最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第644話 初めて抱く矜持と自尊心
魔人達の大陸では、エイネの『金色の目』によって一つの命令を受けた後、魔人軍の最高司令官『トマス・ハーベル』が、カストロL・K基地で暴れまわっていた魔族達を捕縛した。
エイネが去った後に、遅れて作戦に参加した魔人達が、暴れた魔族達を殺そうとトマスに進言する。今までであれば魔人族の軍に所属している魔族達が、このような反逆行為を行えば直ぐに処罰を行うことが通例であった。
しかし軍の最高司令官である『トマス・ハーベル』は、指摘する魔人達の言葉を一蹴してその場で縛るに留まるのだった。
「トマス司令。魔族達の捕縛は完了しました」
「うむ、ひとまずカストロ基地の中……は、もう何もないか」
カストロ基地の中に連れていけと命令しようとするトマスだったが、すでにカストロ基地はイルベキア軍の龍族達によって全焼させられていた為、どうするかと考え始めるのだった。
「そうだな……。本国から迎えを連れてこさせる。それまでここで見張っておけ」
トマスの命令を受けた魔人は直ぐに返事をせずに『トマス』の顔を見続けている。
「どうしたんだ?」
「お言葉ですが……。現在我々は龍族達と冷戦では無く、全面戦争へと突入しました。反逆行為を行った魔族達に手を焼かされるくらいならば、この場で処刑するべきかと愚考します」
トマス最高司令官にそう進言するのは『レドラー・クラシス』副司令官であった。
レドラーはバルザーのようないち地域の指揮官では無く、軍の上層部である副司令官である。
彼もまたエイネが居なくなった後に、トマスの補助をするべく『エアル』王に命令されてこの場に姿を見せた。
この場に来たレドラーは、作戦を追っていく最中に気付いたことがある。
それは今のトマスは普段の冷静な行動をとるトマスとは思えず、しっかりとした指揮を執る事の出来る状態ではないのではと考えていた。
「いや、それには及ばんだろう。今後彼らは私たちに必要な力となるだろう」
「そうですか……」
「私は『念話』で本国から遣いを送らせる。その間の現場の指揮は、君に任せるぞ?」
「はい、分かりました」
去っていくトマス司令官の後ろ姿を『レドラー』は、疑念を抱くような視線で送るのだった。
結局このカストロL・K地域で暴れた魔族達数百体は、魔人達に取り押さえられて制圧された後に魔人達の本国へと送られる事となった。そして魔族達の反乱のきっかけとなった『金色のオーラ』を体現させた魔族は、その初めて手にした『力』に振り回された挙句、魔力を枯渇してしまい意識を失っていた。
アサの世界での歴史上、初めて『金色』を体現した魔族の名は『ミデェール・ホルキンス』。
彼は生まれながらにして『先天性の贈り物』というべき『金色』を体現していたが、これまではその『力』に目覚める事はなかった。
そもそもこの世界の魔族達は、自分達の親の代から、魔人達にいいように使われてきていた。
生まれた時から魔人族に逆らうという事に、疑問は抱かなかったくらいなのである。そんな彼らは自分達は魔人達には敵う訳がないと、自分自身で発起するという行為に蓋をして、言われるが儘。されるが儘でこれまでを過ごしてきた。
――つまり明確な戦をする場はなかったのである。
しかしそれがエイネがきっかけで、戦うという意思を初めて教授された。
魔族という種族は、とても優れているのだと思い知らされた。
エイネという魔族が彼ら魔人に対して言い放った言葉は、ミデェールには意識改革を行われる程のとても強烈な言葉だった。
今まで自分が魔族だという事に『劣等感』を抱いていたミデェールは、エイネと自分が同じ魔族なのだと理解した時、体中の血が逆流したのかと思う程の興奮と『誇らしさ』を抱かせてくれた。
彼が次に目覚めた時。もう魔族である事を後悔するような、そんな気持ちを抱く事はないだろう。
エイネは知らず知らずの内に『アサ』の魔族に、伝えたかった気持ちを正確に伝えられていたのであった。
エイネが去った後に、遅れて作戦に参加した魔人達が、暴れた魔族達を殺そうとトマスに進言する。今までであれば魔人族の軍に所属している魔族達が、このような反逆行為を行えば直ぐに処罰を行うことが通例であった。
しかし軍の最高司令官である『トマス・ハーベル』は、指摘する魔人達の言葉を一蹴してその場で縛るに留まるのだった。
「トマス司令。魔族達の捕縛は完了しました」
「うむ、ひとまずカストロ基地の中……は、もう何もないか」
カストロ基地の中に連れていけと命令しようとするトマスだったが、すでにカストロ基地はイルベキア軍の龍族達によって全焼させられていた為、どうするかと考え始めるのだった。
「そうだな……。本国から迎えを連れてこさせる。それまでここで見張っておけ」
トマスの命令を受けた魔人は直ぐに返事をせずに『トマス』の顔を見続けている。
「どうしたんだ?」
「お言葉ですが……。現在我々は龍族達と冷戦では無く、全面戦争へと突入しました。反逆行為を行った魔族達に手を焼かされるくらいならば、この場で処刑するべきかと愚考します」
トマス最高司令官にそう進言するのは『レドラー・クラシス』副司令官であった。
レドラーはバルザーのようないち地域の指揮官では無く、軍の上層部である副司令官である。
彼もまたエイネが居なくなった後に、トマスの補助をするべく『エアル』王に命令されてこの場に姿を見せた。
この場に来たレドラーは、作戦を追っていく最中に気付いたことがある。
それは今のトマスは普段の冷静な行動をとるトマスとは思えず、しっかりとした指揮を執る事の出来る状態ではないのではと考えていた。
「いや、それには及ばんだろう。今後彼らは私たちに必要な力となるだろう」
「そうですか……」
「私は『念話』で本国から遣いを送らせる。その間の現場の指揮は、君に任せるぞ?」
「はい、分かりました」
去っていくトマス司令官の後ろ姿を『レドラー』は、疑念を抱くような視線で送るのだった。
結局このカストロL・K地域で暴れた魔族達数百体は、魔人達に取り押さえられて制圧された後に魔人達の本国へと送られる事となった。そして魔族達の反乱のきっかけとなった『金色のオーラ』を体現させた魔族は、その初めて手にした『力』に振り回された挙句、魔力を枯渇してしまい意識を失っていた。
アサの世界での歴史上、初めて『金色』を体現した魔族の名は『ミデェール・ホルキンス』。
彼は生まれながらにして『先天性の贈り物』というべき『金色』を体現していたが、これまではその『力』に目覚める事はなかった。
そもそもこの世界の魔族達は、自分達の親の代から、魔人達にいいように使われてきていた。
生まれた時から魔人族に逆らうという事に、疑問は抱かなかったくらいなのである。そんな彼らは自分達は魔人達には敵う訳がないと、自分自身で発起するという行為に蓋をして、言われるが儘。されるが儘でこれまでを過ごしてきた。
――つまり明確な戦をする場はなかったのである。
しかしそれがエイネがきっかけで、戦うという意思を初めて教授された。
魔族という種族は、とても優れているのだと思い知らされた。
エイネという魔族が彼ら魔人に対して言い放った言葉は、ミデェールには意識改革を行われる程のとても強烈な言葉だった。
今まで自分が魔族だという事に『劣等感』を抱いていたミデェールは、エイネと自分が同じ魔族なのだと理解した時、体中の血が逆流したのかと思う程の興奮と『誇らしさ』を抱かせてくれた。
彼が次に目覚めた時。もう魔族である事を後悔するような、そんな気持ちを抱く事はないだろう。
エイネは知らず知らずの内に『アサ』の魔族に、伝えたかった気持ちを正確に伝えられていたのであった。
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