最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第559話 ソフィVSユーミル
「ま、まずい……っ!」
人形達は自動化状態で一斉に『次元防壁』を展開し始める。先程のように向かってくる『魔法』を感知して次元の彼方へと飛ばすつもりなのだろう。
魔法は通用しない筈だと分かっているつもりだが、それでもユーミルは何故か胸騒ぎが止まらない。
目の前でグングンと可視化出来る程の『魔力』が上昇していくソフィを見て、どんどんと不安になっていくユーミルは、極大魔法の準備をしていたが、何故かその魔法ではなく『人形達』があるというのに自分も防御をした方がいいのではないかと、考えてしまうのだった。
――そしてその懸念は、現実のものとなるのだった。
――神域魔法、『天空の雷』。
ソフィの広範囲を対象とした魔法に多くの人形たちが、同時に時魔法で次元の彼方へと飛ばす。ここまでは先程と同じ光景であったが、ソフィの狙いはこの次であった。
人形達は自分の意思を持っておらず、自身に向けられた魔法に反応して魔法を無効化する。
しかし人形だからこそ簡単な駆け引きすら対応出来ず『次元防壁』を使った後の『ディレイ硬直』により、その場にいる人形達の全てが動けなくなる。
こうして盾と呼ばれた膨大な数にのぼる人形達は、一斉に無力化されてしまうのであった。
そこにソフィは先程の神域魔法を遥かに上回る程の『魔力』が込められた魔法を発動させるのだった。
――魔神域魔法、『普遍破壊』。
『神域』位階の代表的な『魔法』とされる『極大魔法』だが、今のソフィの放った『普遍破壊』は、大魔王ソフィの膨大にして異質と呼べる『魔力』から繰り出された事によって、元々『神域』位階である筈であったその『普遍破壊』はもう一つ上の位階とされる『魔神域』の領域に到達しているようであった。
その場にいた人形達は、一斉にソフィの極大魔法によって爆発に巻き込まれて、消し飛ばされていく。もう少し知能を持った人間のような存在であったなら、人形同士交互に魔法を使うなどして、防ぐ事も出来ただろう。
だが『自身に向けられた魔力』に反応して対抗するだけしか出来ない造られた人形では、これが限界だったようだ。
「……!?」
ユーミルは使おうとしていた魔法をキャンセルし『次元防壁』を発動した事によって、ソフィの『普遍破壊』から身を守る事が出来たが、周囲の人形が消し飛ばされたことを悟り、その表情はやられたとばかりにソフィを睨んでいた。
「クックック。これで厄介な人形は消え去ったな? さてどうする?」
ソフィはさらにユーミルを煽るようにそう言うと、ユーミルはソフィから視線を外さずに唇を噛む。そしてユーミルはこんな筈では無かったと、この場に来た事を後悔するのだった。
本来ユーミルの役目は『アレルバレル』の世界にソフィ達が来た場合には『ダール』という世界に居るミラ達にソフィ達に事を伝える事であった。
だが、魔法を無効化出来る『盾』となる人形達を大勢連れて行けば『魔』を主戦に戦うソフィにさえ勝てるかもしれないとユーミルは判断してしまったのである。
ここら辺が人間であるユーミルの犯したミスであった。人間より長く生きる他の『煌聖の教団』の幹部である『魔族』達であれば、こんな行動はとらなかっただろう。
生を受けて僅か百年にも満たぬ人間ユーミルでは、魔王城の玉座に座っているだけの彼しか知らず。過去に『アレルバレル』の世界で『魔族』達から恐れられた『ソフィ』という存在の事を詳しくは知らなかったのだから仕方がなかったのかもしれない。
――シンプルな結論だが彼女は軽率過ぎたのだ。
周囲はすでに九大魔王に囲まれており、ユーミルに逃げ場は残されていなかった。
彼女がミラの組織した『煌聖の教団』でなければ、ソフィの温情によって救われる道もあったかもしれない。
――しかしながら『何も悪い事をしていなかったレア』を、二度狙わせたミラとその組織の者達をソフィは決して許すつもりはなかった。
――『大魔王ソフィは、決して仲間を狙った輩共を許す事はない』。
相手の規模などに区別は無く、個人であろうが組織であろうが、それこそ『世界全て』が敵になろうとも、ソフィが『敵』と認めた相手への報復は果たされるまで永遠に止むことはない。
世界の調停を担う神々である『魔神』から警告を受けて尚、何事も無かったかのようにその『魔神』を自身の配下にしてしまう程の『化け物』と揶揄される大魔王は、敵対者を消滅させるまで行動を続けるのである――。
恐ろしい殺意を見せ始めたソフィを見て、脂汗を流していたが、どうやら『ユーミル』は最後の手段に出るようであった。
「く、くぅ……っ! み、ミラ様、私に力を!」
ユーミルは『スタック』させていた魔力を一つの魔法に全て込め始めた。
――神域魔法、『聖なる十字架』。
その魔法は『本物の大賢者』である『エルシス』が編み出した、『対魔族』に特別な効果をもたらす事が出来る魔法ではあるが、少々本物と『発動羅列』が違う。組織の総帥であるミラによって、改変された方の『神聖魔法』であった。
ユーミルは素早く十字を切る。
玉砕覚悟の一撃は周囲に居る『九大魔王』を無視して、大魔王『ソフィ』だけを狙われた。
――しかしその『ユーミル』の渾身の『魔法』の一撃に対して、ソフィはその魔法を避けるでもなく、また防御をするでもなかった。
「や、やったの!?」
大賢者ユーミルが、全魔力を賭して放たれた魔法は確かにソフィに直撃した。
――しかし。
「こんなものなのか? 大賢者ユーミル」
「あ……、ああ……」
当然のように無傷のままこちらを見下ろす大魔王を見て、ユーミルは驚愕に目を丸くして全身に震えが走った。
「……お主の見た目だけを真似た威力の伴っておらぬ紛い物の『神聖魔法』とは違う。本物の神聖魔法というモノを見せてやろうではないか」
ソフィはそう言うと、静かに右手に魔力を込める。
――神聖魔法、『聖光波動撃』。
決して紛い物では無く、生前の大賢者エルシスが編み出した『発動羅列』を用いた、本物の『神聖魔法』。
そこに『第二形態』となり『三色併用』のオーラを纏った、大魔王ソフィの魔力が上乗せされた『神聖魔法』が『ユーミル』に襲い掛かるのであった――。
次元が歪んだかの如く『ユーミル』の視界に映る周囲がブレ始めたかと思うと、自分の身体が浄化の流れに巻き込まれたかのような何かに吸い込まれるような感覚を味わう。
身体が痙攣を起こし始めた後、ユーミルの肉体のあらゆる筋肉が膨張し始めた。ユーミルの骨格筋や心筋、肉体の細胞の細部に至るまでが歪つに膨れ上がる。
「あ、ああああ!!! い、痛い!! 痛い痛い痛い!!」
更にそこへソフィの目が金色に輝くと、魔法の効力がそこから更に『数段階』跳ね上がった。
「あ」
次の瞬間『ユーミル』の眼球が顔から吹き飛び、肉体は膨れ上がった風船が爆発するようにはじけ飛んだ。
――大賢者『ユーミル』は『大魔王ソフィ』から恐ろしい殺意を向けられて、死の瞬間には自身にあれ程の『痛み』があった事も忘れて、死ぬ事でこの『化け物』から解放されるのだと悟った『ユーミル』は笑みを浮かべて絶命していった。
金色を纏った状態のユーミルは魔族であれば、大魔王領域の上位に位置する程だが、それでも大魔王ソフィの手によってあっさりと絶命して、この世に別れを告げる事となった。
ソフィは既に塵も残らず粉々に消し飛ばされた『ユーミル』の居た場所を見据えていた。
その冷酷な視線は対象であった『ユーミル』だけに留まらず、仲間である筈の九大魔王達でさえ、恐ろしさに身の毛がよだつ程であった。
「悪いが我は……。組織の者に対して容赦はせぬと決めたのだ」
冷酷な視線を送りながらもソフィは、どこか寂しそうに告げるのだった。
……
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人形達は自動化状態で一斉に『次元防壁』を展開し始める。先程のように向かってくる『魔法』を感知して次元の彼方へと飛ばすつもりなのだろう。
魔法は通用しない筈だと分かっているつもりだが、それでもユーミルは何故か胸騒ぎが止まらない。
目の前でグングンと可視化出来る程の『魔力』が上昇していくソフィを見て、どんどんと不安になっていくユーミルは、極大魔法の準備をしていたが、何故かその魔法ではなく『人形達』があるというのに自分も防御をした方がいいのではないかと、考えてしまうのだった。
――そしてその懸念は、現実のものとなるのだった。
――神域魔法、『天空の雷』。
ソフィの広範囲を対象とした魔法に多くの人形たちが、同時に時魔法で次元の彼方へと飛ばす。ここまでは先程と同じ光景であったが、ソフィの狙いはこの次であった。
人形達は自分の意思を持っておらず、自身に向けられた魔法に反応して魔法を無効化する。
しかし人形だからこそ簡単な駆け引きすら対応出来ず『次元防壁』を使った後の『ディレイ硬直』により、その場にいる人形達の全てが動けなくなる。
こうして盾と呼ばれた膨大な数にのぼる人形達は、一斉に無力化されてしまうのであった。
そこにソフィは先程の神域魔法を遥かに上回る程の『魔力』が込められた魔法を発動させるのだった。
――魔神域魔法、『普遍破壊』。
『神域』位階の代表的な『魔法』とされる『極大魔法』だが、今のソフィの放った『普遍破壊』は、大魔王ソフィの膨大にして異質と呼べる『魔力』から繰り出された事によって、元々『神域』位階である筈であったその『普遍破壊』はもう一つ上の位階とされる『魔神域』の領域に到達しているようであった。
その場にいた人形達は、一斉にソフィの極大魔法によって爆発に巻き込まれて、消し飛ばされていく。もう少し知能を持った人間のような存在であったなら、人形同士交互に魔法を使うなどして、防ぐ事も出来ただろう。
だが『自身に向けられた魔力』に反応して対抗するだけしか出来ない造られた人形では、これが限界だったようだ。
「……!?」
ユーミルは使おうとしていた魔法をキャンセルし『次元防壁』を発動した事によって、ソフィの『普遍破壊』から身を守る事が出来たが、周囲の人形が消し飛ばされたことを悟り、その表情はやられたとばかりにソフィを睨んでいた。
「クックック。これで厄介な人形は消え去ったな? さてどうする?」
ソフィはさらにユーミルを煽るようにそう言うと、ユーミルはソフィから視線を外さずに唇を噛む。そしてユーミルはこんな筈では無かったと、この場に来た事を後悔するのだった。
本来ユーミルの役目は『アレルバレル』の世界にソフィ達が来た場合には『ダール』という世界に居るミラ達にソフィ達に事を伝える事であった。
だが、魔法を無効化出来る『盾』となる人形達を大勢連れて行けば『魔』を主戦に戦うソフィにさえ勝てるかもしれないとユーミルは判断してしまったのである。
ここら辺が人間であるユーミルの犯したミスであった。人間より長く生きる他の『煌聖の教団』の幹部である『魔族』達であれば、こんな行動はとらなかっただろう。
生を受けて僅か百年にも満たぬ人間ユーミルでは、魔王城の玉座に座っているだけの彼しか知らず。過去に『アレルバレル』の世界で『魔族』達から恐れられた『ソフィ』という存在の事を詳しくは知らなかったのだから仕方がなかったのかもしれない。
――シンプルな結論だが彼女は軽率過ぎたのだ。
周囲はすでに九大魔王に囲まれており、ユーミルに逃げ場は残されていなかった。
彼女がミラの組織した『煌聖の教団』でなければ、ソフィの温情によって救われる道もあったかもしれない。
――しかしながら『何も悪い事をしていなかったレア』を、二度狙わせたミラとその組織の者達をソフィは決して許すつもりはなかった。
――『大魔王ソフィは、決して仲間を狙った輩共を許す事はない』。
相手の規模などに区別は無く、個人であろうが組織であろうが、それこそ『世界全て』が敵になろうとも、ソフィが『敵』と認めた相手への報復は果たされるまで永遠に止むことはない。
世界の調停を担う神々である『魔神』から警告を受けて尚、何事も無かったかのようにその『魔神』を自身の配下にしてしまう程の『化け物』と揶揄される大魔王は、敵対者を消滅させるまで行動を続けるのである――。
恐ろしい殺意を見せ始めたソフィを見て、脂汗を流していたが、どうやら『ユーミル』は最後の手段に出るようであった。
「く、くぅ……っ! み、ミラ様、私に力を!」
ユーミルは『スタック』させていた魔力を一つの魔法に全て込め始めた。
――神域魔法、『聖なる十字架』。
その魔法は『本物の大賢者』である『エルシス』が編み出した、『対魔族』に特別な効果をもたらす事が出来る魔法ではあるが、少々本物と『発動羅列』が違う。組織の総帥であるミラによって、改変された方の『神聖魔法』であった。
ユーミルは素早く十字を切る。
玉砕覚悟の一撃は周囲に居る『九大魔王』を無視して、大魔王『ソフィ』だけを狙われた。
――しかしその『ユーミル』の渾身の『魔法』の一撃に対して、ソフィはその魔法を避けるでもなく、また防御をするでもなかった。
「や、やったの!?」
大賢者ユーミルが、全魔力を賭して放たれた魔法は確かにソフィに直撃した。
――しかし。
「こんなものなのか? 大賢者ユーミル」
「あ……、ああ……」
当然のように無傷のままこちらを見下ろす大魔王を見て、ユーミルは驚愕に目を丸くして全身に震えが走った。
「……お主の見た目だけを真似た威力の伴っておらぬ紛い物の『神聖魔法』とは違う。本物の神聖魔法というモノを見せてやろうではないか」
ソフィはそう言うと、静かに右手に魔力を込める。
――神聖魔法、『聖光波動撃』。
決して紛い物では無く、生前の大賢者エルシスが編み出した『発動羅列』を用いた、本物の『神聖魔法』。
そこに『第二形態』となり『三色併用』のオーラを纏った、大魔王ソフィの魔力が上乗せされた『神聖魔法』が『ユーミル』に襲い掛かるのであった――。
次元が歪んだかの如く『ユーミル』の視界に映る周囲がブレ始めたかと思うと、自分の身体が浄化の流れに巻き込まれたかのような何かに吸い込まれるような感覚を味わう。
身体が痙攣を起こし始めた後、ユーミルの肉体のあらゆる筋肉が膨張し始めた。ユーミルの骨格筋や心筋、肉体の細胞の細部に至るまでが歪つに膨れ上がる。
「あ、ああああ!!! い、痛い!! 痛い痛い痛い!!」
更にそこへソフィの目が金色に輝くと、魔法の効力がそこから更に『数段階』跳ね上がった。
「あ」
次の瞬間『ユーミル』の眼球が顔から吹き飛び、肉体は膨れ上がった風船が爆発するようにはじけ飛んだ。
――大賢者『ユーミル』は『大魔王ソフィ』から恐ろしい殺意を向けられて、死の瞬間には自身にあれ程の『痛み』があった事も忘れて、死ぬ事でこの『化け物』から解放されるのだと悟った『ユーミル』は笑みを浮かべて絶命していった。
金色を纏った状態のユーミルは魔族であれば、大魔王領域の上位に位置する程だが、それでも大魔王ソフィの手によってあっさりと絶命して、この世に別れを告げる事となった。
ソフィは既に塵も残らず粉々に消し飛ばされた『ユーミル』の居た場所を見据えていた。
その冷酷な視線は対象であった『ユーミル』だけに留まらず、仲間である筈の九大魔王達でさえ、恐ろしさに身の毛がよだつ程であった。
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