最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第542話 リディアの隠している力
『金色のオーラ』の今の使い方では本来の上昇率を得る事が出来ないとエルシスに教えられて、石を使って魔力のコントロールを行う事になったのだが、なかなか上手く行かなかった。
「魔力というのは魔法使いや賢者といった魔法を使って戦う者だけが、使うものだと思われがちだが、実際はそんな事はないんだよ? 武器を使って戦う君のような近接主体の剣士にも必要なものなんだ」
何度やっても上手く行かずに苛立ちを見せ始めたリディアに向けて、エルシスは呟き始めた。
「本当は幼少の頃に『魔力』を使ってオーラのコントロールの仕方を学んでいくものなんだけど、君は不幸にも自分の周りに、オーラを使う存在と出会う事なく『金色のオーラ』の力を体現してしまったようだ。その所為で魔力の重要性が分からずに魔力を高める努力をする事はなく、金色で具現化した刀で戦うという事に重点を置いて、修行を続けてきたのだろうね」
「……」
リディアは黙ってエルシスの言葉に耳を傾け続ける。
「まあ、普通の人間は自分の決めた武器に、目先が行ってしまうものだろうし。魔法を使うという狙いでもなければ魔力を高める努力をしようとは、思わないのかもしれないけどね。でも君は今より強くなりたいのであるならば、今後は魔力を一番に扱えるようにならなければならないよ? そうしないと君の目標のソフィには、絶対に勝てない」
ソフィの名が出た瞬間に、ぴくりと刀を握るリディアの手が動いた。
「厳しい事を言う前に知っていてもらいたい事があるんだけど、ボクの目から見て今を生きる者達の数人はソフィに届き得る可能性があると見ているんだ。その中の一人が君なのだよ」
リディアは上を知る者に、認められるような言葉をもらい、高揚感に包まれる。
「でもね。そんな君であっても今のままではソフィの足元にも及ばない。今後戦いに於ける全ての必要な戦術を学び、それら全てを完璧な水準まで数十年程掛けて尚、それでもソフィには届かないかもしれない」
リディアはあらゆる努力をして、ようやくここまで強くなれた。今居る領域であっても、並の者どころか『中位』の大魔王と呼ばれる存在を相手にしても勝ち越せる程である。
そんなリディアを見て目の前に立つ『シス』は、ソフィには少しでも努力を怠れば辿り着くことは出来ないだろうと、断言するような言葉を放つのだった。
「ソフィが強いという事は俺もよく分かっている。だが一つお前に聞きたい。俺は果たして『お前より』強くなる事が出来るのか?」
リディアは目の前に居る存在は、ソフィに届かないまでも、圧倒的な力を秘めていると睨んでいる。そんなエルシスに追いつけないようでは彼が言うように、ソフィには到底敵う道理は無いだろう。
「ふふ、まさかそんな質問をされるとは思っていなかったから、少しびっくりしたよ。そうだね。君に嘘をついても仕方がないからね。今ボクが思っている事を包み隠さず話してあげよう」
――キミならボクに勝てるだろうね。
「ほ、本当なのか?」
「言っただろう? 君に嘘をついても仕方がないとさ。安易な戦力値や魔力値の大きさで物事は測れない強さを君は持っている」
「例えば君は、魔法を斬るという力を持っているね?」
どうやら闘技場で『キーリ』の魔法を斬った時の事を言っているようだった。
「ああ。それも金色とやらの力で、刀に纏った時だけだがな」
「多分。それが君の持つ特異の力なんだろうね」
「特異?」
オウム返しをするリディアに、エルシスは頷きを見せる。
「金色のオーラとは単に戦力値や魔力値を上昇させるモノじゃない。それぞれ体現者には『特異』の力が宿っている筈だ。それが君の場合は『魔法を斬る』という『特異の力』がそれに当たるだろうね」
「……」
(確かにソフィの魔法でさえ、俺は斬った事があるからな……)
リディアはエルシスの言葉から、過去のソフィとの戦いを思い浮かべる。
「ボクは魔法を使って戦う賢者だからね。非常に君とは本来は相性が悪いんだ。だから君がもう少し成長して戦う技術を学んで行けば、相当にボクは不利になるだろうね」
魔法主体で戦うエルシスと、相手の極大魔法ですら何でも斬ってしまうというのであれば、それはリディアの方に分があるのは当然と言えた。
「でももちろん理由はそれだけじゃないよ。例えば君はもう一つ他に、隠している力があるのだろう?」
『リディア』は驚きで心臓が跳ねたような気がした。確かに『リディア』にはまだ誰にも見せていない力をレキによって身につけさせられている。しかし何故それを見せたことが無い筈の『エルシス』は知っていたのだろうか。眉を寄せながら今まで以上に『エルシス』を警戒して睨む『リディア』だった。
……
……
……
「魔力というのは魔法使いや賢者といった魔法を使って戦う者だけが、使うものだと思われがちだが、実際はそんな事はないんだよ? 武器を使って戦う君のような近接主体の剣士にも必要なものなんだ」
何度やっても上手く行かずに苛立ちを見せ始めたリディアに向けて、エルシスは呟き始めた。
「本当は幼少の頃に『魔力』を使ってオーラのコントロールの仕方を学んでいくものなんだけど、君は不幸にも自分の周りに、オーラを使う存在と出会う事なく『金色のオーラ』の力を体現してしまったようだ。その所為で魔力の重要性が分からずに魔力を高める努力をする事はなく、金色で具現化した刀で戦うという事に重点を置いて、修行を続けてきたのだろうね」
「……」
リディアは黙ってエルシスの言葉に耳を傾け続ける。
「まあ、普通の人間は自分の決めた武器に、目先が行ってしまうものだろうし。魔法を使うという狙いでもなければ魔力を高める努力をしようとは、思わないのかもしれないけどね。でも君は今より強くなりたいのであるならば、今後は魔力を一番に扱えるようにならなければならないよ? そうしないと君の目標のソフィには、絶対に勝てない」
ソフィの名が出た瞬間に、ぴくりと刀を握るリディアの手が動いた。
「厳しい事を言う前に知っていてもらいたい事があるんだけど、ボクの目から見て今を生きる者達の数人はソフィに届き得る可能性があると見ているんだ。その中の一人が君なのだよ」
リディアは上を知る者に、認められるような言葉をもらい、高揚感に包まれる。
「でもね。そんな君であっても今のままではソフィの足元にも及ばない。今後戦いに於ける全ての必要な戦術を学び、それら全てを完璧な水準まで数十年程掛けて尚、それでもソフィには届かないかもしれない」
リディアはあらゆる努力をして、ようやくここまで強くなれた。今居る領域であっても、並の者どころか『中位』の大魔王と呼ばれる存在を相手にしても勝ち越せる程である。
そんなリディアを見て目の前に立つ『シス』は、ソフィには少しでも努力を怠れば辿り着くことは出来ないだろうと、断言するような言葉を放つのだった。
「ソフィが強いという事は俺もよく分かっている。だが一つお前に聞きたい。俺は果たして『お前より』強くなる事が出来るのか?」
リディアは目の前に居る存在は、ソフィに届かないまでも、圧倒的な力を秘めていると睨んでいる。そんなエルシスに追いつけないようでは彼が言うように、ソフィには到底敵う道理は無いだろう。
「ふふ、まさかそんな質問をされるとは思っていなかったから、少しびっくりしたよ。そうだね。君に嘘をついても仕方がないからね。今ボクが思っている事を包み隠さず話してあげよう」
――キミならボクに勝てるだろうね。
「ほ、本当なのか?」
「言っただろう? 君に嘘をついても仕方がないとさ。安易な戦力値や魔力値の大きさで物事は測れない強さを君は持っている」
「例えば君は、魔法を斬るという力を持っているね?」
どうやら闘技場で『キーリ』の魔法を斬った時の事を言っているようだった。
「ああ。それも金色とやらの力で、刀に纏った時だけだがな」
「多分。それが君の持つ特異の力なんだろうね」
「特異?」
オウム返しをするリディアに、エルシスは頷きを見せる。
「金色のオーラとは単に戦力値や魔力値を上昇させるモノじゃない。それぞれ体現者には『特異』の力が宿っている筈だ。それが君の場合は『魔法を斬る』という『特異の力』がそれに当たるだろうね」
「……」
(確かにソフィの魔法でさえ、俺は斬った事があるからな……)
リディアはエルシスの言葉から、過去のソフィとの戦いを思い浮かべる。
「ボクは魔法を使って戦う賢者だからね。非常に君とは本来は相性が悪いんだ。だから君がもう少し成長して戦う技術を学んで行けば、相当にボクは不利になるだろうね」
魔法主体で戦うエルシスと、相手の極大魔法ですら何でも斬ってしまうというのであれば、それはリディアの方に分があるのは当然と言えた。
「でももちろん理由はそれだけじゃないよ。例えば君はもう一つ他に、隠している力があるのだろう?」
『リディア』は驚きで心臓が跳ねたような気がした。確かに『リディア』にはまだ誰にも見せていない力をレキによって身につけさせられている。しかし何故それを見せたことが無い筈の『エルシス』は知っていたのだろうか。眉を寄せながら今まで以上に『エルシス』を警戒して睨む『リディア』だった。
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