最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第577話 大きな樹
大賢者ユーミルを葬ったソフィは、遂に自身の拠点である『魔王城』のある中央大陸に辿り着いた。
ミラの組織する『煌聖教団』は、すでに分隊の『レルナート』が敗れた時点でその姿を見せなくなっており、魔王城どころかこの中央大陸にさえ奴らの魔力を感知出来ない。
どうやら先程の人形を操っていた『ユーミル』という大賢者は、組織の中で相当の権限を持っていたのだろう。
彼女が独断でソフィを倒そうと動いていたようで、ソフィに逆らおうとする者は、あれ以降現れなかった。
「……どうやら無事に戻ってこれたようだな」
ソフィは感慨深そうに自分の城を見ながらそう呟く。
ダールの世界の支配者イザベラが、この城へ入ったくらいで、他の組織の者達はこの城をどうこうしようというつもりはなかったのだろう。
まさにソフィが居なくなる前の、厳かな魔王城そのままであった。
(※しかし、魔王城の内部の一部の廊下は、過去に『イリーガル』が『イザベラ』を葬る時に壁にイザベラの顔を擦りながら突き進んだ為に、廊下の壁の惨状は今もそのままである。それをやらかしたイリーガルは、既にその時の事を忘れている)。
「ソフィ。妾はこの大陸に再び我が子達を呼び寄せたいのだが、構わぬだろうか?」
精霊女王ミューテリアが、感慨深そうに城を眺めていたソフィにそう尋ねると、ソフィは振り返りミューテリアの顔を見て頷く。
「ああ。うむ。この世界が今どのようになっておるのかを把握するまでは、我らはこの大陸を拠点にしようと思って居るからな。お主ら精霊達の安全は約束しよう」
ソフィがそう言うと、ミューテリアはホッとしながら大きく頷いた。
大魔王ソフィが安全だと言った以上、この大陸は『魔神』以上の聖域と同義であると告げているようなものだと、ミューテリアは考えているのだった。
そしてそれは大袈裟でも何でもなく、ミラが仕向けた勇者たちが『根源の玉』を使うまでの間、この大陸の中で精霊達は数千年間もの時を平和を維持し続けて来た。
余程のイレギュラーが再び起こらぬ限り、今回もまたソフィの手によってこの大陸は、また少しずつ平穏が戻る事だろう。
…………
精霊女王ミューテリアは、魔界の中央大陸に生えていた大きな樹に手をあてる。
その樹は枯れ果てておりミューテリアは切なげに樹を見ていたが、やがて静かに目を閉じると、ミューテリアの周囲に淡い光が纏われ始めた。
その光はゆっくりとではあるが、ミューテリアの手の先に触れている樹へと伝播していき、やがて樹全体がミューテリアの光に包まれる。
すると驚いた事に枯れていた樹が、みるみる内に元の姿へと戻っていく。
まるでミューテリアの光が樹に栄養を与えたかの如く、元気を取り戻していくようであった。
「流石は精霊女王殿じゃな。このような芸当は他の精霊では出来まい」
ディアトロスは再生していく大きな樹と、その樹を再生させたミューテリアを交互に見つめながら、大したものだと感心しながら頷きを見せた。
「そうだな。残っていた精霊達も再び『ミューテリア』が戻ってきた事を知って、この地へと姿を見せる事だろう」
ソフィはそうなった時のために、この地を再び自分達『魔族』の力で守らねばならぬと固く決意するのだった。
残っている精霊族は本当に少なく、過去に自分と同じ種族である『魔族』達が暴れまわった代償はとても大きい。
ソフィがやったわけではないが、それでも迷惑をかけたのは自分達『魔族』である以上は、とても他人事だとはソフィは考えられなかった。
ソフィは自分たちが出来る事で『精霊族』がまた、この地で平和に暮らせるようになる可能性がある以上は、その力を出し惜しむ事無く使い、精霊達に協力しようと考えるのであった。
魔族達が他種族より、力があるというのであれば、それは暴力に使うのではなく、守るために使うべきであると考えるソフィの決意に満ちた表情を横目に『九大魔王』達もまた、ソフィの気持ちと重ねるかの如く、ある者は目に決意を宿らせてまたある者は拳を握りしめる。
――こうして大魔王ソフィは、再び『アレルバレル』の世界の地へと戻ってきたのであった。
ミラの組織する『煌聖教団』は、すでに分隊の『レルナート』が敗れた時点でその姿を見せなくなっており、魔王城どころかこの中央大陸にさえ奴らの魔力を感知出来ない。
どうやら先程の人形を操っていた『ユーミル』という大賢者は、組織の中で相当の権限を持っていたのだろう。
彼女が独断でソフィを倒そうと動いていたようで、ソフィに逆らおうとする者は、あれ以降現れなかった。
「……どうやら無事に戻ってこれたようだな」
ソフィは感慨深そうに自分の城を見ながらそう呟く。
ダールの世界の支配者イザベラが、この城へ入ったくらいで、他の組織の者達はこの城をどうこうしようというつもりはなかったのだろう。
まさにソフィが居なくなる前の、厳かな魔王城そのままであった。
(※しかし、魔王城の内部の一部の廊下は、過去に『イリーガル』が『イザベラ』を葬る時に壁にイザベラの顔を擦りながら突き進んだ為に、廊下の壁の惨状は今もそのままである。それをやらかしたイリーガルは、既にその時の事を忘れている)。
「ソフィ。妾はこの大陸に再び我が子達を呼び寄せたいのだが、構わぬだろうか?」
精霊女王ミューテリアが、感慨深そうに城を眺めていたソフィにそう尋ねると、ソフィは振り返りミューテリアの顔を見て頷く。
「ああ。うむ。この世界が今どのようになっておるのかを把握するまでは、我らはこの大陸を拠点にしようと思って居るからな。お主ら精霊達の安全は約束しよう」
ソフィがそう言うと、ミューテリアはホッとしながら大きく頷いた。
大魔王ソフィが安全だと言った以上、この大陸は『魔神』以上の聖域と同義であると告げているようなものだと、ミューテリアは考えているのだった。
そしてそれは大袈裟でも何でもなく、ミラが仕向けた勇者たちが『根源の玉』を使うまでの間、この大陸の中で精霊達は数千年間もの時を平和を維持し続けて来た。
余程のイレギュラーが再び起こらぬ限り、今回もまたソフィの手によってこの大陸は、また少しずつ平穏が戻る事だろう。
…………
精霊女王ミューテリアは、魔界の中央大陸に生えていた大きな樹に手をあてる。
その樹は枯れ果てておりミューテリアは切なげに樹を見ていたが、やがて静かに目を閉じると、ミューテリアの周囲に淡い光が纏われ始めた。
その光はゆっくりとではあるが、ミューテリアの手の先に触れている樹へと伝播していき、やがて樹全体がミューテリアの光に包まれる。
すると驚いた事に枯れていた樹が、みるみる内に元の姿へと戻っていく。
まるでミューテリアの光が樹に栄養を与えたかの如く、元気を取り戻していくようであった。
「流石は精霊女王殿じゃな。このような芸当は他の精霊では出来まい」
ディアトロスは再生していく大きな樹と、その樹を再生させたミューテリアを交互に見つめながら、大したものだと感心しながら頷きを見せた。
「そうだな。残っていた精霊達も再び『ミューテリア』が戻ってきた事を知って、この地へと姿を見せる事だろう」
ソフィはそうなった時のために、この地を再び自分達『魔族』の力で守らねばならぬと固く決意するのだった。
残っている精霊族は本当に少なく、過去に自分と同じ種族である『魔族』達が暴れまわった代償はとても大きい。
ソフィがやったわけではないが、それでも迷惑をかけたのは自分達『魔族』である以上は、とても他人事だとはソフィは考えられなかった。
ソフィは自分たちが出来る事で『精霊族』がまた、この地で平和に暮らせるようになる可能性がある以上は、その力を出し惜しむ事無く使い、精霊達に協力しようと考えるのであった。
魔族達が他種族より、力があるというのであれば、それは暴力に使うのではなく、守るために使うべきであると考えるソフィの決意に満ちた表情を横目に『九大魔王』達もまた、ソフィの気持ちと重ねるかの如く、ある者は目に決意を宿らせてまたある者は拳を握りしめる。
――こうして大魔王ソフィは、再び『アレルバレル』の世界の地へと戻ってきたのであった。
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