最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第707話 ようやく始まった対話
スベイキアのシェイザー王子とネスコー元帥が、魔族エイネの言い分を認めた為、スベイキア国とその同盟国の者達によるイルベキアへの侵攻は終わりを告げた。
イルベキア国のヴァルーザ龍王とシェアーザの意識が戻った後、ネスコー元帥がシェイザー王子を説得し、スベイキアでエイネの話を聞く事となった。
元々あったスベイキア城は、エイネの攻撃によって大破してしまった為、近くに建てられていた王族用の臨時施設の一角にある会議室に場所を移す事となるのであった。
その会議室には少し前まで争っていた『スベイキア』と『イルベキア』両国の主だった者達と、この世界の魔族から代表としてミデェールがエイネに連れられて入室していた。
そしてエイネの口から今回の件の全てを説明された。
会議室に入った当初は、エイネに怯えを見せていたシェイザーだったが、徐々にエイネによって語られる内容に、再び怒りの表情を浮かべて、エイネを睨んでいた。
「いやはや、どこから突っ込めばよいのやら……」
ネスコー元帥はエイネの顔と隣に居るシェイザーの顔を交互に見ながら、重い空気の中でなんとか口を開いた。
魔族エイネがこの世界の住人では無く、元々別世界からアサへ辿り着いた事。
この世界の魔族たちを守る為に、スベイキアのイーサ龍王を襲った事。
イルベキアのヴァルーザ龍王は、魔族エイネに従わされていただけであった事。
本来であればスベイキアという大国の王をその手で殺めた以上、どのような理由があるにせよ、スベイキア側としてはエイネを生かすわけにはいかない。
しかし今回の戦争で力の差は歴然だという事は、嫌という程理解させられている。
このままエイネに対して処罰や処刑といった事を行えば、今度こそスベイキアは滅びてしまう。
だからといって、このまま泣き寝入りなど出来る筈もない。
そして何より、スベイキアと同盟国が今回襲ったスベイキアは、エイネに従わされていただけであったという事実を知った。
スベイキアの国家転覆を狙ったというガウル龍王の眉唾話を鵜呑みにしてしまい、嘘を信じたスベイキアは、一つの国に対して多くの国々の軍を使い、イルベキアの民達を大勢襲い、これによって多くの犠牲を生み出してしまった。
エイネの件があった事は確かであり、無関係ではないにしても、流石に多くの同盟国を使って襲撃をしたのはやりすぎである。
「ヴァルーザ龍王、本当に申し訳ありません」
ネスコーはスベイキア軍の元帥として、立ち上がって頭を下げた。
今この場で謝られたとしても、死んだ者達は生き返らない。
ヴァルーザ龍王もシェアーザも軍の元帥の謝罪を素直に受け取るわけには行かなかった。
しかしそこでこれまで話を聞いていたシェイザー王子が、慨しながら口を開いた。
「全てこの魔族が悪いのではないか! 我が父である国王を襲わなければ、我々はイルベキアを襲う事もなかった! その上、我々にこの世界の魔族達の保護をしろだと!? 冗談も休み休み言え! 何故我々がそんな事をしなければならぬのだ! たかが魔族如きは、八つ裂き……に、してや……る」
シェイザーは龍族の威信にかけて、こんなフザケタ話を突っぱねようとした。
しかし魔族エイネの顔を見てしまった事で、一瞬で上がっていた熱が急速に冷めていった。
「シェイザー王子だったかしら? 貴方のお父様のイーサ龍王は貴方によく似ていたわ。たかが魔族と私たちの事を罵り、こちらの言葉など一切耳を傾けてくれなかった」
最初は静かな口調で淡々と、そして徐々にエイネは早口になっていく。
「納得出来なければもういいわよ」
エイネが最後にそう言うと、ヴァルーザ龍王もシェアーザもシェイザー王子もミデェールまでも、その場に居る者達は、一人を除き全員が金縛りにあったように動けなくなった。
「魔族エイネ。王子の魔族を蔑むような発言は謝罪致します。ですが少々結論を出すのは、お待ち願えないでしょうか。我々も一国の王を貴方によって失っております故、冷静で居られないのはお分かり頂きたい」
たった一人。軍の元帥であるネスコーだけは、今のエイネから目を逸らす事無く、真っすぐに自分の言葉を告げるのだった。
「結構。だけどこれだけは覚えていてちょうだい。この世界の魔族は、魔人や貴方たち龍族に従っていたようだけど私は違う」
そしてそこで怒りを自身の目に込めるように、エイネの目が金色へとなり替わる。
「私は敵対する者は必ず殺すし、気に入らない者はあっさりと殺す悪い魔族なの。これ以上私の同胞である魔族を蔑んだり、下に見たりするような真似をすれば、今度こそ敵対する者達。この大陸に生きる全ての龍族を皆殺しにするわね」
エイネのその言葉には嘘と脅しが交ざっているが、全くのウソという事では無かった。
「わ、分かりました」
流石のネスコー元帥であっても、口ごもりながら了承する。
その横に居るシェイザー王子は、もうエイネの目の色が変わった後から直視出来なくなり、全く関係の無い場所を見つめながら震えるのだった。
……
……
……
イルベキア国のヴァルーザ龍王とシェアーザの意識が戻った後、ネスコー元帥がシェイザー王子を説得し、スベイキアでエイネの話を聞く事となった。
元々あったスベイキア城は、エイネの攻撃によって大破してしまった為、近くに建てられていた王族用の臨時施設の一角にある会議室に場所を移す事となるのであった。
その会議室には少し前まで争っていた『スベイキア』と『イルベキア』両国の主だった者達と、この世界の魔族から代表としてミデェールがエイネに連れられて入室していた。
そしてエイネの口から今回の件の全てを説明された。
会議室に入った当初は、エイネに怯えを見せていたシェイザーだったが、徐々にエイネによって語られる内容に、再び怒りの表情を浮かべて、エイネを睨んでいた。
「いやはや、どこから突っ込めばよいのやら……」
ネスコー元帥はエイネの顔と隣に居るシェイザーの顔を交互に見ながら、重い空気の中でなんとか口を開いた。
魔族エイネがこの世界の住人では無く、元々別世界からアサへ辿り着いた事。
この世界の魔族たちを守る為に、スベイキアのイーサ龍王を襲った事。
イルベキアのヴァルーザ龍王は、魔族エイネに従わされていただけであった事。
本来であればスベイキアという大国の王をその手で殺めた以上、どのような理由があるにせよ、スベイキア側としてはエイネを生かすわけにはいかない。
しかし今回の戦争で力の差は歴然だという事は、嫌という程理解させられている。
このままエイネに対して処罰や処刑といった事を行えば、今度こそスベイキアは滅びてしまう。
だからといって、このまま泣き寝入りなど出来る筈もない。
そして何より、スベイキアと同盟国が今回襲ったスベイキアは、エイネに従わされていただけであったという事実を知った。
スベイキアの国家転覆を狙ったというガウル龍王の眉唾話を鵜呑みにしてしまい、嘘を信じたスベイキアは、一つの国に対して多くの国々の軍を使い、イルベキアの民達を大勢襲い、これによって多くの犠牲を生み出してしまった。
エイネの件があった事は確かであり、無関係ではないにしても、流石に多くの同盟国を使って襲撃をしたのはやりすぎである。
「ヴァルーザ龍王、本当に申し訳ありません」
ネスコーはスベイキア軍の元帥として、立ち上がって頭を下げた。
今この場で謝られたとしても、死んだ者達は生き返らない。
ヴァルーザ龍王もシェアーザも軍の元帥の謝罪を素直に受け取るわけには行かなかった。
しかしそこでこれまで話を聞いていたシェイザー王子が、慨しながら口を開いた。
「全てこの魔族が悪いのではないか! 我が父である国王を襲わなければ、我々はイルベキアを襲う事もなかった! その上、我々にこの世界の魔族達の保護をしろだと!? 冗談も休み休み言え! 何故我々がそんな事をしなければならぬのだ! たかが魔族如きは、八つ裂き……に、してや……る」
シェイザーは龍族の威信にかけて、こんなフザケタ話を突っぱねようとした。
しかし魔族エイネの顔を見てしまった事で、一瞬で上がっていた熱が急速に冷めていった。
「シェイザー王子だったかしら? 貴方のお父様のイーサ龍王は貴方によく似ていたわ。たかが魔族と私たちの事を罵り、こちらの言葉など一切耳を傾けてくれなかった」
最初は静かな口調で淡々と、そして徐々にエイネは早口になっていく。
「納得出来なければもういいわよ」
エイネが最後にそう言うと、ヴァルーザ龍王もシェアーザもシェイザー王子もミデェールまでも、その場に居る者達は、一人を除き全員が金縛りにあったように動けなくなった。
「魔族エイネ。王子の魔族を蔑むような発言は謝罪致します。ですが少々結論を出すのは、お待ち願えないでしょうか。我々も一国の王を貴方によって失っております故、冷静で居られないのはお分かり頂きたい」
たった一人。軍の元帥であるネスコーだけは、今のエイネから目を逸らす事無く、真っすぐに自分の言葉を告げるのだった。
「結構。だけどこれだけは覚えていてちょうだい。この世界の魔族は、魔人や貴方たち龍族に従っていたようだけど私は違う」
そしてそこで怒りを自身の目に込めるように、エイネの目が金色へとなり替わる。
「私は敵対する者は必ず殺すし、気に入らない者はあっさりと殺す悪い魔族なの。これ以上私の同胞である魔族を蔑んだり、下に見たりするような真似をすれば、今度こそ敵対する者達。この大陸に生きる全ての龍族を皆殺しにするわね」
エイネのその言葉には嘘と脅しが交ざっているが、全くのウソという事では無かった。
「わ、分かりました」
流石のネスコー元帥であっても、口ごもりながら了承する。
その横に居るシェイザー王子は、もうエイネの目の色が変わった後から直視出来なくなり、全く関係の無い場所を見つめながら震えるのだった。
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