最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第595話 幼少期のトラウマ
「疑問を持たれられている事は当然の事だと思います。この結界にしても元々は『煌聖の教団』の魔族達が、使っていたモノを我々も使っています」
どうやら昔からこの世界にある結界の『理』を用いた類では無く、別世界に存在する『結界』を用いているようであった。
「我々が使っているのは『煌聖の教団』の見様見真似と呼べる程度の『結界』でしか無いために、一度発動してしまった後は範囲を広げたり狭めたりは出来ません。しかしそれでもこの『結界』の『理』を扱えるようになるまでに相当の苦労がありました」
どうやら相当に苦労したのだろう。説明を続けるステアの言葉に熱が入り始めた。
「『煌聖の教団』の『本隊』と呼ばれる『上層の者達』はすでに個人個人が、この『結界』よりも高性能のモノを扱えるうえに、この魔界の至る所で発動させており、我々の魔力感知や探知といった能力だけでは既に、どこにどれだけの規模の勢力が潜伏しているかなど、全く探る事が出来なくなっているのです」
イリーガルとリーシャはステアの言葉でようやく『煌聖の教団』の組織の者達の魔力が、探知出来ない理由を知ったのだった。
この『アレルバレル』の世界の『魔界』はとても広大である。
過去に魔族が他種族を攻め滅ぼして次々と支配領域を増やした結果、この世界の大陸のほとんどが魔族の土地となっている為である。
そんな広い魔界で相手の魔力を感知出来ないとなれば恐ろしい程の脅威である。
相手からはこちら側の魔力を感知出来るのだから、有利不利は考えなくても理解出来る。
「ここの『結界』は組織の者達が使っていたのを真似たって言ってたけど、一体どうやって相手の結界を使えるようになったの?」
リーシャはすぐに思いついた疑問をステアに尋ねるのだった。
「それは簡単な事です。私が教団の者を数体程捕まえて『金色の目』で支配した後に『発動羅列』から用いる『理』まで全ての情報を奪いました。但し先程も言いましたが、別世界の『理』ですので、私が出来るのはこの『定点結界』のみとなりますが……」
至極簡単なやり方だったために『リーシャ』は、結界に関しての理解は出来たが、ある事に納得がいかなかった。
「ねえ、貴方。中立の魔族って言ってたわよね? そんな簡単に、組織の連中に手を出したの?」
リーシャは見た目に反して、かなり頑固な部分がある。特に道理のいかない事には反発し、納得が出来ない事をいう相手には一切信用しない。
目の前に居るステアは『リーシャ』の主であるソフィの前で中立と告げた筈である。
そんな簡単に中立の者達の代表である筈のステアが、敵とはいっても『組織』の者に手を出したと、あっさり言葉にしたステアに対して、納得がいかない様子だった。
「これは言葉が足りませんでしたね。気分を害したのなら申し訳ありません。しかし聞いて下さいリーシャ様。我々は中立の立場をやめてソフィ様の魔王軍側につく事を決めました。誓ってソフィ様の前で発言した言葉に偽りはありませんし、これからは『煌聖の教団』の者達と雌雄を決するその時まで戦うと決めての判断でした」
そう言ってステアはリーシャの目をしっかりと見据えた上で、頭を下げるのだった。
頭を下げたステアに視線を向けながら、何かに葛藤するように渋い顔を続けるリーシャ。
その横でイリーガルは何も言わず、黙って事の成り行きを見守る。
イリーガルはリーシャが、元魔王軍であるバルドに裏切られて以降。なかなか人を信用出来ない事を知っている。今はこうして魔王軍最高幹部である『九大魔王』の座に居る『リーシャ』だが、魔王軍に入った当時のリーシャは、エイネ以外とは口もきかなかった。
簡単に嘘を吐いたり言葉を撤回するような輩を信用が出来ないのだろう。
それ程に幼少期の頃に、何かに傷付きそれがトラウマとなっているのだとイリーガルは考えるのだった。
――そしてそれは間違ってはいない。
彼女は五歳の頃にバルドに裏切られた後、大好きだった『レア』との決して短く無い程に長い年月の別れを経験してエイネとビル爺以外に、心を許すことなく長年生きてきたのである。
友人など作る事も出来ずに対人関係も大して築いてこれなかったリーシャにとって、他者のウソには敏感で彼女にとって『裏切り』とは、余程我慢出来ない世の中の真理の一つなのだろう。
余りにも哀しい心の傷を負った彼女は、頭を下げ続けるステアを長らく見ていたが、ゆっくりと表情を元に戻して口を開いた。
「ごめんなさい、頭をあげて」
リーシャの中で葛藤との決着がついたのだろう。素直に謝ってステアに頭をあげさせるのだった。
「こちらこそ、申し訳ない。ここに居る者達は今まで長きに渡って中立の立場だった者達ですが、今はもう魔王軍の方々と協力してこの世界を支配しようとする『煌聖の教団』と敵対する覚悟をもっております」
その『煌聖の教団』の者達を倒す為なら『結界』であれなんであれ、利用できるモノは利用する覚悟だと、ステアの表情が告げていた。
「分かったわ。ステア。これから宜しくね」
リーシャはその覚悟の深さを汲み取り、ようやくステアを『同盟』を結ぶに値する相手と認める言葉を告げるのだった。
……
……
……
どうやら昔からこの世界にある結界の『理』を用いた類では無く、別世界に存在する『結界』を用いているようであった。
「我々が使っているのは『煌聖の教団』の見様見真似と呼べる程度の『結界』でしか無いために、一度発動してしまった後は範囲を広げたり狭めたりは出来ません。しかしそれでもこの『結界』の『理』を扱えるようになるまでに相当の苦労がありました」
どうやら相当に苦労したのだろう。説明を続けるステアの言葉に熱が入り始めた。
「『煌聖の教団』の『本隊』と呼ばれる『上層の者達』はすでに個人個人が、この『結界』よりも高性能のモノを扱えるうえに、この魔界の至る所で発動させており、我々の魔力感知や探知といった能力だけでは既に、どこにどれだけの規模の勢力が潜伏しているかなど、全く探る事が出来なくなっているのです」
イリーガルとリーシャはステアの言葉でようやく『煌聖の教団』の組織の者達の魔力が、探知出来ない理由を知ったのだった。
この『アレルバレル』の世界の『魔界』はとても広大である。
過去に魔族が他種族を攻め滅ぼして次々と支配領域を増やした結果、この世界の大陸のほとんどが魔族の土地となっている為である。
そんな広い魔界で相手の魔力を感知出来ないとなれば恐ろしい程の脅威である。
相手からはこちら側の魔力を感知出来るのだから、有利不利は考えなくても理解出来る。
「ここの『結界』は組織の者達が使っていたのを真似たって言ってたけど、一体どうやって相手の結界を使えるようになったの?」
リーシャはすぐに思いついた疑問をステアに尋ねるのだった。
「それは簡単な事です。私が教団の者を数体程捕まえて『金色の目』で支配した後に『発動羅列』から用いる『理』まで全ての情報を奪いました。但し先程も言いましたが、別世界の『理』ですので、私が出来るのはこの『定点結界』のみとなりますが……」
至極簡単なやり方だったために『リーシャ』は、結界に関しての理解は出来たが、ある事に納得がいかなかった。
「ねえ、貴方。中立の魔族って言ってたわよね? そんな簡単に、組織の連中に手を出したの?」
リーシャは見た目に反して、かなり頑固な部分がある。特に道理のいかない事には反発し、納得が出来ない事をいう相手には一切信用しない。
目の前に居るステアは『リーシャ』の主であるソフィの前で中立と告げた筈である。
そんな簡単に中立の者達の代表である筈のステアが、敵とはいっても『組織』の者に手を出したと、あっさり言葉にしたステアに対して、納得がいかない様子だった。
「これは言葉が足りませんでしたね。気分を害したのなら申し訳ありません。しかし聞いて下さいリーシャ様。我々は中立の立場をやめてソフィ様の魔王軍側につく事を決めました。誓ってソフィ様の前で発言した言葉に偽りはありませんし、これからは『煌聖の教団』の者達と雌雄を決するその時まで戦うと決めての判断でした」
そう言ってステアはリーシャの目をしっかりと見据えた上で、頭を下げるのだった。
頭を下げたステアに視線を向けながら、何かに葛藤するように渋い顔を続けるリーシャ。
その横でイリーガルは何も言わず、黙って事の成り行きを見守る。
イリーガルはリーシャが、元魔王軍であるバルドに裏切られて以降。なかなか人を信用出来ない事を知っている。今はこうして魔王軍最高幹部である『九大魔王』の座に居る『リーシャ』だが、魔王軍に入った当時のリーシャは、エイネ以外とは口もきかなかった。
簡単に嘘を吐いたり言葉を撤回するような輩を信用が出来ないのだろう。
それ程に幼少期の頃に、何かに傷付きそれがトラウマとなっているのだとイリーガルは考えるのだった。
――そしてそれは間違ってはいない。
彼女は五歳の頃にバルドに裏切られた後、大好きだった『レア』との決して短く無い程に長い年月の別れを経験してエイネとビル爺以外に、心を許すことなく長年生きてきたのである。
友人など作る事も出来ずに対人関係も大して築いてこれなかったリーシャにとって、他者のウソには敏感で彼女にとって『裏切り』とは、余程我慢出来ない世の中の真理の一つなのだろう。
余りにも哀しい心の傷を負った彼女は、頭を下げ続けるステアを長らく見ていたが、ゆっくりと表情を元に戻して口を開いた。
「ごめんなさい、頭をあげて」
リーシャの中で葛藤との決着がついたのだろう。素直に謝ってステアに頭をあげさせるのだった。
「こちらこそ、申し訳ない。ここに居る者達は今まで長きに渡って中立の立場だった者達ですが、今はもう魔王軍の方々と協力してこの世界を支配しようとする『煌聖の教団』と敵対する覚悟をもっております」
その『煌聖の教団』の者達を倒す為なら『結界』であれなんであれ、利用できるモノは利用する覚悟だと、ステアの表情が告げていた。
「分かったわ。ステア。これから宜しくね」
リーシャはその覚悟の深さを汲み取り、ようやくステアを『同盟』を結ぶに値する相手と認める言葉を告げるのだった。
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