最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第337話 精霊族の王を煽る魔族の王
レアが精霊達にも感知出来るように魔力を放出した後に、ゆっくりと大陸へと近づいていくと、一体の精霊が大陸の上空でレア達を待ち受けていた。
「レア様……」
「分かっているわぁ」
待ち受けている精霊の強い戦力値を感じ取ったエリスが、慌ててレアに伝えようとするが、レアはそれを制止する。
目の前でレアを見る精霊の力は、確かにかなりのモノだった。レアは視線を一度だけ別の場所に移した後に再度視線を精霊に戻す。
どうやら大陸全域を覆う結界が張り巡らされているようだったが、目視では相当に分かりずらい。
(攻撃を防ぐ結界かしらぁ……? それとも触れた瞬間に魔力を感知される類の結界? どちらにせよ目の前に立っている奴に聞いた方が早そうねぇ)
レアは即座に結界を看破したが、その結界がどういう力を持っているかまでは分からず、結界の外側のギリギリのラインまで近づくとその場で精霊に言葉をかける。
「ここで待っていたという事は、私たちに用があるのよねぇ?」
レアが目の前にいる精霊にそう告げると、精霊は静かに口を開いた。
「よくここが分かったな魔族の王よ」
自分の素性がすでに割れている事を理解したレアは不敵に笑う。
「私の事を知っているのねぇ? なら話は早いわぁ」
そう言うとレアはゆっくりと口を開いた。
「私の名は『レア』。ヴェルマー大陸の魔族の王にして『魔王』よぉ」
「私は『トーリエ』大陸の精霊王『ヴィヌ』という」
(せ、精霊王自らが魔族に挨拶を返すなんて!)
互いの種族の王が顔を合わせて自己紹介をする。一見普通の事のように思えるが、エリスはその事実が信じられなかった。
『精霊族』は人間や魔族からすれば、自然そのものが具現化したような存在である。
魔族にとって魔法は身近なモノである以上、その魔法の『理』を生み出した精霊は単に力が強い格上の『魔人族』とは違い、自然そのものを崇めるような存在なのであった。
その崇める対象というような存在の精霊。その精霊達の王が、魔族の王相手にとはいっても、いち魔族を相手に言葉を返しているのをエリスは驚いたという事である。
「『精霊王』か。どうやら貴方が精霊達で一番偉い方みたいねぇ?」
そうレアが言うと『ヴィヌ』は頷きを返しながら口を開いた。
「そう言う事だ。それでレアといったか? この大陸に何の用があって来たのだ」
精霊王ヴィヌは言葉自体は普通だが、視線や佇まいに厳かな圧力があった。同じく民や種族の同胞の上に立つという意味では、同じ存在であるエリス女王だが、この精霊王『ヴィヌ』を前にしてレアのように堂々とはしていられなかった。
もしエリスが『魔族の王』となっていて、今回のように話し合いの場が設けられたとしてもこの精霊王『ヴィヌ』と対等に話せる自信などなかったであろう。
しかしエリスの前に立つレアは、その精霊王の視線を直接受けているにも拘わらず何事もなく見つめ返している。
エリスは心の中でこれこそが王の器なのだと、レア女王の凄さを改めて感じるのであった。
「何の用かですって? 私の大陸につまらない者を送り込んでおいて、よくそんな言葉が吐けるわねぇ?」
静かな口調ではあったが、レアの目には怒りのようなモノが孕んでいた。
「何の事かよく分からないが、何か勘違いをしているのではないだろうか? 我々精霊は世界の安寧を保つ為に日々『魔』の管理に忙しくてな。申し訳無いが、いち種族の相手などしてはいられないのだが」
その言葉にレアの眉がぴくりと動いた。
「それは私達魔族のことなんて、眼中にもないという事なのかしらぁ?」
徐々にレアが苛立っていく事にエリスは気づき、あわあわと慌て始める。
「そういう事だ。お前達『魔族』は『魔人族』のような野蛮な連中と喧嘩でもしていればよかろう? 我ら精霊はそんなことに構っていられる程に暇ではないのだ。誤解が解けたのならば、即刻帰ってもらえないだろうか」
そういって精霊王『ヴィヌ』は、もう用は済んだとばかりに背を向けてそのまま立ち去ろうとする。しかしそのヴィヌの背中にめがけてレアは宣戦布告の言葉を放った――。
「へぇ、なるほどぉ。この世界の『魔』の管理かぁ! たかが精霊如きの分際が、大層な事を言うのねぇ? まぁ別にそれはいいんだけどぉ、あんな程度の『理』しか生み出せない低能な種族が管理してるようじゃ、そりゃさぞかし忙しくて大変でしょうねぇ? もうちょっと『魔』のお勉強をした方が良いんじゃないかしらぁ」
――その場を去ろうとしていた『ヴィヌ』の足がピタリと止まった。
「よく聞こえなかったのだが、なんと言ったのかな?」
精霊王ヴィヌは背を向けたまま、静かにそう口を開いた。
「ふふっ! 耳が遠いお爺ちゃんねぇ? 仕方ないからもう一度言ってあげるわねぇ? お前ら程度の無様な『理』で、世界の安寧がどうとか偉そうなことを言わないで欲しいと言ったのよぉ! 今度はしっかりと聞きとれたのかしらぁ? 精霊王ちゃーん?」
くすくすと馬鹿にするように笑いながら、レアはそう告げたのだった。
瞬間――。
それまでと空気が一変していき、恐ろしい程の魔力が、精霊王『ヴィヌ』から放出され始めた。
「エリスちゃん、私の後ろに居なさい」
精霊王の恐ろしい魔力にあてられて苦しそうに頭を押さえていたエリスは、そのレアの言葉に頷きを返して、フラフラになりながらレアの後ろへと移動する。
「たかが魔族風情がぁ……っ! いったい誰に向かって大口を叩くかぁっ!!」
精霊王ヴィヌが怒号を発すると、いつの間にか多くの精霊達がヴィヌの周りに現れ始めた。
『火』精霊長老『バーン』『水』精霊長老『リューカ』『土』精霊長老『ディガンダ』『風』精霊長老『トネール』。
そして四元素の多くの精霊達が、精霊王ヴィヌに敵対する魔族を殲滅するために、その姿をこの場に見せるのであった。
「レア様……」
「分かっているわぁ」
待ち受けている精霊の強い戦力値を感じ取ったエリスが、慌ててレアに伝えようとするが、レアはそれを制止する。
目の前でレアを見る精霊の力は、確かにかなりのモノだった。レアは視線を一度だけ別の場所に移した後に再度視線を精霊に戻す。
どうやら大陸全域を覆う結界が張り巡らされているようだったが、目視では相当に分かりずらい。
(攻撃を防ぐ結界かしらぁ……? それとも触れた瞬間に魔力を感知される類の結界? どちらにせよ目の前に立っている奴に聞いた方が早そうねぇ)
レアは即座に結界を看破したが、その結界がどういう力を持っているかまでは分からず、結界の外側のギリギリのラインまで近づくとその場で精霊に言葉をかける。
「ここで待っていたという事は、私たちに用があるのよねぇ?」
レアが目の前にいる精霊にそう告げると、精霊は静かに口を開いた。
「よくここが分かったな魔族の王よ」
自分の素性がすでに割れている事を理解したレアは不敵に笑う。
「私の事を知っているのねぇ? なら話は早いわぁ」
そう言うとレアはゆっくりと口を開いた。
「私の名は『レア』。ヴェルマー大陸の魔族の王にして『魔王』よぉ」
「私は『トーリエ』大陸の精霊王『ヴィヌ』という」
(せ、精霊王自らが魔族に挨拶を返すなんて!)
互いの種族の王が顔を合わせて自己紹介をする。一見普通の事のように思えるが、エリスはその事実が信じられなかった。
『精霊族』は人間や魔族からすれば、自然そのものが具現化したような存在である。
魔族にとって魔法は身近なモノである以上、その魔法の『理』を生み出した精霊は単に力が強い格上の『魔人族』とは違い、自然そのものを崇めるような存在なのであった。
その崇める対象というような存在の精霊。その精霊達の王が、魔族の王相手にとはいっても、いち魔族を相手に言葉を返しているのをエリスは驚いたという事である。
「『精霊王』か。どうやら貴方が精霊達で一番偉い方みたいねぇ?」
そうレアが言うと『ヴィヌ』は頷きを返しながら口を開いた。
「そう言う事だ。それでレアといったか? この大陸に何の用があって来たのだ」
精霊王ヴィヌは言葉自体は普通だが、視線や佇まいに厳かな圧力があった。同じく民や種族の同胞の上に立つという意味では、同じ存在であるエリス女王だが、この精霊王『ヴィヌ』を前にしてレアのように堂々とはしていられなかった。
もしエリスが『魔族の王』となっていて、今回のように話し合いの場が設けられたとしてもこの精霊王『ヴィヌ』と対等に話せる自信などなかったであろう。
しかしエリスの前に立つレアは、その精霊王の視線を直接受けているにも拘わらず何事もなく見つめ返している。
エリスは心の中でこれこそが王の器なのだと、レア女王の凄さを改めて感じるのであった。
「何の用かですって? 私の大陸につまらない者を送り込んでおいて、よくそんな言葉が吐けるわねぇ?」
静かな口調ではあったが、レアの目には怒りのようなモノが孕んでいた。
「何の事かよく分からないが、何か勘違いをしているのではないだろうか? 我々精霊は世界の安寧を保つ為に日々『魔』の管理に忙しくてな。申し訳無いが、いち種族の相手などしてはいられないのだが」
その言葉にレアの眉がぴくりと動いた。
「それは私達魔族のことなんて、眼中にもないという事なのかしらぁ?」
徐々にレアが苛立っていく事にエリスは気づき、あわあわと慌て始める。
「そういう事だ。お前達『魔族』は『魔人族』のような野蛮な連中と喧嘩でもしていればよかろう? 我ら精霊はそんなことに構っていられる程に暇ではないのだ。誤解が解けたのならば、即刻帰ってもらえないだろうか」
そういって精霊王『ヴィヌ』は、もう用は済んだとばかりに背を向けてそのまま立ち去ろうとする。しかしそのヴィヌの背中にめがけてレアは宣戦布告の言葉を放った――。
「へぇ、なるほどぉ。この世界の『魔』の管理かぁ! たかが精霊如きの分際が、大層な事を言うのねぇ? まぁ別にそれはいいんだけどぉ、あんな程度の『理』しか生み出せない低能な種族が管理してるようじゃ、そりゃさぞかし忙しくて大変でしょうねぇ? もうちょっと『魔』のお勉強をした方が良いんじゃないかしらぁ」
――その場を去ろうとしていた『ヴィヌ』の足がピタリと止まった。
「よく聞こえなかったのだが、なんと言ったのかな?」
精霊王ヴィヌは背を向けたまま、静かにそう口を開いた。
「ふふっ! 耳が遠いお爺ちゃんねぇ? 仕方ないからもう一度言ってあげるわねぇ? お前ら程度の無様な『理』で、世界の安寧がどうとか偉そうなことを言わないで欲しいと言ったのよぉ! 今度はしっかりと聞きとれたのかしらぁ? 精霊王ちゃーん?」
くすくすと馬鹿にするように笑いながら、レアはそう告げたのだった。
瞬間――。
それまでと空気が一変していき、恐ろしい程の魔力が、精霊王『ヴィヌ』から放出され始めた。
「エリスちゃん、私の後ろに居なさい」
精霊王の恐ろしい魔力にあてられて苦しそうに頭を押さえていたエリスは、そのレアの言葉に頷きを返して、フラフラになりながらレアの後ろへと移動する。
「たかが魔族風情がぁ……っ! いったい誰に向かって大口を叩くかぁっ!!」
精霊王ヴィヌが怒号を発すると、いつの間にか多くの精霊達がヴィヌの周りに現れ始めた。
『火』精霊長老『バーン』『水』精霊長老『リューカ』『土』精霊長老『ディガンダ』『風』精霊長老『トネール』。
そして四元素の多くの精霊達が、精霊王ヴィヌに敵対する魔族を殲滅するために、その姿をこの場に見せるのであった。
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