最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第674話 苦難と溜息
『レイズ』魔国の上空で『煌聖の教団』とたった一人で戦っていたエルシスは『青』と『金色』の『二色の併用』を解きながら息を整える。
「……本当に君の魔力値は大したものだ。ボク自身の身体で、先程と同じだけの魔力を使っていたら、最悪死んでいるからね」
「……」
エルシスは身体の持ち主であるシスに語り掛ける。先程のエルシスの形態は、かつてソフィの願望を叶える為に編み出したオーラの併用であった。
『金色』と『青色』の『二色の混合』は恐ろしく魔力の消耗が早く、生前のエルシスであれば僅か数十秒しか維持出来ない力であった。
だがしかし、その効果は絶大であった。
本来全力のエルシスで戦力値2200億程なのだが『金色』と『青色』の『二色の混合』を使用したときの戦力値は、生前に一度だけ5500億程を記録していた。
生前のエルシスが用いたこの『二色の混合』は、確かに戦力値は凄まじい数値に上昇させることには成功した。
しかし張り子の虎というべきか、この状態を保持したままでは戦闘など出来ない。
オーラを纏っていられる時間は僅か数十秒。更に言えば、このオーラを纏う事だけに集中した場合で数十秒なのである。
――つまりかつての人間の時のエルシスであれば『煌聖の教団』相手にあれだけの戦いは出来なかった。
それを可能とする事が出来たのは、この体の本来の持ち主である『シス』の『魔力』を使ったからに他ならない。
『金色』と『青色』の『二色の混合』のオーラだけでは無く『聖者達の行軍』を同時発動しながら『聖なる滅撃』まで使っていた。
更には一斉に散らばって飛んでいった、数十万の魔族達を同時に縛る『聖動捕縛』や、仕留めた後の『代替身体』へ向かう者達の魂を強制的に排除する『空間除外』。
これだけの広範囲に同時に発動するだけでも、膨大な魔力を必要とするのである。
最初に神聖魔法や神域魔法などを同時に発動している事も含めて挙げればキリがない程である。
――如何にシスが、才に溢れる存在か。
『魔』に魅了されて生涯を『魔』に注ぎ込んできたような存在であるユファが、如何にこのシスに惚れ込み離れようとしないか、窺い知れるというモノだろう。
しかしそんなシスであっても、流石に今はかなりの魔力を消費してしまい、一刻も早く休まなければ命に関わる状態まで来ていたのだった。
「……さて、一度城へ戻ろうか」
誰も居なくなった上空でエルシスがそう言うと『レイズ』城へ戻ろうと背後を振り返った。
しかしその次の瞬間。
隙だらけとなったエルシスに向けて極大魔法が放たれた。
「!」
エルシスは直ぐに自身に向けられた魔法に反応して『次元防壁』を瞬時に使って防ぐ。
そして魔法が放たれた方向へ『魔力感知』を使う。
するとそこには忌々しそうにエルシスを睨みつけるルビリスと、そのルビリスを救った老人『バルド』の両名の姿が見えた。
「何という事をしてくれたのでしょうか? おかげで大事な教団は壊滅ですよ……」
司令官ルビリスは普段通りの口調ではあったが、蟀谷に青筋を立てて歯軋りをしていた。
どうやら総帥である『ミラ』の大事な戦力達を消滅させられた事で、これからの計画に、大きな支障を来すだろうと考えたルビリスは、相当にエルシスに対して腹を立てている様子であった。
「ボクは自分の身を守るために仕方なく戦っただけだよ? そもそも君たちが襲ってきたのが、悪いんじゃないかな」
至極真っ当な言葉をルビリスに告げるエルシスだった。
「仕方ありませんね。ひとまずミラ様が来られる前に、貴方だけは仕留めておかなければ」
そう言うと再び、ルビリスとバルドが『金色のオーラ』を纏い戦闘態勢に入った。
流石に残された魔力ではもう『二色の混合』を使う事はおろか、二体の大魔王上位領域に居る二人の相手すら難しいと考えるエルシスだったが、泣き言を言っていられないとエルシスは、出来るだけシスの大切な生命力を使わないように残された魔力を使いながら、金色のオーラを纏い始める。
――しかし。そこにエルシスにとっては更なる苦難が押し寄せた。
空間に亀裂が入ったかと思えば、膨大な魔力を持つ存在が二つ姿を現したのである。
フルーフと戦った時に消耗した体力が完全に癒えた大魔王『ヌー』と『魔神の力』を手にして万全な状態を誇る『煌聖の教団』の総帥。大賢者『ミラ』であった。
「はは……。全く冗談だと言って欲しいね?」
流石のエルシスも片目を閉じながら、辛そうに溜息を吐く姿を周囲に見せるのだった。
……
……
……
「……本当に君の魔力値は大したものだ。ボク自身の身体で、先程と同じだけの魔力を使っていたら、最悪死んでいるからね」
「……」
エルシスは身体の持ち主であるシスに語り掛ける。先程のエルシスの形態は、かつてソフィの願望を叶える為に編み出したオーラの併用であった。
『金色』と『青色』の『二色の混合』は恐ろしく魔力の消耗が早く、生前のエルシスであれば僅か数十秒しか維持出来ない力であった。
だがしかし、その効果は絶大であった。
本来全力のエルシスで戦力値2200億程なのだが『金色』と『青色』の『二色の混合』を使用したときの戦力値は、生前に一度だけ5500億程を記録していた。
生前のエルシスが用いたこの『二色の混合』は、確かに戦力値は凄まじい数値に上昇させることには成功した。
しかし張り子の虎というべきか、この状態を保持したままでは戦闘など出来ない。
オーラを纏っていられる時間は僅か数十秒。更に言えば、このオーラを纏う事だけに集中した場合で数十秒なのである。
――つまりかつての人間の時のエルシスであれば『煌聖の教団』相手にあれだけの戦いは出来なかった。
それを可能とする事が出来たのは、この体の本来の持ち主である『シス』の『魔力』を使ったからに他ならない。
『金色』と『青色』の『二色の混合』のオーラだけでは無く『聖者達の行軍』を同時発動しながら『聖なる滅撃』まで使っていた。
更には一斉に散らばって飛んでいった、数十万の魔族達を同時に縛る『聖動捕縛』や、仕留めた後の『代替身体』へ向かう者達の魂を強制的に排除する『空間除外』。
これだけの広範囲に同時に発動するだけでも、膨大な魔力を必要とするのである。
最初に神聖魔法や神域魔法などを同時に発動している事も含めて挙げればキリがない程である。
――如何にシスが、才に溢れる存在か。
『魔』に魅了されて生涯を『魔』に注ぎ込んできたような存在であるユファが、如何にこのシスに惚れ込み離れようとしないか、窺い知れるというモノだろう。
しかしそんなシスであっても、流石に今はかなりの魔力を消費してしまい、一刻も早く休まなければ命に関わる状態まで来ていたのだった。
「……さて、一度城へ戻ろうか」
誰も居なくなった上空でエルシスがそう言うと『レイズ』城へ戻ろうと背後を振り返った。
しかしその次の瞬間。
隙だらけとなったエルシスに向けて極大魔法が放たれた。
「!」
エルシスは直ぐに自身に向けられた魔法に反応して『次元防壁』を瞬時に使って防ぐ。
そして魔法が放たれた方向へ『魔力感知』を使う。
するとそこには忌々しそうにエルシスを睨みつけるルビリスと、そのルビリスを救った老人『バルド』の両名の姿が見えた。
「何という事をしてくれたのでしょうか? おかげで大事な教団は壊滅ですよ……」
司令官ルビリスは普段通りの口調ではあったが、蟀谷に青筋を立てて歯軋りをしていた。
どうやら総帥である『ミラ』の大事な戦力達を消滅させられた事で、これからの計画に、大きな支障を来すだろうと考えたルビリスは、相当にエルシスに対して腹を立てている様子であった。
「ボクは自分の身を守るために仕方なく戦っただけだよ? そもそも君たちが襲ってきたのが、悪いんじゃないかな」
至極真っ当な言葉をルビリスに告げるエルシスだった。
「仕方ありませんね。ひとまずミラ様が来られる前に、貴方だけは仕留めておかなければ」
そう言うと再び、ルビリスとバルドが『金色のオーラ』を纏い戦闘態勢に入った。
流石に残された魔力ではもう『二色の混合』を使う事はおろか、二体の大魔王上位領域に居る二人の相手すら難しいと考えるエルシスだったが、泣き言を言っていられないとエルシスは、出来るだけシスの大切な生命力を使わないように残された魔力を使いながら、金色のオーラを纏い始める。
――しかし。そこにエルシスにとっては更なる苦難が押し寄せた。
空間に亀裂が入ったかと思えば、膨大な魔力を持つ存在が二つ姿を現したのである。
フルーフと戦った時に消耗した体力が完全に癒えた大魔王『ヌー』と『魔神の力』を手にして万全な状態を誇る『煌聖の教団』の総帥。大賢者『ミラ』であった。
「はは……。全く冗談だと言って欲しいね?」
流石のエルシスも片目を閉じながら、辛そうに溜息を吐く姿を周囲に見せるのだった。
……
……
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