最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第551話 元の世界へ
『ラルグ』魔国領にあるソフィの屋敷。組織の連中によって荒らされた『アレルバレル』の世界の安寧を取り戻す為に『ソフィ』が一時的にこの世界から去るという事を知った者達と、ソフィと共に『アレルバレル』の世界へ向かう者達が屋敷に集まっていた。
元の世界へ戻るには時魔法の一種である『概念跳躍』という『世界間』を移動する『神域領域の』魔法の会得が必要である。
これまでは『レア』や『ユファ』といった単身で移動出来る者はいたのだが、それでは『ソフィ』自身が『アレルバレル』の世界へ向かう事が出来ない為に、現状ではまだ『アレルバレル』の世界に戻る事は不可能だと思われていた。
この『概念跳躍』が『フルーフ』という大魔王に作られた当時は、自分のみを別世界へと跳ばす事を可能とする『魔法』であった。
『レパート』の支配者である大魔王フルーフと、同郷であるユファが気が遠くなる程の年月かけて、ようやく使えるようになった『概念跳躍』でさえ、自分一人しか跳ばす事が出来ない程の魔法だったのである。
だが、組織の総帥であるミラが『概念跳躍』の『魔法』を創り出したその『フルーフ』から『発動羅列』を読み解いて進化させた事によって、現在この魔法は詠唱者の魔力の規模に応じた人数を同時に跳ばす事を可能としたのである。
それ程の超高難度の『時魔法』を別世界の大魔王である『ソフィ』が『理』を覚えて一から使えるようになるまでは、かなりの時間を要すると考えられていたが『概念跳躍』を使えるレアを狙った組織の者達が、この世界に襲撃に来た事で状況は一変したのであった。
それは何と『レア』を守ろうとその場に居合わせたシスが、組織の者達が使っていた『概念跳躍』の『発動羅列』を『ミラ』のように読み解いて、完璧に『トレース』をして自分のモノにしてみせたのである。
同時に別世界へ複数の者達を跳ばせる進化した『概念跳躍』を扱える者は、この世界では『シス』本人とそのシスの中に眠る『エルシス』の二人だけであった。
(※かつてはレアも独自に『概念跳躍』を進化させることに成功していて、他者を引き連れて世界間移動を使えていたが現在は『代替身体』の身体になってしまい『概念跳躍』を使える程の膨大な魔力もなく、更には『代替身体』の身体にレア自身が馴染んでいない為に、単身で跳ぶ以外に使う事が出来ない)。
現在ソフィの屋敷に居る者達を同時に全員を『アレルバレル』の世界へと送る事を可能とするだけの魔力を有しているのは『シス』だけといえた。
それはつまり結論となるが、シスが居ればこの瞬間にでも『ソフィ』達を直ぐに『アレルバレル』の世界へと戻す事が可能であるという事である。
『ブラスト』や『ディアトロス』達がこの世界へ来る前までのソフィは『アレルバレル』の世界へ残してきていた『九大魔王』達さえ居れば『組織』の者達を抑えこめると考えていて、自分が直ぐに戻らなくても問題はそこまではないだろうとある種、楽観気味に考えていたのである。
しかし『ディアトロス』がその『組織』の者達に捕縛されたという話から、ソフィは予想以上に組織の者達が力をつけていた事を知り、これ以上放置しておくと『アレルバレル』の世界の『魔界』や『人間界』は奴らの手で滅茶苦茶にされてしまうだろうと考えたのである。
――だからこそソフィは、元の世界へ戻る事を決意したのだった。
「それでは我達は少しこの世界から離れる。お主達には本当に世話になった」
ソフィは集まってくれたこの世界の者達に、別れの言葉を告げ始める。
もちろんこれで今生の別れというわけではなく、組織の者達との争いが終息した後は、またこちらの世界にも戻ってくるつもりではある。だが、それがいつになるかは分からないため、仮初の挨拶ではあるが別れの言葉を紡ぐソフィであった。
「ソフィさんが戻られるまでの留守の間。この国は私どもがしっかりと守らせていただきます」
先日『ラルグ』の魔国王となった『レルバノン』がそう言うと、新たにこの国の『フィクス』となった『レヴトン』や『エルザ』達が頭を下げるのだった。
「俺には詳しい事情は分からないが、面倒な奴を片付けないといけないんだろう? さっさと終わらせて戻ってこいよ。お前に世話になった借りをそのままにさせやがったら、俺は許さないからな」
『トウジン』魔国王の『シチョウ』は、ソフィの肩に手を置きながらそう言うのだった。
「ああ。戻ってきたら、またお前の統治への想いを聞かせてくれ」
ソフィはシチョウを一国の統治者としての実力を認めている。シチョウへ告げた言葉は、嘘偽りがなかった。そして修験者の恰好をしている男もまた『ソフィ』に話し掛ける。
「小生にもお主と当分会えなくなるという事は理解した。そんなお主に小生から渡すものがあるのだが……」
サイヨウはそう言いながらソフィに、何かを手渡してきた。
「む、サイヨウ。これは何だ?」
ソフィは手渡された『青い札』を見ながら、何なのかをサイヨウに尋ねる。
「それは小生達の国の……、いや、まぁお守りみたいなものだ。ソフィよ、小生を忘れんでくれよ?」
サイヨウは渡した札の説明をしようとしたが、そこで取りやめて話を変えて、ソフィに自分の事を忘れるなとそう告げて神妙に頷くのだった。
「うむ、勿論だとも。お主にはシスの件でも世話になった。お主に会えたおかげで今も元の世界へ戻れる手筈が整ったといえるだろう」
「小生に出来る事はあまりないかもしれぬが、困ったことがあればいつでも札を通せ。お主にであれば小生はいつでも協力は惜しまぬつもりだ」
「ああ。感謝するぞ。サイヨウよ」
二人は互いに手を握り、まるで長年の親友が気持ちを一つにするかのように頷き合うのだった。
「うむ。ではそろそろ始めようか?」
そう言うとサイヨウは前回と同じように、エルシスを表に出そうとシスの方を見る。
「サイヨウさん。それはもう大丈夫ですよ」
しかしサイヨウが術を使おうとするのをシスは制止するのだった。
「もう今の私には、サイヨウさんの術は必要ありません」
そう言うとシスは次の瞬間には虚空を見つめたかと思うと、彼女の身体に術も無しに『エルシス』が宿るのであった
「つまりこういう事なんだ。彼女の想いを尊重して少しの間だけ、ボクも出させてもらう事になった。でも大丈夫だよ。この身体は彼女のものだという事は今後も変わらないからね。あくまで彼女の許しを得た時にだけ、ほんの少しの時間を使わせてもらうだけだからね」
二人の間で固い絆のようなモノを、聞くもの達に感じさせるのだった。
どうやらシスとエルシスは互いに互いを尊重して、彼らの中で取り決めを行ったようであった。
「カッカッカ! これは見事としか言いようがないな。一つの身体に二つの魂が宿れば自然に奪い合うようものだと思っておったが、本当にお主達の両名共からは『聖』しか感じられぬ。真に素晴らしい!」
『サイヨウ・サガラ』はここまでの相性のいい魂達を見た事がないとばかりに驚いて、そして上機嫌にそう呟くのだった。
「ソフィ。いつでもボク達は『アレルバレル』の世界へ行けるよ? 準備が出来たらいつでも言ってくれ」
もうこんな風に『親友』と接することは出来ないと思っていたソフィは、今の話を聞いて嬉しそうに頷いて口を開くのだった。
「うむ。それでは挨拶はここまでにしようか。皆、本当に世話になったな。本当に感謝する」
ソフィはこの場に集まった一人一人の顔を見ながら、お礼の言葉を掛けていく。そしてソフィを見送ろうと集まった者達もソフィに返事を返していく。
――こうして遂にソフィは『リラリオ』の世界から『アレルバレル』という元の居た世界へと戻る事になるのだった。
……
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この『概念跳躍』が『フルーフ』という大魔王に作られた当時は、自分のみを別世界へと跳ばす事を可能とする『魔法』であった。
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だが、組織の総帥であるミラが『概念跳躍』の『魔法』を創り出したその『フルーフ』から『発動羅列』を読み解いて進化させた事によって、現在この魔法は詠唱者の魔力の規模に応じた人数を同時に跳ばす事を可能としたのである。
それ程の超高難度の『時魔法』を別世界の大魔王である『ソフィ』が『理』を覚えて一から使えるようになるまでは、かなりの時間を要すると考えられていたが『概念跳躍』を使えるレアを狙った組織の者達が、この世界に襲撃に来た事で状況は一変したのであった。
それは何と『レア』を守ろうとその場に居合わせたシスが、組織の者達が使っていた『概念跳躍』の『発動羅列』を『ミラ』のように読み解いて、完璧に『トレース』をして自分のモノにしてみせたのである。
同時に別世界へ複数の者達を跳ばせる進化した『概念跳躍』を扱える者は、この世界では『シス』本人とそのシスの中に眠る『エルシス』の二人だけであった。
(※かつてはレアも独自に『概念跳躍』を進化させることに成功していて、他者を引き連れて世界間移動を使えていたが現在は『代替身体』の身体になってしまい『概念跳躍』を使える程の膨大な魔力もなく、更には『代替身体』の身体にレア自身が馴染んでいない為に、単身で跳ぶ以外に使う事が出来ない)。
現在ソフィの屋敷に居る者達を同時に全員を『アレルバレル』の世界へと送る事を可能とするだけの魔力を有しているのは『シス』だけといえた。
それはつまり結論となるが、シスが居ればこの瞬間にでも『ソフィ』達を直ぐに『アレルバレル』の世界へと戻す事が可能であるという事である。
『ブラスト』や『ディアトロス』達がこの世界へ来る前までのソフィは『アレルバレル』の世界へ残してきていた『九大魔王』達さえ居れば『組織』の者達を抑えこめると考えていて、自分が直ぐに戻らなくても問題はそこまではないだろうとある種、楽観気味に考えていたのである。
しかし『ディアトロス』がその『組織』の者達に捕縛されたという話から、ソフィは予想以上に組織の者達が力をつけていた事を知り、これ以上放置しておくと『アレルバレル』の世界の『魔界』や『人間界』は奴らの手で滅茶苦茶にされてしまうだろうと考えたのである。
――だからこそソフィは、元の世界へ戻る事を決意したのだった。
「それでは我達は少しこの世界から離れる。お主達には本当に世話になった」
ソフィは集まってくれたこの世界の者達に、別れの言葉を告げ始める。
もちろんこれで今生の別れというわけではなく、組織の者達との争いが終息した後は、またこちらの世界にも戻ってくるつもりではある。だが、それがいつになるかは分からないため、仮初の挨拶ではあるが別れの言葉を紡ぐソフィであった。
「ソフィさんが戻られるまでの留守の間。この国は私どもがしっかりと守らせていただきます」
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『トウジン』魔国王の『シチョウ』は、ソフィの肩に手を置きながらそう言うのだった。
「ああ。戻ってきたら、またお前の統治への想いを聞かせてくれ」
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サイヨウはそう言いながらソフィに、何かを手渡してきた。
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サイヨウは渡した札の説明をしようとしたが、そこで取りやめて話を変えて、ソフィに自分の事を忘れるなとそう告げて神妙に頷くのだった。
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「小生に出来る事はあまりないかもしれぬが、困ったことがあればいつでも札を通せ。お主にであれば小生はいつでも協力は惜しまぬつもりだ」
「ああ。感謝するぞ。サイヨウよ」
二人は互いに手を握り、まるで長年の親友が気持ちを一つにするかのように頷き合うのだった。
「うむ。ではそろそろ始めようか?」
そう言うとサイヨウは前回と同じように、エルシスを表に出そうとシスの方を見る。
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「もう今の私には、サイヨウさんの術は必要ありません」
そう言うとシスは次の瞬間には虚空を見つめたかと思うと、彼女の身体に術も無しに『エルシス』が宿るのであった
「つまりこういう事なんだ。彼女の想いを尊重して少しの間だけ、ボクも出させてもらう事になった。でも大丈夫だよ。この身体は彼女のものだという事は今後も変わらないからね。あくまで彼女の許しを得た時にだけ、ほんの少しの時間を使わせてもらうだけだからね」
二人の間で固い絆のようなモノを、聞くもの達に感じさせるのだった。
どうやらシスとエルシスは互いに互いを尊重して、彼らの中で取り決めを行ったようであった。
「カッカッカ! これは見事としか言いようがないな。一つの身体に二つの魂が宿れば自然に奪い合うようものだと思っておったが、本当にお主達の両名共からは『聖』しか感じられぬ。真に素晴らしい!」
『サイヨウ・サガラ』はここまでの相性のいい魂達を見た事がないとばかりに驚いて、そして上機嫌にそう呟くのだった。
「ソフィ。いつでもボク達は『アレルバレル』の世界へ行けるよ? 準備が出来たらいつでも言ってくれ」
もうこんな風に『親友』と接することは出来ないと思っていたソフィは、今の話を聞いて嬉しそうに頷いて口を開くのだった。
「うむ。それでは挨拶はここまでにしようか。皆、本当に世話になったな。本当に感謝する」
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