最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第407話 ソフィと魔王軍を裏切った大魔王
いつもより遅くなった明け方の空を泳ぐように『バルド』は集落へ戻ってきた。
普段であれば今頃は自室で横になっている頃合いだが、施設後で予期せぬ出会いがあったために『バルド』は帰るのが遅くなってしまったのだった。
集落から施設へ向かう時は『転移』を使っていくが、戻るときに転移を使うと魔力を感知させてしまい、寝ているエイネ達を起こしてしまう恐れがあるため、普段はこうして戻るときに転移を使わずに戻ってきていた。
「やれやれ、遅くなってしまったな。朝帰りを咎められぬよう、誰も起きてこなければよいのだが……」
そう言って自分の家まで歩いていこうとするが、そこでクワを担いだ一体の魔族に会うのだった。
「長老。こんな時間までどこに行っていたのですかな?」
「ビル。こんな朝早くに起きていたのか」
偶然起きていたのかそれとも寝ずに『バルド』が帰ってくるのを、待っていたのかは分からないが、バルドを見て何か言いたそうにしている事は見て取れた。
「夜にいつも出ていくところを見ていれば、何事なのかと思うのは当然ですな。それより今日はいつもより遅かったみたいですが、何かありましたかな?」
「組織の者達と魔王軍の戦争があったばかりじゃろう? 集落に張ってある『結界』だけでは少しばかり不安になってな。何か別の『結界』を張ろうかと考えて森の周囲を見回っていたのじゃよ」
「はっはっは、何を仰いますやら。こんな集落に今以上の結界など必要ありますまい? そんなウソまでついて一体何を隠しているのやら。それとも何かよからぬ事でも企んでおるのですかな?」
「ウソ? 儂はこの集落の長老じゃぞ? 自分の集落の事を大事に考えることの何がおかしいのかのぉ?」
「長老……。いやバルド隊長。とぼけるのはそこまでにしましょうや。あんたがあの日にレアっていう子と一緒に向かった組織達の拠点に、毎日向かっているのはもう存じている。そこで何をやっているのかもね」
――ピクリと『バルド』の眉が額の中央に寄る。
「そんなあんたが今日。禍々しい魔力を漂わせながら、こんな時間に戻ってきているんだ。何かあったと思うのは当然じゃろう? アンタまさかソフィ様を裏切ったか?」
まさかこんなにも早く『魔王軍所属』の大魔王『ビル』にバレるとは思っていなかったため『バルド』は内心で狼狽えるのだった。
無言になったバルドにビル爺は顔を顰めながらため息を吐く。
「そこは否定して欲しかったところなんですがね?」
「カッカッカ! 何と間の悪い事じゃったか。昨日までなら堂々と否定出来たのだがな?」
その諦めような言葉を吐くバルドに、ビル爺は本当に大魔王バルドが組織側についた事を悟る。
「お前もその年まで生きていれば、世界の常識というモノに飽いておるじゃろう? 見たこともない技術で、儂らの知らぬ新たな常識が誕生するならば一度は見てみたいとは思わぬか?」
「あなたがいわんとしている事はなんとなく分かるが、ワシはソフィ様を裏切ってまで見たいとは思わぬ」
その言葉にバルドは、この事に関して今後の生涯で、ビルとは気が合わないだろうと判断するのだった。
「まぁいいだろう。それでビルよ? もし儂が本当に組織側についたとしてどうするつもりじゃ? 儂は元魔王軍の幹部にして『序列一桁・三位』だ。お主如きが楯突いたところで、儂を相手にどうにもならぬことは理解をしておろう?」
「バルド隊長。残念だがすでにこの事は上に通してある。後は上が動くまで時間を稼げば、貴方は終わりだ」
「用意周到なことだなビル。どうやらお前は相当前から儂のことを怪しんでおったということか」
ビルが言う『上』というのがどの程度まで『上』なのかを把握しきれぬバルドは、どうするかを考える。
当然『魔王軍』の事には違いないが、ビルは所詮『魔王軍』のランクでは『序列二桁』であり、彼の上役とは『バルド』と同じく『序列一桁』部隊の誰かだろうと予測は容易に出来る。
ソフィの『魔王軍』は離反した者に対して特にはペナルティといったモノを設けてはいないが、その離反者が大賢者『ミラ』の率いる『組織』や、少し前まで『魔王軍』と戦争状態であった『ヌー』といった大魔王の組織側に着くとなれば、当然に話は変わるのであった。
『魔王軍』の組織図などといった重要な事を敵に漏らされると困るというのも一因である。
そして離反者がそういった行動に出た時、普段は監視の役割を担う『現』魔王軍の者が『上』に報告する手筈となっていた。
そして今回の場合の組織の離反者であるバルドの監視役は、現在魔王軍『序列二桁』部隊に所属する『ビル・カイエン』なのであった。
百体近く居る『序列二桁』のメンバーだが、離反者に付く監視役には、特別に報告対象となる者が付く。
――それが先程『上』と呼ばれていた者の事である。
バルドは元ではあるが『序列一桁・三位』である。同じ一桁のメンバーであっても、バルドと五位以下では雲泥の差があるために、この場合の『上』は最低でも四位以上であろう。
バルドは序列一桁のメンバーであっても、二位までならば何とか逃げ遂せると考える。
大魔王バルドの持つ『能力』と『魔力』があれば、現在の魔王軍の『序列一桁』の三位以下の者達が相手であればあっさりと屠れる程の強さだからである。
だが、不動の一位である『ホーク・ディラン』が、ビルの言う『上』であるならば、大魔王『バルド』であってもどうしようもない。
「お主の言う『上』が誰かは分からぬが、こうなった以上は仕方ない。儂も腹を括ろうではないか!」
ルビリスの言葉ではバレなければ今までの生活を続けてもよく、万が一ソフィ達にバレた場合は、すぐに別の世界とやらに移動させてもらえると伝えられていた。
この集落での暮らしを出来れば続けたかったバルドだったが、こうして『ビル・カイエン』という『魔王軍』所属の幹部にバレた以上は、これまでのように集落の長老を続けることは叶わないだろう。
何とかしてビル・カイエンを振り切って、今日の夜にもう一度施設後で落ち合う予定であった『ルビリス』に事情を話すしかないと考えるバルドであった。
そしてバルドはこの場でビルを動けなくして、そのまま集落を出ようと考えて戦闘を行うために『魔力』を高め始める。
――しかしその瞬間に『ビル』の横に突如現れたある大魔王によって、ビルとバルドは強引に集落から転移させられてしまうのだった。
普段であれば今頃は自室で横になっている頃合いだが、施設後で予期せぬ出会いがあったために『バルド』は帰るのが遅くなってしまったのだった。
集落から施設へ向かう時は『転移』を使っていくが、戻るときに転移を使うと魔力を感知させてしまい、寝ているエイネ達を起こしてしまう恐れがあるため、普段はこうして戻るときに転移を使わずに戻ってきていた。
「やれやれ、遅くなってしまったな。朝帰りを咎められぬよう、誰も起きてこなければよいのだが……」
そう言って自分の家まで歩いていこうとするが、そこでクワを担いだ一体の魔族に会うのだった。
「長老。こんな時間までどこに行っていたのですかな?」
「ビル。こんな朝早くに起きていたのか」
偶然起きていたのかそれとも寝ずに『バルド』が帰ってくるのを、待っていたのかは分からないが、バルドを見て何か言いたそうにしている事は見て取れた。
「夜にいつも出ていくところを見ていれば、何事なのかと思うのは当然ですな。それより今日はいつもより遅かったみたいですが、何かありましたかな?」
「組織の者達と魔王軍の戦争があったばかりじゃろう? 集落に張ってある『結界』だけでは少しばかり不安になってな。何か別の『結界』を張ろうかと考えて森の周囲を見回っていたのじゃよ」
「はっはっは、何を仰いますやら。こんな集落に今以上の結界など必要ありますまい? そんなウソまでついて一体何を隠しているのやら。それとも何かよからぬ事でも企んでおるのですかな?」
「ウソ? 儂はこの集落の長老じゃぞ? 自分の集落の事を大事に考えることの何がおかしいのかのぉ?」
「長老……。いやバルド隊長。とぼけるのはそこまでにしましょうや。あんたがあの日にレアっていう子と一緒に向かった組織達の拠点に、毎日向かっているのはもう存じている。そこで何をやっているのかもね」
――ピクリと『バルド』の眉が額の中央に寄る。
「そんなあんたが今日。禍々しい魔力を漂わせながら、こんな時間に戻ってきているんだ。何かあったと思うのは当然じゃろう? アンタまさかソフィ様を裏切ったか?」
まさかこんなにも早く『魔王軍所属』の大魔王『ビル』にバレるとは思っていなかったため『バルド』は内心で狼狽えるのだった。
無言になったバルドにビル爺は顔を顰めながらため息を吐く。
「そこは否定して欲しかったところなんですがね?」
「カッカッカ! 何と間の悪い事じゃったか。昨日までなら堂々と否定出来たのだがな?」
その諦めような言葉を吐くバルドに、ビル爺は本当に大魔王バルドが組織側についた事を悟る。
「お前もその年まで生きていれば、世界の常識というモノに飽いておるじゃろう? 見たこともない技術で、儂らの知らぬ新たな常識が誕生するならば一度は見てみたいとは思わぬか?」
「あなたがいわんとしている事はなんとなく分かるが、ワシはソフィ様を裏切ってまで見たいとは思わぬ」
その言葉にバルドは、この事に関して今後の生涯で、ビルとは気が合わないだろうと判断するのだった。
「まぁいいだろう。それでビルよ? もし儂が本当に組織側についたとしてどうするつもりじゃ? 儂は元魔王軍の幹部にして『序列一桁・三位』だ。お主如きが楯突いたところで、儂を相手にどうにもならぬことは理解をしておろう?」
「バルド隊長。残念だがすでにこの事は上に通してある。後は上が動くまで時間を稼げば、貴方は終わりだ」
「用意周到なことだなビル。どうやらお前は相当前から儂のことを怪しんでおったということか」
ビルが言う『上』というのがどの程度まで『上』なのかを把握しきれぬバルドは、どうするかを考える。
当然『魔王軍』の事には違いないが、ビルは所詮『魔王軍』のランクでは『序列二桁』であり、彼の上役とは『バルド』と同じく『序列一桁』部隊の誰かだろうと予測は容易に出来る。
ソフィの『魔王軍』は離反した者に対して特にはペナルティといったモノを設けてはいないが、その離反者が大賢者『ミラ』の率いる『組織』や、少し前まで『魔王軍』と戦争状態であった『ヌー』といった大魔王の組織側に着くとなれば、当然に話は変わるのであった。
『魔王軍』の組織図などといった重要な事を敵に漏らされると困るというのも一因である。
そして離反者がそういった行動に出た時、普段は監視の役割を担う『現』魔王軍の者が『上』に報告する手筈となっていた。
そして今回の場合の組織の離反者であるバルドの監視役は、現在魔王軍『序列二桁』部隊に所属する『ビル・カイエン』なのであった。
百体近く居る『序列二桁』のメンバーだが、離反者に付く監視役には、特別に報告対象となる者が付く。
――それが先程『上』と呼ばれていた者の事である。
バルドは元ではあるが『序列一桁・三位』である。同じ一桁のメンバーであっても、バルドと五位以下では雲泥の差があるために、この場合の『上』は最低でも四位以上であろう。
バルドは序列一桁のメンバーであっても、二位までならば何とか逃げ遂せると考える。
大魔王バルドの持つ『能力』と『魔力』があれば、現在の魔王軍の『序列一桁』の三位以下の者達が相手であればあっさりと屠れる程の強さだからである。
だが、不動の一位である『ホーク・ディラン』が、ビルの言う『上』であるならば、大魔王『バルド』であってもどうしようもない。
「お主の言う『上』が誰かは分からぬが、こうなった以上は仕方ない。儂も腹を括ろうではないか!」
ルビリスの言葉ではバレなければ今までの生活を続けてもよく、万が一ソフィ達にバレた場合は、すぐに別の世界とやらに移動させてもらえると伝えられていた。
この集落での暮らしを出来れば続けたかったバルドだったが、こうして『ビル・カイエン』という『魔王軍』所属の幹部にバレた以上は、これまでのように集落の長老を続けることは叶わないだろう。
何とかしてビル・カイエンを振り切って、今日の夜にもう一度施設後で落ち合う予定であった『ルビリス』に事情を話すしかないと考えるバルドであった。
そしてバルドはこの場でビルを動けなくして、そのまま集落を出ようと考えて戦闘を行うために『魔力』を高め始める。
――しかしその瞬間に『ビル』の横に突如現れたある大魔王によって、ビルとバルドは強引に集落から転移させられてしまうのだった。
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