第553話　故郷、アレルバレル

　ソフィ達はリラリオの世界からシスの『概念跳躍アルム・ノーティア』によって、アレルバレルの世界へと戻ってきた。

　この世界へと跳んできた者達は、ソフィ、リーネ、ラルフ、シス、ユファ、ディアトロス、ブラスト、イリーガル、リーシャ、レア、ミューテリア、ベア、そしてソフィに忠誠を誓ったロードを含めた『リラリオ』の魔物達である。

「ここがソフィが居た世界なのね……」

　リーネは感慨深そうに『アレルバレル』の世界の景色を見る。

　シスの『概念跳躍アルム・ノーティア』で跳んだ場所は『アレルバレル』の世界の魔界と呼ばれる魔族達の大陸にある一つだった。

「うむ。しかしそんなに離れていたワケでは無いというのに、酷く懐かしく感じるものだ」

　ソフィは目を細めて『魔界』の地を懐かしそうに見るのだった。

「おいソフィ。お主の身体が元に戻っておるぞ？」

　懐かしそうに辺りを見ていたソフィに声を掛けるディアトロスだった。

「ほ、ほんとだ！　いつものソフィ様のお姿ですよ！」

　ディアトロスの言葉に続けるように、リーシャも声をあげた。

「何？」

　ソフィはしげしげと自身の両手を見たり、顔を撫でたりし始めるのだった。

「え……。本当にソフィって子供の姿じゃなかったんだ！？」

（……いつものソフィも可愛いけど、こっちはこっちでイケメンじゃない……っ！）

　リーネはどちらかと言うと整った顔立ちのイケメンよりも、小さくて可愛らしい子供が好みだったが、愛するソフィに限ってはどちらも等しく好みの顔に見えるようであった。

「うむ。やはり我らにとっては、このお姿こそソフィ様と思えるな」

「ああ」

　イリーガルとブラストも同意見だったようで、互いに頷き合うのだった。

「しかし原因が分からぬままだったな。我がリラリオの世界に行く事で何かの因果が働いておるのか？」

　首を傾げながら不思議そうにするソフィであった。

「ソフィ、注意をしろ。何かがここに向かって来るぞ」

　こちらに向かってくる者達を察知したディアトロスは、ソフィに声を掛けるのだった。

「ああ……。どうやら客のようだな」

「え？」

　『九大魔王』達やレア。そしてソフィがこちらに向かってくる者達の魔力を感知した後に、少し遅れてラルフやベア達が戦闘態勢をとり始める横で『リーネ』はまだ状況をよく理解しておらず、戸惑う声をあげるのだった。

「リーシャ、イリーガル。お主達はリーネを頼むぞ」

「御意！」

「分かりました！」

　リーシャとイリーガルはソフィの言葉を受けた後、すぐにリーネを守り立つのだった。そしてその直後に三体の魔族が姿を現すのだった。

　…………

「お前ら、何処の部隊だ？」

「ここは分・隊・長・である『レルナート』様の持ち場だぞ？」

「レルナート？　ディアトロス、お主は知っておるか？」

「いや、知らぬな」

「おいおい、お前達も『煌聖の教団こうせいきょうだん』の分・隊・だろう？　こんな魔界の最果てに居るような奴が本・隊・のワケがないだろうしな」

「『煌聖の教団こうせいきょうだん』。どうやらこいつらは組織の奴らじゃぞ」

　どうやら『煌聖の教団こうせいきょうだん』とは、ミラの『組織』の名称のようであった。

　ソフィはミラ達の組織を単に『組織』と呼んでいたため、組織名を言われてもピンとこず『ディアトロス』に説明されてようやく理解したのだった。

「ほう。こんな魔界の端側にも奴らが住み着いておるのか」

　ソフィはミラの『組織』だという事を知った途端。怒りを孕んだ声色に変わったのだった。

「何をゴチャゴチャいってやがる！　なんだ？　人間もいるぞ」

　最初に喋っていた二人とは別の魔族が、リーネやラルフを見て驚いた様子で口を開いた。

「ああ。どうやら俺達の教団と違う魔族が、人間を攫ってきたってところのようだな」

「構わねぇ。こいつらは俺達の持ち場に侵入した奴らってことでやっちまおう」

　そう言うと三体の魔族達は『青・』を纏い始めるのだった。

「やれやれ、戻って早々か」

　ソフィは溜息を吐きながら、ローブのフードから顔を出す。

「なっ！？」

「こ、こいつは！」

「だ、大魔王ソフィ！？」

「悪いが、お主ら組織の連中は……」

　――『根絶やしにさせてもらう』。

　ソフィが右手を振り切った瞬間――。

　 『煌聖の教団こうせいきょうだん』の魔族達の首が一斉にちぎれ飛ぶのだった。