最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第668話 大賢者エルシスVS煌聖の教団
エルシスを勧誘しようと熱心に喋っていたルビリスだったが、全く靡く様子のないエルシスの勧誘を諦めて、当初の予定通りにシスを無力化する事に決めたようだった。
現在シティアスからそう遠くない空の上で『煌聖の教団』の司令官であるルビリスと、最高顧問であるバルド。そして本隊の総隊長であるネイキッドが『煌聖の教団』の全勢力を引き連れてシスを全力で無力化する為に集まっている。
エルシスは自分から動くことなく、空の上で腕を組みながら相手の出方を窺っている。
そして左手をゆっくりと動かして口元に持っていき、神妙な顔を浮かべた。
(金色の体現者は目の前の二人だろうね。後の者達はー……。別にどうでもよさそうだ)
どうやらエルシスはこの数に圧倒される事なく、冷静に障害になりそうなモノだけを勘定に入れているようだった。
大賢者エルシスにとって、大魔王中位領域程度の魔族は障害に思う敵ではない。
神聖魔法の前ではどうにでもなる存在だとエルシスは認識している。
しかし金色の体現者が相手となると『特効』があるといっても油断は出来ない。
それ程までに『金色の体現者』とそうではない者では、実力に開きがあるのである。
金色の体現者とはその大きな戦力値上昇とは別に『特異』と呼ばれる、力を有する者が多いからである。
たとえば大賢者ミラであれば『発動羅列』を読み解く事が出来る。
そして剣士リディアであれば『敵の魔法を斬って消滅』させたりする事を可能とする。
こうしたように、戦力値では相当の差があったとしても『特異』を齎されれば、あっさりと盤上が覆される可能性もあるのである。
その事を当然理解しているエルシスは、油断無くバルドとルビリスの動きを見る。
既にエルシスの周囲に数百近い『スタック』を展開し、あらゆる攻撃に対しての備えは万全状態である。更にその周囲には、魔法で生み出した聖騎士が数百体と控えている。
これだけの聖騎士を常時使役し続けるのは、膨大な魔力を必要とするが、現在のエルシスはシスの身体を媒体にしている為に、魔力を心配する必要性がなかった。
『金色のオーラ』を纏っている状態のシスの魔力は、生前のエルシスの魔力値の比ではない。
かつてのエルシスのおよそ10倍近い魔力値なのである。
(※シスの中に眠る大魔王が目覚めて暴走状態になれば、更に今の状態が、可愛く見える程に魔力値は跳ね上がる)。
剣術や剣道の戦術の一つに『後の先』という所謂カウンターのようなモノがあるが、今のエルシスは、敵が仕掛けてきた事に対して、瞬時に対応出来るだけの余裕がある。
元々『アレルバレル』の世界においても、対多勢は彼の十八番であった。
対多勢の戦いを幾度となく経験し、寿命を全うするまで戦い抜いたエルシスにとって、この状況であっても何も不利を感じていないのである。
静かにそして冷静に、大魔王上位の領域に居るルビリスやバルドの動きを観察し続ける。
そこで今まで沈黙を守っていたルビリスが、遂にその力を示し始めた。
――神聖魔法、『聖なる護守』。
――神聖魔法、『滾る戦の要』。
――神聖魔法、『妖精の施翼』。
一気に三つの『補助魔法』をその場に居る者達全員にかける。
「へえ……?」
エルシスは自身が編み出した魔法を目の前で使われて、少しだけ嬉しそうにする。
「それでは皆さん。いきましょうか」
ルビリスがそう言うと同時、煌聖の教団の大魔王達は一斉にシスを無力化する為に動き出した。
シスに向かって突進して行く者達や、至るところから大魔王達による『魔法』がシスに向けて発動されていく。そしてその一つ一つの魔法が『神域領域』の魔法であった。
「それではこちらも始めようかな……」
シスはゆっくりと組んでいた手を動かして『スタック』させていた魔法を展開する。
――神聖魔法、『聖なる護守』。
――神聖魔法、『滾る戦の要』。
――神聖魔法、『妖精の施翼』。
――神域魔法、『絶対防御』。
――神聖魔法、『聖光耐滅魔』。
――神聖魔法、『聖動捕縛』。
――神聖魔法、『追放』。
――神聖魔法、『聖なる十字架』。
「「なっ!?」」
ルビリスとバルド。そしてネイキッドは直ぐにシスの『聖動捕縛』の領域から抜け出す為にその場から離れたが、八つの魔法を無詠唱で同時に発動させた大賢者『エルシス』に驚愕の視線を送るのだった。
これまでルビリス達の主である大賢者『ミラ』に耳にタコができる程、生前のエルシスの戦闘の所業を聞かされてはいた。
そして先の『アレルバレル』の世界でその片鱗を一度は見ていたが、今回で常識が通じる相手では無いという事実を強制的に理解させられてしまった。
エルシスが同時に使った八つの魔法は全てが『超越魔法』領域を遥かに凌駕する難度『神域領域』『神聖』魔法なのである。
エルシスに向けて放たれた数多くの魔法は、いつの間にか全てが無力化されており、逆に数千という、大魔王中位領域に居る魔族達が同時に、全員の動きを封じ込められたかと思うと、次の瞬間には、ルビリスの補助魔法を全て無力化して見せる。
更にそこで終わらずに確実に魔法によって敵を絶命させたかと思うと、エルシスは空から地に降り立った。
――そしてこれからが始まりなのだと告げるかの如く、一気に攻撃に転じる。
数百を越える白い甲冑や、兜に身を包んだ聖騎士達は、エルシスの姿を隠すようにしながらも生存している者達に襲い掛かっていった。
「こ、これが……! かつて総帥の言っていた最強の人間エルシスですか!」
「こ、こんなフザケタ戦い方があるものですか!?」
「ちぃっ! 近づけぬ……! い、一体何なんじゃこいつは!?」
当初の予定では一気に攻め立てて、シスを無力化する筈だったルビリス達の作戦。
だがしかし、戦闘が始まったと同時に彼らは気づかされた。
――自分達が戦おうとしていた者は、自分達の常識の範疇を遥かに越えた存在だったという事に。
本隊の総隊長ネイキッドは才ある指揮官だったが、この状況下に於いてはどう対処すればいいのか皆目見当がつかない。
自分の裁量で対処出来る術はなく。この場は大人しくさらに上の指揮官の立場にある司令官『ルビリス』に助けを乞うように指示を待つ立場に下った。
そんなルビリスは眉を寄せながら、そして頭の中でシミュレーションを続けながら、司令官としての責任を果たすかの如く指示を出し始める。
「よいですか? 闇雲に動いたところで『エルシス』は止められません。まずは相手の射程から離れなさい! そして、まずは相手の補助を外す事に重きを置きなさい」
「「御意!」」
司令官ルビリスの言葉に闇雲に魔法を乱発していた魔族達は、まずは結託してエルシスの『絶対防御』や、一度だけ確実に敵の攻撃を防ぐことを可能とする『次元防壁』を剥がす事を意識する。
「バルドさん! 貴方の出番ですよ!」
「うむ。既に準備は出来ておる! よいか? タイミングを合わせるのじゃ!」
「ネイキッドさん! バルドさんの攻撃の瞬間に、一斉に行動するように指示を!」
「御意!!」
口早に指示を出す司令官ルビリスに『煌聖の教団』の者達は全幅の信頼を寄せていた。ひとたび戦闘となれば、ネイキッドやリザートとは比較にならない程に『ルビリス』は、指揮官としての本領を発揮するのだった。
……
……
……
現在シティアスからそう遠くない空の上で『煌聖の教団』の司令官であるルビリスと、最高顧問であるバルド。そして本隊の総隊長であるネイキッドが『煌聖の教団』の全勢力を引き連れてシスを全力で無力化する為に集まっている。
エルシスは自分から動くことなく、空の上で腕を組みながら相手の出方を窺っている。
そして左手をゆっくりと動かして口元に持っていき、神妙な顔を浮かべた。
(金色の体現者は目の前の二人だろうね。後の者達はー……。別にどうでもよさそうだ)
どうやらエルシスはこの数に圧倒される事なく、冷静に障害になりそうなモノだけを勘定に入れているようだった。
大賢者エルシスにとって、大魔王中位領域程度の魔族は障害に思う敵ではない。
神聖魔法の前ではどうにでもなる存在だとエルシスは認識している。
しかし金色の体現者が相手となると『特効』があるといっても油断は出来ない。
それ程までに『金色の体現者』とそうではない者では、実力に開きがあるのである。
金色の体現者とはその大きな戦力値上昇とは別に『特異』と呼ばれる、力を有する者が多いからである。
たとえば大賢者ミラであれば『発動羅列』を読み解く事が出来る。
そして剣士リディアであれば『敵の魔法を斬って消滅』させたりする事を可能とする。
こうしたように、戦力値では相当の差があったとしても『特異』を齎されれば、あっさりと盤上が覆される可能性もあるのである。
その事を当然理解しているエルシスは、油断無くバルドとルビリスの動きを見る。
既にエルシスの周囲に数百近い『スタック』を展開し、あらゆる攻撃に対しての備えは万全状態である。更にその周囲には、魔法で生み出した聖騎士が数百体と控えている。
これだけの聖騎士を常時使役し続けるのは、膨大な魔力を必要とするが、現在のエルシスはシスの身体を媒体にしている為に、魔力を心配する必要性がなかった。
『金色のオーラ』を纏っている状態のシスの魔力は、生前のエルシスの魔力値の比ではない。
かつてのエルシスのおよそ10倍近い魔力値なのである。
(※シスの中に眠る大魔王が目覚めて暴走状態になれば、更に今の状態が、可愛く見える程に魔力値は跳ね上がる)。
剣術や剣道の戦術の一つに『後の先』という所謂カウンターのようなモノがあるが、今のエルシスは、敵が仕掛けてきた事に対して、瞬時に対応出来るだけの余裕がある。
元々『アレルバレル』の世界においても、対多勢は彼の十八番であった。
対多勢の戦いを幾度となく経験し、寿命を全うするまで戦い抜いたエルシスにとって、この状況であっても何も不利を感じていないのである。
静かにそして冷静に、大魔王上位の領域に居るルビリスやバルドの動きを観察し続ける。
そこで今まで沈黙を守っていたルビリスが、遂にその力を示し始めた。
――神聖魔法、『聖なる護守』。
――神聖魔法、『滾る戦の要』。
――神聖魔法、『妖精の施翼』。
一気に三つの『補助魔法』をその場に居る者達全員にかける。
「へえ……?」
エルシスは自身が編み出した魔法を目の前で使われて、少しだけ嬉しそうにする。
「それでは皆さん。いきましょうか」
ルビリスがそう言うと同時、煌聖の教団の大魔王達は一斉にシスを無力化する為に動き出した。
シスに向かって突進して行く者達や、至るところから大魔王達による『魔法』がシスに向けて発動されていく。そしてその一つ一つの魔法が『神域領域』の魔法であった。
「それではこちらも始めようかな……」
シスはゆっくりと組んでいた手を動かして『スタック』させていた魔法を展開する。
――神聖魔法、『聖なる護守』。
――神聖魔法、『滾る戦の要』。
――神聖魔法、『妖精の施翼』。
――神域魔法、『絶対防御』。
――神聖魔法、『聖光耐滅魔』。
――神聖魔法、『聖動捕縛』。
――神聖魔法、『追放』。
――神聖魔法、『聖なる十字架』。
「「なっ!?」」
ルビリスとバルド。そしてネイキッドは直ぐにシスの『聖動捕縛』の領域から抜け出す為にその場から離れたが、八つの魔法を無詠唱で同時に発動させた大賢者『エルシス』に驚愕の視線を送るのだった。
これまでルビリス達の主である大賢者『ミラ』に耳にタコができる程、生前のエルシスの戦闘の所業を聞かされてはいた。
そして先の『アレルバレル』の世界でその片鱗を一度は見ていたが、今回で常識が通じる相手では無いという事実を強制的に理解させられてしまった。
エルシスが同時に使った八つの魔法は全てが『超越魔法』領域を遥かに凌駕する難度『神域領域』『神聖』魔法なのである。
エルシスに向けて放たれた数多くの魔法は、いつの間にか全てが無力化されており、逆に数千という、大魔王中位領域に居る魔族達が同時に、全員の動きを封じ込められたかと思うと、次の瞬間には、ルビリスの補助魔法を全て無力化して見せる。
更にそこで終わらずに確実に魔法によって敵を絶命させたかと思うと、エルシスは空から地に降り立った。
――そしてこれからが始まりなのだと告げるかの如く、一気に攻撃に転じる。
数百を越える白い甲冑や、兜に身を包んだ聖騎士達は、エルシスの姿を隠すようにしながらも生存している者達に襲い掛かっていった。
「こ、これが……! かつて総帥の言っていた最強の人間エルシスですか!」
「こ、こんなフザケタ戦い方があるものですか!?」
「ちぃっ! 近づけぬ……! い、一体何なんじゃこいつは!?」
当初の予定では一気に攻め立てて、シスを無力化する筈だったルビリス達の作戦。
だがしかし、戦闘が始まったと同時に彼らは気づかされた。
――自分達が戦おうとしていた者は、自分達の常識の範疇を遥かに越えた存在だったという事に。
本隊の総隊長ネイキッドは才ある指揮官だったが、この状況下に於いてはどう対処すればいいのか皆目見当がつかない。
自分の裁量で対処出来る術はなく。この場は大人しくさらに上の指揮官の立場にある司令官『ルビリス』に助けを乞うように指示を待つ立場に下った。
そんなルビリスは眉を寄せながら、そして頭の中でシミュレーションを続けながら、司令官としての責任を果たすかの如く指示を出し始める。
「よいですか? 闇雲に動いたところで『エルシス』は止められません。まずは相手の射程から離れなさい! そして、まずは相手の補助を外す事に重きを置きなさい」
「「御意!」」
司令官ルビリスの言葉に闇雲に魔法を乱発していた魔族達は、まずは結託してエルシスの『絶対防御』や、一度だけ確実に敵の攻撃を防ぐことを可能とする『次元防壁』を剥がす事を意識する。
「バルドさん! 貴方の出番ですよ!」
「うむ。既に準備は出来ておる! よいか? タイミングを合わせるのじゃ!」
「ネイキッドさん! バルドさんの攻撃の瞬間に、一斉に行動するように指示を!」
「御意!!」
口早に指示を出す司令官ルビリスに『煌聖の教団』の者達は全幅の信頼を寄せていた。ひとたび戦闘となれば、ネイキッドやリザートとは比較にならない程に『ルビリス』は、指揮官としての本領を発揮するのだった。
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