最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第675話 決死の覚悟
「これは驚いた。フルーフの魔力を追いかけてきた筈だったが、あそこにいるのはエルシスじゃないか」
ダールの世界からリラリオの世界へ『概念跳躍』を使って『世界間移動』をして姿を見せたミラは、エルシスの力を持ったシスの姿を見て笑みを浮かべてそう言った。
「み、ミラ様……!」
慌ててルビリスはミラの元へと向かい、その様子を見たバルドも仕方なく後を追いかける。
「てめぇの部下共の姿が見当たらねぇが、この世界に行かせたんだよな?」
ヌーは辺りを見回しながらミラにそう告げる。
「フフ。エルシスとルビリス達が同じ場所に居るんだ。ある程度察しがつくというものだろう」
そしてミラはこちらに向けて、近づいてくるルビリスの方を見た。
「ルビリス、ネイキッド達はやられたのか?」
ミラの元に辿り着いたルビリスは、申し訳なさそうに頭を下げながらミラに報告を始める。
「……はい、全軍を用いて奴を襲いましたが、返り討ちにあってしまいました」
素直に本当の事を口にするルビリスの言葉を聞き、ミラは堪えきれないとばかりに笑った。
「み、ミラ様……?」
当然ルビリスはミラが激怒とまではいかなくとも、苦言の一つはいわれる事を覚悟していた。
しかしその当人であるミラは愉快だとばかりに笑い続けるだけで、特に怒っている様子も無かった。
「はっはっはっは、どうだヌー? 私の言った通り、エルシスは常識が通用しないだろう?」
「貴様がこの場に集めた配下は、全員『アレルバレル』の世界の野郎だったよな?」
同じ『アレルバレル』の世界の出身であるヌーは、魔界に生息する魔族達がどれくらいの強さを持っているかを理解している。
『アレルバレル』の世界で、No.2まで登り詰めた彼であっても、たった一人でミラの配下全員を相手にし、生き残る事は相当に至難といえる為、それをやり遂げたであろうエルシスとやらが如何に異常かを改めて理解させられるのだった。
「ですがミラ様。奴はその魔力をほとんど費やしており、今ならば容易く仕留められます」
ルビリスがそう告げると、ミラはエルシスに『漏出』を放った。
「ククク。抵抗せずに私の魔法をそのまま通すとは、本当に虫の息のようだな」
普段の大賢者エルシスであれば、敵から自身に向けて『漏出』や『魔力感知』などを使われた場合、有無を言わさずに、阻害する処置を瞬時に使ってのける。
しかし今のエルシスは、あっさりとミラの魔法を通して見せた。
こんな程度の魔法を阻害する事に使う魔力すら惜しいと、エルシスは考えたのだろう。
「……ヌー、お前がトドメをさせ」
「俺に指図をす……」
「お前を助けてやったのは誰だ?」
「チッ!」
ミラに対して指図をするなと言いかけたヌーの言葉にかぶせる様にミラはそう言い放つと、忌々しそうにミラを睨んだ後に舌打ちをする。
本来は同格の間柄で同盟を組んでいたヌーとミラだったが、現在の二人の間には明確な上下関係が出来つつあった。
『魔神の力』を有し、そしてミラにその命を救われたヌー。
かつてアレルバレルの世界でNo.2となった魔族という肩書は『煌聖の教団』の総帥であるミラには通用しなくなっていた。
「本当に殺っていいんだな?」
「構わない。もう私はエルシスを上回る力を有した。彼はもう私には、必要の無い存在だ」
長い間大賢者エルシスを崇拝し続けてきたミラは、そのしがらみを取り外すかの如く、切り捨てるように明言するのだった。
…………
「やれやれ、流石にこれはまずいかな? キミの生命力は極力使いたくないんだけど、死ぬよりはマシだろうか?』
「……」
周囲に居る者がもし彼の言葉を聞いていたとしたら、エルシスは独り言を言っているように聞こえていただろう。
しかし彼は今、中に居るシスと会話をしているのであった。そしてエルシスの言葉に、シスの返事として『構わないよ』と意思を伝えるのだった。
「ごめんね? だけどそうと決まれば、キミを必ず生存させてあげる」
エルシスはそう言うと、再び金色以外のもう一つのオーラを纏おうと決意を固めるのだった。
……
……
……
ダールの世界からリラリオの世界へ『概念跳躍』を使って『世界間移動』をして姿を見せたミラは、エルシスの力を持ったシスの姿を見て笑みを浮かべてそう言った。
「み、ミラ様……!」
慌ててルビリスはミラの元へと向かい、その様子を見たバルドも仕方なく後を追いかける。
「てめぇの部下共の姿が見当たらねぇが、この世界に行かせたんだよな?」
ヌーは辺りを見回しながらミラにそう告げる。
「フフ。エルシスとルビリス達が同じ場所に居るんだ。ある程度察しがつくというものだろう」
そしてミラはこちらに向けて、近づいてくるルビリスの方を見た。
「ルビリス、ネイキッド達はやられたのか?」
ミラの元に辿り着いたルビリスは、申し訳なさそうに頭を下げながらミラに報告を始める。
「……はい、全軍を用いて奴を襲いましたが、返り討ちにあってしまいました」
素直に本当の事を口にするルビリスの言葉を聞き、ミラは堪えきれないとばかりに笑った。
「み、ミラ様……?」
当然ルビリスはミラが激怒とまではいかなくとも、苦言の一つはいわれる事を覚悟していた。
しかしその当人であるミラは愉快だとばかりに笑い続けるだけで、特に怒っている様子も無かった。
「はっはっはっは、どうだヌー? 私の言った通り、エルシスは常識が通用しないだろう?」
「貴様がこの場に集めた配下は、全員『アレルバレル』の世界の野郎だったよな?」
同じ『アレルバレル』の世界の出身であるヌーは、魔界に生息する魔族達がどれくらいの強さを持っているかを理解している。
『アレルバレル』の世界で、No.2まで登り詰めた彼であっても、たった一人でミラの配下全員を相手にし、生き残る事は相当に至難といえる為、それをやり遂げたであろうエルシスとやらが如何に異常かを改めて理解させられるのだった。
「ですがミラ様。奴はその魔力をほとんど費やしており、今ならば容易く仕留められます」
ルビリスがそう告げると、ミラはエルシスに『漏出』を放った。
「ククク。抵抗せずに私の魔法をそのまま通すとは、本当に虫の息のようだな」
普段の大賢者エルシスであれば、敵から自身に向けて『漏出』や『魔力感知』などを使われた場合、有無を言わさずに、阻害する処置を瞬時に使ってのける。
しかし今のエルシスは、あっさりとミラの魔法を通して見せた。
こんな程度の魔法を阻害する事に使う魔力すら惜しいと、エルシスは考えたのだろう。
「……ヌー、お前がトドメをさせ」
「俺に指図をす……」
「お前を助けてやったのは誰だ?」
「チッ!」
ミラに対して指図をするなと言いかけたヌーの言葉にかぶせる様にミラはそう言い放つと、忌々しそうにミラを睨んだ後に舌打ちをする。
本来は同格の間柄で同盟を組んでいたヌーとミラだったが、現在の二人の間には明確な上下関係が出来つつあった。
『魔神の力』を有し、そしてミラにその命を救われたヌー。
かつてアレルバレルの世界でNo.2となった魔族という肩書は『煌聖の教団』の総帥であるミラには通用しなくなっていた。
「本当に殺っていいんだな?」
「構わない。もう私はエルシスを上回る力を有した。彼はもう私には、必要の無い存在だ」
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