最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第463話 組織の最高幹部

「いやはや驚きましたね『』は一人だけではありませんでしたか」

 『智謀』を少々侮っていたと認めたルビリスはそう口にする。

「カッカッカ! まだまだ主程度に遅れを取る程老いぼれては居らぬぞ」

 勝ち誇る『ディアトロス』の言葉に舌打ちをする『ルビリス』であった。

「たった三体まで減らして尚、やはり『九大魔王』達を集わせると厄介です。これは更に分散させておかなければいけませんねぇ?」

 ルビリスがそう言うと自らを包囲している『ディアトロス』『イリーガル』『リーシャ』の背後の空間に亀裂が入り、その空間から人影が現れ始める。

「!?」

 彼らが慌てて振り返るが次の瞬間――。

 ――神域『時』魔法、『概念跳躍アルム・ノーティア』。

「ま、まずい! お主ら! 直ぐにこの場から離れるんじゃ!」

 ディアトロスの言葉を聞いた瞬間、イリーガルとリーシャは一瞬で行動を開始して突如現れた『組織』の者達が放った『時魔法タイム・マジック』から、何とか逃れる事に成功する。

「やれやれ、誰一人として跳ばす事が出来ないとはね」

 背後からディアトロスを魔法で別世界へ跳ばそうとしたが、あっさりと躱された事でそう呟き、掛けている眼鏡のズレを直し始める。

「どうやら司令官殿が戦っていた相手は、皆優秀だったらしいですね」

 リーシャ側の背後に現れた『』が、舌打ちをしながらそう口にする。

「前に跳ばした時は、上手くいったんだがなぁ?」

 そしてイリーガルを跳ばそうとした、筋肉隆々の魔族が最後に口を開いた。

 ――この場に現れた彼らは『』であった。

 …………

「上手く隙をついたと思ったんですがねぇ」

「ワシらに包囲されたのはわざとでも言いたいのか若造?」

 ルビリスが嗤いながらそう言うと、ディアトロスが煽るように口を開いた。

「ふふ。まぁそんなところですよ。彼らが来るのは分かっていたのでね。しかし先程も『』さんが仰っていたように、一人くらい跳ばせると思っていたのですが。残念です」

 ルビリスがの方に、視線をやりながらそう口にする。

「前回のようには上手く行きませんでしたね」

 リベイルと呼ばれた眼鏡を掛けている男がそう言うと、リーシャは何かを思い出したのか、リベイルの方を睨みつける。

「あ! あんた……! 集落に居たあたし達を襲ってかぁ!!」

 みるみるリーシャの表情が変わっていき、今にも襲い掛かろうとする。

「ん? ああ、貴方は確かあの時の集落に居た……」

 リベイルは自分を睨みつけるリーシャの顔を思い出したのかそう告げる。

「あ、あんただけは、絶対に許さない!」

 リーシャの言葉を聞いてリベイルは溜息を吐く。

「そういえば『女帝』は、未熟な貴方を庇って私の魔法で跳ばされたんでしたっけね? いやぁ、あの時は居てくれて助かりましたよ」

 そういって厭らしい笑みを浮かべながらリベイルは、眼鏡のブリッジを人差し指で上げる。

「な、んだとぉ!!」

「落ち着けリーシャよ、奴はお主を怒らせようとしておるのじゃ」

 リベイルに襲い掛かろうと、初速に入った『リーシャ』を『ディアトロス』が強引にその場に押し留める。

「で、ですが! あいつにエイネさんが……!」

 下唇を噛みながら悔しそうにリーシャがそう口にする。

「茶番は終わりか? どうせお前らもここで死ぬんだからよ? 誰が誰に跳ばされたとかどうでもいいだろう? さっさとくたばれ馬鹿共」

 筋肉隆々の組織の魔族『セルバス』が、どうでもいいとばかりにそう告げる。

 その言葉に怒り心頭とばかりにリーシャは『金色』を纏い始める。
 リーシャを止めたのが『ディアトロス』でなければすでに襲い掛かっていただろう。
 何とか衝動を堪えてリベイル達を睨みつけるに留まるリーシャであった。

 ――現在この場に居る組織の者達の数は四人。

 先程までディアトロス達と戦っていた、組織の司令官である『ルビリス』。

 そして先程リーシャを煽る真似をした眼鏡を掛けた男が、魔族にして大賢者の『リベイル』。

 このリベイルはソフィと戦った時に『リラリオ』で瀕死となった『ヌー』を『ブラスト』と『力の魔神』から助けた時の魔族であった。

 次に筋肉隆々で目つきが悪い魔族が大魔王『セルバス』。
 『ダール』の世界の支配者であった『イザベラ』と違い、彼自身の実力を『ミラ』に認められて、別世界から強引に引き抜かれた大魔王領域の男である。

 最後にリーシャの背後に隠れてしまう程、リーシャより更に小柄な『人間』の女性『ユーミル』。

 大賢者ミラが最後に最高幹部へ迎え入れた『ユーミル』は、彼の後継者として認められた程の『大賢者』であった。

 ――組織に属する『本隊』を率いる最高幹部四人の内、三体がこの場に姿を現したのだった。

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