最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第622話 語るに落ちる
エイネのコテージのドアを叩くノック音が聞こえてくる。
それを聴いた彼女は煩わしそうな表情をしながら『漏出』を使い、外に居る存在の魔力を感知する。どうやら魔力の信号的に魔族ではなく『魔人』のようであった。
今頃連絡を受けていた魔人達が、この場所がどうなったかの確認をしに来たところ、近くの魔族達の駐屯地で魔族が全滅している上に、襲撃してきたであろう龍族が全員やられているのを見た事で騒然となり、このコテージで生活をしているエイネに聞きに来たのだろう。
エイネは既に魔人達の深層意識を上手く『金色の目』でコントロールしてあり、エイネの事は他の魔族より少しだけ戦力が上の『最上位魔族の最上位』領域という意識を植え付けてある。
この世界の魔族で『最上位魔族最上位』領域といえば、魔族では王と呼べる程の力量なので、魔人達はエイネが近くの魔族達に何かを指示し上手く策を弄して、龍族達を罠にかけて倒したのだと判断したのだろう。
「魔族、エイネ! ここを開けて何があったか事情を詳しく話せ!」
ノックする音が激しくなったかと思うと、外に居る魔人達からそんな声が聞こえてくる。
一応はこの世界の魔人族側の軍に所属しているエイネである。無視するワケにもいかず、エイネは溜息を吐いて、ベッドで休むフルーフを一瞥する。
寝ていたフルーフも片目を開けながら、エイネに視線を返して軽く頷く。
エイネは毛糸のカーディガンを羽織りながらゆっくりとノック音の響くドアに近づいていく。そしてゆっくりと扉を開けて、エイネは笑顔で魔人族達に挨拶をする。
「出るのが遅れて申し訳ありません。寝ていたものでしてね。それで一体何事でしょうか?」
エイネは一番前に居た大柄の魔人にそう声を掛けながら、目線はその魔人の背後や周囲に這わせる。
武器を構えているか『スクアード』を纏っていないか『スタック』をしていないか。
『エイネ』程の大魔王であれば、視線一つで目の前に居る魔人族達程度であれば、何をしようとしているかの情報はある程度手に入れる事が出来る。
一瞥しただけで魔人達がエイネを攻撃しようとしにきたワケではないという事を理解したエイネは、目の前の魔人の目に焦点を合わせる。
「寝ていた? まさか、龍族達が襲撃を行っていたというのに、駐屯地に居る者達より強いお前が、気付かずに呑気に寝ていたというのか?」
「ええ、そのようですね。少し前に怪我をした同胞を拾ったものでして、その看病をしている内に、恥ずかしながら寝てしまっていたようで」
エイネが続きを言う前に、魔人は怒気を孕ませながら怒鳴りつける。
「馬鹿な事を云うんじゃない! あれほどの襲撃があったのに気付かない筈がないだろう! 遠くに居る我々にさえ魔族達から助けて欲しいと『念話』が送られてきたのだ! 近くに居るお前に、魔族の同胞が伝えない訳がないだろう!」
言ってからハッとした顔を浮かべる魔人は手で口をおさえる。
「……」
エイネの目が細められた。その目は咎めるような視線である。
「な、何だその目は! とにかくお前が魔族共に何かを指示した事は分かっている! そうでもしなければ『魔族如きの雑魚』が龍族を倒せる筈がない!」
次の瞬間、エイネの顔から取り繕う色が消え無表情になったかと思うと、目の前の魔人の首を右手で鷲掴みにした。
「言葉に気をつけなさい。我々魔族はとても優れた種族である」
エイネの手を離そうと首を絞められた魔人は、必死に両手でエイネの手を引き剥がそうとするが外れない。慌てて周りに居た魔人族二人が『スクアード』の証明である『紅いオーラ』を纏い、先頭に立つ魔人の首からエイネの手を剥がそうと近づいてくる。
「『スクアード』を纏ったわね? 私に力を向ければ容赦はしないわ」
キィイインという音と共にエイネの目が、金色に光ったかと思うと『スクアード』を纏った魔人二人の身体が膨れ上がり、そしてその膨張した腹部が破裂する。
「かは……っ!」
魔人二人は苦しむ表情を見せながら破裂した腹部を押さえ始める。エイネは先頭に居る魔人の首から手を離すと、分からせるように声を出した。
「今ならまだそいつらが助かる見込みはある。すぐに軍の医療班に見せなさい。でも心して聞きなさい? 次に私の前にお前達が顔を見せるなら、その時は全員の命を絶つわよ!」
魔人は大量の脂汗を流しながらエイネの言葉に何度頷くと、仲間の魔人達に『念話』で医療班を連れてくるように告げた後に、その場で尻餅をついて下からエイネの見下ろす眼光に震え上がらせた。
「ひっ……、ひぃっ……!!』
エイネは情けない声を出す魔人族から目を離すと、コテージの扉を閉めるのだった。
……
……
……
それを聴いた彼女は煩わしそうな表情をしながら『漏出』を使い、外に居る存在の魔力を感知する。どうやら魔力の信号的に魔族ではなく『魔人』のようであった。
今頃連絡を受けていた魔人達が、この場所がどうなったかの確認をしに来たところ、近くの魔族達の駐屯地で魔族が全滅している上に、襲撃してきたであろう龍族が全員やられているのを見た事で騒然となり、このコテージで生活をしているエイネに聞きに来たのだろう。
エイネは既に魔人達の深層意識を上手く『金色の目』でコントロールしてあり、エイネの事は他の魔族より少しだけ戦力が上の『最上位魔族の最上位』領域という意識を植え付けてある。
この世界の魔族で『最上位魔族最上位』領域といえば、魔族では王と呼べる程の力量なので、魔人達はエイネが近くの魔族達に何かを指示し上手く策を弄して、龍族達を罠にかけて倒したのだと判断したのだろう。
「魔族、エイネ! ここを開けて何があったか事情を詳しく話せ!」
ノックする音が激しくなったかと思うと、外に居る魔人達からそんな声が聞こえてくる。
一応はこの世界の魔人族側の軍に所属しているエイネである。無視するワケにもいかず、エイネは溜息を吐いて、ベッドで休むフルーフを一瞥する。
寝ていたフルーフも片目を開けながら、エイネに視線を返して軽く頷く。
エイネは毛糸のカーディガンを羽織りながらゆっくりとノック音の響くドアに近づいていく。そしてゆっくりと扉を開けて、エイネは笑顔で魔人族達に挨拶をする。
「出るのが遅れて申し訳ありません。寝ていたものでしてね。それで一体何事でしょうか?」
エイネは一番前に居た大柄の魔人にそう声を掛けながら、目線はその魔人の背後や周囲に這わせる。
武器を構えているか『スクアード』を纏っていないか『スタック』をしていないか。
『エイネ』程の大魔王であれば、視線一つで目の前に居る魔人族達程度であれば、何をしようとしているかの情報はある程度手に入れる事が出来る。
一瞥しただけで魔人達がエイネを攻撃しようとしにきたワケではないという事を理解したエイネは、目の前の魔人の目に焦点を合わせる。
「寝ていた? まさか、龍族達が襲撃を行っていたというのに、駐屯地に居る者達より強いお前が、気付かずに呑気に寝ていたというのか?」
「ええ、そのようですね。少し前に怪我をした同胞を拾ったものでして、その看病をしている内に、恥ずかしながら寝てしまっていたようで」
エイネが続きを言う前に、魔人は怒気を孕ませながら怒鳴りつける。
「馬鹿な事を云うんじゃない! あれほどの襲撃があったのに気付かない筈がないだろう! 遠くに居る我々にさえ魔族達から助けて欲しいと『念話』が送られてきたのだ! 近くに居るお前に、魔族の同胞が伝えない訳がないだろう!」
言ってからハッとした顔を浮かべる魔人は手で口をおさえる。
「……」
エイネの目が細められた。その目は咎めるような視線である。
「な、何だその目は! とにかくお前が魔族共に何かを指示した事は分かっている! そうでもしなければ『魔族如きの雑魚』が龍族を倒せる筈がない!」
次の瞬間、エイネの顔から取り繕う色が消え無表情になったかと思うと、目の前の魔人の首を右手で鷲掴みにした。
「言葉に気をつけなさい。我々魔族はとても優れた種族である」
エイネの手を離そうと首を絞められた魔人は、必死に両手でエイネの手を引き剥がそうとするが外れない。慌てて周りに居た魔人族二人が『スクアード』の証明である『紅いオーラ』を纏い、先頭に立つ魔人の首からエイネの手を剥がそうと近づいてくる。
「『スクアード』を纏ったわね? 私に力を向ければ容赦はしないわ」
キィイインという音と共にエイネの目が、金色に光ったかと思うと『スクアード』を纏った魔人二人の身体が膨れ上がり、そしてその膨張した腹部が破裂する。
「かは……っ!」
魔人二人は苦しむ表情を見せながら破裂した腹部を押さえ始める。エイネは先頭に居る魔人の首から手を離すと、分からせるように声を出した。
「今ならまだそいつらが助かる見込みはある。すぐに軍の医療班に見せなさい。でも心して聞きなさい? 次に私の前にお前達が顔を見せるなら、その時は全員の命を絶つわよ!」
魔人は大量の脂汗を流しながらエイネの言葉に何度頷くと、仲間の魔人達に『念話』で医療班を連れてくるように告げた後に、その場で尻餅をついて下からエイネの見下ろす眼光に震え上がらせた。
「ひっ……、ひぃっ……!!』
エイネは情けない声を出す魔人族から目を離すと、コテージの扉を閉めるのだった。
……
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