最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第657話 大きな龍と女王の悲鳴
レアはキーリと連絡がついた事でこの場を乗り切ろうする活力を貰った。言葉の強さとはこんなにも、力があるのかとレアは考えるのだった。
しかしずっと同じ岩陰に身を隠していたレアだったが、上空からレアの姿を炙り出そうと比較的弱い魔法を撃ち続けていた大魔王が少し『スタック』を開始し始めたのを見た。どうやら上に居る魔族は痺れを切らしたのだろう。
これまでまでとは違う規模の『魔力』を感知したレアは、何か防衛策を取らなければと反応するが、敵の用意している魔法を防げるであろう魔法『次元防壁』は『概念跳躍』と同じように大規模の魔法である為、使ってしまえば直ぐにもう一体の洞窟付近に居る大魔王に『魔力』を探知されてしまうだろう。
そうなってしまえば上空の奴の攻撃を一度だけは耐えられるかもしれないが、その後は蜂の巣にされてしまい、結局レアはやられてしまうだろう。
先程のようにどこかへ魔法を放って相手の意識を逸らさせて、この場から離れるという賭けに再び出る方がいいかもしれない。この場に残ろうが意識を逸らそうが、魔法を防ぐ為に『次元防壁』を使おうが、どちらにしてもレアが自力で生き残る確率は低い。
『アレルバレル』の世界の大魔王達の平均的な戦力値は『500億』を優に越える。
レアがいくら金色を纏い『戦力値コントロール』で全力を出したとしても『50億』に満たない。
同じ大魔王領域ではあるが、レアを殺そうと企む三体の魔族達の凡そ10分の1程の『戦力値』しかないのである。分が悪い賭けに出なければ、そもそも逃げる事すら難しいのだった。
――しかしそれでも先程までの自信が欠乏しているレアではなかった。
今は大事な親友のおかげで希望を抱いているレアは、勇気という感情に満ち溢れている。生き残る為ならば何でもやってやるぞという気概と決意を持っているのであった。
……
……
……
その頃『キーリ』の側近であり、古参の守護龍『ディラルク』は主であるキーリの命令に従って、一緒に主とレアを助けに行きたい気持ちを抑えながら、シス女王の居るレイズ城の最上階に空から向かっていた。
そしてシス女王の居る部屋の窓まで辿り着いたディラルクは、窓から中を見るのだった。
…………
ここ『レイズ』魔国がまもなく襲撃を仕掛けようとされている事など露知らず、またレアが危険な状態にある事など考えても居ないシスは、いつ『アレルバレル』に戻った方がいいだろうかと悠長に考えていた。
「ヴェル……。大丈夫かしら? ソフィさん達が居るから無事だとは思うのだけど」
本来は直ぐに『アレルバレル』の世界へと向かいたいところだが、ソフィにリーネ達を頼むと任された以上は勝手な真似は出来ない。向こうの世界からの指示を待ってヴェルなりレア辺りの『世界間転移』が出来る者が送られてくるのを待つしかないだろう。
シスはヤキモキしながら自室をウロウロしていたが、ふと何か視線のようなものを感じて、窓の方を何気なく振り返った。
すると何とそこには『巨大な龍』が窓に張り付き、ジッと外から大きな目で『シス』の事をを見つめているではないか。
シスはその龍の目を見て数秒程に渡って身体を硬直させていたが――。
「き、きゃああああっ!!」
予想だにしない出来事にシスは、城中に響き渡る程の大きな悲鳴をあげるのだった。
「な、何事ですか! シス様!」
同じ階にある会議室に居たリーゼが、ドタドタと忙しない音を立てながらシスの部屋へと入り込んできた。そしてベッドの上で腰が抜けた状態のシスに何があったのかと心配して近づいたところ、同じように窓の外からギョロリと動いた『ディラルク』の『龍化』状態の大きな目を見た『リーゼ』は、心底驚かされて心臓に手を置いたまま、泡を吹いてその場で意識を失うのだった。
「ちょ、ちょっと……っ! り、リーゼ!?」
慌てて入ってきてそのまま意識を失ったリーゼに、シスは必死に介抱を始めるのだった。
そして『レイズ』城の外から中を窓越しに覗き込んでいた『ディラルク』は、早く主の元へ向かいたいと思っているところを驚かれた挙句にそのまま放置されてしまい、窓を破壊して中に入りたい衝動を何とか抑えながら外から仕方なく声を掛ける。
「ちょっとシス女王様! 遊んでないで、私の話を聞いて下さい!!」
……
……
……
しかしずっと同じ岩陰に身を隠していたレアだったが、上空からレアの姿を炙り出そうと比較的弱い魔法を撃ち続けていた大魔王が少し『スタック』を開始し始めたのを見た。どうやら上に居る魔族は痺れを切らしたのだろう。
これまでまでとは違う規模の『魔力』を感知したレアは、何か防衛策を取らなければと反応するが、敵の用意している魔法を防げるであろう魔法『次元防壁』は『概念跳躍』と同じように大規模の魔法である為、使ってしまえば直ぐにもう一体の洞窟付近に居る大魔王に『魔力』を探知されてしまうだろう。
そうなってしまえば上空の奴の攻撃を一度だけは耐えられるかもしれないが、その後は蜂の巣にされてしまい、結局レアはやられてしまうだろう。
先程のようにどこかへ魔法を放って相手の意識を逸らさせて、この場から離れるという賭けに再び出る方がいいかもしれない。この場に残ろうが意識を逸らそうが、魔法を防ぐ為に『次元防壁』を使おうが、どちらにしてもレアが自力で生き残る確率は低い。
『アレルバレル』の世界の大魔王達の平均的な戦力値は『500億』を優に越える。
レアがいくら金色を纏い『戦力値コントロール』で全力を出したとしても『50億』に満たない。
同じ大魔王領域ではあるが、レアを殺そうと企む三体の魔族達の凡そ10分の1程の『戦力値』しかないのである。分が悪い賭けに出なければ、そもそも逃げる事すら難しいのだった。
――しかしそれでも先程までの自信が欠乏しているレアではなかった。
今は大事な親友のおかげで希望を抱いているレアは、勇気という感情に満ち溢れている。生き残る為ならば何でもやってやるぞという気概と決意を持っているのであった。
……
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その頃『キーリ』の側近であり、古参の守護龍『ディラルク』は主であるキーリの命令に従って、一緒に主とレアを助けに行きたい気持ちを抑えながら、シス女王の居るレイズ城の最上階に空から向かっていた。
そしてシス女王の居る部屋の窓まで辿り着いたディラルクは、窓から中を見るのだった。
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ここ『レイズ』魔国がまもなく襲撃を仕掛けようとされている事など露知らず、またレアが危険な状態にある事など考えても居ないシスは、いつ『アレルバレル』に戻った方がいいだろうかと悠長に考えていた。
「ヴェル……。大丈夫かしら? ソフィさん達が居るから無事だとは思うのだけど」
本来は直ぐに『アレルバレル』の世界へと向かいたいところだが、ソフィにリーネ達を頼むと任された以上は勝手な真似は出来ない。向こうの世界からの指示を待ってヴェルなりレア辺りの『世界間転移』が出来る者が送られてくるのを待つしかないだろう。
シスはヤキモキしながら自室をウロウロしていたが、ふと何か視線のようなものを感じて、窓の方を何気なく振り返った。
すると何とそこには『巨大な龍』が窓に張り付き、ジッと外から大きな目で『シス』の事をを見つめているではないか。
シスはその龍の目を見て数秒程に渡って身体を硬直させていたが――。
「き、きゃああああっ!!」
予想だにしない出来事にシスは、城中に響き渡る程の大きな悲鳴をあげるのだった。
「な、何事ですか! シス様!」
同じ階にある会議室に居たリーゼが、ドタドタと忙しない音を立てながらシスの部屋へと入り込んできた。そしてベッドの上で腰が抜けた状態のシスに何があったのかと心配して近づいたところ、同じように窓の外からギョロリと動いた『ディラルク』の『龍化』状態の大きな目を見た『リーゼ』は、心底驚かされて心臓に手を置いたまま、泡を吹いてその場で意識を失うのだった。
「ちょ、ちょっと……っ! り、リーゼ!?」
慌てて入ってきてそのまま意識を失ったリーゼに、シスは必死に介抱を始めるのだった。
そして『レイズ』城の外から中を窓越しに覗き込んでいた『ディラルク』は、早く主の元へ向かいたいと思っているところを驚かれた挙句にそのまま放置されてしまい、窓を破壊して中に入りたい衝動を何とか抑えながら外から仕方なく声を掛ける。
「ちょっとシス女王様! 遊んでないで、私の話を聞いて下さい!!」
……
……
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