最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第397話 地下へと続く隠し階段と微弱な魔力
南方の大陸で『魔王軍』と『レジスタンス』を含めた『生贄部隊』達が戦う最中。遂にレア達も戦場へと到着するのだった。
まだまだ互いの陣営には多くの魔族達が居り、大魔王の領域に居る者達が、陸や空で殺し合いを続けていた。
レアはその様子をバルド達の後ろから眺めて唖然とする。
(どっちがソフィってやつの魔王軍かは分からないけど。この場に居るどの魔族も恐ろしく強い……)
この世界に来る前に大魔王『ヴァルテン』が、アレルバレルという世界は常に何がきっかけで戦争になるか分からない上、一度戦争が始まれば多くの力ある者達が殺し合う恐ろしい世界だと言っていた。
『レパート』という世界も『リラリオ』の世界と比べると比較にもならない程、強い魔族達が集まっていた。そしてその世界出身であるレアはフルーフを筆頭とする『魔王軍』が、数多の世界で『最強』だと信じて疑わなかった。
しかしどうやらヴァルテンの言うように、このアレルバレルという世界はそんなレアの固定概念を覆す事になりそうだった。
そしてめざとくバルド達の到着を目撃した一体の魔族が、こちらに近づいてくる。その魔族は私を一瞥すると『バルド』に声を掛けるのだった。
「バルド隊長。久しぶりですな」
「『ジェイン』。突然の連絡すまなかったな」
どうやらこの全身黒尽くめの衣服に身を包んだ男の名は『ジェイン』というらしい。
「いえいえそんな。今でも貴方は私の上官だと思っております。いつでもお気軽にお声掛け下さい」
そこでちらりとジェインと呼ばれた男がレアを見る。
「こちらの若い魔族の方が、連絡にあったフルーフ殿の?」
ジェインはレアを一瞥した後に、再びディアトロスに口を開いた。
「ああ。フルーフ殿を探しに同じ世界からここへ来たレア殿だ」
ディアトロスに紹介されたレアに、ジェインという男は軽く会釈をする。
「ソフィ様の魔王軍所属の『ジェイン』です」
「私はフルーフ様の直属の配下のレアよ」
互いに戦場のど真ん中で、自己紹介を済ませるのだった。
「何やらワケありのようでここに来られたようですが、現在我が軍はとある組織の拠点壊滅作戦の真っ最中でして、観察は自由ですがバルド様の元からは決して離れないように注意してくださいね?」
「わ、分かったわぁ!」
レアの返事を聞いたジェインという魔族は、バルドに頭を下げるとそのままレア達の元から去っていった。
(ソフィってやつの魔王軍は、どいつもこいつも化け物揃いねぇ)
去っていくジェインの後ろ姿を見ながら、レアはそう思うのだった。
「さてレアさん。我らは奴らの拠点の内部を見に行ってみますか?」
「何ですって?」
レアはバルドの言葉に耳を疑った。
「フルーフ殿の事を調べておきたいのでしょう? ここに貴方を連れてきた以上は、最初からそのつもりですよ。どうせこうなった以上はこの拠点の中は全て破壊されるでしょうしね。調べたいというのであれば、もう今しかありませんよ?」
「そ、それは貴方がいいというのならば、是が非でもお願いしたいけど……?」
本当にいいのかという眼差しをバルドに向ける。
「ふむ。そうと決まればワシが弾除けになりましょう。レアさんは周りを気にせず、真っすぐに施設へ向かいなされ」
今のレアの実力では到底この場に居る魔族達には敵わない。バルドの本当の実力は分からないが、今のレアよりは強い事は間違いないであろう。そう判断して素直にレアは頷くのだった。
……
……
……
バルド達は魔王軍と組織の『生贄部隊』のいる場所を極力避けながら、組織の拠点にある施設の大きな屋敷を目指す。そして何とか二人とも無事に目的の場所へと辿り着くのであった。
組織の者達はほとんどが外に出払い戦っているためか、中は静かなものだった。レアは屋敷の中へ入ると『魔力感知』で周囲を探索するが、魔物や魔族の魔力を感知が出来ない。
「誰もいないのかしらぁ? 何か感じる?」
レアは前に居るバルドに尋ねるが、バルドも同じような感覚を味わっているのか首を傾げるのだった。
「確かに生き物のようなモノは感じられるのですがね。いや、これは何か違和感を感じます」
「うん。魔族ではない何かが居るわよね? ひとまずそちらの方へ向かってみましょうか」
レアの言葉に頷きながらバルドは前を歩いていく。
『生物』の魔力を頼りにどんどんと進んでいくレアとバルドだったが、もう少しで辿り着くといったところで大きな壁があり、他に道がなくどうやら行き止まりだった。
「ここ怪しいけど、ひとまず壊して進んでみる?」
バルドが頷いたのを確認した後にレアは、壁に魔力を流し込んだ後にその壁を押すと、壁に亀裂が入りあっさりと崩れて向こう側が見えるようになった。
「これは、隠し階段?」
壁の向こう側には小部屋につながっていて、どうやら部屋には下へと続く階段があった。
レアはその階段を降りようとするが、そこでバルドが声を掛けた。
「レアさん、お待ちなされ。微弱ながら下から薄い魔力の壁のような物を感じます」
レアはその言葉に『魔力探知』を放つが全く感知出来ない。続けざまに『魔力感知』で階段を注意してみる。
「ほんとね」
そこでようやくほんの僅かと言うべき、まるで人間の魔法使いが放つ程度の微弱な魔力を感知出来た。
「この『魔界』でこんな脆弱な魔力を感知するのは珍しいですな。レアさんが先程『漏出』を使おうか悩んでいた時に止めようかと思いましたが、この微弱な魔力しか持っていない者しか居ないのならば、別に使われても支障はなかったですかな」
バルドは笑いながらレアにそう告げたが、レアは内心で何故自分が『漏出』を使おうとしているのを悟られたのか分からずにいたが、結論としてどうやらこの『バルド』という魔族は、今の自分程度で推し量れる程甘くはない存在で、自分のやろうとしていることなどお見通しなのだろうとそう結論づける事にしたのであった。
「ふむ。誘いかもしれません。ワシが先に行きましょう」
笑っていたバルドが表情を戻すと同時にそう告げる。レアはコクリと頷いて、一歩横へ移動して道を譲るのだった。
「レアさん。一応戦闘の準備をしておいて下さいね? 微弱な魔力の持ち主とはいっても『生物』が居る事は間違いはないのですから、万が一という事がありますので」
「え、ええ。そうね! そ、その通りね!」
ここでようやく何かフルーフの手掛かりのようなモノが見つかるかもしれないと、期待を胸にレアは、階段へと足を踏み入れていくのだった。
まだまだ互いの陣営には多くの魔族達が居り、大魔王の領域に居る者達が、陸や空で殺し合いを続けていた。
レアはその様子をバルド達の後ろから眺めて唖然とする。
(どっちがソフィってやつの魔王軍かは分からないけど。この場に居るどの魔族も恐ろしく強い……)
この世界に来る前に大魔王『ヴァルテン』が、アレルバレルという世界は常に何がきっかけで戦争になるか分からない上、一度戦争が始まれば多くの力ある者達が殺し合う恐ろしい世界だと言っていた。
『レパート』という世界も『リラリオ』の世界と比べると比較にもならない程、強い魔族達が集まっていた。そしてその世界出身であるレアはフルーフを筆頭とする『魔王軍』が、数多の世界で『最強』だと信じて疑わなかった。
しかしどうやらヴァルテンの言うように、このアレルバレルという世界はそんなレアの固定概念を覆す事になりそうだった。
そしてめざとくバルド達の到着を目撃した一体の魔族が、こちらに近づいてくる。その魔族は私を一瞥すると『バルド』に声を掛けるのだった。
「バルド隊長。久しぶりですな」
「『ジェイン』。突然の連絡すまなかったな」
どうやらこの全身黒尽くめの衣服に身を包んだ男の名は『ジェイン』というらしい。
「いえいえそんな。今でも貴方は私の上官だと思っております。いつでもお気軽にお声掛け下さい」
そこでちらりとジェインと呼ばれた男がレアを見る。
「こちらの若い魔族の方が、連絡にあったフルーフ殿の?」
ジェインはレアを一瞥した後に、再びディアトロスに口を開いた。
「ああ。フルーフ殿を探しに同じ世界からここへ来たレア殿だ」
ディアトロスに紹介されたレアに、ジェインという男は軽く会釈をする。
「ソフィ様の魔王軍所属の『ジェイン』です」
「私はフルーフ様の直属の配下のレアよ」
互いに戦場のど真ん中で、自己紹介を済ませるのだった。
「何やらワケありのようでここに来られたようですが、現在我が軍はとある組織の拠点壊滅作戦の真っ最中でして、観察は自由ですがバルド様の元からは決して離れないように注意してくださいね?」
「わ、分かったわぁ!」
レアの返事を聞いたジェインという魔族は、バルドに頭を下げるとそのままレア達の元から去っていった。
(ソフィってやつの魔王軍は、どいつもこいつも化け物揃いねぇ)
去っていくジェインの後ろ姿を見ながら、レアはそう思うのだった。
「さてレアさん。我らは奴らの拠点の内部を見に行ってみますか?」
「何ですって?」
レアはバルドの言葉に耳を疑った。
「フルーフ殿の事を調べておきたいのでしょう? ここに貴方を連れてきた以上は、最初からそのつもりですよ。どうせこうなった以上はこの拠点の中は全て破壊されるでしょうしね。調べたいというのであれば、もう今しかありませんよ?」
「そ、それは貴方がいいというのならば、是が非でもお願いしたいけど……?」
本当にいいのかという眼差しをバルドに向ける。
「ふむ。そうと決まればワシが弾除けになりましょう。レアさんは周りを気にせず、真っすぐに施設へ向かいなされ」
今のレアの実力では到底この場に居る魔族達には敵わない。バルドの本当の実力は分からないが、今のレアよりは強い事は間違いないであろう。そう判断して素直にレアは頷くのだった。
……
……
……
バルド達は魔王軍と組織の『生贄部隊』のいる場所を極力避けながら、組織の拠点にある施設の大きな屋敷を目指す。そして何とか二人とも無事に目的の場所へと辿り着くのであった。
組織の者達はほとんどが外に出払い戦っているためか、中は静かなものだった。レアは屋敷の中へ入ると『魔力感知』で周囲を探索するが、魔物や魔族の魔力を感知が出来ない。
「誰もいないのかしらぁ? 何か感じる?」
レアは前に居るバルドに尋ねるが、バルドも同じような感覚を味わっているのか首を傾げるのだった。
「確かに生き物のようなモノは感じられるのですがね。いや、これは何か違和感を感じます」
「うん。魔族ではない何かが居るわよね? ひとまずそちらの方へ向かってみましょうか」
レアの言葉に頷きながらバルドは前を歩いていく。
『生物』の魔力を頼りにどんどんと進んでいくレアとバルドだったが、もう少しで辿り着くといったところで大きな壁があり、他に道がなくどうやら行き止まりだった。
「ここ怪しいけど、ひとまず壊して進んでみる?」
バルドが頷いたのを確認した後にレアは、壁に魔力を流し込んだ後にその壁を押すと、壁に亀裂が入りあっさりと崩れて向こう側が見えるようになった。
「これは、隠し階段?」
壁の向こう側には小部屋につながっていて、どうやら部屋には下へと続く階段があった。
レアはその階段を降りようとするが、そこでバルドが声を掛けた。
「レアさん、お待ちなされ。微弱ながら下から薄い魔力の壁のような物を感じます」
レアはその言葉に『魔力探知』を放つが全く感知出来ない。続けざまに『魔力感知』で階段を注意してみる。
「ほんとね」
そこでようやくほんの僅かと言うべき、まるで人間の魔法使いが放つ程度の微弱な魔力を感知出来た。
「この『魔界』でこんな脆弱な魔力を感知するのは珍しいですな。レアさんが先程『漏出』を使おうか悩んでいた時に止めようかと思いましたが、この微弱な魔力しか持っていない者しか居ないのならば、別に使われても支障はなかったですかな」
バルドは笑いながらレアにそう告げたが、レアは内心で何故自分が『漏出』を使おうとしているのを悟られたのか分からずにいたが、結論としてどうやらこの『バルド』という魔族は、今の自分程度で推し量れる程甘くはない存在で、自分のやろうとしていることなどお見通しなのだろうとそう結論づける事にしたのであった。
「ふむ。誘いかもしれません。ワシが先に行きましょう」
笑っていたバルドが表情を戻すと同時にそう告げる。レアはコクリと頷いて、一歩横へ移動して道を譲るのだった。
「レアさん。一応戦闘の準備をしておいて下さいね? 微弱な魔力の持ち主とはいっても『生物』が居る事は間違いはないのですから、万が一という事がありますので」
「え、ええ。そうね! そ、その通りね!」
ここでようやく何かフルーフの手掛かりのようなモノが見つかるかもしれないと、期待を胸にレアは、階段へと足を踏み入れていくのだった。
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