最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第332話 新たに魔王領域へと足を踏み入れたエリス女王

 その後も訓練場で魔族達の模擬戦闘を見ていたレアだが、何度目かの試合の後にレアは立ち上がった。

「お前達の戦い方は見させてもらったわぁ。よく研鑽が出来ていたわよぉ? これからもエリスちゃんの言う事を聞いて学び続けなさい」

 レアがそういうと訓練場にいた魔族達は、自分達のやってきていた事は間違っていなかったのだと再認識が出来たようで嬉しそうな笑みを浮かべた後に、分かりましたとばかりにその場で跪くのであった。

 その様子を見たレアは、満足そうに訓練場を後にするのだった。

 …………

「お待ちください! レア様」

 レアが訓練場を出た後『ラルグ』魔国へ転移しようと魔力を込め始めた時、突如声を掛けられるのだった。

「どうしたのぉ? エリスちゃん」

 声を掛けて来たのは必死にレアの後を追いかけてきたエリス女王だった。

「お帰りになられるところ、お引止めしてしまい申し訳ありません。す、少しだけ私の研鑽の成果も見て頂けないでしょうか」

 どうやら折角レイズ魔国に顔を見せに来てくれていたレアに、訓練場にいるときからずっと彼女は指南を仰ぎたいと考えていたのだろう。そのまま自国へと帰りそうになっていたレアに焦り、追いかけてきた様子だった。

「ええ、いいわよぉ? 私と実戦形式で見てもらいたいのかしら?」

 レアはそれでも構わないとばかりに訓練場に戻ろうとするが、エリスは首を振って否定する。

「いえ、それも魅力的なのですが。今回は少しこちらのほうを見てもらおうと思いまして」

 そう言うとその場でエリスは魔力を込め始めると――。

 ――何と『淡く青い』オーラが、微弱ながらエリスから漏れ始めたのだった。

「なっ……!?」

 レアは驚いた様子で『エリス』の纏う『青』を観察する。まだまだレアから見ればエリスの纏う青の練度は研鑽の余地があるが、それでも立派にエリス女王は、に立っていた。

 それはつまり『最上位魔族』から『覚醒した魔王』の領域へと昇華したという証であった。

「ど、どうでしょうか……!」

 この世界ではまだレア以外に『魔王』の領域へと昇華した魔族はいない為、エリスは不安気にレアからの言葉を待つ。

「よくやったわよぉ、エリスちゃん! 貴方はやっぱりだったわねぇ」

 レアはそう言うと、エリスに優しい笑みを浮かべるのだった。

「あ……、ありがとうございます!!」

 期待以上の言葉をレアからもらったエリスは歓喜に震えるのだった。

 【種族:魔族 名前:エリス(覚醒した魔王) 状態:青1.4
 魔力値:2200万 戦力値:6300万 地位:レイズ魔国女王・ラルグ魔国女王レアの直属の配下】。

 レアは『漏出サーチ』でエリスの戦力値と、魔力値を確かめた後に口を開いた。

「でもそこで満足はしないでねぇ? 確かに魔王への領域には到達したけれど、まだまだ私たちの使う『ことわり』を会得出来ている訳ではないからねぇ?」

「も、勿論です! これからも精進して参ります! 呼び止めて申し訳ありませんでした!」

 そう言って頭を下げるエリスに、とばかりに頷くレアであった。

 ……
 ……
 ……

 その頃『ラルグ』魔国ではラクスもまた自己研鑽を続けており『スクアード』を使わない状態でもすでに『魔人族』の『幹部級』十体に肩を並べられる程に成長していた。

「強敵と戦う自分を模倣して、何がダメで何がいいかを考える」

 ラクスはレアに教わった瞑想と、過去の魔人の教えを交互に試しながら研鑽を続ける。

 すでに空想上での対象となる敵は決まっていた。

 ――『魔王』レアである。

 しかし空に流れていた映像のオーラを纏ったレアが相手では、何をしても勝ち目がなく、仕方なくレアに攻撃をする自分ではなく、レアが映像上で手を出していた攻撃パターンを何度も思い浮かべて回避のパターンを構築していくラクスであった。

 ある程度上達が見込めたらレアに再び『スクアード』を使った状態で戦うつもりである。

 もうラクスの中でレアは一族の仇ではなく、のような存在へと変わった様子であった。

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