最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第435話 破壊神の異名とBランク冒険者
ソフィ達は新たに『名付け』を行った『ベイル』と、その仲間の『ベイル・タイガー』の総勢三十体程の群れを連れながら山の麓まで下山していく。
先に『ラルグ』魔国まで『高等移動呪文』で運ぼうかと考えたソフィだったが、その前にギルドにクエスト完了の報告だけ済ませる事にしたのだった。
『ギルド討伐クエスト』と『ルードリヒ国王の指名依頼達成』の報告は『リルバーグ』や『クッケ』のどちらの街の冒険者ギルドでも受け付けているが、リーネがクッケの方がいいと言ったので、リルバーグへは行かずに『トータル』山脈の反対側の山から麓まで向かうのだった。
「ここからはそこまで、クッケとは離れておらぬのか?」
ソフィがリーネに呟くと、元々ルードリヒ王国出身のリーネは同意をするように頷く。
「そうね。山を下りると少しだけ森を通らないと行けないけど、その森を抜けるともうすぐだよ」
リーネがそう言うとソフィは頷く。
「街についたら我とリーネでギルドへ向かって『ベイル』達の事をギルド長に伝えてくる。お主達はその間街付近の場所でベイル達を見ててくれるぬか?」
ソフィがラルフ達にそう告げると二人も頷く。
「分かりました。それでは少し離れた場所で待っていた方がよさそうですね」
「そうだな。ギルド長が確認をするかもしれぬからあまり離れる場所だと困るが、街民の事を考えるならば少し離れた方がいいかもしれぬな」
ソフィの云わんとしている事を理解したラルフに、ソフィは感心しながらそう結論を下すのだった。
……
……
……
森を抜けた辺りで魔族である『ソフィ』と『レア』の目で、ようやく街を目視出来る距離になった。
「街が見えたわねぇ。じゃあここで待っていたらいいかしらぁ?」
「うむ、ではお主達頼んだぞ?」
「お任せください」
「まだ私には『クッケ』の街が見えていないんだけどね……」
魔族達の視力が人間とは比べ物にならない事は知ってはいたが、まさか同じ人間の筈のラルフにも見えているのだろうかと尋ねようかとリーネはラルフを見る。
しかしソフィが配下達の言葉に頷いた後に街へ向かってどんどん歩いていくので、仕方なく尋ねるのは止めにするリーネだった。
『ベイル・タイガー』をラルフとレアに任せて森を抜けたソフィ達。
そしてついにルードリヒ王国領であるクッケに辿り着くのだった。
「ここが『クッケ』か。我はケビン王国領以外の街のギルドへ行くのは初めてなのだが、特に何も変わらぬか?」
「うーんそうね。ギルドの特色自体は他の街のギルドと変わらないのだけど、ルードリヒ王国側のギルドは、どこもケビン側のギルドに対して『敵意』を持っている事が多いから、ソフィが元ケビン王国の所属の冒険者と知られている事が少し不安かな」
ケビン王国とルードリヒ王国のギルドの問題というよりは、国同士の仲が年々悪くなっているために、当然その影響を冒険者ギルドも商人ギルドも受けていると言う事であった。
そしてソフィはギルド対抗戦を通じて『破壊神』の名でケビン領だけではなく、ルードリヒ領にまで広く知れ渡っている。
更にはヴェルマー大陸との戦争でソフィは、ケビン王から『王典褒章』まで受け取っている。
知名度は十分なためにこの『クッケ』に所属する冒険者達が、どういった態度になるかは実際に行ってみないと分からないのであった。
ソフィ達がクッケの街へ入ろうと近づくと、二人の見張りであろう者達がソフィ達を止めた。
「キミ達止まりなさい。見たところ子供二人のようだが、ここへは何の用事かな?」
グランやサシスと言った街とは違い、街の前で事情を聞かれるソフィ達。
どうやらケビン王国領より、ルードリヒ王国領の方が警備が厳重なようだった。
「我はソフィという。ルードリヒ国王の指名依頼を達成したために、この街のギルドへ報告に来たのだが」
ソフィが包み隠さずそう言うと、どうやら信じていないのだろう門番達は鼻で笑い始める。
「はっ! お前らそんな直ぐにバレるような嘘を吐くんじゃない。子供だからって王様の名を出して勝手な嘘を吐くようなら牢屋にぶちこむぞ?」
「全くとんでもないガキ共だな。大方親とはぐれでもして、文無しで困って嘘を吐いて街に入ろうという魂胆か?」
門番達はまだ子供と呼べる年齢の『ソフィ』と『リーネ』にあまり良いとはいえない態度で接してくるのだった。
ソフィは『グラン』の町の露店のおやじがあまりにも親切であったために、あそこまでは親切ではないにしても、そこそこ親身になってくれる人間が多いのだと勝手に思ってしまっていたが、この町の人間の対応をみて、どこか『アレルバレル』の『人間界』の冷めきった態度を思い出してしまうのであった。
「……知られている方がまだマシだったかもね」
クッケの門番たちの会話を聞いて、リーネは先程までソフィと話していた会話に皮肉を言うのだった。
「本当に指名依頼を果たしてきたのだがな。とりあえず街に入らせてもらえぬだろうか?」
「まあ待て、国王様の指名依頼を受けたと言うのならば、冒険者ギルドに所属しているのだろう? 本当に持っているというのならば、俺達に冒険者ライセンスを見せてもらおうか?」
門番の一人がニヤニヤと笑いながら、ソフィ達にライセンスの提示を求めてくる。
「ああ、確かあれはどこにやったか」
ソフィはガサゴソと身丈が合っていない、ローブを漁り始める。
「もういいだろう? 仕方ないから少しの間は俺達の屯所で面倒を見てやる。だからもう芝居はそこまでにし……」
門番は溜息をついて『ライセンス』を必死に探し始めたソフィにそう告げようとするが、最後まで言い終わる前に隣に居た『リーネ』が、その門番に被せるように口を開くのだった。
「もう、しっかりしてよね。今は私のライセンスでいいでしょう?」
そう言ってリーネが自分のライセンスを門番達に見せる」
「おいおい。本当に持っていたのかよ。どれどれ……っ!?」
「お前何を驚いているんだ? 本当に冒険者だったとしても、どうせ勲章ランクはGか、よくてFだろ?」
門番の一人が大きく驚き、その様子にライセンスを横から覗くもう一人の門番。
しかしそこで覗き込んだ門番も目を丸くして驚きの声をあげるのだった。
「なっ……!! く、勲章ランクB!?」
冒険者で『勲章ランクB』といえばかなりの上級者の証であり、ギルドが認めた危険度上位の魔物達の討伐を依頼される程の『ランク』なのである。
このクラスならば確かに『ギルド長』クラスや『国王』が直々に指名して依頼するのもおかしくはない程のランク帯なのであった。
「分かったかしら? 名誉のためにあえて言わせてもらうけどね。私達は何も嘘はついていないわよ? それにルードリヒ国王が、直々に依頼を指名したのは、私じゃなくて横に居る『破壊神』ソフィよ!」
「……は、はっ、破壊神ソフィ!?」
「くっ……、勲章ランクAの歴代最強の剣士『リディア』を倒して、戦争を仕掛けてきた『ヴェルマー』大陸の数多の魔物達を魔法の一撃で全て屠ったあの!?」
「リーネよ。その異名の事は伏せておいた方がいいのではなかったのか?」
「仕方ないでしょう? このままだと街に入れなかったじゃない」
(それにソフィが嘘つき呼ばわりされたり、これ以上馬鹿にされるのは私がイヤだしね!)
リーネは口に出さなかったが、本音はソフィが門番達に侮られるのが、とてつもなく我慢ならなかったのであった。
「それで通してもらえるのかしら? これでまだ信用しないのならば、もうこの場にルードリヒの国王様を連れてくるわよ? そしたら困るのはどちらでしょうね?」
――リーネの目は本気だった。
その『リーネ』の目を見た門番達は慌てて道を開ける。
「し、失礼いたしました! お通り下さい!」
「し、失礼しました! どうか、どうか! 国王様にはご内密に!!」
本当にこの場に連れてこられでもしたら、大陸の英雄を街に入れるのを拒んだ愚か者として、即座に首が飛ばされると判断して、その場でキレイな90度のお辞儀をソフィ達に向ける門番達であった。
「では通らせてもらうぞ」
「「ははぁっ!! ご自由にお通り下さい!!」」
まるで主従の関係にあるかのような振る舞いを見せながら、門番達は先程の態度とは打って変わって、ソフィを街の中へ通すのであった。
……
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……
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「ここからはそこまで、クッケとは離れておらぬのか?」
ソフィがリーネに呟くと、元々ルードリヒ王国出身のリーネは同意をするように頷く。
「そうね。山を下りると少しだけ森を通らないと行けないけど、その森を抜けるともうすぐだよ」
リーネがそう言うとソフィは頷く。
「街についたら我とリーネでギルドへ向かって『ベイル』達の事をギルド長に伝えてくる。お主達はその間街付近の場所でベイル達を見ててくれるぬか?」
ソフィがラルフ達にそう告げると二人も頷く。
「分かりました。それでは少し離れた場所で待っていた方がよさそうですね」
「そうだな。ギルド長が確認をするかもしれぬからあまり離れる場所だと困るが、街民の事を考えるならば少し離れた方がいいかもしれぬな」
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「街が見えたわねぇ。じゃあここで待っていたらいいかしらぁ?」
「うむ、ではお主達頼んだぞ?」
「お任せください」
「まだ私には『クッケ』の街が見えていないんだけどね……」
魔族達の視力が人間とは比べ物にならない事は知ってはいたが、まさか同じ人間の筈のラルフにも見えているのだろうかと尋ねようかとリーネはラルフを見る。
しかしソフィが配下達の言葉に頷いた後に街へ向かってどんどん歩いていくので、仕方なく尋ねるのは止めにするリーネだった。
『ベイル・タイガー』をラルフとレアに任せて森を抜けたソフィ達。
そしてついにルードリヒ王国領であるクッケに辿り着くのだった。
「ここが『クッケ』か。我はケビン王国領以外の街のギルドへ行くのは初めてなのだが、特に何も変わらぬか?」
「うーんそうね。ギルドの特色自体は他の街のギルドと変わらないのだけど、ルードリヒ王国側のギルドは、どこもケビン側のギルドに対して『敵意』を持っている事が多いから、ソフィが元ケビン王国の所属の冒険者と知られている事が少し不安かな」
ケビン王国とルードリヒ王国のギルドの問題というよりは、国同士の仲が年々悪くなっているために、当然その影響を冒険者ギルドも商人ギルドも受けていると言う事であった。
そしてソフィはギルド対抗戦を通じて『破壊神』の名でケビン領だけではなく、ルードリヒ領にまで広く知れ渡っている。
更にはヴェルマー大陸との戦争でソフィは、ケビン王から『王典褒章』まで受け取っている。
知名度は十分なためにこの『クッケ』に所属する冒険者達が、どういった態度になるかは実際に行ってみないと分からないのであった。
ソフィ達がクッケの街へ入ろうと近づくと、二人の見張りであろう者達がソフィ達を止めた。
「キミ達止まりなさい。見たところ子供二人のようだが、ここへは何の用事かな?」
グランやサシスと言った街とは違い、街の前で事情を聞かれるソフィ達。
どうやらケビン王国領より、ルードリヒ王国領の方が警備が厳重なようだった。
「我はソフィという。ルードリヒ国王の指名依頼を達成したために、この街のギルドへ報告に来たのだが」
ソフィが包み隠さずそう言うと、どうやら信じていないのだろう門番達は鼻で笑い始める。
「はっ! お前らそんな直ぐにバレるような嘘を吐くんじゃない。子供だからって王様の名を出して勝手な嘘を吐くようなら牢屋にぶちこむぞ?」
「全くとんでもないガキ共だな。大方親とはぐれでもして、文無しで困って嘘を吐いて街に入ろうという魂胆か?」
門番達はまだ子供と呼べる年齢の『ソフィ』と『リーネ』にあまり良いとはいえない態度で接してくるのだった。
ソフィは『グラン』の町の露店のおやじがあまりにも親切であったために、あそこまでは親切ではないにしても、そこそこ親身になってくれる人間が多いのだと勝手に思ってしまっていたが、この町の人間の対応をみて、どこか『アレルバレル』の『人間界』の冷めきった態度を思い出してしまうのであった。
「……知られている方がまだマシだったかもね」
クッケの門番たちの会話を聞いて、リーネは先程までソフィと話していた会話に皮肉を言うのだった。
「本当に指名依頼を果たしてきたのだがな。とりあえず街に入らせてもらえぬだろうか?」
「まあ待て、国王様の指名依頼を受けたと言うのならば、冒険者ギルドに所属しているのだろう? 本当に持っているというのならば、俺達に冒険者ライセンスを見せてもらおうか?」
門番の一人がニヤニヤと笑いながら、ソフィ達にライセンスの提示を求めてくる。
「ああ、確かあれはどこにやったか」
ソフィはガサゴソと身丈が合っていない、ローブを漁り始める。
「もういいだろう? 仕方ないから少しの間は俺達の屯所で面倒を見てやる。だからもう芝居はそこまでにし……」
門番は溜息をついて『ライセンス』を必死に探し始めたソフィにそう告げようとするが、最後まで言い終わる前に隣に居た『リーネ』が、その門番に被せるように口を開くのだった。
「もう、しっかりしてよね。今は私のライセンスでいいでしょう?」
そう言ってリーネが自分のライセンスを門番達に見せる」
「おいおい。本当に持っていたのかよ。どれどれ……っ!?」
「お前何を驚いているんだ? 本当に冒険者だったとしても、どうせ勲章ランクはGか、よくてFだろ?」
門番の一人が大きく驚き、その様子にライセンスを横から覗くもう一人の門番。
しかしそこで覗き込んだ門番も目を丸くして驚きの声をあげるのだった。
「なっ……!! く、勲章ランクB!?」
冒険者で『勲章ランクB』といえばかなりの上級者の証であり、ギルドが認めた危険度上位の魔物達の討伐を依頼される程の『ランク』なのである。
このクラスならば確かに『ギルド長』クラスや『国王』が直々に指名して依頼するのもおかしくはない程のランク帯なのであった。
「分かったかしら? 名誉のためにあえて言わせてもらうけどね。私達は何も嘘はついていないわよ? それにルードリヒ国王が、直々に依頼を指名したのは、私じゃなくて横に居る『破壊神』ソフィよ!」
「……は、はっ、破壊神ソフィ!?」
「くっ……、勲章ランクAの歴代最強の剣士『リディア』を倒して、戦争を仕掛けてきた『ヴェルマー』大陸の数多の魔物達を魔法の一撃で全て屠ったあの!?」
「リーネよ。その異名の事は伏せておいた方がいいのではなかったのか?」
「仕方ないでしょう? このままだと街に入れなかったじゃない」
(それにソフィが嘘つき呼ばわりされたり、これ以上馬鹿にされるのは私がイヤだしね!)
リーネは口に出さなかったが、本音はソフィが門番達に侮られるのが、とてつもなく我慢ならなかったのであった。
「それで通してもらえるのかしら? これでまだ信用しないのならば、もうこの場にルードリヒの国王様を連れてくるわよ? そしたら困るのはどちらでしょうね?」
――リーネの目は本気だった。
その『リーネ』の目を見た門番達は慌てて道を開ける。
「し、失礼いたしました! お通り下さい!」
「し、失礼しました! どうか、どうか! 国王様にはご内密に!!」
本当にこの場に連れてこられでもしたら、大陸の英雄を街に入れるのを拒んだ愚か者として、即座に首が飛ばされると判断して、その場でキレイな90度のお辞儀をソフィ達に向ける門番達であった。
「では通らせてもらうぞ」
「「ははぁっ!! ご自由にお通り下さい!!」」
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