ五分間遊ばせてもらおうかしらぁ?」
リーシャはトンットンッと地面の上で跳ね始めたかと思うと、こちらに向かってくる魔族達に視線を向ける。
ここからBクラスの大魔王達は『神速』の異名を持つリーシャの速度を思い知る事となる。
『高速転移』を用いて魔族達が、リーシャの居た場所へ辿り着いた時、既にその場にはリーシャの影も形もなかった。
「なっ……! き、消えた?」
一体の魔族がそう告げると同時、後続達も一斉にその場所に辿り着く。
「どこ見てるのぉ? あたしはここよぉ」
リーシャは最初に居た場所から、遠く離れた場所でそう呟く。
「い、いつの間に!?」
「どうやって移動したというのだろうか……」
我先にと駆け出した魔族達の一群は、リーシャが移動した事にすら気づいておらず、唖然とした様子で遠くに居るリーシャを見る事しか出来なかった。
しかしこの速度でもリーシャはまだ、金色のオーラさえも使っていない様子見の状態である。
ようやく彼らはこの試験が『組織』によって数を減らした序列部隊の補充の為に行われるような、甘い試験ではない事を実感し始めるのだった。
「リーシャは全然本気で移動をしてはいないようだけど、それでもBクラスの魔族達では触れる事は容易ではないようね」
エイネは腕を組みながら試合を観戦し、冷静に試験の分析を始める。
「凄い……。リーシャさんも凄いけど、他の魔族の方々の動きも僕には見えない……」
エイネはミデェールの呟きを聞いて、視線を試合からミデェールに移す。
「そう言えば貴方。そのオーラを纏っている時は、相手の動きが遅く見えるのではなかったかしら?」
突然話しかけてきたエイネを見ると、ミデェールは首を横に振る。
「それなんですが……。今は見えないんです。さっきから僕も使ってみようと思っていたんですけど、あの不思議な感覚が、どうやっても今の僕は感じられなくて……」
「何ですって……。使えない?」
(体現者の『特異』の力って確か、一度目覚めたら体現者は任意で使える技じゃなかったかしら?)
エイネは体現者では無いが、リーシャが特異に目覚めてから何度も彼女が『特異』を使うところを見てきている。
ミデェールは確かにアサの世界で、特異の力に目覚めている筈である。
あの『ガウル』とかいう龍族の王の攻撃をその目で、確かに見て避けているところを『エイネ』は実際に目撃している。
「実際に戦っていないと、発動しないという事かしら……? いやそれとも何か発動条件が、別にあったりするのかもしれないわね」
エイネは首を傾げながらそう言っていたが、その場に近づいてくる者の厳かな気配を察知してそちらに視線を向ける。
「そ、ソフィ様!」
そしてその視線の先、気配の正体がソフィだと気づくと、驚いた口振りで慌てて頭を下げるエイネだった。
ソフィは右手でエイネに楽にしろ、というジェスチャーを向けると、ミデェールに言葉を紡ぐのだった。
「お主。最近魔瞳を使えるようになったのではないか?」
……
……
……
(ほう……。あの若さで金色の体現者か!)
ソフィは『漏出』でしっかりとミデェールを確認するが、若い魔族に見合った戦力値で『上位魔族』程の戦力値しか映し出されなかった。
このアレルバレルの世界でのソフィは通常形態であっても、リラリオの通常形態とは違い、大魔王領域の力を有している。
そんなソフィの『漏出』の効力は、ミデェールの戦力値を正確に映し出している。
もしミデェールがソフィにさえ気取られない卓越した戦力値コントロールが出来るとすれば、表記通りの数値ではないだろうが、その可能性は相当に低い。つまり金色の体現者ではあるが、その才能だけが先走っているような状況なのだろう。
ソフィはミデェールともう一度話をしてみたいと考えて、試合を熱心に観戦しているミデェールと、エイネの元へと近寄っていくのだった。
…………
ブラストの試験開始を知らせる声によってBクラスの『選定』がついに始まった。ブラストによって結界の効力で施設は広がっているが、試合開始と同時に更に参加者と観戦者の間に線引きをするように、ブラストは別の結界を張り巡らせる。
その結界の内側で、一斉に魔族達はリーシャに向かっていった。
この選定の結果次第では、名誉ある『序列部隊』に入る事が出来る為、Bクラスの魔族達は意気揚々といった様子であった。
「さて、じゃあ五分間遊ばせてもらおうかしらぁ?」
リーシャはトンットンッと地面の上で跳ね始めたかと思うと、こちらに向かってくる魔族達に視線を向ける。
ここからBクラスの大魔王達は『神速』の異名を持つリーシャの速度を思い知る事となる。
『高速転移』を用いて魔族達が、リーシャの居た場所へ辿り着いた時、既にその場にはリーシャの影も形もなかった。
「なっ……! き、消えた?」
一体の魔族がそう告げると同時、後続達も一斉にその場所に辿り着く。
「どこ見てるのぉ? あたしはここよぉ」
リーシャは最初に居た場所から、遠く離れた場所でそう呟く。
「い、いつの間に!?」
「どうやって移動したというのだろうか……」
我先にと駆け出した魔族達の一群は、リーシャが移動した事にすら気づいておらず、唖然とした様子で遠くに居るリーシャを見る事しか出来なかった。
しかしこの速度でもリーシャはまだ、金色のオーラさえも使っていない様子見の状態である。
ようやく彼らはこの試験が『組織』によって数を減らした序列部隊の補充の為に行われるような、甘い試験ではない事を実感し始めるのだった。
「リーシャは全然本気で移動をしてはいないようだけど、それでもBクラスの魔族達では触れる事は容易ではないようね」
エイネは腕を組みながら試合を観戦し、冷静に試験の分析を始める。
「凄い……。リーシャさんも凄いけど、他の魔族の方々の動きも僕には見えない……」
エイネはミデェールの呟きを聞いて、視線を試合からミデェールに移す。
「そう言えば貴方。そのオーラを纏っている時は、相手の動きが遅く見えるのではなかったかしら?」
突然話しかけてきたエイネを見ると、ミデェールは首を横に振る。
「それなんですが……。今は見えないんです。さっきから僕も使ってみようと思っていたんですけど、あの不思議な感覚が、どうやっても今の僕は感じられなくて……」
「何ですって……。使えない?」
(体現者の『特異』の力って確か、一度目覚めたら体現者は任意で使える技じゃなかったかしら?)
エイネは体現者では無いが、リーシャが特異に目覚めてから何度も彼女が『特異』を使うところを見てきている。
ミデェールは確かにアサの世界で、特異の力に目覚めている筈である。
あの『ガウル』とかいう龍族の王の攻撃をその目で、確かに見て避けているところを『エイネ』は実際に目撃している。
「実際に戦っていないと、発動しないという事かしら……? いやそれとも何か発動条件が、別にあったりするのかもしれないわね」
エイネは首を傾げながらそう言っていたが、その場に近づいてくる者の厳かな気配を察知してそちらに視線を向ける。
「そ、ソフィ様!」
そしてその視線の先、気配の正体がソフィだと気づくと、驚いた口振りで慌てて頭を下げるエイネだった。
ソフィは右手でエイネに楽にしろ、というジェスチャーを向けると、ミデェールに言葉を紡ぐのだった。
「お主。最近魔瞳を使えるようになったのではないか?」
……
……
……
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
5
-
-
1512
-
-
37
-
-
1980
-
-
157
-
-
89
-
-
24252
-
-
35
-
-
49989
コメント