最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第728話 ソフィの願望に一縷の可能性
Bクラスに選ばれた魔族達は、試験内容を知らされた後もザワつきを見せていた。
それもその筈この試験で合格すれば、序列部隊入りが決まると言われたからである。
序列部隊とは大魔王ソフィの率いる魔王軍の中でも最も名誉ある部隊であり、この序列部隊を率いる者は、最高幹部である『九大魔王』の誰かと決まっている。
つまり今まで中立の立場であった彼らであっても、ここで『序列入り』が認められる事があれば、晴れて名誉ある役職の部隊の一員としてやっていけるのである。
Aクラスに入れなかった時点で序列入りを半ば諦めていたBクラスの者達だが、むしろBクラスの方が序列入りが簡単なのでは無いかとも思い始めていた。
何故ならAクラスでは九大魔王『イリーガル』にダメージを与えたり、傷をつけなければ認められない。しかしBクラスでは九大魔王リーシャに触れるだけで、序列入りが決まるのだ。
当然Aクラスの者達の方が合格を果たした時の序列が上の方になるだろうが『序列二桁』や『序列三桁』でも認められるのであれば、Bクラスの者達にとっては万々歳であった。
今は魔王軍の多くの者達が序列部隊を含めて組織の者達の所為で数を減らしているが、それでも大魔王ソフィの率いる魔王軍の序列部隊に入る事が出来れば、今後の生涯で魔界で肩身の狭い思いをする事は無くなるだろう。
たとえ相手が九大魔王であったとしてもこれだけの人数が居れば、だれかは触れられるだろうと、Bクラスの者達はこの千載一遇の好機に軽い気持ちを持って考えてしまうのだった。
…………
「ふむ。まずはBクラスの者達から始めるのか」
「流石にこの世界の層は厚いものだなソフィ。Bクラスの者達とはいってもワシの世界である『レパート』の世界の魔族達より強いわい」
「クックック、しかし本当に強い者は、何処の世界であろうとも関係が無い筈だ。肝心なのは力をつけ始めた頃にどれだけ驕る事無く振る舞えるか。だろう?」
「そうだな。一つ目の壁がちょうど、このBランク帯になるじゃろうな」
ソフィとフルーフは世界の頂点に立つ魔族同士として、多くの魔族達をその目で見てきた。
誰もが弱い時は必死で強くなろうと努力をするものだが、一定の強さを持った時に魔族は驕り始める。
戦力値が200億付近までくると、何処の世界であっても自分より弱い者が多くなってくる。
そして自分は周りの者達より強いのだと実感してしまうと、そこで自ら成長を止めるように努力をしなくなってしまう事が多いのである。
当然このBランク帯では無くとも驕る事は珍しくはないが、ソフィやフルーフが長年見てきた感想が、ちょうどこの戦力値200億付近だというワケである。
「ふむ。この世界の魔族が強い理由としては、お主が居るからかもしれんな」
「我が居るから?」
ソフィがフルーフに返答すると、ちらりとフルーフはミデェールの場所を見る。
「そうじゃ。ワシはこの世界に来る前に『アサ』という世界を見てきたが、その世界では魔族が育っておらず、龍族や魔人族が台頭していた世界だった」
「ふむ」
ソフィもリラリオの世界を渡り歩いた経験がある為、魔族より別の種族の方が、強い世界があるという事は知っている。
「つまりは志向性じゃな。古くからお主がこの世界の魔族にとっては、目指すべき存在の終着点として存在していた。だからこそこの世界の魔族達は驕ること無く、お主を目指して強くなっていったという事じゃ」
この『アレルバレル』という世界は、ソフィの前にも『ダルダオス』という圧倒的な強さを持った魔族が支配者として君臨していた。
ダルダオスもまたソフィとまではいかないが、別世界では上位に来る程の戦力値を持つ猛者であった。
そして次にソフィという『最強の魔族』が世界の頂点に君臨する事となった。この世界の頂点たる者が恐るべき強さを持っていた為に、他の魔族達は、その頂点に居る者達を目指して強くなろうとした。
――だからこそ持つべき志向のおかげによって、魔族は成長を遂げていったのかもしれないと、フルーフは結論づけたのだった。
「では、我より強い者が居る世界があったとしたら、その世界の魔族は強い者が、多く居る世界かもしれないという事か?」
「あくまで可能性の話だがな? それに頂点に立つ者が魔族だけとは限らぬ。その世界の龍族や人間族、魔人族に精霊族、世界の頂点に立つ種族によっては、その種族がお主より強い可能性もあるという事だ」
あくまで希望的観測の範疇、志向性による可能性の話である。
だが、フルーフの語る話はソフィにとってとても魅力的に感じられた。
彼は自分より強い存在と戦いそして可能であれば、その至高な強さを持つ者に本気を出させてもらい、そして敗北を知りたいと願っている。
別世界に自分より強い者が居る世界であれば、つられるようにその世界に住む者達のレベルも高いのかもしれない。ソフィはその可能性を、リラリオの世界でも感じた。
――大魔王『レキ』という存在である。
長い間レキは封印されていた為に『リラリオ』の世界では魔族が育っておらず、キーリのように龍族が、世界の調停を担うような存在として君臨していた。だからこそ、あの世界では魔族より龍族の方が強かった。
しかしもし『レキ』が封印されるような事が無く、リラリオの世界の長い時の中で『支配者』として君臨していたとしたらあの世界は、アレルバレルとの世界と同じように、魔族が強い世界になっていたのかもしれない。
「クックック! いやいい話を聞かせてもらったぞ?」
ソフィはフルーフに笑みを向けると、リラリオの世界に向かった時と同じように、別世界の可能性に、再び希望を抱き始めるのだった。
……
……
……
それもその筈この試験で合格すれば、序列部隊入りが決まると言われたからである。
序列部隊とは大魔王ソフィの率いる魔王軍の中でも最も名誉ある部隊であり、この序列部隊を率いる者は、最高幹部である『九大魔王』の誰かと決まっている。
つまり今まで中立の立場であった彼らであっても、ここで『序列入り』が認められる事があれば、晴れて名誉ある役職の部隊の一員としてやっていけるのである。
Aクラスに入れなかった時点で序列入りを半ば諦めていたBクラスの者達だが、むしろBクラスの方が序列入りが簡単なのでは無いかとも思い始めていた。
何故ならAクラスでは九大魔王『イリーガル』にダメージを与えたり、傷をつけなければ認められない。しかしBクラスでは九大魔王リーシャに触れるだけで、序列入りが決まるのだ。
当然Aクラスの者達の方が合格を果たした時の序列が上の方になるだろうが『序列二桁』や『序列三桁』でも認められるのであれば、Bクラスの者達にとっては万々歳であった。
今は魔王軍の多くの者達が序列部隊を含めて組織の者達の所為で数を減らしているが、それでも大魔王ソフィの率いる魔王軍の序列部隊に入る事が出来れば、今後の生涯で魔界で肩身の狭い思いをする事は無くなるだろう。
たとえ相手が九大魔王であったとしてもこれだけの人数が居れば、だれかは触れられるだろうと、Bクラスの者達はこの千載一遇の好機に軽い気持ちを持って考えてしまうのだった。
…………
「ふむ。まずはBクラスの者達から始めるのか」
「流石にこの世界の層は厚いものだなソフィ。Bクラスの者達とはいってもワシの世界である『レパート』の世界の魔族達より強いわい」
「クックック、しかし本当に強い者は、何処の世界であろうとも関係が無い筈だ。肝心なのは力をつけ始めた頃にどれだけ驕る事無く振る舞えるか。だろう?」
「そうだな。一つ目の壁がちょうど、このBランク帯になるじゃろうな」
ソフィとフルーフは世界の頂点に立つ魔族同士として、多くの魔族達をその目で見てきた。
誰もが弱い時は必死で強くなろうと努力をするものだが、一定の強さを持った時に魔族は驕り始める。
戦力値が200億付近までくると、何処の世界であっても自分より弱い者が多くなってくる。
そして自分は周りの者達より強いのだと実感してしまうと、そこで自ら成長を止めるように努力をしなくなってしまう事が多いのである。
当然このBランク帯では無くとも驕る事は珍しくはないが、ソフィやフルーフが長年見てきた感想が、ちょうどこの戦力値200億付近だというワケである。
「ふむ。この世界の魔族が強い理由としては、お主が居るからかもしれんな」
「我が居るから?」
ソフィがフルーフに返答すると、ちらりとフルーフはミデェールの場所を見る。
「そうじゃ。ワシはこの世界に来る前に『アサ』という世界を見てきたが、その世界では魔族が育っておらず、龍族や魔人族が台頭していた世界だった」
「ふむ」
ソフィもリラリオの世界を渡り歩いた経験がある為、魔族より別の種族の方が、強い世界があるという事は知っている。
「つまりは志向性じゃな。古くからお主がこの世界の魔族にとっては、目指すべき存在の終着点として存在していた。だからこそこの世界の魔族達は驕ること無く、お主を目指して強くなっていったという事じゃ」
この『アレルバレル』という世界は、ソフィの前にも『ダルダオス』という圧倒的な強さを持った魔族が支配者として君臨していた。
ダルダオスもまたソフィとまではいかないが、別世界では上位に来る程の戦力値を持つ猛者であった。
そして次にソフィという『最強の魔族』が世界の頂点に君臨する事となった。この世界の頂点たる者が恐るべき強さを持っていた為に、他の魔族達は、その頂点に居る者達を目指して強くなろうとした。
――だからこそ持つべき志向のおかげによって、魔族は成長を遂げていったのかもしれないと、フルーフは結論づけたのだった。
「では、我より強い者が居る世界があったとしたら、その世界の魔族は強い者が、多く居る世界かもしれないという事か?」
「あくまで可能性の話だがな? それに頂点に立つ者が魔族だけとは限らぬ。その世界の龍族や人間族、魔人族に精霊族、世界の頂点に立つ種族によっては、その種族がお主より強い可能性もあるという事だ」
あくまで希望的観測の範疇、志向性による可能性の話である。
だが、フルーフの語る話はソフィにとってとても魅力的に感じられた。
彼は自分より強い存在と戦いそして可能であれば、その至高な強さを持つ者に本気を出させてもらい、そして敗北を知りたいと願っている。
別世界に自分より強い者が居る世界であれば、つられるようにその世界に住む者達のレベルも高いのかもしれない。ソフィはその可能性を、リラリオの世界でも感じた。
――大魔王『レキ』という存在である。
長い間レキは封印されていた為に『リラリオ』の世界では魔族が育っておらず、キーリのように龍族が、世界の調停を担うような存在として君臨していた。だからこそ、あの世界では魔族より龍族の方が強かった。
しかしもし『レキ』が封印されるような事が無く、リラリオの世界の長い時の中で『支配者』として君臨していたとしたらあの世界は、アレルバレルとの世界と同じように、魔族が強い世界になっていたのかもしれない。
「クックック! いやいい話を聞かせてもらったぞ?」
ソフィはフルーフに笑みを向けると、リラリオの世界に向かった時と同じように、別世界の可能性に、再び希望を抱き始めるのだった。
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