最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第464話 組織の最高戦力達
「クックック。そうかそうか若造よ。やられそうになって慌てて手下を呼び寄せたというところかのぉ?」
煽るように告げる『智謀』の言葉だが、ルビリスは余裕たっぷりと言った様子で笑みすら浮かべながら口を開いた。
「いえいえ、私が呼び寄せたわけではありませんよ『智謀』殿。元々この場所に集まる予定だったのですが私が早く着きすぎただけのことです」
冷静にそう告げる『ルビリス』だったが、続けざまに彼に続けてセルバスが口を開いた。
「老いぼれに木偶の坊。そしてガキの三体だけなら、俺達が来る前には片付いていると思ったがな」
そう言ってセルバスは嗤いながら『ディアトロス』達を馬鹿にするのだった。
「な、なんだとぉっ!?」
「落ち着けリーシャ」
「くぅっ……!!」
リベイルとのやり取りですでに怒り心頭といった様子のリーシャは、セルバスの物言いに我慢の限界が近づいていた。ディアトロスが溜息を吐きながら、再びリーシャを落ち着かせる。
「それにしても『九大魔王』の御方達がこの大陸に居るのは知っておりましたが、例の『対象』である彼女がこの場に居たのには驚きましたよ」
眼鏡を掛けた組織の最高幹部の男『リベイル』は、精霊女王『ミューテリア』と『イリーガル』の配下と共に居る『レア』の姿を見ながらそう告げるのだった。
「お! 本当じゃねぇか! あいつをぶっ殺せばあの『化け物』はもう二度とここに戻ってこれねぇんだよなぁ?」
レア達の存在に気づいたセルバスは、レアの方に顔を向ける。
(何で元の世界に戻った筈のレアがここに居るの!?)
リーシャもまたその時にようやくレアがこちらへ戻ってきて居た事を知る。
そしてルビリスの言葉にリーシャは我慢ならないと声をあげる。
「てめぇら! レアに手を出してみやがれ! 全身ズタズタに切り刻んでやるからな!!」
リーシャはレアに手を出されるかもしれないと考えた瞬間、これまでよりも更に激昂して普段の言葉遣いとは違う怒号をセルバスに発するのであった。
「ああ? クソガキが誰に向かって吠えてんだぁ? 雑魚がいちいち噛みついてくるんじゃねぇよ!」
その言葉についにリーシャはキレた――。
ディアトロスが再度声を出してリーシャを止める前に、リーシャの体が幾重にもブレるように速度が増していき、セルバスに襲い掛かっていこうと、脚に力を込めて動き出そうとするのだが。
「動かないで――」
ひゅっと『リーシャ』の首元に手を翳す大賢者『ユーミル』。
「え」
熱くなっていたリーシャは、自身が急速に冷えて行くのを感じた。
九大魔王の中でも随一の速度を持つリーシャが動くより速く、リーシャの首元に手を置いたユーミルであった。
そしてその殺意にリーシャは動けなくなった。
(い、今動いていたら、あたしの首は確実に飛んでいた)
リーシャは額に脂汗を浮かべながら、ユーミルという人間が単なる人間じゃないと悟るのだった。
「カカッ! おいおい威勢がいいのは最初だけか? 情けねぇなオイ! 見た目通りのガキじゃねぇか!」
セルバスはそう言って、かかかっとリーシャを嘲け笑う。
「くっ……!」
悔しそうにするリーシャを見て、愉悦に浸るセルバスだった。
「さて、その辺にしましょうか。セルバスさん」
事の成り行きを見守って口を閉ざしていた司令官の『ルビリス』がそう言うと、笑みを浮かべていたセルバスは真顔に戻っていく。
「リベイルさんが仰ったようにこの世界にどうして例の『対象』であった彼女が居るのかは存じませんが非常に好都合なことです。我々は大魔王ソフィをこの世界へ戻したくないだけなのですが、素直に彼女を譲り渡して頂けませんかねぇ?」
ルビリスは『九大魔王』達全員にそう告げるのだった
「おい!! ふざけ……っ!?」
「動かないでと言っているでしょう? 貴方には考える脳みそが入っていないの?」
ルビリスの言葉に再び頭に血が上り、襲い掛かろうとするリーシャをユーミルは言葉だけで止めてみせた。
「リーシャさん、今の状況をよく考えて下さいね? 『魔王軍』を束ねる絶対的強者である大魔王ソフィはもう居らず、貴方達『九大魔王』もまたその多くが既に、我々の手によってこの世界から跳ばされているのです。残った貴方達だけでは到底我々には適わない。違いますか?」
そう言ってルビリスは抑揚をつけるような話し方をしながら、大袈裟に手ぶり身振りといったジェスチャーを交えながら分かりやすく現状を伝え始める。
「そして今あなた方は我々の前で、取り押さえられている立場にある訳ですよ? よーく考えて口出しをしなさい。さもなければ一生世界から除外させられてしまいますよ?」
一呼吸置いて話すルビリスは、三者の表情を観察して再び口を開いた。
「しかしあのレアという魔族を私たちに渡して下さるのであれば、貴方たちの命は保証して差し上げましょう! そうですね、それに加えて今ご決断をして頂けるのならば『女帝』である『エイネ』さんを再びこの世界へ戻して差し上げても宜しいですよ? 我々に二度と逆らわずに静かに暮らすと約束してくだされば、無傷でお返し致しましょう!」
ルビリスの言葉に眼鏡のブリッジ部分を上げながら、リベイルは静かに笑った。
「そ、そんな話に……、の、のるわけが……!」
レアを差し出す事で『エイネ』を『リーシャ』の元へ帰してくれるというルビリスの提案に、リーシャは頭をぶんぶんと振って断ろうとする。
「そうですか? 貴方が断れば私の配下に今すぐ連絡して『エイネ』さんを八つ裂きにした後に貴方の前に骸を差し出す事になりますが……。それでも本当にいいのですか?」
「……!」
レアもエイネもどちらも大事で大事で仕方がないリーシャは、泣きそうな表情を浮かべて言葉を出せなくなるのだった。
そこに今まで黙していたディアトロスが口を開いた。
「お主ら少しばかりワシらを見縊ってはおらぬか?」
「リベイルさん!」
ディアトロスから魔力の高なりを感じたルビリスは、一瞬でリーシャから視線を外して、ディアトロスの背後に居るリベイルの名を呼ぶ。
リベイルは司令官ルビリスの言葉に頷いて『神聖魔法』を無詠唱で放ってみせた。
――すると一筋の光が照らされたかと思うと、その光がディアトロスの手足を拘束する。
「ちぃっ! また『神聖魔法』か!」
ディアトロスが使おうとしていた魔法をリベイルの放つ『神聖魔法』に即座に封じられたため、今度はイリーガルが助けに入ろうと動こうとするが、そこでイリーガルと同じ程の体格をしている大男のセルバスが圧し留める。
そしてリーシャが行動を起こす前に、ユーミルもまた『神聖魔法』を使ってリベイルと同じように光がリーシャを包み込んで手や足を封じるのだった。
――『神聖魔法』はかつて大賢者『エルシス』が編み出した『理』から生まれた『魔法』であり、すでに現代では失われし魔法として『根源魔法』として扱われている。
そしてその『神聖魔法』の多くは『魔族に対して』恐ろしい程の威力をもたらす。
まさに力の強い魔族を力の弱い人間でも捕縛出来るように特化された魔法が多く残されており、この世界でソフィに次ぐ程の魔力を持っていた『ディアトロス』でさえ、簡単に捕縛を許してしまう程であった。
「さてそれではもう一度聞いておきましょうか? これが最後です。返答次第で貴方達をこの場で殺して永遠に『除外』しますから、心してお答え下さいね」
…………
ルビリスが最後通告をしている最中、聴覚が優れる魔族であるレアもまた『ルビリス』達の会話に耳を傾けていた。
「リーシャ!! このままじゃリーシャが死んじゃう! そ、そんな事をされるくらいなら、私が代わりに……!」
大好きなリーシャが目の前で殺されてしまう事に比べたら、自分が身代わりになる方がマシと考えてそう口にするのだった。
精霊女王ミューテリアの制止を振り切って、金色を纏いながらレアは上空へ飛翔していく。
レアは自らを犠牲にして、組織の者達の言葉通りに捕まる事でリーシャ達を助けるようとするのであった――。
「さあ、あの子を差し出すと言いなさい? そうすれば貴方もエイネさんもこの場に居る誰もが死なずに済むのですよ?」
「あ……、あたしは……!」
リーシャは意を決して口を開こうとする。
――まさに、その時であった。
……
……
……
煽るように告げる『智謀』の言葉だが、ルビリスは余裕たっぷりと言った様子で笑みすら浮かべながら口を開いた。
「いえいえ、私が呼び寄せたわけではありませんよ『智謀』殿。元々この場所に集まる予定だったのですが私が早く着きすぎただけのことです」
冷静にそう告げる『ルビリス』だったが、続けざまに彼に続けてセルバスが口を開いた。
「老いぼれに木偶の坊。そしてガキの三体だけなら、俺達が来る前には片付いていると思ったがな」
そう言ってセルバスは嗤いながら『ディアトロス』達を馬鹿にするのだった。
「な、なんだとぉっ!?」
「落ち着けリーシャ」
「くぅっ……!!」
リベイルとのやり取りですでに怒り心頭といった様子のリーシャは、セルバスの物言いに我慢の限界が近づいていた。ディアトロスが溜息を吐きながら、再びリーシャを落ち着かせる。
「それにしても『九大魔王』の御方達がこの大陸に居るのは知っておりましたが、例の『対象』である彼女がこの場に居たのには驚きましたよ」
眼鏡を掛けた組織の最高幹部の男『リベイル』は、精霊女王『ミューテリア』と『イリーガル』の配下と共に居る『レア』の姿を見ながらそう告げるのだった。
「お! 本当じゃねぇか! あいつをぶっ殺せばあの『化け物』はもう二度とここに戻ってこれねぇんだよなぁ?」
レア達の存在に気づいたセルバスは、レアの方に顔を向ける。
(何で元の世界に戻った筈のレアがここに居るの!?)
リーシャもまたその時にようやくレアがこちらへ戻ってきて居た事を知る。
そしてルビリスの言葉にリーシャは我慢ならないと声をあげる。
「てめぇら! レアに手を出してみやがれ! 全身ズタズタに切り刻んでやるからな!!」
リーシャはレアに手を出されるかもしれないと考えた瞬間、これまでよりも更に激昂して普段の言葉遣いとは違う怒号をセルバスに発するのであった。
「ああ? クソガキが誰に向かって吠えてんだぁ? 雑魚がいちいち噛みついてくるんじゃねぇよ!」
その言葉についにリーシャはキレた――。
ディアトロスが再度声を出してリーシャを止める前に、リーシャの体が幾重にもブレるように速度が増していき、セルバスに襲い掛かっていこうと、脚に力を込めて動き出そうとするのだが。
「動かないで――」
ひゅっと『リーシャ』の首元に手を翳す大賢者『ユーミル』。
「え」
熱くなっていたリーシャは、自身が急速に冷えて行くのを感じた。
九大魔王の中でも随一の速度を持つリーシャが動くより速く、リーシャの首元に手を置いたユーミルであった。
そしてその殺意にリーシャは動けなくなった。
(い、今動いていたら、あたしの首は確実に飛んでいた)
リーシャは額に脂汗を浮かべながら、ユーミルという人間が単なる人間じゃないと悟るのだった。
「カカッ! おいおい威勢がいいのは最初だけか? 情けねぇなオイ! 見た目通りのガキじゃねぇか!」
セルバスはそう言って、かかかっとリーシャを嘲け笑う。
「くっ……!」
悔しそうにするリーシャを見て、愉悦に浸るセルバスだった。
「さて、その辺にしましょうか。セルバスさん」
事の成り行きを見守って口を閉ざしていた司令官の『ルビリス』がそう言うと、笑みを浮かべていたセルバスは真顔に戻っていく。
「リベイルさんが仰ったようにこの世界にどうして例の『対象』であった彼女が居るのかは存じませんが非常に好都合なことです。我々は大魔王ソフィをこの世界へ戻したくないだけなのですが、素直に彼女を譲り渡して頂けませんかねぇ?」
ルビリスは『九大魔王』達全員にそう告げるのだった
「おい!! ふざけ……っ!?」
「動かないでと言っているでしょう? 貴方には考える脳みそが入っていないの?」
ルビリスの言葉に再び頭に血が上り、襲い掛かろうとするリーシャをユーミルは言葉だけで止めてみせた。
「リーシャさん、今の状況をよく考えて下さいね? 『魔王軍』を束ねる絶対的強者である大魔王ソフィはもう居らず、貴方達『九大魔王』もまたその多くが既に、我々の手によってこの世界から跳ばされているのです。残った貴方達だけでは到底我々には適わない。違いますか?」
そう言ってルビリスは抑揚をつけるような話し方をしながら、大袈裟に手ぶり身振りといったジェスチャーを交えながら分かりやすく現状を伝え始める。
「そして今あなた方は我々の前で、取り押さえられている立場にある訳ですよ? よーく考えて口出しをしなさい。さもなければ一生世界から除外させられてしまいますよ?」
一呼吸置いて話すルビリスは、三者の表情を観察して再び口を開いた。
「しかしあのレアという魔族を私たちに渡して下さるのであれば、貴方たちの命は保証して差し上げましょう! そうですね、それに加えて今ご決断をして頂けるのならば『女帝』である『エイネ』さんを再びこの世界へ戻して差し上げても宜しいですよ? 我々に二度と逆らわずに静かに暮らすと約束してくだされば、無傷でお返し致しましょう!」
ルビリスの言葉に眼鏡のブリッジ部分を上げながら、リベイルは静かに笑った。
「そ、そんな話に……、の、のるわけが……!」
レアを差し出す事で『エイネ』を『リーシャ』の元へ帰してくれるというルビリスの提案に、リーシャは頭をぶんぶんと振って断ろうとする。
「そうですか? 貴方が断れば私の配下に今すぐ連絡して『エイネ』さんを八つ裂きにした後に貴方の前に骸を差し出す事になりますが……。それでも本当にいいのですか?」
「……!」
レアもエイネもどちらも大事で大事で仕方がないリーシャは、泣きそうな表情を浮かべて言葉を出せなくなるのだった。
そこに今まで黙していたディアトロスが口を開いた。
「お主ら少しばかりワシらを見縊ってはおらぬか?」
「リベイルさん!」
ディアトロスから魔力の高なりを感じたルビリスは、一瞬でリーシャから視線を外して、ディアトロスの背後に居るリベイルの名を呼ぶ。
リベイルは司令官ルビリスの言葉に頷いて『神聖魔法』を無詠唱で放ってみせた。
――すると一筋の光が照らされたかと思うと、その光がディアトロスの手足を拘束する。
「ちぃっ! また『神聖魔法』か!」
ディアトロスが使おうとしていた魔法をリベイルの放つ『神聖魔法』に即座に封じられたため、今度はイリーガルが助けに入ろうと動こうとするが、そこでイリーガルと同じ程の体格をしている大男のセルバスが圧し留める。
そしてリーシャが行動を起こす前に、ユーミルもまた『神聖魔法』を使ってリベイルと同じように光がリーシャを包み込んで手や足を封じるのだった。
――『神聖魔法』はかつて大賢者『エルシス』が編み出した『理』から生まれた『魔法』であり、すでに現代では失われし魔法として『根源魔法』として扱われている。
そしてその『神聖魔法』の多くは『魔族に対して』恐ろしい程の威力をもたらす。
まさに力の強い魔族を力の弱い人間でも捕縛出来るように特化された魔法が多く残されており、この世界でソフィに次ぐ程の魔力を持っていた『ディアトロス』でさえ、簡単に捕縛を許してしまう程であった。
「さてそれではもう一度聞いておきましょうか? これが最後です。返答次第で貴方達をこの場で殺して永遠に『除外』しますから、心してお答え下さいね」
…………
ルビリスが最後通告をしている最中、聴覚が優れる魔族であるレアもまた『ルビリス』達の会話に耳を傾けていた。
「リーシャ!! このままじゃリーシャが死んじゃう! そ、そんな事をされるくらいなら、私が代わりに……!」
大好きなリーシャが目の前で殺されてしまう事に比べたら、自分が身代わりになる方がマシと考えてそう口にするのだった。
精霊女王ミューテリアの制止を振り切って、金色を纏いながらレアは上空へ飛翔していく。
レアは自らを犠牲にして、組織の者達の言葉通りに捕まる事でリーシャ達を助けるようとするのであった――。
「さあ、あの子を差し出すと言いなさい? そうすれば貴方もエイネさんもこの場に居る誰もが死なずに済むのですよ?」
「あ……、あたしは……!」
リーシャは意を決して口を開こうとする。
――まさに、その時であった。
……
……
……
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