最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第540話 ソフィの大ファンの男
露店のおやじに別れを告げた後、ソフィ達は冒険者ギルドへ向かい始めた。
ソフィの隣に居るリーネは先程からえらく上機嫌であり、イヤリングを触りながら鼻歌を歌っている。余程にソフィに似合っていると言われた事が、嬉しかったのだろう。その様子を見ながらソフィも満更では無いようで、薄く笑みを浮かべるのだった。
そして二人がギルドに向かって歩いていると、冒険者ギルドが見えてきた。
「おお。どうやらついたようだが、懐かしいな。しかし前より建物が少し大きくなったか?」
「確かにそうね。とりあえず入ってみましょうか?」
ソフィとリーネは冒険者ギルドに入ろうとするが、そこで声を掛けられるのだった。
「すみませーん! 今ギルドの中は混雑しておりまして、後でお呼びしますのでこちらで整理券を受け取ってお待ちいただけますか」
「どういうことだ?」
「ここって商業施設とか娯楽施設じゃなくて、冒険者ギルドなんでしょ?」
二人は係員らしき職員の男の言葉に、同時に口を開くのだった。
「申し訳ありません。素材の買い取りの方でしたか? もしそのようでしたら、お持ちいただいた魔物の素材をこちらの併設している買取場の方にお並び願えますでしょうか」
どうやら隣の大きな建物は、素材の買い取り用の会場のようだった。
「いや。我らはギルドに用というより、ここのギルド長である『ディラック』に用があって来たのだ」
ソフィがそう言うと最近この町の冒険者ギルドの職員になったのであろう男が首を傾げた。
「ギルド長のお知り合いの方でしたか、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
どうやらローブを深くかぶっているソフィには、気付かなかったようだ。ソフィは周囲を確認しながらそっと顔を露出させる。すると名前を聞いてきたギルド職員は、信じられないとばかりに目を大きく見開いた後、まさかという表情を浮かべながら静かに口を開いた。
「あ……! 貴方はまさか『破壊神』の異名を持つ冒険者『ソフィ』様では!?」
どうやら周囲がザワついていた事と職員の声が小さかった為に、こちらに注目する者は居なかった。
「うむ。余り目立ちたくはないのでもうよいだろうか? 我が来た事をディラックに伝えて欲しいのだが、構わないか?」
ソフィが丁寧にそう言うと職員の男は、何故か涙を浮かべながら何度も頷き、慌てて中に入っていった。
リーネは報告に向かった係りの男の様子に首を傾げたが、直ぐにソフィの方を見直して口を開いた。
「凄い盛況ぶりだとは聞いていたけれど、この時間でこんなに混雑してるなんてね」
リーネは元々この町に住んでいた事があり、昔のグランの冒険者ギルドの様子を知っている。朝一番や、ピーク時であればそこそこ人の出入りは昔からあったが、こんな午後になってからの時間で整理券が必要になる程の混雑だとまでは思わなかった。
「クックック。ギルドが大人気だというのはどうやら本当の事のようだな」
ソフィはどこか感慨深そうに、この町の冒険者ギルドを見るのだった。
「でも異常過ぎないかしら? 中に入れない冒険者ギルドなんて、この大陸で一番大きな街のサシスでも無かったわよ」
あちらは元々大きな建物ではあるが、それでも利用人口はこちらの方が、多いのではないかと感じられる程であった。
「お、お待たせしました! ソフィ様! 裏口からどうぞお入り下さい」
そう言って戻ってきた職員の男は今出てきた入り口からではなく、ソフィ達を裏口に案内してくれるようであった。
「中から鍵は開けてありますので、どうぞお入りになってください。入られましたら、右手にある階段から上がっていただき、二階の一番手前口にある部屋をお尋ねください。そちらがギルド長の部屋となっておりますので!」
「うむ分かった。忙しい時にすまぬな」
「いえいえ! お会い出来てとても嬉しかったです。と、ところで、宜しければ握手をしていただけないでしょうか、お願いします!」
失礼を承知でそれでもソフィに、握手してもらいたかったのだろう。興奮気味に顔を赤くしながら、ソフィの前に手を差し出してきた。
「全然かまわぬぞ、取り次いでもらって礼を言う」
ソフィは職員の手を握りながらそう言うと、感極まったような表情をしながら何度も何度も礼を言って頭を下げるのだった。
そして握手をしてもらいながら興奮した様子で男は、ソフィに自身の身の上話を始めるのだった。どうやらこの男は『ミールガルド』大陸に『シーマ』達が攻めてきた時、ソフィの戦いぶりを見て感動してそのソフィがこの町のギルドに所属していたという事を聞いて、彼はこの町のギルドの職員になったそうだった。職員になるには倍率が高く、何度も職員になる事を断られたが、数か月経って苦労の末にようやく『グラン』の町の冒険者ギルドの職員になれたのだという。
しかしソフィはその時にはもう別の大陸へ行ってしまったと知り、彼は絶望に包まれる事になった。そしてこのギルドの仕事の忙しさも相まって、辞めたいと思うようになり、近々田舎へ帰ろうとしていた矢先に『ソフィ』に出会えたらしかった。
「まさか会う事を諦めかけていたソフィ様に会えるなんて。もう本当に今日は最高の日です!」
嬉しそうにソフィの手を両手で握りながら、興奮気味に溜息を吐く職員の男だった。
「う、うむ。それは会えてよかった。 お主も苦労はあるだろうが、折角こうして苦労して職員になったのだからもう少しだけよく考えるとよいぞ? 我がお主の事をディラックに伝えてよくしてもらうように伝えておこう」
ソフィに優しい言葉を掛けられた職員は、再び目尻に涙を溜めながら頭を下げるのだった。
…………
「それでは私は仕事に戻ります。本当にありがとうございました! ギルド長は一番手前の部屋ですので、お間違えないようにお願いします!」
そう言って説明をした後、職員の男は裏道を通ってから、整理券を配っていた場所の表入り口の方へ戻っていった。
ソフィの隣に居るリーネは先程からえらく上機嫌であり、イヤリングを触りながら鼻歌を歌っている。余程にソフィに似合っていると言われた事が、嬉しかったのだろう。その様子を見ながらソフィも満更では無いようで、薄く笑みを浮かべるのだった。
そして二人がギルドに向かって歩いていると、冒険者ギルドが見えてきた。
「おお。どうやらついたようだが、懐かしいな。しかし前より建物が少し大きくなったか?」
「確かにそうね。とりあえず入ってみましょうか?」
ソフィとリーネは冒険者ギルドに入ろうとするが、そこで声を掛けられるのだった。
「すみませーん! 今ギルドの中は混雑しておりまして、後でお呼びしますのでこちらで整理券を受け取ってお待ちいただけますか」
「どういうことだ?」
「ここって商業施設とか娯楽施設じゃなくて、冒険者ギルドなんでしょ?」
二人は係員らしき職員の男の言葉に、同時に口を開くのだった。
「申し訳ありません。素材の買い取りの方でしたか? もしそのようでしたら、お持ちいただいた魔物の素材をこちらの併設している買取場の方にお並び願えますでしょうか」
どうやら隣の大きな建物は、素材の買い取り用の会場のようだった。
「いや。我らはギルドに用というより、ここのギルド長である『ディラック』に用があって来たのだ」
ソフィがそう言うと最近この町の冒険者ギルドの職員になったのであろう男が首を傾げた。
「ギルド長のお知り合いの方でしたか、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
どうやらローブを深くかぶっているソフィには、気付かなかったようだ。ソフィは周囲を確認しながらそっと顔を露出させる。すると名前を聞いてきたギルド職員は、信じられないとばかりに目を大きく見開いた後、まさかという表情を浮かべながら静かに口を開いた。
「あ……! 貴方はまさか『破壊神』の異名を持つ冒険者『ソフィ』様では!?」
どうやら周囲がザワついていた事と職員の声が小さかった為に、こちらに注目する者は居なかった。
「うむ。余り目立ちたくはないのでもうよいだろうか? 我が来た事をディラックに伝えて欲しいのだが、構わないか?」
ソフィが丁寧にそう言うと職員の男は、何故か涙を浮かべながら何度も頷き、慌てて中に入っていった。
リーネは報告に向かった係りの男の様子に首を傾げたが、直ぐにソフィの方を見直して口を開いた。
「凄い盛況ぶりだとは聞いていたけれど、この時間でこんなに混雑してるなんてね」
リーネは元々この町に住んでいた事があり、昔のグランの冒険者ギルドの様子を知っている。朝一番や、ピーク時であればそこそこ人の出入りは昔からあったが、こんな午後になってからの時間で整理券が必要になる程の混雑だとまでは思わなかった。
「クックック。ギルドが大人気だというのはどうやら本当の事のようだな」
ソフィはどこか感慨深そうに、この町の冒険者ギルドを見るのだった。
「でも異常過ぎないかしら? 中に入れない冒険者ギルドなんて、この大陸で一番大きな街のサシスでも無かったわよ」
あちらは元々大きな建物ではあるが、それでも利用人口はこちらの方が、多いのではないかと感じられる程であった。
「お、お待たせしました! ソフィ様! 裏口からどうぞお入り下さい」
そう言って戻ってきた職員の男は今出てきた入り口からではなく、ソフィ達を裏口に案内してくれるようであった。
「中から鍵は開けてありますので、どうぞお入りになってください。入られましたら、右手にある階段から上がっていただき、二階の一番手前口にある部屋をお尋ねください。そちらがギルド長の部屋となっておりますので!」
「うむ分かった。忙しい時にすまぬな」
「いえいえ! お会い出来てとても嬉しかったです。と、ところで、宜しければ握手をしていただけないでしょうか、お願いします!」
失礼を承知でそれでもソフィに、握手してもらいたかったのだろう。興奮気味に顔を赤くしながら、ソフィの前に手を差し出してきた。
「全然かまわぬぞ、取り次いでもらって礼を言う」
ソフィは職員の手を握りながらそう言うと、感極まったような表情をしながら何度も何度も礼を言って頭を下げるのだった。
そして握手をしてもらいながら興奮した様子で男は、ソフィに自身の身の上話を始めるのだった。どうやらこの男は『ミールガルド』大陸に『シーマ』達が攻めてきた時、ソフィの戦いぶりを見て感動してそのソフィがこの町のギルドに所属していたという事を聞いて、彼はこの町のギルドの職員になったそうだった。職員になるには倍率が高く、何度も職員になる事を断られたが、数か月経って苦労の末にようやく『グラン』の町の冒険者ギルドの職員になれたのだという。
しかしソフィはその時にはもう別の大陸へ行ってしまったと知り、彼は絶望に包まれる事になった。そしてこのギルドの仕事の忙しさも相まって、辞めたいと思うようになり、近々田舎へ帰ろうとしていた矢先に『ソフィ』に出会えたらしかった。
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嬉しそうにソフィの手を両手で握りながら、興奮気味に溜息を吐く職員の男だった。
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