最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第546話 リディアの特異の力
本来エルシスの『聖なる滅撃』は、魔法が発動した瞬間に邪悪な心を持った魔物を消滅させる魔法であるが、魔物以外を対象とした場合、もう一つの効力が発揮される。その効果とは周囲一帯に大爆発を起こす『極大魔法』となるのである。
その威力は大魔王領域に居る者であっても何らかの防衛手段をとらなければ、危険と感じる程の絶大な威力を持つ魔法である。
「ちょ、ちょっと……? 何て規模の魔法を使うのよ! あの子を殺す気!?」
ユファは慌ててリディアを守ろうと、自らを盾にするつもりで駆け出そうとする。
『青』のオーラを纏って『障壁』を展開しながら更に『次元防壁』発動の準備を開始する。高速詠唱をしながら、同時に魔力の『スタック』を始めようとするが、そこで突如としてユファの身体が動かなくなり、ユファの身体の周囲に纏われていた『青』さえもが強制的に解除されてしまうのだった。
「なっ!?」
何が起きたか分からずに空に浮いているエルシスを見上げると、金色に発光する目をユファに向けているエルシスが居た。
どうやらユファの視線を察したエルシスは、ゆっくりと首を横に振る。
――『彼への試験の邪魔をしないでね』という意味合いが込められているようだった。
(……な、何を考えているの!? こんな規模の魔法。一つ間違えたらこの大陸が、跡形も残らないのよ!?)
『魔』にかけてはかなりの慧眼を持つ『災厄の大魔法使い』の異名を持つユファは、エルシスの放った魔法の規模大きさを一瞬で理解して、その魔法が如何に危険な物かを感じ取るのだった。
「……」
この『極大魔法』を向けられた張本人である『リディア』は、静かに刀に手を置いて精神統一を始める。彼は恐れを感じていないのかとユファが感じる程に、信じられない程の落ち着きを見せている。こんな規模の魔法が迫ってくれば、力が有る魔族であっても冷静ではいられない程であるのに拘らず、リディアは何でもないといわんばかりである。
そしてリディアに接近していた極大魔法の光が、遂にリディアの目の前まで迫ってきた。その時『リディア』の目が見開かれたかと思うと身体を纏っていた『金色のオーラ』全てが彼の持つ『刀』へと集まっていき、そしてその刀をリディアは真横に振り切った。
――リディアの『特異』の力が放たれた。
『聖なる滅撃』は、リディアの光り輝く『刀』によって、真っ二つに斬られた後に静かに消え去るのだった。
その様子を空から眺めていたエルシスは、笑みを浮かべて頷く。
…………
「う、嘘でしょう!? 『次元防壁』を使わずに、あの規模の魔法を消し去った!?」
エルシスの『聖動捕縛』の効力がなくなり、自由に動けるようになったユファは、驚きに目を丸くしながら信じられないとばかりに口を開くのだった。
そして何事も無かったかの如く、リディアは『刀のオーラ』を解いて鞘に刀をしまい始める。
空からエルシスはゆっくりと降りてきて、リディアの前で着地を果たすと口を開いた。
「お見事。とても素晴らしい魔力のコントロールだった。あんな芸当を見せられたら、君には膨大な魔力を消費するような『魔法』を簡単には使えなくなるよ」
エルシスは大したものだとばかりにそう言うと共に、リディアの覚悟の程を受け取るのだった。
「礼を言うぞ。お前のおかげでこれまで以上に、簡単に斬る事が出来るようになった」
過去にソフィの『神域魔法』や、キーリの極大魔法『龍滅』といったものを斬ってきたリディアだが、今回の『聖なる滅撃』を斬る事が出来た事は、今まで以上にリディアの『特異』の質が上がったと呼べるものであり、それはまさに『金色の力』を完全に掌握出来たといってもいいモノだろう。
「うん『金色のオーラ』は完全にモノにしたようだし『特異』の方も問題はないね? 後はそうだな君の『魔瞳』の使用時間を増やそうか?」
「な、何だと?」
『金色の使い方』と『魔力』の使い方まで教えてくれた事で、ここで『エルシス』の修行は終わりなのだとリディアは思っていたために『エルシス』のまだ続きがあるような口ぶりのその言葉は、リディアにとっては予想外で驚きの声をあげるのだった。
「今の君でもその『魔瞳』を最小限に使う事で、寿命を削る事もなく使用はできるだろうけど、それでは戦闘面に不安が残るだろう? 特にソフィと戦いたいと思うのであれば余計にね?」
「それはとてもありがたい事だが、俺の魔力で今より効果時間を増やす事が出来るのか?」
「今まで通りの君の『魔力』では当然に出来ないだろうね」
「な、何?」
いまいち要領の得ないエルシスの言葉に、リディアは眉を寄せるのだった。
「物事は同じ側面のみで考えてはいけないよ。最終的に結果が伴えばいいのだから、無理だと思う方法をずっと続けるのではなくて、あらゆる可能性を一つずつ試していき、成功しそうだと思う事を上手く組み合わせていけばいいんだ」
言っている事は分かるが、その論理を実際に試すのは難しい。
エルシスの言葉は今のリディアにとっては、絵空事のように聞こえてしまうのだった。
「今の君は『金色のオーラ』で魔力値も普段の10倍程になっているよね? 少し前までの君は金色の効力を百パーセント引き出す事が出来なかった。今度はその引き出す事の出来なかった『分量』で身体を向上させたりして上手く賄えるようになれば『支配の目』に費やす負担分を減らす事が出来るだろう」
「当然これからもっと精密な魔力コントロールを行えるようにならなければいけないし、身につける事は多くあるし簡単ではないだろうけどね」
(……魔力コントロールというものは『魔』を司る者にとっては『至上命題』といっていい。私でもまだ完全な『魔力』のコントロールを出来てはいないし、彼が完全に行えるという事は寿命から考えても不可能だとは思うけど、オーラを纏う事や魔瞳に費やすという観点にのみ思考を置くような、いわゆる妥協点を作ってこれから研鑽を続けるのならば、非常に彼にとっては、効果的な修行になるでしょうね)
リディアは自分が『支配の目』を使う時間というものをもう伸ばせないものだと決めつけていた。この魔瞳を教えた『レキ』は、リディアが扱えるようになった時点でそれ以上の事は教えてはくれなかった。
――『技』というモノを覚えさせる事に重点を置くレキと、自在に使えるようになる事に重点を置くエルシスとの指導の明確な違いが、そこにはあるといえるのであった。
その威力は大魔王領域に居る者であっても何らかの防衛手段をとらなければ、危険と感じる程の絶大な威力を持つ魔法である。
「ちょ、ちょっと……? 何て規模の魔法を使うのよ! あの子を殺す気!?」
ユファは慌ててリディアを守ろうと、自らを盾にするつもりで駆け出そうとする。
『青』のオーラを纏って『障壁』を展開しながら更に『次元防壁』発動の準備を開始する。高速詠唱をしながら、同時に魔力の『スタック』を始めようとするが、そこで突如としてユファの身体が動かなくなり、ユファの身体の周囲に纏われていた『青』さえもが強制的に解除されてしまうのだった。
「なっ!?」
何が起きたか分からずに空に浮いているエルシスを見上げると、金色に発光する目をユファに向けているエルシスが居た。
どうやらユファの視線を察したエルシスは、ゆっくりと首を横に振る。
――『彼への試験の邪魔をしないでね』という意味合いが込められているようだった。
(……な、何を考えているの!? こんな規模の魔法。一つ間違えたらこの大陸が、跡形も残らないのよ!?)
『魔』にかけてはかなりの慧眼を持つ『災厄の大魔法使い』の異名を持つユファは、エルシスの放った魔法の規模大きさを一瞬で理解して、その魔法が如何に危険な物かを感じ取るのだった。
「……」
この『極大魔法』を向けられた張本人である『リディア』は、静かに刀に手を置いて精神統一を始める。彼は恐れを感じていないのかとユファが感じる程に、信じられない程の落ち着きを見せている。こんな規模の魔法が迫ってくれば、力が有る魔族であっても冷静ではいられない程であるのに拘らず、リディアは何でもないといわんばかりである。
そしてリディアに接近していた極大魔法の光が、遂にリディアの目の前まで迫ってきた。その時『リディア』の目が見開かれたかと思うと身体を纏っていた『金色のオーラ』全てが彼の持つ『刀』へと集まっていき、そしてその刀をリディアは真横に振り切った。
――リディアの『特異』の力が放たれた。
『聖なる滅撃』は、リディアの光り輝く『刀』によって、真っ二つに斬られた後に静かに消え去るのだった。
その様子を空から眺めていたエルシスは、笑みを浮かべて頷く。
…………
「う、嘘でしょう!? 『次元防壁』を使わずに、あの規模の魔法を消し去った!?」
エルシスの『聖動捕縛』の効力がなくなり、自由に動けるようになったユファは、驚きに目を丸くしながら信じられないとばかりに口を開くのだった。
そして何事も無かったかの如く、リディアは『刀のオーラ』を解いて鞘に刀をしまい始める。
空からエルシスはゆっくりと降りてきて、リディアの前で着地を果たすと口を開いた。
「お見事。とても素晴らしい魔力のコントロールだった。あんな芸当を見せられたら、君には膨大な魔力を消費するような『魔法』を簡単には使えなくなるよ」
エルシスは大したものだとばかりにそう言うと共に、リディアの覚悟の程を受け取るのだった。
「礼を言うぞ。お前のおかげでこれまで以上に、簡単に斬る事が出来るようになった」
過去にソフィの『神域魔法』や、キーリの極大魔法『龍滅』といったものを斬ってきたリディアだが、今回の『聖なる滅撃』を斬る事が出来た事は、今まで以上にリディアの『特異』の質が上がったと呼べるものであり、それはまさに『金色の力』を完全に掌握出来たといってもいいモノだろう。
「うん『金色のオーラ』は完全にモノにしたようだし『特異』の方も問題はないね? 後はそうだな君の『魔瞳』の使用時間を増やそうか?」
「な、何だと?」
『金色の使い方』と『魔力』の使い方まで教えてくれた事で、ここで『エルシス』の修行は終わりなのだとリディアは思っていたために『エルシス』のまだ続きがあるような口ぶりのその言葉は、リディアにとっては予想外で驚きの声をあげるのだった。
「今の君でもその『魔瞳』を最小限に使う事で、寿命を削る事もなく使用はできるだろうけど、それでは戦闘面に不安が残るだろう? 特にソフィと戦いたいと思うのであれば余計にね?」
「それはとてもありがたい事だが、俺の魔力で今より効果時間を増やす事が出来るのか?」
「今まで通りの君の『魔力』では当然に出来ないだろうね」
「な、何?」
いまいち要領の得ないエルシスの言葉に、リディアは眉を寄せるのだった。
「物事は同じ側面のみで考えてはいけないよ。最終的に結果が伴えばいいのだから、無理だと思う方法をずっと続けるのではなくて、あらゆる可能性を一つずつ試していき、成功しそうだと思う事を上手く組み合わせていけばいいんだ」
言っている事は分かるが、その論理を実際に試すのは難しい。
エルシスの言葉は今のリディアにとっては、絵空事のように聞こえてしまうのだった。
「今の君は『金色のオーラ』で魔力値も普段の10倍程になっているよね? 少し前までの君は金色の効力を百パーセント引き出す事が出来なかった。今度はその引き出す事の出来なかった『分量』で身体を向上させたりして上手く賄えるようになれば『支配の目』に費やす負担分を減らす事が出来るだろう」
「当然これからもっと精密な魔力コントロールを行えるようにならなければいけないし、身につける事は多くあるし簡単ではないだろうけどね」
(……魔力コントロールというものは『魔』を司る者にとっては『至上命題』といっていい。私でもまだ完全な『魔力』のコントロールを出来てはいないし、彼が完全に行えるという事は寿命から考えても不可能だとは思うけど、オーラを纏う事や魔瞳に費やすという観点にのみ思考を置くような、いわゆる妥協点を作ってこれから研鑽を続けるのならば、非常に彼にとっては、効果的な修行になるでしょうね)
リディアは自分が『支配の目』を使う時間というものをもう伸ばせないものだと決めつけていた。この魔瞳を教えた『レキ』は、リディアが扱えるようになった時点でそれ以上の事は教えてはくれなかった。
――『技』というモノを覚えさせる事に重点を置くレキと、自在に使えるようになる事に重点を置くエルシスとの指導の明確な違いが、そこにはあるといえるのであった。
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