最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第579話 潜伏する者達
中央大陸に存在する魔王城。
長らくこの城には所有者である大魔王が不在であったが、先日ついに持ち主である大魔王ソフィが戻ってきた。
早速、魔界の地方に居た『分隊』の『煌聖の教団』の者達が、このソフィの手によって全滅させられており、遂には『煌聖の教団』の最高幹部であった大賢者ユーミルが、ソフィの手によって消滅させられた。
これを受けて『煌聖の教団』の者達は、魔界の中央大陸近辺から距離をとり、今は姿を隠すように『魔界』のあらゆる大陸に散らばりながら潜伏していた。
現在『煌聖の教団』の総帥であるミラや、他の最高幹部達が『アレルバレル』の世界から離れている為に『本隊』の総隊長である『ネイキッド』が、全部隊に固まらずに散らばれと指示を出したのであった。
本来全軍指示を出す役目を担う筈だったユーミルが勝手に動き、真っ先にやられてしまった事で 『ネイキッド』に白羽の矢が立ってしまったのである。
『煌聖の教団』の『本隊』を指揮する総隊長『ネイキッド』は、魔王城のある中央大陸から西へ向かって二つ程離れた大陸に『本隊』の隊員たち数名と共に潜伏して中央大陸の様子を観察していた。
「ネイキッド様。どうやら『ユーミル』様の魔力は完全に途絶えているようです」
言葉を発したのは『ネイキッド』の他に三人いる内の一体、大魔王『リザート』という若い青年だった。
若いと言ってもリザートは『本隊』の多く居る部隊達の隊長を務める大魔王であり『ネイキッド』を除けば『本隊』の者達の中で一番力を有する部隊長である。
「ああ。どうやらユーミル様は『化け物』と正面から戦いそのままやられちまったようだ」
リザートに話しかけられたネイキッドは、人形共を引き連れて攻め込んでいった最高幹部の『ユーミル』の事を話す。
「人間とはいっても我々大魔王より遥かに強い『ユーミル』様がやられた以上は『分隊』の者達からの報告通り、本当にあの化け物が帰ってきたのですね」
「ユーミル様はまだ百にも満たぬ程の年齢だったからな。大魔王ソフィという存在が、どのような者かを存じてなかったのだろう」
生粋の人間である以上は、寿命が『魔族』達と比べて短い。
ソフィという大魔王が、過去に起こしてきた戦争をその目で見た事がないのだから、単独で仕掛けるのも仕方が無かったのだろう。
――『神聖魔法』は、魔族に対して圧倒的な優位性を持つ。
大賢者ミラから直々に教団に推薦されてあっさりと最高幹部まで上り詰めたユーミルは、その類まれなる才能を持ちそして膨大な魔力を誇る程の大賢者であった。
そんな彼女であれば強いとはいっても『神聖魔法』に弱い魔族という事で、ソフィという魔族をどこかで軽んじてしまったのだろう。
それにユーミルが大勢引き連れていた人形達は『時魔法』を使う事が出来た。前情報で得た知識でソフィが魔法使いと言う事を知っていたユーミルは、万全を尽くしたと考えて負ける事など露程にも思わなかったのだろう。
自尊心の強かった大賢者『ユーミル』という人間を顧みれば、推測に難しくないと『ネイキッド』は考えるのだった。
「しかし『神聖魔法』の使い手をあっさりと倒すなんて、流石は大魔王ソフィですね……」
ユーミルの事を考えていたネイキッドは、リザートの言葉に同意するのだった。
「我々程度の魔族であれば、神聖魔法を扱う最高幹部の方々や、ましてやミラ様には逆立ちしても勝てないだろうが、あの化け物は過去に大賢者エルシスの神聖魔法をその身に受けてさえピンピンしていたらしいからな。まさに化け物なのだろうよ」
ネイキッドの言葉にその場にいた者達は、苦そうな表情を浮かべながら同時に頷く。
「それで、これからどうしましょうか? 命令通りに一箇所に集まらないようにと伝えて中央大陸から離れさせましたが、このまま様子を見ますか?』
「ああ。いや、そうだな。口惜しいが我々がいくら集まったところで分隊の連中と変わらぬ結果になるだろうしな。ここはミラ様達が『ダール』の世界から戻ってくるのを待つしかなかろう」
「一度こちらから化け物が現れた事と『ユーミル』様の事を伝える者を『ミラ』様の元へと出しておきましょうか?」
リザートの言葉に普通であれば頷くところだが、ネイキッドは首を横に振る。
「いや。あちらも今頃は『例の計画』の真っ最中で、忙しいところだろうからな。下手にこちらのよくない情報を伝えて計画に支障が出るような真似は出来ないだろう」
この場には『ネイキッド』以外には『魔神』の一件を知らされていない為に、その言葉に『リザート』や本隊の者達は、顔を見合わせて眉を寄せるのだった。
「ひとまずミラ様が戻ってくるまで様子を見る、間違っても何か余計な事をするんじゃないぞ?」
「はっ! 分かりました」
ネイキッドの言葉にリザート達は、頷きを見せるのであった。
そしてネイキッドは何かを考えるように、中央大陸の魔王城のある方角を見つめるのだった。
……
……
……
長らくこの城には所有者である大魔王が不在であったが、先日ついに持ち主である大魔王ソフィが戻ってきた。
早速、魔界の地方に居た『分隊』の『煌聖の教団』の者達が、このソフィの手によって全滅させられており、遂には『煌聖の教団』の最高幹部であった大賢者ユーミルが、ソフィの手によって消滅させられた。
これを受けて『煌聖の教団』の者達は、魔界の中央大陸近辺から距離をとり、今は姿を隠すように『魔界』のあらゆる大陸に散らばりながら潜伏していた。
現在『煌聖の教団』の総帥であるミラや、他の最高幹部達が『アレルバレル』の世界から離れている為に『本隊』の総隊長である『ネイキッド』が、全部隊に固まらずに散らばれと指示を出したのであった。
本来全軍指示を出す役目を担う筈だったユーミルが勝手に動き、真っ先にやられてしまった事で 『ネイキッド』に白羽の矢が立ってしまったのである。
『煌聖の教団』の『本隊』を指揮する総隊長『ネイキッド』は、魔王城のある中央大陸から西へ向かって二つ程離れた大陸に『本隊』の隊員たち数名と共に潜伏して中央大陸の様子を観察していた。
「ネイキッド様。どうやら『ユーミル』様の魔力は完全に途絶えているようです」
言葉を発したのは『ネイキッド』の他に三人いる内の一体、大魔王『リザート』という若い青年だった。
若いと言ってもリザートは『本隊』の多く居る部隊達の隊長を務める大魔王であり『ネイキッド』を除けば『本隊』の者達の中で一番力を有する部隊長である。
「ああ。どうやらユーミル様は『化け物』と正面から戦いそのままやられちまったようだ」
リザートに話しかけられたネイキッドは、人形共を引き連れて攻め込んでいった最高幹部の『ユーミル』の事を話す。
「人間とはいっても我々大魔王より遥かに強い『ユーミル』様がやられた以上は『分隊』の者達からの報告通り、本当にあの化け物が帰ってきたのですね」
「ユーミル様はまだ百にも満たぬ程の年齢だったからな。大魔王ソフィという存在が、どのような者かを存じてなかったのだろう」
生粋の人間である以上は、寿命が『魔族』達と比べて短い。
ソフィという大魔王が、過去に起こしてきた戦争をその目で見た事がないのだから、単独で仕掛けるのも仕方が無かったのだろう。
――『神聖魔法』は、魔族に対して圧倒的な優位性を持つ。
大賢者ミラから直々に教団に推薦されてあっさりと最高幹部まで上り詰めたユーミルは、その類まれなる才能を持ちそして膨大な魔力を誇る程の大賢者であった。
そんな彼女であれば強いとはいっても『神聖魔法』に弱い魔族という事で、ソフィという魔族をどこかで軽んじてしまったのだろう。
それにユーミルが大勢引き連れていた人形達は『時魔法』を使う事が出来た。前情報で得た知識でソフィが魔法使いと言う事を知っていたユーミルは、万全を尽くしたと考えて負ける事など露程にも思わなかったのだろう。
自尊心の強かった大賢者『ユーミル』という人間を顧みれば、推測に難しくないと『ネイキッド』は考えるのだった。
「しかし『神聖魔法』の使い手をあっさりと倒すなんて、流石は大魔王ソフィですね……」
ユーミルの事を考えていたネイキッドは、リザートの言葉に同意するのだった。
「我々程度の魔族であれば、神聖魔法を扱う最高幹部の方々や、ましてやミラ様には逆立ちしても勝てないだろうが、あの化け物は過去に大賢者エルシスの神聖魔法をその身に受けてさえピンピンしていたらしいからな。まさに化け物なのだろうよ」
ネイキッドの言葉にその場にいた者達は、苦そうな表情を浮かべながら同時に頷く。
「それで、これからどうしましょうか? 命令通りに一箇所に集まらないようにと伝えて中央大陸から離れさせましたが、このまま様子を見ますか?』
「ああ。いや、そうだな。口惜しいが我々がいくら集まったところで分隊の連中と変わらぬ結果になるだろうしな。ここはミラ様達が『ダール』の世界から戻ってくるのを待つしかなかろう」
「一度こちらから化け物が現れた事と『ユーミル』様の事を伝える者を『ミラ』様の元へと出しておきましょうか?」
リザートの言葉に普通であれば頷くところだが、ネイキッドは首を横に振る。
「いや。あちらも今頃は『例の計画』の真っ最中で、忙しいところだろうからな。下手にこちらのよくない情報を伝えて計画に支障が出るような真似は出来ないだろう」
この場には『ネイキッド』以外には『魔神』の一件を知らされていない為に、その言葉に『リザート』や本隊の者達は、顔を見合わせて眉を寄せるのだった。
「ひとまずミラ様が戻ってくるまで様子を見る、間違っても何か余計な事をするんじゃないぞ?」
「はっ! 分かりました」
ネイキッドの言葉にリザート達は、頷きを見せるのであった。
そしてネイキッドは何かを考えるように、中央大陸の魔王城のある方角を見つめるのだった。
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