最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第626話 焦る気持ち
――そして話は少しだけ遡る。
カストロL・K基地の指揮をとらせていた『バルザー・レドニック』が、軍本部に緊急信号の連絡を送ってきたのである。
話を聞けばカストロL・K基地で、龍族が襲撃に来たというのである。
そして信じられない事にその数は凡そ百体――。
カストロL・K基地に居る軍の兵士の多くは魔族である。
ここから東にある龍族からの襲撃に備えて、基地に隷属化した魔族を集めて盾となる役割を担わせてた。もちろん全員魔族であれば、盾どころか何の役にも立たない為に『スクアード』を使える『一流の戦士』を三体程派遣させていた。
そしてその指揮をとらせていた一流戦士『バルザー』からの連絡によると、攻めてきた龍族達は、魔族と結託してなんとか追い返しはしたモノの二人の一流戦士が負傷し、魔族達は全滅したのだという。奴らはまたすぐに仲間を引き連れてここに向かってくるかもしれない為、魔人軍からも応援を寄こしてほしいという連絡であった。
龍族とは冷戦状態ではあったが、まさか何の通達も無なに武力に訴えかけてくるとは思わなかった。これは龍族からの『全面戦争行為』と受け取っていいだろう。
連絡を受けた軍の最高司令官『トマス・ハーベル』は、直ぐに魔人の王『エアル・ドライグル』に事情の報告を行った。
『エアル』王は野心家だったが、龍族と争えば不利だという事を知っていた為、これまで冷戦状態ではあったが『スベイキア』や『イルベキア』といった龍族の国がある大陸には、表立っては手を出してはいなかった。
しかしトマスからの連絡を受けた事で状況は一変した。
既にこちらに攻撃を仕掛けてきた龍族に対し、真っ向からぶつかる意思を固めたのであった。
直ぐに軍司令『トマス』に『一流戦士』を含めた兵士を海岸に面した前線基地に送るように、指示を出すのだった。
『スクアード』搭載一流戦士。凡そ一万兵数。
『スクアード』非搭載二流戦士。凡そ七万兵数。
混合斥候部隊。凡そ十万兵数(魔人軍に居る多種族混合チーム)。
兵站部隊。凡そ五万兵数。
魔族達が使っていたカストロL・K基地に、総兵二十万を越える兵隊が送られるのだった。
現在『スベイキア』『イルベキア』『ハイウルキア』からも龍族達が向かってきており、エイネの居る場所は戦争の中心地になろうとしていた。
そしてその渦中にいるエイネは膨大な数の者達が、戦争をする為にここに向かってくる事を察しており、エイネも準備を整えていた。
「フルーフ様。やはりもうすぐここは戦場になります『アレルバレル』の世界へと向かう準備は、どうなっていますか?」
コテージの中で『概念跳躍』を使うための『スタック』を始めてかなりの時間が経っている。そろそろ『世界間転移』の準備は整っているだろうと判断したエイネは、フルーフに声を掛けるのだった。
「すまぬ。まだなのだ」
しかしフルーフから返ってきた言葉は、エイネと思っていた言葉と違った。
「やはりまだ『魔力』が戻らない事が原因で?」
「いやワシとお主の二人だけでの『転移』であれば問題はないのだが。問題はそこではないのだ」
「それはどういう事でしょうか?」
「それがな。この世界に来る前に感知した筈のレアの魔力が『アレルバレル』の世界から今は感じられぬのだ……」
フルーフは今までに見せた事のない程の焦りを、エイネに見せながらそう言った。
「ま、まさか、それはつまり……」
『魔力枯渇』を起こしていたとしても微弱な『魔力』くらいは感じられる筈なのである。つまり魔力を感じられなくなったという事は、その魔力の主が死亡してしまったか『代替身体』へと魂を移動させられたかである。考えたくない理由が頭を過り、エイネはフルーフを心配そうに見つめる。
「いや、もちろんお主が考えている事が、一番可能性としては高いじゃろうが、そうではない可能性も残ってはいるのだ」
否定するようにフルーフは、額に汗を浮かべながら懸命にレアの魔力を探し続けている。
「?」
エイネは直ぐに聞き返したりせずに、フルーフからの言葉を待ち続ける。
そしてやがて『フルーフ』は口を開いた。
「それはレアが『アレルバレル』の世界から移動した可能性だ」
「あ……! 成程! 確かにその可能性はあります」
『アレルバレル』の世界から『転移』したのであれば、その世界でレアの魔力が感じられなくなったのも理解出来る。
だがその場合は再び数多ある世界の中からたった一人の魔族の魔力を探知しなければならず、それは絶望的に近いとエイネは考えるのだった。今の残り少ないフルーフの魔力で『概念跳躍』は何度も使うことは出来ないし、直ぐに『アレルバレル』の世界へ向かったとしても、そこは『煌聖の教団』の者達がうようよと居る事だろう。
まだレアが居ると分かっているならば、直ぐに保護して身を隠す事も出来るだろうが、大魔王ソフィが『アレルバレル』の世界から姿を消して、魔王軍も今や散り散りの状態の中で『大賢者ミラ』や、組織と同盟を結んでいる『大魔王』達を相手に、魔力の少ないフルーフを守りながらレアを探すのは、エイネといえども不可能に近い。
「悪いのじゃがお主がこの世界でやる事に手を貸せそうにはない。ワシはお主を必ず『概念跳躍』でこの世界から『転移』をさせてやると約束はするが、今はレアの捜索を第一優先にさせてもらうぞ?」
それは当初の予定通りであり、エイネは今から行おうとしている事に、フルーフを巻き込むつもりはなかった。
「はい。それは大丈夫ですよ、フルーフ様。こちらの事はこの私にお任せ下さい」
「すまぬな。そうさせてもらうぞ」
謝罪をしながらもフルーフは今も必死に『レア』の『魔力』を追い続けるのだった。
……
……
……
カストロL・K基地の指揮をとらせていた『バルザー・レドニック』が、軍本部に緊急信号の連絡を送ってきたのである。
話を聞けばカストロL・K基地で、龍族が襲撃に来たというのである。
そして信じられない事にその数は凡そ百体――。
カストロL・K基地に居る軍の兵士の多くは魔族である。
ここから東にある龍族からの襲撃に備えて、基地に隷属化した魔族を集めて盾となる役割を担わせてた。もちろん全員魔族であれば、盾どころか何の役にも立たない為に『スクアード』を使える『一流の戦士』を三体程派遣させていた。
そしてその指揮をとらせていた一流戦士『バルザー』からの連絡によると、攻めてきた龍族達は、魔族と結託してなんとか追い返しはしたモノの二人の一流戦士が負傷し、魔族達は全滅したのだという。奴らはまたすぐに仲間を引き連れてここに向かってくるかもしれない為、魔人軍からも応援を寄こしてほしいという連絡であった。
龍族とは冷戦状態ではあったが、まさか何の通達も無なに武力に訴えかけてくるとは思わなかった。これは龍族からの『全面戦争行為』と受け取っていいだろう。
連絡を受けた軍の最高司令官『トマス・ハーベル』は、直ぐに魔人の王『エアル・ドライグル』に事情の報告を行った。
『エアル』王は野心家だったが、龍族と争えば不利だという事を知っていた為、これまで冷戦状態ではあったが『スベイキア』や『イルベキア』といった龍族の国がある大陸には、表立っては手を出してはいなかった。
しかしトマスからの連絡を受けた事で状況は一変した。
既にこちらに攻撃を仕掛けてきた龍族に対し、真っ向からぶつかる意思を固めたのであった。
直ぐに軍司令『トマス』に『一流戦士』を含めた兵士を海岸に面した前線基地に送るように、指示を出すのだった。
『スクアード』搭載一流戦士。凡そ一万兵数。
『スクアード』非搭載二流戦士。凡そ七万兵数。
混合斥候部隊。凡そ十万兵数(魔人軍に居る多種族混合チーム)。
兵站部隊。凡そ五万兵数。
魔族達が使っていたカストロL・K基地に、総兵二十万を越える兵隊が送られるのだった。
現在『スベイキア』『イルベキア』『ハイウルキア』からも龍族達が向かってきており、エイネの居る場所は戦争の中心地になろうとしていた。
そしてその渦中にいるエイネは膨大な数の者達が、戦争をする為にここに向かってくる事を察しており、エイネも準備を整えていた。
「フルーフ様。やはりもうすぐここは戦場になります『アレルバレル』の世界へと向かう準備は、どうなっていますか?」
コテージの中で『概念跳躍』を使うための『スタック』を始めてかなりの時間が経っている。そろそろ『世界間転移』の準備は整っているだろうと判断したエイネは、フルーフに声を掛けるのだった。
「すまぬ。まだなのだ」
しかしフルーフから返ってきた言葉は、エイネと思っていた言葉と違った。
「やはりまだ『魔力』が戻らない事が原因で?」
「いやワシとお主の二人だけでの『転移』であれば問題はないのだが。問題はそこではないのだ」
「それはどういう事でしょうか?」
「それがな。この世界に来る前に感知した筈のレアの魔力が『アレルバレル』の世界から今は感じられぬのだ……」
フルーフは今までに見せた事のない程の焦りを、エイネに見せながらそう言った。
「ま、まさか、それはつまり……」
『魔力枯渇』を起こしていたとしても微弱な『魔力』くらいは感じられる筈なのである。つまり魔力を感じられなくなったという事は、その魔力の主が死亡してしまったか『代替身体』へと魂を移動させられたかである。考えたくない理由が頭を過り、エイネはフルーフを心配そうに見つめる。
「いや、もちろんお主が考えている事が、一番可能性としては高いじゃろうが、そうではない可能性も残ってはいるのだ」
否定するようにフルーフは、額に汗を浮かべながら懸命にレアの魔力を探し続けている。
「?」
エイネは直ぐに聞き返したりせずに、フルーフからの言葉を待ち続ける。
そしてやがて『フルーフ』は口を開いた。
「それはレアが『アレルバレル』の世界から移動した可能性だ」
「あ……! 成程! 確かにその可能性はあります」
『アレルバレル』の世界から『転移』したのであれば、その世界でレアの魔力が感じられなくなったのも理解出来る。
だがその場合は再び数多ある世界の中からたった一人の魔族の魔力を探知しなければならず、それは絶望的に近いとエイネは考えるのだった。今の残り少ないフルーフの魔力で『概念跳躍』は何度も使うことは出来ないし、直ぐに『アレルバレル』の世界へ向かったとしても、そこは『煌聖の教団』の者達がうようよと居る事だろう。
まだレアが居ると分かっているならば、直ぐに保護して身を隠す事も出来るだろうが、大魔王ソフィが『アレルバレル』の世界から姿を消して、魔王軍も今や散り散りの状態の中で『大賢者ミラ』や、組織と同盟を結んでいる『大魔王』達を相手に、魔力の少ないフルーフを守りながらレアを探すのは、エイネといえども不可能に近い。
「悪いのじゃがお主がこの世界でやる事に手を貸せそうにはない。ワシはお主を必ず『概念跳躍』でこの世界から『転移』をさせてやると約束はするが、今はレアの捜索を第一優先にさせてもらうぞ?」
それは当初の予定通りであり、エイネは今から行おうとしている事に、フルーフを巻き込むつもりはなかった。
「はい。それは大丈夫ですよ、フルーフ様。こちらの事はこの私にお任せ下さい」
「すまぬな。そうさせてもらうぞ」
謝罪をしながらもフルーフは今も必死に『レア』の『魔力』を追い続けるのだった。
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