最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第444話 大魔王ソフィの怒りと決意
その日の夜にソフィは、屋敷に張ってある結界を更に魔力を費やし結界を強固にした後に、リーネ達に少し出てくると言い残してブラスト達にレアを頼んだ後、再び『トータル』山脈へと一人向かった。
ソフィは誰も居ない山を一人歩く。
前回この山に来た時とは違って山の中は静かで魔物や冒険者に会うこともなく、そのまま『クッケ』の街が見下ろせる山の頂まで昇った後に、ソフィは静かに腰を下ろす。
「……」
ソフィは山からの情景を眺めながら、何も言うでもなく佇む。
傍から見ればその姿は普通に景色を眺めているだけのように見えるが、ソフィの胸中は穏やかではなかった。
『最強の大魔王』と呼ばれる魔族であるソフィだが、彼自身はとても温厚な性格で余程のことがなければ怒る事も余りない。
――しかしそれは何をしても許すという意味と同義ではない。
ソフィはこれまでも『組織』の者達と色々と揉めてはきていた。
『組織』の者達は『アレルバレル』からソフィを追放するだけに留まらず、こうしてソフィが居なくなった後も、ソフィの大事な仲間や配下達を排除して回っている。
そして少し前に『ブラスト』から、ソフィが居なくなった後の『アレルバレル』の現在を知らされた。
『魔王軍』の主だった者達はソフィと同じく『別世界』へと跳ばされて、残った魔族や魔物達は『組織』の者達に毎日のように襲撃にあっている。
『組織』の中枢の者達と戦いを続けて尚も『アレルバレル』の世界で生存している元『三大魔王』であった『ブラスト』や『イリーガル』。そして『ディアトロス』が、何とか奮闘を続けて完全には『魔界』の制圧を許さずに今までは踏ん張ってはいたが、ディアトロスが捕らえられた後は更に相手の攻勢が強まり『人間界』でもその影響は拡大していったようである。
何とかディアトロス本人は『ブラスト』によって救い出されたらしいが、ブラストもソフィと同じく、不思議なマジックアイテム『根源の玉』によって、この世界に跳ばされてしまった。
流石に魔王軍の最高幹部である『イリーガル』と『ディアトロス』がまだ『アレルバレル』の世界に残っているとは言っても『ミラ』や『ルビリス』といった主だった者達を含めた『組織』の全軍勢を相手にするにはたった二体だけでは荷が重いだろう。
ソフィはブラストの話を聞いた後も好き勝手をする『組織』達に対する苛立ちを何とか、ここまで誤魔化して我慢していた。
――しかしソフィの中でその我慢の限界をついに迎えてしまった。
ソフィはフルーフの娘を預かるつもりで表向きは配下ということにして、目の届く範囲にレアをおくことでもう傷つけられないよう守ろうと固く誓っていた。
別にフルーフに直接約束をしたわけではないし、勝手にソフィが決めた事ではあったが、それでもソフィがつい数日前に決心した事であった。
まだ『組織』の者がレアを襲ったという確証はないが、レアは襲われる前にラルフに『ユファに警護を……』と頼んでいたらしい。
そこから導き出される一つの答えは『世界間転移』の魔法『概念跳躍』を出来る者を狙ったという事である。
つまりソフィをアレルバレルへ戻すことが出来る可能性がある『レア』と『ユファ』を狙ったという事で間違いはないであろう。
そこまで考えたソフィは、再び怒りが彼の胸中をせり上がっていく。
「許せぬ……! 何故我を直接狙わぬのだ? 我が怖いのか? それならば中途半端に仕掛けなければよいだろうが!」
キィイインという音と共に『ソフィ』の目が金色になり、戦ってもいないというのに『魔力』が膨れ上がっていく。
そして誰も居ない場所でソフィは、怒りの声をあげながら殺意をばら撒き始めるのだった。
ソフィの口から鋭利な牙が見えて普段は見えない翼が身体から生える。
第二形態時のソフィであったが、今のソフィはレアがかつて過去の『リラリオ』で龍族に同胞を襲われた時と全く同じように、その潜在する『魔力』を一切コントロールせずに、周囲に吐き出している状態であった。
(※第351話『大事な家族を失う気持ちを知った魔王レア』)。
真なる魔王程度の魔族がこの今のソフィに対して『漏出』を使用していたならば、ソフィの魔力を強制的に数値化しようとする『漏出』の効力によって、脳に直接伝えようとするために、ソフィの魔力を測ろうとすれば、そのまま対象の魔力の圧に圧し潰されてしまい、下手をすればそのまま絶命をする。
大魔王領域に居る者であっても数秒程で直ぐに感知を止めなければ、決して少なくは無いダメージを脳に負って、今後の生活に支障をきたすであろう。
「決して許さぬぞ。この借りは必ず返させてもらう。我を舐めるなよ大賢者ミラ」
ソフィの周囲に『紅』と『青』、そして『金色』の『三色のオーラ』が纏われていく。
瞬時にソフィは冷静さを取り戻して、大陸全域に屋敷に張っているのと同等の結界を張った。
もう少し結界を張るのが遅ければ『トータル』山脈は崩落をしていた。いや、そんな程度ではなく、完全にこの大陸ごと沈んでしまっただろう。
「……必ず貴様を殺してやる」
その言葉を残して立ち上がり、ソフィは静かに山を降りて行くのだった。
……
……
……
その頃。屋敷の護衛を頼まれていた『ブラスト』は、遠く離れた『ミールガルド』大陸からソフィの魔力を感知する。
彼に宛がわれた部屋の一室で机に頬杖をついていたブラストだったが、すぐに立ち上がって『ソフィ』の心中を察してブラスト自身も腸が煮えくり返る程の怒りを灯した。
「イリーガル! ディアトロス殿! もう少しの我慢だ! 我が主が必ずや貴様らを救って下さるだろう。それまで、それまで必ず生きていろよ!」
『破壊』の衝動を今すぐにでも解放したくなる気持ちを抑えて、彼の主であるソフィと同様に怒りを抑えるのではなく『溜める』のであった。
――もはや冗談では済まされない。彼らが『アレルバレル』の世界へ戻るとき、勝手を働いた『組織』の者達は恐怖する事だろう。
――『決して怒らせてはならない者を敵に回して、その怒りに火をつけたのだから』。
……
……
……
ソフィは誰も居ない山を一人歩く。
前回この山に来た時とは違って山の中は静かで魔物や冒険者に会うこともなく、そのまま『クッケ』の街が見下ろせる山の頂まで昇った後に、ソフィは静かに腰を下ろす。
「……」
ソフィは山からの情景を眺めながら、何も言うでもなく佇む。
傍から見ればその姿は普通に景色を眺めているだけのように見えるが、ソフィの胸中は穏やかではなかった。
『最強の大魔王』と呼ばれる魔族であるソフィだが、彼自身はとても温厚な性格で余程のことがなければ怒る事も余りない。
――しかしそれは何をしても許すという意味と同義ではない。
ソフィはこれまでも『組織』の者達と色々と揉めてはきていた。
『組織』の者達は『アレルバレル』からソフィを追放するだけに留まらず、こうしてソフィが居なくなった後も、ソフィの大事な仲間や配下達を排除して回っている。
そして少し前に『ブラスト』から、ソフィが居なくなった後の『アレルバレル』の現在を知らされた。
『魔王軍』の主だった者達はソフィと同じく『別世界』へと跳ばされて、残った魔族や魔物達は『組織』の者達に毎日のように襲撃にあっている。
『組織』の中枢の者達と戦いを続けて尚も『アレルバレル』の世界で生存している元『三大魔王』であった『ブラスト』や『イリーガル』。そして『ディアトロス』が、何とか奮闘を続けて完全には『魔界』の制圧を許さずに今までは踏ん張ってはいたが、ディアトロスが捕らえられた後は更に相手の攻勢が強まり『人間界』でもその影響は拡大していったようである。
何とかディアトロス本人は『ブラスト』によって救い出されたらしいが、ブラストもソフィと同じく、不思議なマジックアイテム『根源の玉』によって、この世界に跳ばされてしまった。
流石に魔王軍の最高幹部である『イリーガル』と『ディアトロス』がまだ『アレルバレル』の世界に残っているとは言っても『ミラ』や『ルビリス』といった主だった者達を含めた『組織』の全軍勢を相手にするにはたった二体だけでは荷が重いだろう。
ソフィはブラストの話を聞いた後も好き勝手をする『組織』達に対する苛立ちを何とか、ここまで誤魔化して我慢していた。
――しかしソフィの中でその我慢の限界をついに迎えてしまった。
ソフィはフルーフの娘を預かるつもりで表向きは配下ということにして、目の届く範囲にレアをおくことでもう傷つけられないよう守ろうと固く誓っていた。
別にフルーフに直接約束をしたわけではないし、勝手にソフィが決めた事ではあったが、それでもソフィがつい数日前に決心した事であった。
まだ『組織』の者がレアを襲ったという確証はないが、レアは襲われる前にラルフに『ユファに警護を……』と頼んでいたらしい。
そこから導き出される一つの答えは『世界間転移』の魔法『概念跳躍』を出来る者を狙ったという事である。
つまりソフィをアレルバレルへ戻すことが出来る可能性がある『レア』と『ユファ』を狙ったという事で間違いはないであろう。
そこまで考えたソフィは、再び怒りが彼の胸中をせり上がっていく。
「許せぬ……! 何故我を直接狙わぬのだ? 我が怖いのか? それならば中途半端に仕掛けなければよいだろうが!」
キィイインという音と共に『ソフィ』の目が金色になり、戦ってもいないというのに『魔力』が膨れ上がっていく。
そして誰も居ない場所でソフィは、怒りの声をあげながら殺意をばら撒き始めるのだった。
ソフィの口から鋭利な牙が見えて普段は見えない翼が身体から生える。
第二形態時のソフィであったが、今のソフィはレアがかつて過去の『リラリオ』で龍族に同胞を襲われた時と全く同じように、その潜在する『魔力』を一切コントロールせずに、周囲に吐き出している状態であった。
(※第351話『大事な家族を失う気持ちを知った魔王レア』)。
真なる魔王程度の魔族がこの今のソフィに対して『漏出』を使用していたならば、ソフィの魔力を強制的に数値化しようとする『漏出』の効力によって、脳に直接伝えようとするために、ソフィの魔力を測ろうとすれば、そのまま対象の魔力の圧に圧し潰されてしまい、下手をすればそのまま絶命をする。
大魔王領域に居る者であっても数秒程で直ぐに感知を止めなければ、決して少なくは無いダメージを脳に負って、今後の生活に支障をきたすであろう。
「決して許さぬぞ。この借りは必ず返させてもらう。我を舐めるなよ大賢者ミラ」
ソフィの周囲に『紅』と『青』、そして『金色』の『三色のオーラ』が纏われていく。
瞬時にソフィは冷静さを取り戻して、大陸全域に屋敷に張っているのと同等の結界を張った。
もう少し結界を張るのが遅ければ『トータル』山脈は崩落をしていた。いや、そんな程度ではなく、完全にこの大陸ごと沈んでしまっただろう。
「……必ず貴様を殺してやる」
その言葉を残して立ち上がり、ソフィは静かに山を降りて行くのだった。
……
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その頃。屋敷の護衛を頼まれていた『ブラスト』は、遠く離れた『ミールガルド』大陸からソフィの魔力を感知する。
彼に宛がわれた部屋の一室で机に頬杖をついていたブラストだったが、すぐに立ち上がって『ソフィ』の心中を察してブラスト自身も腸が煮えくり返る程の怒りを灯した。
「イリーガル! ディアトロス殿! もう少しの我慢だ! 我が主が必ずや貴様らを救って下さるだろう。それまで、それまで必ず生きていろよ!」
『破壊』の衝動を今すぐにでも解放したくなる気持ちを抑えて、彼の主であるソフィと同様に怒りを抑えるのではなく『溜める』のであった。
――もはや冗談では済まされない。彼らが『アレルバレル』の世界へ戻るとき、勝手を働いた『組織』の者達は恐怖する事だろう。
――『決して怒らせてはならない者を敵に回して、その怒りに火をつけたのだから』。
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