最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第610話 緊張感のある共闘
現在フルーフは『アレルバレル』の世界に『概念跳躍』で跳ぶ準備を始めている。そしてそのフルーフの周囲には『死神皇』が呼び出した『死神貴族』が二柱共に守りに入っていた。
対する大賢者ミラは慌てずに、フルーフの様子を窺っていた。
そこへヌーがミラに話しかける。
「おいミラ、どうする?」
「……」
ヌーの攻撃が全て『死神皇』によって防がれた事もあり、ミラに声を掛けるヌーには余裕が全く見られなかった。
そして話しかけても返事をしないミラに、ヌーは更にまくし立てる。
「おい、どうするんだミラ! お前がアイツを生かすように言ったんだぞ。どう責任をとるつもりだ!」
怒鳴り声をあげ始めたヌーに、ようやくミラは反応を見せる。
「まぁ落ち着け。少しばかり計算が狂ったがやるべき事は変わらないさ」
そういうとミラは右手でヌーの体力を回復させ始める。
「奴が呼び出しやがった『死神』は、俺が手懐けた者どもとはモノが違う……」
「フルーフの奴はあの死神の事を『死神皇』と呼んでいた。つまりは『死神』共の『最上位に位置する存在』なのだろうな」
死神は本来このように前線で戦う事は少なく、契約に基づいて現世に出現して契約執行をする事が多い。だからこそ『神位』としてはそこまで高くはなく『神の最上位』に位置する『魔神』のように戦う事は基本的にはしない。
『神』とはいっても『死神』の強さのランクというべき戦力値は、一部の秀でた魔族にも劣る程である。
『大魔王最上位領域』に位置するヌー程の強さを持つ『死神』などは、ほとんど現世に現れることが無かったため、ミラもヌーも『死神皇』を軽視していた。
先程フルーフが『死神皇』を呼び出した時も驚きはしたが、そこまで脅威には思っていなかった。
だが、蓋を開けてみれば『死神皇』は、ヌーの極大魔法をあっさりと弾き返して『黒いオーラ』を纏い始めた瞬間にヌーは『死神皇』の強さを肌で感じた。
あの『死神皇』が呼び出した『死神貴族』達も侮れない強さを持っているようには感じられるが、それよりもやはり『死神皇』だけは『別格』であるとヌーは判断するのだった。
「さて、先程戦っていたお前は『死神皇』の相手が務まるようには思えなかった。それを省みて『死神皇』とやらとは私がやろう。お前はフルーフが『概念跳躍』を使うタイミングで妨害をしてくれ」
「分かった。それで周りの『死神』達はどうするんだ?」
「は? 知らんよ。お前の役目はフルーフを取り押さえる事だ。周りの『死神』達が障害に感じるのであれば、お前が排除する事だな」
「ちっ! クソ野郎が……!!」
余りに上からの物言いをするミラに舌打ちをするヌーだが、確かに今の自分では『死神皇』は抑えられない。ここは大人しくミラに任せる他に無いだろう。しかしそれでもヌーは、ミラに対して殺意を覚えるのだった。
…………
そしてフルーフはこの世界とは違う場所に居る『レア』の魔力を探知する事に成功した。どうやら今レアは『フルーフ』の故郷である『レパート』の世界ではなく、何故か『アレルバレル』の世界に居るようだった。
あくまでレアの魔力しか探知していない為に、近くに居るソフィやユファが居る事は分かってはいない。それでもあの世界は、唯一無二の友人であるソフィが居る世界だと知っているフルーフは少しだけ安堵していた。
友人であるソフィには、レアの事は『自分の自慢の愛娘』であると伝えてある。間違っても危害などは加えてはいない事だろう。
もしかすると保護をしてくれているかもしれないと、そこまで考えてフルーフは頭を振る。
流石にそこまで考えるのは、甘すぎたと思ったのであった。
ひとまずフルーフはレア達の事を頭の片隅に追いやり、ミラを視界に入れながら『概念跳躍』の『スタック』の準備をする。
うっすらとではあるがフルーフには記憶がある。
あのミラは『魔神』の『技』の『発動羅列』を自分が編み出した『新魔法』を使い『羅列化』を果たして自分の魔法として扱えるようになったようだ。
つまりフルーフが『時魔法』である『概念跳躍』を使えば『魔神』から奪った『時魔法無効化』をしてくる事だろう。
――そうなればフルーフはこの世界から離れられない。
『死神皇』は自分より強い『神』ではあるが『魔神』程にまで強いワケではない。
『死神皇』に頼りすぎて楽観視する事は、決して良くないだろう。上手く相手の隙をついて一瞬で離れなければならない。
――今や昔とは違って、自分以外の存在も『世界間移動』が行えるのだから。
フルーフはそう考えた後に冷静に、ミラから周囲に居る『死神貴族』達に視線を移すのであった。
……
……
……
対する大賢者ミラは慌てずに、フルーフの様子を窺っていた。
そこへヌーがミラに話しかける。
「おいミラ、どうする?」
「……」
ヌーの攻撃が全て『死神皇』によって防がれた事もあり、ミラに声を掛けるヌーには余裕が全く見られなかった。
そして話しかけても返事をしないミラに、ヌーは更にまくし立てる。
「おい、どうするんだミラ! お前がアイツを生かすように言ったんだぞ。どう責任をとるつもりだ!」
怒鳴り声をあげ始めたヌーに、ようやくミラは反応を見せる。
「まぁ落ち着け。少しばかり計算が狂ったがやるべき事は変わらないさ」
そういうとミラは右手でヌーの体力を回復させ始める。
「奴が呼び出しやがった『死神』は、俺が手懐けた者どもとはモノが違う……」
「フルーフの奴はあの死神の事を『死神皇』と呼んでいた。つまりは『死神』共の『最上位に位置する存在』なのだろうな」
死神は本来このように前線で戦う事は少なく、契約に基づいて現世に出現して契約執行をする事が多い。だからこそ『神位』としてはそこまで高くはなく『神の最上位』に位置する『魔神』のように戦う事は基本的にはしない。
『神』とはいっても『死神』の強さのランクというべき戦力値は、一部の秀でた魔族にも劣る程である。
『大魔王最上位領域』に位置するヌー程の強さを持つ『死神』などは、ほとんど現世に現れることが無かったため、ミラもヌーも『死神皇』を軽視していた。
先程フルーフが『死神皇』を呼び出した時も驚きはしたが、そこまで脅威には思っていなかった。
だが、蓋を開けてみれば『死神皇』は、ヌーの極大魔法をあっさりと弾き返して『黒いオーラ』を纏い始めた瞬間にヌーは『死神皇』の強さを肌で感じた。
あの『死神皇』が呼び出した『死神貴族』達も侮れない強さを持っているようには感じられるが、それよりもやはり『死神皇』だけは『別格』であるとヌーは判断するのだった。
「さて、先程戦っていたお前は『死神皇』の相手が務まるようには思えなかった。それを省みて『死神皇』とやらとは私がやろう。お前はフルーフが『概念跳躍』を使うタイミングで妨害をしてくれ」
「分かった。それで周りの『死神』達はどうするんだ?」
「は? 知らんよ。お前の役目はフルーフを取り押さえる事だ。周りの『死神』達が障害に感じるのであれば、お前が排除する事だな」
「ちっ! クソ野郎が……!!」
余りに上からの物言いをするミラに舌打ちをするヌーだが、確かに今の自分では『死神皇』は抑えられない。ここは大人しくミラに任せる他に無いだろう。しかしそれでもヌーは、ミラに対して殺意を覚えるのだった。
…………
そしてフルーフはこの世界とは違う場所に居る『レア』の魔力を探知する事に成功した。どうやら今レアは『フルーフ』の故郷である『レパート』の世界ではなく、何故か『アレルバレル』の世界に居るようだった。
あくまでレアの魔力しか探知していない為に、近くに居るソフィやユファが居る事は分かってはいない。それでもあの世界は、唯一無二の友人であるソフィが居る世界だと知っているフルーフは少しだけ安堵していた。
友人であるソフィには、レアの事は『自分の自慢の愛娘』であると伝えてある。間違っても危害などは加えてはいない事だろう。
もしかすると保護をしてくれているかもしれないと、そこまで考えてフルーフは頭を振る。
流石にそこまで考えるのは、甘すぎたと思ったのであった。
ひとまずフルーフはレア達の事を頭の片隅に追いやり、ミラを視界に入れながら『概念跳躍』の『スタック』の準備をする。
うっすらとではあるがフルーフには記憶がある。
あのミラは『魔神』の『技』の『発動羅列』を自分が編み出した『新魔法』を使い『羅列化』を果たして自分の魔法として扱えるようになったようだ。
つまりフルーフが『時魔法』である『概念跳躍』を使えば『魔神』から奪った『時魔法無効化』をしてくる事だろう。
――そうなればフルーフはこの世界から離れられない。
『死神皇』は自分より強い『神』ではあるが『魔神』程にまで強いワケではない。
『死神皇』に頼りすぎて楽観視する事は、決して良くないだろう。上手く相手の隙をついて一瞬で離れなければならない。
――今や昔とは違って、自分以外の存在も『世界間移動』が行えるのだから。
フルーフはそう考えた後に冷静に、ミラから周囲に居る『死神貴族』達に視線を移すのであった。
……
……
……
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