最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第661話 透過
「えっ……! ふ、フルーフ様!?」
レアは突如この場所に現れたフルーフに驚き、涙を流しながら『フルーフ』の姿に釘付けになった。
「誰が娘を泣かせたのだ……」
フルーフはレアに会ったらまず抱きしめてあげたいとずっと考えていた。
そして『レパート』の世界へ連れて帰り、うんと甘えさせてやりたいとまで思っていた。
――しかし、今のフルーフはそんな思いが抜けてしまっていた。
レアの泣き顔を見た事で『親』であるフルーフは、かつてない感情の乱れを自覚する。
そしてレアもまた『親』であるフルーフに言いたい事が山ほどあったが、それよりも先にレアの口から出た言葉は――。
「ふ、フルーフ様ぁ、キーリを助けてぇっ!!」
その言葉を聞いたフルーフは、静かに頷き口を開く。
「もちろんだとも! 我が愛する娘よ。それであの魔族に攻撃されそうになっている龍族がお主の助けたい大事な存在か?」
「そう! キーリは私の大事な『親友』なの!!」
「!」
その言葉を聞いたフルーフは、心の底から嬉しそうな顔を浮かべたかと思うと『金色のオーラ』を纏い始めるのだった。
しかしキーリの前と後ろに『大魔王』領域である魔族が二体。戦闘態勢に入りながら突如現れたフルーフに対して敵意を見せていた。
そしてキーリの後ろ側に居た魔族は、キーリに攻撃をしようと再び『スタック』に魔力を込めた。フルーフの居る場所から、それを防ごうと攻撃をすればキーリごと攻撃をしてしまうだろう。
しかし悠長に魔力枯渇を起こしかけているキーリが逃げるのを待っていては、絶対に間に合わない。組織の大魔王達もそれを理解しているかの如く、キーリを盾にするように前に居た魔族も背後に回った。
これでもう攻撃は出来ないだろうとばかりに、魔族はこちらを見て笑みを浮かべるのだった。
「あ、あんたがレアの親父か? ははは……。何だ、ちゃんと会えたじゃねーか? よかったなレア。これで俺も安心した。レアの親父さんよ、構わないから俺ごと『魔法』をうってくれ」
キーリは金色を纏うフルーフを見て、この自分の周りに居る魔族より強いと認識したキーリは、自分ごとコイツラをやってくれて構わないと『フルーフ』に告げるのだった。
レアがその言葉にまた一歩キーリに近づこうとするが、フルーフがキーリを見ながら左手でレアの頭に手を置いてその足を止めた。
「安心するがよいぞ? お主は娘の親友なのだろう? この大魔王フルーフが、必ずお主を生かせてみせようではないか」
フルーフはそう言いながら『キーリ』を中心に向けて無詠唱で『極大魔法』を放つのだった。
「!?」
――レアは驚きで目を丸くする。
フルーフの放った極大魔法の名は『凶炎』。
その魔法はレアも使う事の出来るが、フルーフが本家本元の敵を消滅させる『絶大な力』を持った黒き炎であった。
そんな魔法をあっさりとキーリに向けて放ったのを見て、レアは父の行動が信じられなかった。
しかし放たれた方のキーリは、これでいいとばかりに薄く笑い。
――そして。
――キーリの周りに居る魔族二体の身体が、黒い炎によって燃やされていく。
「え?」
キーリもレアも何が起きているのか分からずに、フルーフの『凶炎』によって身体を燃やされながら苦しんでいる組織の魔族達を見つめるのだった。
確かに魔族二体の居る場所にキーリは居るのである。
しかし実際にキーリだけに炎は当たらずに、周囲の魔族だけにフルーフの魔法の効果が発揮されているのである。
――『フルーフ』の目が『金色』に輝いている。
「ぐっ……!!」
『凶炎』によって一体の魔族は即座に絶命したが、キーリを攻撃しようとしていた方の魔族にはどうやらまだ息があるようで全身を焼かれて尚、魔法を放とうと手を前に突き出した。
どうやら最後の力を振り絞ってキーリを道ずれにしようと、攻撃を仕掛けようとしているようであった。
――しかしすでに『フルーフ』は、その魔族に対して次の攻撃行動に移っている。
「貴様は万死に値する。たった一度の死で、許されるとは思わぬ事じゃな」
――呪文、『呪影切除』。
何と魔族自身の影から何かが噴出するように現れたかと思うと、その影は魔族自身に攻撃を仕掛ける。魔法を放とうとしていた手から始まり、そして徐々にせり上がっていくように腕を切り刻んでいき、更に影はどんどんと自身の身体を切り刻んでいく。
不可解で見た事もない攻撃を受けた魔族は、キーリに攻撃をするどころではなくなり、痛みと恐怖で半狂乱になりながらその場で取り乱していた。
やがてその影は魔族自身の首まで切断しようと手を振り上げた。
その瞬間にフルーフの目が再び『金色』に変わる。
――呪文、『苦呪追従』。
フルーフの最後の『魔法』が『魔族』自身に罹ったのを確認した後、影はそのまま自分自身の首を一刀両断にした。
首をとばされた魔族の身体から魂が抜け落ち、そのまま『代替身体』へと向かっていった。
しかしキーリを殺そうとしたその『魔族』はもう自由になる事はない。たとえ無事に『代替身体』へと魂を移動させたり、別の身体へと転生したところで、永遠に自らの影に首を切断され続けるだろう。
フルーフの呪いを受けた組織の『大魔王』は未来永劫。首を切断される苦痛を味わい続ける事になる。
そしてその場にはキーリだけが無事に残った。
だが、キーリはそこで意識を失い龍の姿から人型へとなって空から落ちていく。
「キーリ!!」
慌ててレアは一目散にキーリの元へ向かっていく。
「うううっっ……!」
レアはキーリの頬に自分の顔を擦りあて、離す物かと必死に頬ずりをする。
そして両手でぎゅっとキーリの身体を抱きしめるのだった。
その様子を空の上からフルーフは感心するように愛娘を見届けた後、我が子の成長をその目に焼き付けるのだった。
……
……
……
レアは突如この場所に現れたフルーフに驚き、涙を流しながら『フルーフ』の姿に釘付けになった。
「誰が娘を泣かせたのだ……」
フルーフはレアに会ったらまず抱きしめてあげたいとずっと考えていた。
そして『レパート』の世界へ連れて帰り、うんと甘えさせてやりたいとまで思っていた。
――しかし、今のフルーフはそんな思いが抜けてしまっていた。
レアの泣き顔を見た事で『親』であるフルーフは、かつてない感情の乱れを自覚する。
そしてレアもまた『親』であるフルーフに言いたい事が山ほどあったが、それよりも先にレアの口から出た言葉は――。
「ふ、フルーフ様ぁ、キーリを助けてぇっ!!」
その言葉を聞いたフルーフは、静かに頷き口を開く。
「もちろんだとも! 我が愛する娘よ。それであの魔族に攻撃されそうになっている龍族がお主の助けたい大事な存在か?」
「そう! キーリは私の大事な『親友』なの!!」
「!」
その言葉を聞いたフルーフは、心の底から嬉しそうな顔を浮かべたかと思うと『金色のオーラ』を纏い始めるのだった。
しかしキーリの前と後ろに『大魔王』領域である魔族が二体。戦闘態勢に入りながら突如現れたフルーフに対して敵意を見せていた。
そしてキーリの後ろ側に居た魔族は、キーリに攻撃をしようと再び『スタック』に魔力を込めた。フルーフの居る場所から、それを防ごうと攻撃をすればキーリごと攻撃をしてしまうだろう。
しかし悠長に魔力枯渇を起こしかけているキーリが逃げるのを待っていては、絶対に間に合わない。組織の大魔王達もそれを理解しているかの如く、キーリを盾にするように前に居た魔族も背後に回った。
これでもう攻撃は出来ないだろうとばかりに、魔族はこちらを見て笑みを浮かべるのだった。
「あ、あんたがレアの親父か? ははは……。何だ、ちゃんと会えたじゃねーか? よかったなレア。これで俺も安心した。レアの親父さんよ、構わないから俺ごと『魔法』をうってくれ」
キーリは金色を纏うフルーフを見て、この自分の周りに居る魔族より強いと認識したキーリは、自分ごとコイツラをやってくれて構わないと『フルーフ』に告げるのだった。
レアがその言葉にまた一歩キーリに近づこうとするが、フルーフがキーリを見ながら左手でレアの頭に手を置いてその足を止めた。
「安心するがよいぞ? お主は娘の親友なのだろう? この大魔王フルーフが、必ずお主を生かせてみせようではないか」
フルーフはそう言いながら『キーリ』を中心に向けて無詠唱で『極大魔法』を放つのだった。
「!?」
――レアは驚きで目を丸くする。
フルーフの放った極大魔法の名は『凶炎』。
その魔法はレアも使う事の出来るが、フルーフが本家本元の敵を消滅させる『絶大な力』を持った黒き炎であった。
そんな魔法をあっさりとキーリに向けて放ったのを見て、レアは父の行動が信じられなかった。
しかし放たれた方のキーリは、これでいいとばかりに薄く笑い。
――そして。
――キーリの周りに居る魔族二体の身体が、黒い炎によって燃やされていく。
「え?」
キーリもレアも何が起きているのか分からずに、フルーフの『凶炎』によって身体を燃やされながら苦しんでいる組織の魔族達を見つめるのだった。
確かに魔族二体の居る場所にキーリは居るのである。
しかし実際にキーリだけに炎は当たらずに、周囲の魔族だけにフルーフの魔法の効果が発揮されているのである。
――『フルーフ』の目が『金色』に輝いている。
「ぐっ……!!」
『凶炎』によって一体の魔族は即座に絶命したが、キーリを攻撃しようとしていた方の魔族にはどうやらまだ息があるようで全身を焼かれて尚、魔法を放とうと手を前に突き出した。
どうやら最後の力を振り絞ってキーリを道ずれにしようと、攻撃を仕掛けようとしているようであった。
――しかしすでに『フルーフ』は、その魔族に対して次の攻撃行動に移っている。
「貴様は万死に値する。たった一度の死で、許されるとは思わぬ事じゃな」
――呪文、『呪影切除』。
何と魔族自身の影から何かが噴出するように現れたかと思うと、その影は魔族自身に攻撃を仕掛ける。魔法を放とうとしていた手から始まり、そして徐々にせり上がっていくように腕を切り刻んでいき、更に影はどんどんと自身の身体を切り刻んでいく。
不可解で見た事もない攻撃を受けた魔族は、キーリに攻撃をするどころではなくなり、痛みと恐怖で半狂乱になりながらその場で取り乱していた。
やがてその影は魔族自身の首まで切断しようと手を振り上げた。
その瞬間にフルーフの目が再び『金色』に変わる。
――呪文、『苦呪追従』。
フルーフの最後の『魔法』が『魔族』自身に罹ったのを確認した後、影はそのまま自分自身の首を一刀両断にした。
首をとばされた魔族の身体から魂が抜け落ち、そのまま『代替身体』へと向かっていった。
しかしキーリを殺そうとしたその『魔族』はもう自由になる事はない。たとえ無事に『代替身体』へと魂を移動させたり、別の身体へと転生したところで、永遠に自らの影に首を切断され続けるだろう。
フルーフの呪いを受けた組織の『大魔王』は未来永劫。首を切断される苦痛を味わい続ける事になる。
そしてその場にはキーリだけが無事に残った。
だが、キーリはそこで意識を失い龍の姿から人型へとなって空から落ちていく。
「キーリ!!」
慌ててレアは一目散にキーリの元へ向かっていく。
「うううっっ……!」
レアはキーリの頬に自分の顔を擦りあて、離す物かと必死に頬ずりをする。
そして両手でぎゅっとキーリの身体を抱きしめるのだった。
その様子を空の上からフルーフは感心するように愛娘を見届けた後、我が子の成長をその目に焼き付けるのだった。
……
……
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