最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第552話 ミラの悪夢
明朝に男は寝室のベッドの上で、夢から逃げるように目を覚ます。
夢の内容はここ最近見る事が多くなったあの悪夢だった。
――彼の名前は『ミラ』。
大魔王ソフィが居なくなったアレルバレルの世界で『魔界』『人間界』をほぼ手中に収めた大賢者であり『アレルバレル』の世界をソフィに代わって支配するために作られた『最大組織』の総帥である。
組織の目的である大魔王ソフィを長年かけた緻密な計画によって、別世界へ追放する事に成功し、後はソフィの魔王軍の残党を始末するだけだった。
化け物が選んだ『九大魔王』達は、誰もが厄介な力を持つ大魔王達だったが、ミラを含む組織の者達の協力の元『ディアトロス』『イリーガル』『ブラスト』『リーシャ』以外は、ソフィとは違う方法で別々の世界へと引き離す事に成功した。
残された九大魔王達も一筋縄でいかない者達ではあるが、大魔王の上位に位置する『ハワード』や『ルビリス』といった組織の幹部達や、同盟を結んでいる『ヌー』。この組織の傘下に居る各同盟部隊達に加えて、大賢者である自分が協力し合えば、完全にこの『アレルバレル』の世界の支配が出来る筈だった。
計画の八割以上が達成されてもう計画は成功だと考えていたミラだったが、そこにまさかのイレギュラーの存在がこの世界に紛れ込み、そのイレギュラーの存在の所為で成功する筈だった計画は、見事に頓挫させられてしまった。
そして何よりそのイレギュラーの存在が、大賢者ミラにとっての憧れの存在の『エルシス』だったのである。
「チッ、またあの時の夢か。何度目だ……」
忌々しいとばかりに舌打ちをしながらベッドから起き上がった彼は、今見た悪夢の所為で寝汗が酷い事に気づき、服を着替えた後に洗面所へ向かうのだった。
彼がエルシスと戦った後からもう毎日のように、あの日の戦闘が夢に出てくるのである。夢の中での戦闘は途中までは優勢なのだが、結局はあの日と同じく最後には自分が敗北してやられるのである。何度も変わらない結果を味わい絶望と共に目を覚ますのが、あの日から毎日繰り返されるミラであった。
これだけ何度も同じ夢を見るのは、彼自身がそれだけエルシスとの再会を意識しているからであるのは分かっていた。
「全く。これまでの全てが水の泡か……」
エルシスとの戦いから組織としての活動は、一時中断する事に決めた彼だったが、そろそろ再開しなければと顔を洗いながら考え始めるのだった。
現在ソフィが率いていた魔王軍のほとんどは壊滅しており、本来の計画通りと言えばその通りであり、残っていた『智謀』や『処刑』といった九大魔王達もこの世界から姿を消している。
しかし明確に違う点は『ディアトロス』達は自分達が跳ばしたのでは無く、エルシスの手によってこの世界から姿を消したという事である。
自分達だけが扱えていた筈の『世界間転移』の魔法『概念跳躍』。
計画の要であったこの魔法をあろうことか、天才である大賢者『エルシス』にトレースされてしまった。
大賢者エルシスは他者の魔法の『発動羅列』を一度見ただけで全て記憶し、トレースした他人の魔法であっても自分のやりやすいように改良して、完全に自分の魔法にしてしまう事が出来るのである。
エルシスに『概念跳躍』をトレースされてしまった以上は、もうソフィを別世界への追放という計画は完全に無意味である。
この瞬間にもエルシスの手によって、苦労して別世界へ跳ばした大魔王ソフィを連れて、再び『アレルバレル』の世界に戻ってくる可能性もゼロではない。
まさに寝ても覚めても悪夢がミラを襲ってくるような現実に、流石の彼であっても多大なストレスを抱える事となった。
「そろそろ計画を再開せねばなるまい」
組織の幹部である『ハワード』が姿を消して何処かの世界に行ったのだろうと様子を見ていたが、今日まで一切連絡がない以上は組織からもう離れたか、あるいは『普通は考えられない事だが』、エルシスを追って、あの化け物が居る『リラリオ』という世界へ向かい消されたかである。
如何に『ハワード』が大魔王で上位以上の強さを誇り『九大魔王』とも渡り合える強さを持っているとはいっても、大魔王ソフィという化け物には必ず負ける事であろう。
大魔王ソフィには何があっても正面から堂々と戦ってはいけない。それこそがこの世界の常識であり、自然の摂理のようなものなのである。
ひとまず計画の再開を知らせる為に、ヌーに連絡を取らなければならないだろう。ミラは溜息を吐きながら部屋を出ていくのだった。
夢の内容はここ最近見る事が多くなったあの悪夢だった。
――彼の名前は『ミラ』。
大魔王ソフィが居なくなったアレルバレルの世界で『魔界』『人間界』をほぼ手中に収めた大賢者であり『アレルバレル』の世界をソフィに代わって支配するために作られた『最大組織』の総帥である。
組織の目的である大魔王ソフィを長年かけた緻密な計画によって、別世界へ追放する事に成功し、後はソフィの魔王軍の残党を始末するだけだった。
化け物が選んだ『九大魔王』達は、誰もが厄介な力を持つ大魔王達だったが、ミラを含む組織の者達の協力の元『ディアトロス』『イリーガル』『ブラスト』『リーシャ』以外は、ソフィとは違う方法で別々の世界へと引き離す事に成功した。
残された九大魔王達も一筋縄でいかない者達ではあるが、大魔王の上位に位置する『ハワード』や『ルビリス』といった組織の幹部達や、同盟を結んでいる『ヌー』。この組織の傘下に居る各同盟部隊達に加えて、大賢者である自分が協力し合えば、完全にこの『アレルバレル』の世界の支配が出来る筈だった。
計画の八割以上が達成されてもう計画は成功だと考えていたミラだったが、そこにまさかのイレギュラーの存在がこの世界に紛れ込み、そのイレギュラーの存在の所為で成功する筈だった計画は、見事に頓挫させられてしまった。
そして何よりそのイレギュラーの存在が、大賢者ミラにとっての憧れの存在の『エルシス』だったのである。
「チッ、またあの時の夢か。何度目だ……」
忌々しいとばかりに舌打ちをしながらベッドから起き上がった彼は、今見た悪夢の所為で寝汗が酷い事に気づき、服を着替えた後に洗面所へ向かうのだった。
彼がエルシスと戦った後からもう毎日のように、あの日の戦闘が夢に出てくるのである。夢の中での戦闘は途中までは優勢なのだが、結局はあの日と同じく最後には自分が敗北してやられるのである。何度も変わらない結果を味わい絶望と共に目を覚ますのが、あの日から毎日繰り返されるミラであった。
これだけ何度も同じ夢を見るのは、彼自身がそれだけエルシスとの再会を意識しているからであるのは分かっていた。
「全く。これまでの全てが水の泡か……」
エルシスとの戦いから組織としての活動は、一時中断する事に決めた彼だったが、そろそろ再開しなければと顔を洗いながら考え始めるのだった。
現在ソフィが率いていた魔王軍のほとんどは壊滅しており、本来の計画通りと言えばその通りであり、残っていた『智謀』や『処刑』といった九大魔王達もこの世界から姿を消している。
しかし明確に違う点は『ディアトロス』達は自分達が跳ばしたのでは無く、エルシスの手によってこの世界から姿を消したという事である。
自分達だけが扱えていた筈の『世界間転移』の魔法『概念跳躍』。
計画の要であったこの魔法をあろうことか、天才である大賢者『エルシス』にトレースされてしまった。
大賢者エルシスは他者の魔法の『発動羅列』を一度見ただけで全て記憶し、トレースした他人の魔法であっても自分のやりやすいように改良して、完全に自分の魔法にしてしまう事が出来るのである。
エルシスに『概念跳躍』をトレースされてしまった以上は、もうソフィを別世界への追放という計画は完全に無意味である。
この瞬間にもエルシスの手によって、苦労して別世界へ跳ばした大魔王ソフィを連れて、再び『アレルバレル』の世界に戻ってくる可能性もゼロではない。
まさに寝ても覚めても悪夢がミラを襲ってくるような現実に、流石の彼であっても多大なストレスを抱える事となった。
「そろそろ計画を再開せねばなるまい」
組織の幹部である『ハワード』が姿を消して何処かの世界に行ったのだろうと様子を見ていたが、今日まで一切連絡がない以上は組織からもう離れたか、あるいは『普通は考えられない事だが』、エルシスを追って、あの化け物が居る『リラリオ』という世界へ向かい消されたかである。
如何に『ハワード』が大魔王で上位以上の強さを誇り『九大魔王』とも渡り合える強さを持っているとはいっても、大魔王ソフィという化け物には必ず負ける事であろう。
大魔王ソフィには何があっても正面から堂々と戦ってはいけない。それこそがこの世界の常識であり、自然の摂理のようなものなのである。
ひとまず計画の再開を知らせる為に、ヌーに連絡を取らなければならないだろう。ミラは溜息を吐きながら部屋を出ていくのだった。
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