最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第434話 予期せぬ名前付け
ベイル・タイガーと共に『トータル山脈』の山を歩くソフィ達。
山を歩く道中にも多くの魔物達と遭遇したが、そのどの魔物達もソフィ達と共に歩いている『ベイル・タイガー』の姿を見ると慌てて去っていくのだった。
どうやらこの山では、ベイル・タイガーが主の立場のようだった。
しかしどうやら『グラン』の近くの森でボスだった『アウルベア』のベア達とは違って『ベイル・タイガー』を慕っている様子ではなく、単純に『ベイル・タイガー』を恐れている様子だった。
「グルルル……」(ここが俺の仲間たちが居るところです)
ベイル・タイガーが顔を上げて、ソフィにそう告げる。
ソフィ達が視線を前に向けると『ベイル・タイガー』と同じ、頭に角を宿した犬型の魔物達が多く居た。しかし隣に居るギルドが指定した『ベイル・タイガー』とは違ってひと回り小さい体だった。
「グルルルル……!!」
ベイル・タイガー達は突然の来訪者。それも人間が居る事で唸り声を上げて威嚇を始める。
その様子に隣に居た『ベイル・タイガー』は仲間の元へと歩いていき、仲間の顔を一体ずつ舌で舐めたり、伏せの態勢で威嚇をしていた者を前足で撫でたりしている。
ソフィ達に威嚇をしていたベイル・タイガー達は、少しずつ大人しくなっていき、じっとこちらを眺めるだけに留まっていく。
「グルルルル! グルルル……」
「……グルルル」
「グルル……ルル」
どうやら先程まで一緒にいたベイル・タイガーが、この同胞達のボスなのだろう。
ボスのベイル・タイガーの言葉を聞いた他のベイル・タイガー達は伏せの態勢をしながら先程までの唸り声とはまた違う低い声で会話を話し始めた。
レアの魔法が解けたために、すでにボスのベイル・タイガーの言葉も聴き取れなくなっていたが、今はまだかけなおす必要はないだろうと判断して、ボスのベイル・タイガーにこの場を任せる。
やがて話し合いは終わったのか、ボスがソフィの元へと向かっていく。
「……む、話は済んだか?」
ソフィはそう呟くと近づいてきたベイル・タイガーに、会話が出来るように『念話』を再び掛け直そうとする。
――すかさずレアはボソボソと呟き、ソフィにばれないように、再びソフィと『ベイル・タイガー』達が会話を出来るように『詠唱』を開始する。
「グルルル……、グルル?」
(仲間達に移住の話を伝えましたが、これだけの数大丈夫なのですか?)
「うむ。細かなルールには従ってもらう事にはなるが、これからは襲われるといった心配はしなくともよいぞ」
「……グルル、グルルル!」(……そうですか、感謝します!)
「うむ。しかしこれからお主を呼ぶ時に名前が何か欲しいな。確かベイル・タイガーという種族で呼ばれていたな? お主の事はベイルと呼んでもよいか?」
「グルル、グルルル……!」
(貴方ならば、好きに呼んでもらって構いませんよ!)
「よし! ではお主はこれからベイルだ」
「あ……! ちょっと待ってよソフィ様! そ、そんな簡単に貴方が名前でも付けたりしたら!!」
「……どうしたの、レア?」
ソフィと波長を合わせられない『ベイル・タイガー』のために、陰ながらレアが『レパート』の魔法を使って、ソフィとベイルタイガーの間で会話が出来るように行っていたレアは、当然レアにもソフィ達の会話の内容が理解出来ていたが、そこでソフィがあっさりと名付けを行おうとしたために、慌ててレアは止めようとするのだった。
そしてベイル・タイガーの言葉が分からないリーネは、レアの慌てる様子を心配して、声を掛けるのだった。
「グルル!? グルルルル!!」
(な、何だ!? 突然、力が漲ってくる!!)
「ああ……。我に従う気持ちを抱いていたという事か?」
『名付け』は単にあだ名をつけたりするだけでは行われる事はない。名前を付けられる側が、名前を付ける側の魔族に従うという気持ちを持っていなければ、いくら勝手に名前を付けたところで意味はない。
しかしベイル・タイガーは、人間達から身を挺して庇ったソフィを心の中では認めていて、仲間たちを安住の地へと導いてくれるという言葉を信じて、ソフィを信頼していたために、ソフィの『名前付け』は『名付け』の効果を発動させてしまったのだった。
少しだけソフィは『名付け』によって魔力が持っていかれる感覚を味わったが、微々たるモノだったのでもう諦める事にした。
ベイルもまた力が突然漲り驚いていたが、ソフィがした事だったらまぁいいかとばかりに、気にしない事にするのだった。
「……どうやら『ギルド指定Aランク』の討伐依頼の筈が、ソフィ様の手によって『Aランク魔物』を数倍から数十倍以上に更に強くしてしまったようですね」
ラルフはぽつりとレアを見て呟くのだった。
「貴方ねぇ? 冗談のつもりで言ったのかもしれないけど、笑えないわよぉ? さっきまで私が小指で突く程で倒せていた魔物が、もう今の私が通常状態であれば、ある程度本気にならなければ倒せない程に強くなっちゃったのだからねぇ」
レアがソフィの『名前付け』の危険性を教えるようにラルフに告げるが、ラルフはどこ吹く風といった様子だった。
リーネはもう諦めているのか、気にせずにソフィの横に移動していた。
「まぁ、いいんだけどねぇ。私以外誰も気にしていないようだしぃ」
救いと言うべきか今のソフィは『真なる大魔王』状態ではないために、この状態の『名付け』であれば、そこまで世界に影響を及ぼすようなことは無い筈だと諦めた。
だが、溜息を吐きながらレアは、自分の主となったソフィが、とんでもない化け物だと言う事を再確認するのだった。
【種族:ベイル・タイガー 名前:ベイル(ソフィの名付け) 年齢:144歳
状態:通常 魔力値:45 戦力値:3370万 所属:ソフィの直属の配下】。
……
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山を歩く道中にも多くの魔物達と遭遇したが、そのどの魔物達もソフィ達と共に歩いている『ベイル・タイガー』の姿を見ると慌てて去っていくのだった。
どうやらこの山では、ベイル・タイガーが主の立場のようだった。
しかしどうやら『グラン』の近くの森でボスだった『アウルベア』のベア達とは違って『ベイル・タイガー』を慕っている様子ではなく、単純に『ベイル・タイガー』を恐れている様子だった。
「グルルル……」(ここが俺の仲間たちが居るところです)
ベイル・タイガーが顔を上げて、ソフィにそう告げる。
ソフィ達が視線を前に向けると『ベイル・タイガー』と同じ、頭に角を宿した犬型の魔物達が多く居た。しかし隣に居るギルドが指定した『ベイル・タイガー』とは違ってひと回り小さい体だった。
「グルルルル……!!」
ベイル・タイガー達は突然の来訪者。それも人間が居る事で唸り声を上げて威嚇を始める。
その様子に隣に居た『ベイル・タイガー』は仲間の元へと歩いていき、仲間の顔を一体ずつ舌で舐めたり、伏せの態勢で威嚇をしていた者を前足で撫でたりしている。
ソフィ達に威嚇をしていたベイル・タイガー達は、少しずつ大人しくなっていき、じっとこちらを眺めるだけに留まっていく。
「グルルルル! グルルル……」
「……グルルル」
「グルル……ルル」
どうやら先程まで一緒にいたベイル・タイガーが、この同胞達のボスなのだろう。
ボスのベイル・タイガーの言葉を聞いた他のベイル・タイガー達は伏せの態勢をしながら先程までの唸り声とはまた違う低い声で会話を話し始めた。
レアの魔法が解けたために、すでにボスのベイル・タイガーの言葉も聴き取れなくなっていたが、今はまだかけなおす必要はないだろうと判断して、ボスのベイル・タイガーにこの場を任せる。
やがて話し合いは終わったのか、ボスがソフィの元へと向かっていく。
「……む、話は済んだか?」
ソフィはそう呟くと近づいてきたベイル・タイガーに、会話が出来るように『念話』を再び掛け直そうとする。
――すかさずレアはボソボソと呟き、ソフィにばれないように、再びソフィと『ベイル・タイガー』達が会話を出来るように『詠唱』を開始する。
「グルルル……、グルル?」
(仲間達に移住の話を伝えましたが、これだけの数大丈夫なのですか?)
「うむ。細かなルールには従ってもらう事にはなるが、これからは襲われるといった心配はしなくともよいぞ」
「……グルル、グルルル!」(……そうですか、感謝します!)
「うむ。しかしこれからお主を呼ぶ時に名前が何か欲しいな。確かベイル・タイガーという種族で呼ばれていたな? お主の事はベイルと呼んでもよいか?」
「グルル、グルルル……!」
(貴方ならば、好きに呼んでもらって構いませんよ!)
「よし! ではお主はこれからベイルだ」
「あ……! ちょっと待ってよソフィ様! そ、そんな簡単に貴方が名前でも付けたりしたら!!」
「……どうしたの、レア?」
ソフィと波長を合わせられない『ベイル・タイガー』のために、陰ながらレアが『レパート』の魔法を使って、ソフィとベイルタイガーの間で会話が出来るように行っていたレアは、当然レアにもソフィ達の会話の内容が理解出来ていたが、そこでソフィがあっさりと名付けを行おうとしたために、慌ててレアは止めようとするのだった。
そしてベイル・タイガーの言葉が分からないリーネは、レアの慌てる様子を心配して、声を掛けるのだった。
「グルル!? グルルルル!!」
(な、何だ!? 突然、力が漲ってくる!!)
「ああ……。我に従う気持ちを抱いていたという事か?」
『名付け』は単にあだ名をつけたりするだけでは行われる事はない。名前を付けられる側が、名前を付ける側の魔族に従うという気持ちを持っていなければ、いくら勝手に名前を付けたところで意味はない。
しかしベイル・タイガーは、人間達から身を挺して庇ったソフィを心の中では認めていて、仲間たちを安住の地へと導いてくれるという言葉を信じて、ソフィを信頼していたために、ソフィの『名前付け』は『名付け』の効果を発動させてしまったのだった。
少しだけソフィは『名付け』によって魔力が持っていかれる感覚を味わったが、微々たるモノだったのでもう諦める事にした。
ベイルもまた力が突然漲り驚いていたが、ソフィがした事だったらまぁいいかとばかりに、気にしない事にするのだった。
「……どうやら『ギルド指定Aランク』の討伐依頼の筈が、ソフィ様の手によって『Aランク魔物』を数倍から数十倍以上に更に強くしてしまったようですね」
ラルフはぽつりとレアを見て呟くのだった。
「貴方ねぇ? 冗談のつもりで言ったのかもしれないけど、笑えないわよぉ? さっきまで私が小指で突く程で倒せていた魔物が、もう今の私が通常状態であれば、ある程度本気にならなければ倒せない程に強くなっちゃったのだからねぇ」
レアがソフィの『名前付け』の危険性を教えるようにラルフに告げるが、ラルフはどこ吹く風といった様子だった。
リーネはもう諦めているのか、気にせずにソフィの横に移動していた。
「まぁ、いいんだけどねぇ。私以外誰も気にしていないようだしぃ」
救いと言うべきか今のソフィは『真なる大魔王』状態ではないために、この状態の『名付け』であれば、そこまで世界に影響を及ぼすようなことは無い筈だと諦めた。
だが、溜息を吐きながらレアは、自分の主となったソフィが、とんでもない化け物だと言う事を再確認するのだった。
【種族:ベイル・タイガー 名前:ベイル(ソフィの名付け) 年齢:144歳
状態:通常 魔力値:45 戦力値:3370万 所属:ソフィの直属の配下】。
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