最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第617話 アレルバレルから跳ばされた九大魔王
「ぐっ……!」
フルーフはうなされているのか、苦しそうにベッドの上で声をあげる。そのフルーフの声に看病していた女性は慌ててフルーフの様子をみる。
「悪夢でも見ているのかしら。額に汗がたまっているわ」
女性はそう言うと濡らしていたタオルでフルーフの顔を優しく拭き始める。
――この女性の名は『エイネ』。
大魔王ソフィを筆頭とする魔王軍に属する『九大魔王』である。
同じく九大魔王である『リーシャ』が、組織の者にやられそうになっているところを庇い、代わりにこの『アサ』の世界に跳ばされてしまった魔族である。
エイネはフルーフの顔の汗をぬぐい、額に濡らしたタオルを乗せる。
「これでよし。どうやら魔力も少し回復きたようだし。もう安全ね」
魔力を消耗するとフラフラになったり、意識を失う事は珍しくはないが、エイネがフルーフを見つけた時は、完全に『魔力』が枯渇しており、生命の危機に瀕していた。
どうやら魔力の代わりに生命を犠牲にしていた様子であり、もう少し発見が遅れていたら『フルーフ』は死んでいただろう。
エイネは自分が寝泊りしているこのコテージまでフルーフを運び、魔力を回復させる水の『マジックアイテム』を飲ませた後、フルーフをベッドに寝かせて看病を続けていたのだった。
「それにしてもまさか、数千年前に行方をくらませていた彼が、まさかこの世界に居るとは思わなかったわね……」
当時はまだエイネは魔王軍には入っておらず、バルドやリーシャと共に辺境の集落で暮らしていた頃の話だが、大魔王ソフィと親交を深めたフルーフの評判は高く、一躍有名人と呼べる存在だった。
(※この時の話の時系列はこの作品の368話以降『煌聖教団誕生編』の『フルーフを探しにアレルバレルの世界へ』の少し前となります)。
そんなフルーフが大魔王ヌーの手によって敗北した事で、姿を消した為に『アレルバレル』の世界から彼の話題は消え去った。
魔王軍や一部の者達は、フルーフの探索を続けてはいたが、それでも彼の行方を追う事は出来なかった。ソフィの魔王軍にだけ知らされる機密事項により、フルーフはヌーの私有地で行方を晦ましたため、犯人はヌーではないかという情報が出回ったが、そのヌーも『アレルバレル』の世界から姿を消したために、真実は闇の中となり数千年が過ぎたのである。
そんなフルーフがまさか『煌聖の教団』の手によって跳ばされた世界『アサ』で見つける事となるとは、エイネは思わなかった。
この事を早く主であるソフィや他の『九大魔王』達に知らせたいところではあるが、現在エイネの立ち位置は、少しばかり複雑となっている。
現在彼女は『アサ』の世界の魔人族の軍に所属している。厳密には魔人族の下部組織で隷属的な位置である魔族の軍である。
この世界では魔族は、精々が『上位魔族』であり、戦力値が1000万を越える者は少ない。
『煌聖の教団』に言わせるならば、この世界は『程度の低い世界』なのであった。
しかしこの世界から出る方法を見つけるまでは、身動きが取れない彼女は仕方なく魔人族側の軍に、所属しているというワケであった。
もちろん軍に所属はしているが、表立って戦争に参加はせずに力を隠して、一応軍に入れる程の強さを保持していると周囲に思わせている程度であった。
本来は戦力値が1000万どころか、1000億を優に越える『大魔王最上位』領域に居る『女帝』の異名を持つエイネからすれば、この世界のどの魔族であろうが敵ではない。
それどころかその上の魔人族や、敵対関係にある龍族の全てを敵に回しても、たった一人で蹂躙する事は容易い。
もし女帝が何らかの理由によって、隠蔽している力を全て解放しなければならなくなれば『アサ』という世界は一夜にして魔族という種族を世界最強の種族にしてしまう事が可能である。
――かつて『魔王』レアが『リラリオ』の世界で『魔族』という『種族』を最強の種族に変えたようにである。
フルーフはうなされているのか、苦しそうにベッドの上で声をあげる。そのフルーフの声に看病していた女性は慌ててフルーフの様子をみる。
「悪夢でも見ているのかしら。額に汗がたまっているわ」
女性はそう言うと濡らしていたタオルでフルーフの顔を優しく拭き始める。
――この女性の名は『エイネ』。
大魔王ソフィを筆頭とする魔王軍に属する『九大魔王』である。
同じく九大魔王である『リーシャ』が、組織の者にやられそうになっているところを庇い、代わりにこの『アサ』の世界に跳ばされてしまった魔族である。
エイネはフルーフの顔の汗をぬぐい、額に濡らしたタオルを乗せる。
「これでよし。どうやら魔力も少し回復きたようだし。もう安全ね」
魔力を消耗するとフラフラになったり、意識を失う事は珍しくはないが、エイネがフルーフを見つけた時は、完全に『魔力』が枯渇しており、生命の危機に瀕していた。
どうやら魔力の代わりに生命を犠牲にしていた様子であり、もう少し発見が遅れていたら『フルーフ』は死んでいただろう。
エイネは自分が寝泊りしているこのコテージまでフルーフを運び、魔力を回復させる水の『マジックアイテム』を飲ませた後、フルーフをベッドに寝かせて看病を続けていたのだった。
「それにしてもまさか、数千年前に行方をくらませていた彼が、まさかこの世界に居るとは思わなかったわね……」
当時はまだエイネは魔王軍には入っておらず、バルドやリーシャと共に辺境の集落で暮らしていた頃の話だが、大魔王ソフィと親交を深めたフルーフの評判は高く、一躍有名人と呼べる存在だった。
(※この時の話の時系列はこの作品の368話以降『煌聖教団誕生編』の『フルーフを探しにアレルバレルの世界へ』の少し前となります)。
そんなフルーフが大魔王ヌーの手によって敗北した事で、姿を消した為に『アレルバレル』の世界から彼の話題は消え去った。
魔王軍や一部の者達は、フルーフの探索を続けてはいたが、それでも彼の行方を追う事は出来なかった。ソフィの魔王軍にだけ知らされる機密事項により、フルーフはヌーの私有地で行方を晦ましたため、犯人はヌーではないかという情報が出回ったが、そのヌーも『アレルバレル』の世界から姿を消したために、真実は闇の中となり数千年が過ぎたのである。
そんなフルーフがまさか『煌聖の教団』の手によって跳ばされた世界『アサ』で見つける事となるとは、エイネは思わなかった。
この事を早く主であるソフィや他の『九大魔王』達に知らせたいところではあるが、現在エイネの立ち位置は、少しばかり複雑となっている。
現在彼女は『アサ』の世界の魔人族の軍に所属している。厳密には魔人族の下部組織で隷属的な位置である魔族の軍である。
この世界では魔族は、精々が『上位魔族』であり、戦力値が1000万を越える者は少ない。
『煌聖の教団』に言わせるならば、この世界は『程度の低い世界』なのであった。
しかしこの世界から出る方法を見つけるまでは、身動きが取れない彼女は仕方なく魔人族側の軍に、所属しているというワケであった。
もちろん軍に所属はしているが、表立って戦争に参加はせずに力を隠して、一応軍に入れる程の強さを保持していると周囲に思わせている程度であった。
本来は戦力値が1000万どころか、1000億を優に越える『大魔王最上位』領域に居る『女帝』の異名を持つエイネからすれば、この世界のどの魔族であろうが敵ではない。
それどころかその上の魔人族や、敵対関係にある龍族の全てを敵に回しても、たった一人で蹂躙する事は容易い。
もし女帝が何らかの理由によって、隠蔽している力を全て解放しなければならなくなれば『アサ』という世界は一夜にして魔族という種族を世界最強の種族にしてしまう事が可能である。
――かつて『魔王』レアが『リラリオ』の世界で『魔族』という『種族』を最強の種族に変えたようにである。
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