最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第322話 魔王レアの張る結界
魔族の王であるレアに呼び出された三体の魔族達の顔は蒼白だった。
何故なら彼らは子供ながらにして、言葉を選び間違えれば即座に首を刎ねとばされると、明確に理解している為であった。
「いきなり呼び出して悪かったわねぇ?」
レアはにこにこと笑いながら呼び出した魔族達に謝ると、慌てて三体の魔族達は首を横に振った。
「い、いえ。そ、それで何の御用でしょうか。レア様……」
戦々恐々としながら呼び出された魔族達はレアに尋ねる。
「魔人ラクス」
レアがその名前を出すと、ビクリと三体の魔族の体が震えた。
「貴方達、ラクスちゃんに何かをしたのかしらぁ?」
魔族達はどう答えるべきかに悩み、そして互いに三体は顔を見合わせる。その様子にレアは笑みを浮かべるが、三体の魔族はその笑顔に震え上がる。
ラルグの前魔国王『ベイド』の時とは、全く比べ物にならない恐ろしさを持っているレア女王。
たった数日で三大魔国全てを制圧して、就任セレモニーでは野次を飛ばした国民に対して即処刑を行い、その存在感を大陸中に知らしめてみせた。
そしてレアは『リラリオ』の世界の歴史上、成し遂げた事のない『ヴェルマー』の大陸統一に成功してみせた。
更にはレア女王一体で上位種の『魔人族』を皆殺しにする事を可能とする力を有する絶対的王者。
そんなレア女王に嘘を吐ける筈がなく、こちらの試すように笑みを浮かべるレアに、ラルグ魔国の幹部に就いている親を持つ彼らであってもどうすることもできない。
しかし素直に女王のお気に入りである『魔人』に嫌がらせをしたことを告げた場合、結局殺されてしまうのではないかと不安に陥る三体であった。
「どうしたのかしらぁ? もしかして私には話すことは何も無いぞという、貴方達なりの意思表示だったりするのかしらぁ?」
足を組みなおして圧力をかけるように言葉を発するレアに、三体の魔族は慌てて口を開く。
「も、申し訳ありませんでした! 私共はレア様が連れて帰ってきた魔人達に対して、数々の無礼を行いましたっ!」
レアの圧力に負けて三体の魔族は素直に吐露する。
「なるほどねぇ、どうしてそんな事をしたのかしらぁ?」
レアの目が一段と厳しくなるとその三体の魔族は命の危険を感じたのか、弁明に力が入り始めた。
「ち、違うのです! 魔人に対して思うところはあったのですが、事を起こすような真似は決してするつもりはなかったのです!」
「そ、そうなのです! 頭の中に突然言葉が声が聞こえて、その声を聴いてる内に何でも出来る気がしてきて……」
ようやく本音を聞き出せたかと考えていたレアだが、最後の言葉に眉を寄せる。
「頭に声? それはどんな言葉が聞こえてきたのかしら?」
「そ、それが……。急に自分が自分ではなくなったような感覚に陥って、それから……、そ、その、頭が霞みがかったような、意識はしっかりしているのですが、呆然自失になっているかのような、何やら不思議な感覚に包まれた時に、お前は何でもできる、お前のやる事に間違いはない。我慢する必要はない。というような声が頭の中に聞こえてきて、何度も聞いているうちに、だんだんと本当にそんな気がしてきてしまい……」
レアの目に映る魔族達は演技で話しているようにも、また嘘をついているようにも見えない。そうだとするならば、他者を操る『紅い目』や『金色の目』。もしくは『魔法』の類かもしれない。
『紅い目』で操ったというのならば、目の前の三体の魔族より遥かに強くなくてはならないが『最上位魔族』であっても、目の前の『上位魔族』達を同時に操るには少しばかり無理がある。
そして『金色の目』程の魔瞳であれば『魔王』階級に昇華している必要がある為に私以外に『魔王』が居ないこの世界の魔族でそれはあり得ない。
最後の選択肢である魔法を使われているならば、その魔力の出所を私が感知出来なかったという事になる。
――それはそれでまた、由々しき事態であった。
私が魔力感知出来ない程の存在が、遠く離れた場所からこの城にいた魔族達を操っていたというのであれば、それは間違いなく『真なる魔王』階級以上の力を持つ者だという事になる。
確かにその可能性はなくはないだろう。魔人以上の力を持ったソイツが唐突に現れた私に対して懸念を抱き、影からこちらの動きを観察しながら、私を闇に葬ろうとしているのかもしれない。
――この世界はフルーフが支配している『レパート』の世界ではない。
まだまだ私程度には及びもつかないような存在がいてもおかしくはない。
現に『龍族』という種族には今の私でも確実に勝てるという自信はないのだから。
今回の出来事はもしかすれば僥倖だったかもしれない。そういう存在を全く意識出来ずに気が付けば、あっさりとやられていた可能性を否定できないからだ。
昔の事ではあるがレアはフルーフに教えられた言葉を思い出した。
――別の世界とは常に未知数であり、自分の居る世界の常識が通じるとは限らない。
上位種族であった『魔人族』とやらを全滅させた事で、私は油断をしていたのかもしれない。
――今回の事は、いい教訓になったとレアは思うのだった。
「なるほどねぇ。今回の事は不問にしてあげるから、もうラクスちゃんには手を出さないでねぇ?」
レアがそう言うと三体の魔族は、喜びを隠し切れない様子で頷き声をあげた。
「「「ありがとうございます! 今後は気を付けますレア様! 申し訳ありませんでした!!」」」
「あとねぇ? その不思議な声がまた聞こえたら、覚えてる範囲でいいから私に教えてくれないかしらぁ?」
「分かりましたっ! 直ぐにお伝え致します」
レアはその返事に頷いて魔族三体に下がるように告げた。
三体の魔族はここに来た時とは比べ物にならない程の大声で、挨拶をして部屋を出ていった。
「ひとまずはこれでいいわねぇ。あとは……」
現在レアに出せる青の最高練度まで引き上げて詠唱を開始する。目は金色に輝き、次に紅が少しずつ少しずつ、青に混ざり合っていく。
――『二色の併用』であった。
『青』の練度は2.9。そこに最高練度の『紅』が混ざり、レアの魔力は膨大な量に膨れ上がる。
そして詠唱していた魔法はレアの全力で放った魔力から発動される。
――その『魔法』の種類は『結界』。
魔法の範囲は『ラルグ』魔国だけではなく『レイズ』魔国や『トウジン』魔国。そして全ての『ヴェルマー』大陸にある街に至るまでに展開された。
三体の魔族達を操ったとされるその『謎の技法』が、レアの魔力感知でさえ及ばないというのであれば、強引に『結界』を張って敵の魔法を感知する策に出たのであった。
これによって今後は『ヴェルマー』大陸中で、精神・物理・魔法攻撃が行われた場合、全てレアに情報が入ってくるようになった。
本来であれば敵の魔法攻撃等から防ぐ為に使われる高等な結界が『魔力感知の代わり』で使われる事になったのである。
こういった『結界』の使い方はまだこの時代では表立っては確立をされておらず、感知を目的とした『結界』が一般的な使われ方として広まるのはまだまだ未来の話である。
――そして当然、その『結界』の魔力消費は、途方も無い程である。
『二色の併用』のおかげではあるが、この時代でレアの魔力はすでに三千年以上未来のユファを上回っている。
もしこの時代のユファが、こんな贅沢な『結界』の使い方をしているところを見れば、信じられないとばかりに呆れることであろう。
そしてそんな結界を張られた事など考えられなかった例の男は、水晶玉に魔力を通して再び『誘致促進』を放ってしまうのであった。
その行いこそが、自分の首を絞める事になるということを知らずに――。
……
……
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何故なら彼らは子供ながらにして、言葉を選び間違えれば即座に首を刎ねとばされると、明確に理解している為であった。
「いきなり呼び出して悪かったわねぇ?」
レアはにこにこと笑いながら呼び出した魔族達に謝ると、慌てて三体の魔族達は首を横に振った。
「い、いえ。そ、それで何の御用でしょうか。レア様……」
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「魔人ラクス」
レアがその名前を出すと、ビクリと三体の魔族の体が震えた。
「貴方達、ラクスちゃんに何かをしたのかしらぁ?」
魔族達はどう答えるべきかに悩み、そして互いに三体は顔を見合わせる。その様子にレアは笑みを浮かべるが、三体の魔族はその笑顔に震え上がる。
ラルグの前魔国王『ベイド』の時とは、全く比べ物にならない恐ろしさを持っているレア女王。
たった数日で三大魔国全てを制圧して、就任セレモニーでは野次を飛ばした国民に対して即処刑を行い、その存在感を大陸中に知らしめてみせた。
そしてレアは『リラリオ』の世界の歴史上、成し遂げた事のない『ヴェルマー』の大陸統一に成功してみせた。
更にはレア女王一体で上位種の『魔人族』を皆殺しにする事を可能とする力を有する絶対的王者。
そんなレア女王に嘘を吐ける筈がなく、こちらの試すように笑みを浮かべるレアに、ラルグ魔国の幹部に就いている親を持つ彼らであってもどうすることもできない。
しかし素直に女王のお気に入りである『魔人』に嫌がらせをしたことを告げた場合、結局殺されてしまうのではないかと不安に陥る三体であった。
「どうしたのかしらぁ? もしかして私には話すことは何も無いぞという、貴方達なりの意思表示だったりするのかしらぁ?」
足を組みなおして圧力をかけるように言葉を発するレアに、三体の魔族は慌てて口を開く。
「も、申し訳ありませんでした! 私共はレア様が連れて帰ってきた魔人達に対して、数々の無礼を行いましたっ!」
レアの圧力に負けて三体の魔族は素直に吐露する。
「なるほどねぇ、どうしてそんな事をしたのかしらぁ?」
レアの目が一段と厳しくなるとその三体の魔族は命の危険を感じたのか、弁明に力が入り始めた。
「ち、違うのです! 魔人に対して思うところはあったのですが、事を起こすような真似は決してするつもりはなかったのです!」
「そ、そうなのです! 頭の中に突然言葉が声が聞こえて、その声を聴いてる内に何でも出来る気がしてきて……」
ようやく本音を聞き出せたかと考えていたレアだが、最後の言葉に眉を寄せる。
「頭に声? それはどんな言葉が聞こえてきたのかしら?」
「そ、それが……。急に自分が自分ではなくなったような感覚に陥って、それから……、そ、その、頭が霞みがかったような、意識はしっかりしているのですが、呆然自失になっているかのような、何やら不思議な感覚に包まれた時に、お前は何でもできる、お前のやる事に間違いはない。我慢する必要はない。というような声が頭の中に聞こえてきて、何度も聞いているうちに、だんだんと本当にそんな気がしてきてしまい……」
レアの目に映る魔族達は演技で話しているようにも、また嘘をついているようにも見えない。そうだとするならば、他者を操る『紅い目』や『金色の目』。もしくは『魔法』の類かもしれない。
『紅い目』で操ったというのならば、目の前の三体の魔族より遥かに強くなくてはならないが『最上位魔族』であっても、目の前の『上位魔族』達を同時に操るには少しばかり無理がある。
そして『金色の目』程の魔瞳であれば『魔王』階級に昇華している必要がある為に私以外に『魔王』が居ないこの世界の魔族でそれはあり得ない。
最後の選択肢である魔法を使われているならば、その魔力の出所を私が感知出来なかったという事になる。
――それはそれでまた、由々しき事態であった。
私が魔力感知出来ない程の存在が、遠く離れた場所からこの城にいた魔族達を操っていたというのであれば、それは間違いなく『真なる魔王』階級以上の力を持つ者だという事になる。
確かにその可能性はなくはないだろう。魔人以上の力を持ったソイツが唐突に現れた私に対して懸念を抱き、影からこちらの動きを観察しながら、私を闇に葬ろうとしているのかもしれない。
――この世界はフルーフが支配している『レパート』の世界ではない。
まだまだ私程度には及びもつかないような存在がいてもおかしくはない。
現に『龍族』という種族には今の私でも確実に勝てるという自信はないのだから。
今回の出来事はもしかすれば僥倖だったかもしれない。そういう存在を全く意識出来ずに気が付けば、あっさりとやられていた可能性を否定できないからだ。
昔の事ではあるがレアはフルーフに教えられた言葉を思い出した。
――別の世界とは常に未知数であり、自分の居る世界の常識が通じるとは限らない。
上位種族であった『魔人族』とやらを全滅させた事で、私は油断をしていたのかもしれない。
――今回の事は、いい教訓になったとレアは思うのだった。
「なるほどねぇ。今回の事は不問にしてあげるから、もうラクスちゃんには手を出さないでねぇ?」
レアがそう言うと三体の魔族は、喜びを隠し切れない様子で頷き声をあげた。
「「「ありがとうございます! 今後は気を付けますレア様! 申し訳ありませんでした!!」」」
「あとねぇ? その不思議な声がまた聞こえたら、覚えてる範囲でいいから私に教えてくれないかしらぁ?」
「分かりましたっ! 直ぐにお伝え致します」
レアはその返事に頷いて魔族三体に下がるように告げた。
三体の魔族はここに来た時とは比べ物にならない程の大声で、挨拶をして部屋を出ていった。
「ひとまずはこれでいいわねぇ。あとは……」
現在レアに出せる青の最高練度まで引き上げて詠唱を開始する。目は金色に輝き、次に紅が少しずつ少しずつ、青に混ざり合っていく。
――『二色の併用』であった。
『青』の練度は2.9。そこに最高練度の『紅』が混ざり、レアの魔力は膨大な量に膨れ上がる。
そして詠唱していた魔法はレアの全力で放った魔力から発動される。
――その『魔法』の種類は『結界』。
魔法の範囲は『ラルグ』魔国だけではなく『レイズ』魔国や『トウジン』魔国。そして全ての『ヴェルマー』大陸にある街に至るまでに展開された。
三体の魔族達を操ったとされるその『謎の技法』が、レアの魔力感知でさえ及ばないというのであれば、強引に『結界』を張って敵の魔法を感知する策に出たのであった。
これによって今後は『ヴェルマー』大陸中で、精神・物理・魔法攻撃が行われた場合、全てレアに情報が入ってくるようになった。
本来であれば敵の魔法攻撃等から防ぐ為に使われる高等な結界が『魔力感知の代わり』で使われる事になったのである。
こういった『結界』の使い方はまだこの時代では表立っては確立をされておらず、感知を目的とした『結界』が一般的な使われ方として広まるのはまだまだ未来の話である。
――そして当然、その『結界』の魔力消費は、途方も無い程である。
『二色の併用』のおかげではあるが、この時代でレアの魔力はすでに三千年以上未来のユファを上回っている。
もしこの時代のユファが、こんな贅沢な『結界』の使い方をしているところを見れば、信じられないとばかりに呆れることであろう。
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