最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第389話 第一次魔界全土戦争の始まりの地
エイネ達は慌てて集落のバルド長老の家に向かう。
「長老! 今の爆音を聞きましたか!?」
血相を変えて帰ってきたエイネ達に家に居たバルドは頷く。
「ついにソフィ様が動かれたようだ」
「私たちはどうしますか?」
ちらりとエイネは後ろに居るレアを一瞥した後にバルドに問いかける。
「今のワシらとは関係が無い。全てが終わるまで動く事はない」
「そう、ですよね」
バルドとエイネの間で話しが進んでいくが、レアは納得がいかない。
「ちょっと? 私にも何が起きているか教えて欲しいのだけどぉ」
バルドは少し悩んだ末に、口を開き始める。
「フルーフを攫ったと思われる『組織』の拠点をソフィ様たちが発見なされたのだろう。それでこの世界に散らばる『魔王軍』に所属する魔族達が『組織』の殲滅に乗り出したのじゃ」
フルーフの名前を聞いたレアは目を丸くする。
「ふ、フルーフ様の居場所が分かったの!?」
「いや、そこまでは分からぬ。しかし『組織』関連に何か進展があった事は間違いはないだろう」
そこまで聞いたレアは外へと走り出そうとする。
「レアさん!」
慌てて出て行こうとするレアに、バルドは背後から声を掛ける。
「な、なによ!」
「なりませんぞ? 理由は前に言った通りです」
「!」
口を真一文字に結びながら、レアは眉を寄せて悔しそうにバルドを睨む。
レアは前より遥かに強くなっており、今ならもしかすればなんとかなるかもしれないと考えたのだが、そんなレアを止めたバルドの表情は、まだ勝手に動く事を由としてはいなかった。
「レアさん。今下手に拠点に近づけば、巻き込まれる恐れがあります! どうかここに居て下さい」
「で、でも、フルーフ様がぁ……!」
「……」
「……」
今にも泣きそうな顔を浮かべたレアを見て、バルドとエイネは辛そうに顔を見合わせる。
「長老。何とかしてあげられませんかね」
レアの前で突然扉が開いたかと思うと、いつもクワを持って耕していた男が入ってきた。
「ビル爺?」
エイネが驚いて入ってきたビル爺の名前を呼ぶ。
「毎日畑から見ていましたが、そこに居るエイネ嬢の修行にも毎日懸命に耐えているところからすると、フルーフという魔族に対する彼女の気持ちは本物なのでしょう。遠いところから探しに来た彼女の気持ちを汲んでやってはいかがですか?」
「……」
ビル爺の言葉に真剣に考えるバルドであった。
「分かった。しかし一つだけ約束をしてもらうのが条件じゃ」
レアの顔が嬉しそうな表情になる。
「何があろうと『魔王軍』にも『組織』側にも加担をせずに、大人しく成り行きを見守ると約束をするならば連れて行こう」
それはレアの安否を優先に考えた内容であった。
「分かったわ……」
レアは納得した表情をバルド達に見せたが、もし万が一フルーフの姿を見る事があれば、その限りではないと密かに企むレアであった。
「音のする方に向かうでいいのかしらぁ?」
集落に戻ってくる時に聞こえた爆発音の方に、すでに多くの魔力を感知しているレアがそう言うと、バルドは首を振った。
「今更そこへ向かったところで、全て片が付いておるだろう。少し待って下され」
そう言うとバルドは黙り込む。
その様子を見たレアはバルドがどこかに『念話』を飛ばしているのだろうと予測するのだった。
……
……
……
その頃『生贄部隊』達は自分たちの元へ『魔王軍』が迫ってくるのも時間の問題だと言う事を理解した上で、大賢者達にソフィの『魔王軍』が殲滅行動に出たことを伝え終えた後に拠点から脱出しようとしていた。
「我々の役目は終わった。後は『ダール』の世界に向かった同胞達に未来を託すのみだ」
「ああ。たとえ今我らが犠牲になろうとも大賢者様の魔法が完成すれば、再び我らは蘇ることができる」
「死を遂げる事で我らは再び一つとなる事が出来るのだからな」
「大賢者様。我らに救いを!」
彼らの目は血のように紅い目をしながら、同じような笑みを浮かべていた。
……
……
……
――アレルバレルの魔界。
その南方にある場所に『生贄部隊』達が潜む大陸があった。
ここにはかつて『ロンダギルア』という魔族が支配していた土地があった。この土地は『アレルバレル』という世界を紹介する上で、語っておかなければならない戦争があった。
それはソフィがまだ『魔王軍』を組織する前の時代の話であり、そのロンダギルアという魔族は、自身の支配する大陸と近い所にある人間の大陸、その大陸を治める皇帝と手を組み、いずれは『アレルバレル』の世界全体の支配を目論んでいた。
当時の『人間界』では大賢者エルシスの再来と呼ばれる程の魔力を有した人間『ミラ』が、皇帝の懐刀としてその存在を示していた。
自身を大賢者と呼ばせており『魔界』出身の魔族を相手に、一歩も引かずに戦えるほどの強さを持っていた。
『皇帝』が暴君として存在出来たのは、この大賢者の存在が居たからだった。
人間界は『皇帝』が好き勝手に支配して、一部の貴族や皇帝の息のかかった者達だけが優遇されていた。
更にそんな圧制の中で国民達が『皇帝』に逆らわないようにするために、ロンダギルアが派遣した魔族達が人間界に次々入り込み、皇帝の守りを固め始めるのだった。
『皇帝』は大賢者『ミラ』とその魔法部隊。そして『ロンダギルア』の配下達に守られながら次々と搾取という名の支配を続けていった。
そして魔界の南方大陸を支配していたロンダギルアは『皇帝』の統治の安寧の代わりに、大賢者ミラを魔界の勢力戦争に協力させていた。
当時の魔界は群雄割拠であり、至るところに大魔王の領域に居る魔族が蔓延っていた。
そんな魔界をミラを擁したロンダギルアの勢力が次々と飲み込んでいき、魔界はロンダギルアの物になるかと思われた。
魔界の南方にある総大陸の二分の一程までを手中に収めた『ロンダギルア』の勢力は恐ろしく大きくなり、当時の『魔界』南方の大陸では、終ぞ『ロンダギルア』に逆らえるモノが少なくなっていった。
そしてそれと同時に『ロンダギルア』と同盟を結んでいる『皇帝』の圧政も増していき、人間界ではどの国も『皇帝』の持つ『ダイス帝国』には逆らえなくなる。
(※ダイス帝国は後にダイス王国と名を変える)。
『アレルバレル』の魔界はロンダギルア。人間界は皇帝の物と呼ばれるようになった。
そしてその後に進撃を続けるロンダギルアは、遂に南方全ての大陸を手中におさめる事に成功して、魔界中央の大陸に手を伸ばし始めてしまうのだった。
――だが、そこは周囲の大陸を治める大魔王達でさえ、決して触れる事を禁忌としていた大陸だったのである。
「長老! 今の爆音を聞きましたか!?」
血相を変えて帰ってきたエイネ達に家に居たバルドは頷く。
「ついにソフィ様が動かれたようだ」
「私たちはどうしますか?」
ちらりとエイネは後ろに居るレアを一瞥した後にバルドに問いかける。
「今のワシらとは関係が無い。全てが終わるまで動く事はない」
「そう、ですよね」
バルドとエイネの間で話しが進んでいくが、レアは納得がいかない。
「ちょっと? 私にも何が起きているか教えて欲しいのだけどぉ」
バルドは少し悩んだ末に、口を開き始める。
「フルーフを攫ったと思われる『組織』の拠点をソフィ様たちが発見なされたのだろう。それでこの世界に散らばる『魔王軍』に所属する魔族達が『組織』の殲滅に乗り出したのじゃ」
フルーフの名前を聞いたレアは目を丸くする。
「ふ、フルーフ様の居場所が分かったの!?」
「いや、そこまでは分からぬ。しかし『組織』関連に何か進展があった事は間違いはないだろう」
そこまで聞いたレアは外へと走り出そうとする。
「レアさん!」
慌てて出て行こうとするレアに、バルドは背後から声を掛ける。
「な、なによ!」
「なりませんぞ? 理由は前に言った通りです」
「!」
口を真一文字に結びながら、レアは眉を寄せて悔しそうにバルドを睨む。
レアは前より遥かに強くなっており、今ならもしかすればなんとかなるかもしれないと考えたのだが、そんなレアを止めたバルドの表情は、まだ勝手に動く事を由としてはいなかった。
「レアさん。今下手に拠点に近づけば、巻き込まれる恐れがあります! どうかここに居て下さい」
「で、でも、フルーフ様がぁ……!」
「……」
「……」
今にも泣きそうな顔を浮かべたレアを見て、バルドとエイネは辛そうに顔を見合わせる。
「長老。何とかしてあげられませんかね」
レアの前で突然扉が開いたかと思うと、いつもクワを持って耕していた男が入ってきた。
「ビル爺?」
エイネが驚いて入ってきたビル爺の名前を呼ぶ。
「毎日畑から見ていましたが、そこに居るエイネ嬢の修行にも毎日懸命に耐えているところからすると、フルーフという魔族に対する彼女の気持ちは本物なのでしょう。遠いところから探しに来た彼女の気持ちを汲んでやってはいかがですか?」
「……」
ビル爺の言葉に真剣に考えるバルドであった。
「分かった。しかし一つだけ約束をしてもらうのが条件じゃ」
レアの顔が嬉しそうな表情になる。
「何があろうと『魔王軍』にも『組織』側にも加担をせずに、大人しく成り行きを見守ると約束をするならば連れて行こう」
それはレアの安否を優先に考えた内容であった。
「分かったわ……」
レアは納得した表情をバルド達に見せたが、もし万が一フルーフの姿を見る事があれば、その限りではないと密かに企むレアであった。
「音のする方に向かうでいいのかしらぁ?」
集落に戻ってくる時に聞こえた爆発音の方に、すでに多くの魔力を感知しているレアがそう言うと、バルドは首を振った。
「今更そこへ向かったところで、全て片が付いておるだろう。少し待って下され」
そう言うとバルドは黙り込む。
その様子を見たレアはバルドがどこかに『念話』を飛ばしているのだろうと予測するのだった。
……
……
……
その頃『生贄部隊』達は自分たちの元へ『魔王軍』が迫ってくるのも時間の問題だと言う事を理解した上で、大賢者達にソフィの『魔王軍』が殲滅行動に出たことを伝え終えた後に拠点から脱出しようとしていた。
「我々の役目は終わった。後は『ダール』の世界に向かった同胞達に未来を託すのみだ」
「ああ。たとえ今我らが犠牲になろうとも大賢者様の魔法が完成すれば、再び我らは蘇ることができる」
「死を遂げる事で我らは再び一つとなる事が出来るのだからな」
「大賢者様。我らに救いを!」
彼らの目は血のように紅い目をしながら、同じような笑みを浮かべていた。
……
……
……
――アレルバレルの魔界。
その南方にある場所に『生贄部隊』達が潜む大陸があった。
ここにはかつて『ロンダギルア』という魔族が支配していた土地があった。この土地は『アレルバレル』という世界を紹介する上で、語っておかなければならない戦争があった。
それはソフィがまだ『魔王軍』を組織する前の時代の話であり、そのロンダギルアという魔族は、自身の支配する大陸と近い所にある人間の大陸、その大陸を治める皇帝と手を組み、いずれは『アレルバレル』の世界全体の支配を目論んでいた。
当時の『人間界』では大賢者エルシスの再来と呼ばれる程の魔力を有した人間『ミラ』が、皇帝の懐刀としてその存在を示していた。
自身を大賢者と呼ばせており『魔界』出身の魔族を相手に、一歩も引かずに戦えるほどの強さを持っていた。
『皇帝』が暴君として存在出来たのは、この大賢者の存在が居たからだった。
人間界は『皇帝』が好き勝手に支配して、一部の貴族や皇帝の息のかかった者達だけが優遇されていた。
更にそんな圧制の中で国民達が『皇帝』に逆らわないようにするために、ロンダギルアが派遣した魔族達が人間界に次々入り込み、皇帝の守りを固め始めるのだった。
『皇帝』は大賢者『ミラ』とその魔法部隊。そして『ロンダギルア』の配下達に守られながら次々と搾取という名の支配を続けていった。
そして魔界の南方大陸を支配していたロンダギルアは『皇帝』の統治の安寧の代わりに、大賢者ミラを魔界の勢力戦争に協力させていた。
当時の魔界は群雄割拠であり、至るところに大魔王の領域に居る魔族が蔓延っていた。
そんな魔界をミラを擁したロンダギルアの勢力が次々と飲み込んでいき、魔界はロンダギルアの物になるかと思われた。
魔界の南方にある総大陸の二分の一程までを手中に収めた『ロンダギルア』の勢力は恐ろしく大きくなり、当時の『魔界』南方の大陸では、終ぞ『ロンダギルア』に逆らえるモノが少なくなっていった。
そしてそれと同時に『ロンダギルア』と同盟を結んでいる『皇帝』の圧政も増していき、人間界ではどの国も『皇帝』の持つ『ダイス帝国』には逆らえなくなる。
(※ダイス帝国は後にダイス王国と名を変える)。
『アレルバレル』の魔界はロンダギルア。人間界は皇帝の物と呼ばれるようになった。
そしてその後に進撃を続けるロンダギルアは、遂に南方全ての大陸を手中におさめる事に成功して、魔界中央の大陸に手を伸ばし始めてしまうのだった。
――だが、そこは周囲の大陸を治める大魔王達でさえ、決して触れる事を禁忌としていた大陸だったのである。
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