最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第336話 魔を司る精霊族と魔の理を司る魔王の娘

 精霊王ヴィヌの言葉に長老たちが真意を尋ねようとした瞬間、その場にいた精霊の長老達は膨大な魔力を感知する。

「な、なんだこの魔力は!」

『土』の精霊長老『ディガンダ』がそう叫ぶと同時に『火』の精霊長老『バーン』が動いた。

 バーンが同胞達に『念話テレパシー』を送ると、すぐに『トーリエ』大陸中の精霊達に、緊急事態を知らされた。

 そして即座に『トーリエ』大陸に大規模な結界が幾重にも張られて行く。流石は『魔』を司る精霊達である。

 この大陸に迫る膨大な魔力を感知してまだ僅かの時間だったが、すでに大陸中の精霊たちに脅威が迫っている事が伝えられて、人間や魔族そしてかの魔人でさえも突破に時間がかかる程の結界が張られたのだった。

「ここに向かってきておる者は二体。そして片方は件の魔族の王だろう」

 その言葉に精霊長老達は、苦々しい表情を浮かべながら間違いないだろうと頷く。

「魔族め! ついに我らまで手をかけようというのか」

 リューカがそういうと立ち上がり激昂する。

「落ち着けリューカよ、よいか? あの魔族の王の魔力の前には、我らの大陸の結界など容易く乗り越えられよう。だがこちらから攻撃はせぬように! 私が直接魔族の王の元へ向かう、お主たちは事の成り行きを見守るように」

 そういうと精霊王『ヴィヌ』は、これで会議は終わりだとばかりにその場から消えた。

 残された精霊長老達は互いに顔を見合わせる。

「各々の精霊長よ、ヴィヌ様はああ仰られていたが……。私たちも何かあれば、戦えるよう準備をしておきましょう」

 先程まで強くトネールに詰め寄っていた『水』の精霊長老とは思えぬ程に、冷静な態度で口を開くのだった。

「そうだな、ここへ奴らが話し合いをしにきたのであればいいが、あの魔族の王は信用が出来ない」

 魔人達に手をかけた魔族の王の残虐性を空の映像で確認した精霊長老達は、単なる話し合いで解決するとは、とても思えないのであった。

「すぐに連携を取れるよう、いつもの布陣で戦いの準備を」

『風』の精霊長老『トネール』がそう言うと『水』の精霊長老『リューカ』もまた頷く。

 正しい事は正しいと言い、間違っていれば間違っていると声高に討論をする精霊達だが、他種族との戦闘や戦争という事になれば、すぐに精霊達は手を取り合ってこれまでも協力してきた。

 今回もまた例に漏れず、先程までの会議で流れていた空気は一変して同調の空気に変わるのだった。

「だがまずはヴィヌ様のお言葉通り、手を出さずに成り行きを見てからだぞ?」

 ディガンダがそう言うと、もちろんだとばかりに長老達は頷く。

「侮るような真似はせぬが、ひとまず相手は二体だ。何か行動をすればすぐに対処が出来る筈だ。それまでは見守ろう」

『火』の精霊長老の言葉を最後に、各々の精霊長老達は、壁戦へきせんたきから離れて今後の準備に取り掛かるのだった。

 ……
 ……
 ……

 そしてヴェルマー大陸から飛び立ち、精霊達の大陸を目指していたレアとエリスは、ようやく『トーリエ』大陸を空から発見するのだった。

「どうやらあそこが精霊達の住処のようねぇ?」

『風』の精霊『ジウ』に似た精霊の魔力を感知したレアはそう口にする。

「流石は精霊さ……、精霊たちですね! 恐ろしい程の魔力を感じます」

 精霊様と言いかけたが、慌ててエリス女王は言い直す。

「そうねぇ? 貴方にはまだまだ脅威に感じられる魔力値かもねぇ」

 精霊達の魔力値は大きなモノから小さなモノまで感じられるが、それでも1000万を下回る程、低い魔力値を持つ者は居ない。つまり精霊という種族はその名に恥じぬ『魔』を司る種族で間違いはなさそうだった。

 レアの居た世界『レパート』ではすでに、精霊という種族は滅んで居なくなっていたために、精霊という種族の本懐をようやく理解するレアであった。

「まだ此方の接近には気づいていないようねぇ。ひとまず精霊達の偉い人と話がしたいから気づいてもらおうかしらぁ?」

 エリスはその言葉にきょとんとした表情を浮かべたが……。

 ――次の瞬間。レアから恐ろしい程の魔力が発せられるのだった。

 レアのに、慌てて『青』を纏うエリス女王だった。

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