最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第315話 自分勝手な行い
レアがディアミール大陸で『魔人』の生き残りである『ラクス』を連れて帰ってから数日が過ぎた。
初めて見る魔族達の大陸にラクスは、最初こそ緊張をしていた様子だったが、レアを殺して大陸を取り返すという信念を持っている彼は、自分を見失わずに堂々とした姿を見せた。
そんな様子のラクスに魔族達は、気に入らないとばかりに視線を向けていたが、魔族の王であるレアが事前に『客分』の扱いとすると伝えていた為に、別段絡むような真似は誰もしなかった。
他の魔族達は『レア』女王は一体何を考えているのかと、口々に裏で揶揄していたが、表立ってそれを言える者は、当然のことながら魔族達の中には誰もいない。
そしてレアに恨みを持つラクスは、城の中で幾度となくレアを狙う行動に出る。馬鹿正直に向かっていけば勝てない事は既にラクスも承知済みであり、油断を見せるタイミングを見計らって殺してやろうとラクスは機を伺う。
しかし深夜にこっそりレアの部屋に侵入してベッドの上で寝ている筈のレアを見ると、こちらを見てニヤリと笑みを浮かべていたり、入浴時の隙を狙って攻撃をしようとすると、自身の裸体を隠そうともせずに見せつけるように、堂々としたレアに取り押さえられて服を脱がされて、一緒にお風呂に入浴させられたりするラクスだった。
そういった事がこの数日間繰り返されていき、流石にラクスは八方塞に陥るのであった。
そんなラクスの気持ちを知ってか知らずか、上機嫌でレアはエリスを呼んで城でお茶会を始めるのであった。
「……ということがあってねぇ? あの子は必死に私の寝室にまで乗り込んできて殺そうとするのよぉ」
そのお茶会でレアはラクスの話題を出しながら、自分が殺されそうになった話を饒舌にエリスに言って聞かせるのだった。
「レア様……。本心ではどうなさりたいのでしょう? あの少年を強くして行く行くは配下に加えようという腹積もりなのでしょうか?」
レアの考えている事は聡明な彼女であっても全く理解が及ばなく、本人に直接尋ねるエリス女王であった。
「んぅ? 別にそんなつもりはないわよぉ? 単に私を恐れず向かってきたあの子のあの気迫のこもった目が気に入っただけよぉ」
そう言うとカップに注がれている紅茶の風味に似ている『ヴァルダーユ』という『ヴェルマー』大陸だけに生えている樹の茶葉から加工して作られた飲み物を上品に飲む。
そう話すレアだが本心では全く違う事が理由にあった。
かつてレアがフルーフに出会う前のことだった。親に捨てられて孤独に生きてきたレアは誰も信じられず会うものは全て敵だと認識して、荒んだ目をしながら生きていた頃のこと。
そんな時にフルーフに出会い、拾ってやるからついてこいと言われた。
レアはそんな甘い話を信じるわけもなく、一体誰に向かって上から目線で話しかけているのだと、苛立ちながら見た目は全く強そうにない老人に見えた『フルーフ』に殴りかかっていった。
――まさにレアを睨んでいたラクスと同じ目をしたままで。
だが、あっさりとフルーフにその拳をいなされて、気が付けば大の字で床にひっくり返されて空を仰がされていた。
そしてその後の言葉は、今もレアの心を掴んで離さない。
――お前は弱い。何も持っていないお前が何でも持っている奴に勝てるわけがない。何も持っていないならばせめて野心と野望を持て、強くなりたいと願わない者はいつまでも弱いままだぞ。
あの時のその言葉で捨てた親を憎み世の中を憎んでいたレアは、強くなりたいと願うようになった。
そしてフルーフに育てられていくうちに、このお方の為になら何でもしよう。何でも捧げようと思い始めるようになる。
それがレアの原点であり、フルーフの覇道を叶える事がレアの野望となった。
別に罪滅ぼしやましてやラクスに感謝されようとかは一切考えていない。
ただ単にレアは自分を拾ってくれたフルーフ様の気持ちを知りたくて、そして同じ目をしたラクスが、どう強くなっていくのかを見てみたくなっただけである。
一言でいうのならば、単に『自分勝手』な行いである。
しかしそれでも『ラクス』が成長した暁には魔人の大陸は、約束通り返してやるつもりではあった。
そしてこのお茶会の日を境にレアは、ラクスの相手を正面だってするようになるのであった。
ラクス本人はそのことに気が付いてはおらず、レアを殺すつもりで向かっていくのだが、それを利用してレアはラクスに修行をつけていく。
誰が見ても修行や稽古のようには見えず、完全にラクスを殺そうとしているような苛烈な戦闘であったが、イジメのようなシゴキを受けている張本人であるラクスは怯まずに、何度も何度もレアを殺すつもりで修行を続けていく日々を迎えるのであった。
初めて見る魔族達の大陸にラクスは、最初こそ緊張をしていた様子だったが、レアを殺して大陸を取り返すという信念を持っている彼は、自分を見失わずに堂々とした姿を見せた。
そんな様子のラクスに魔族達は、気に入らないとばかりに視線を向けていたが、魔族の王であるレアが事前に『客分』の扱いとすると伝えていた為に、別段絡むような真似は誰もしなかった。
他の魔族達は『レア』女王は一体何を考えているのかと、口々に裏で揶揄していたが、表立ってそれを言える者は、当然のことながら魔族達の中には誰もいない。
そしてレアに恨みを持つラクスは、城の中で幾度となくレアを狙う行動に出る。馬鹿正直に向かっていけば勝てない事は既にラクスも承知済みであり、油断を見せるタイミングを見計らって殺してやろうとラクスは機を伺う。
しかし深夜にこっそりレアの部屋に侵入してベッドの上で寝ている筈のレアを見ると、こちらを見てニヤリと笑みを浮かべていたり、入浴時の隙を狙って攻撃をしようとすると、自身の裸体を隠そうともせずに見せつけるように、堂々としたレアに取り押さえられて服を脱がされて、一緒にお風呂に入浴させられたりするラクスだった。
そういった事がこの数日間繰り返されていき、流石にラクスは八方塞に陥るのであった。
そんなラクスの気持ちを知ってか知らずか、上機嫌でレアはエリスを呼んで城でお茶会を始めるのであった。
「……ということがあってねぇ? あの子は必死に私の寝室にまで乗り込んできて殺そうとするのよぉ」
そのお茶会でレアはラクスの話題を出しながら、自分が殺されそうになった話を饒舌にエリスに言って聞かせるのだった。
「レア様……。本心ではどうなさりたいのでしょう? あの少年を強くして行く行くは配下に加えようという腹積もりなのでしょうか?」
レアの考えている事は聡明な彼女であっても全く理解が及ばなく、本人に直接尋ねるエリス女王であった。
「んぅ? 別にそんなつもりはないわよぉ? 単に私を恐れず向かってきたあの子のあの気迫のこもった目が気に入っただけよぉ」
そう言うとカップに注がれている紅茶の風味に似ている『ヴァルダーユ』という『ヴェルマー』大陸だけに生えている樹の茶葉から加工して作られた飲み物を上品に飲む。
そう話すレアだが本心では全く違う事が理由にあった。
かつてレアがフルーフに出会う前のことだった。親に捨てられて孤独に生きてきたレアは誰も信じられず会うものは全て敵だと認識して、荒んだ目をしながら生きていた頃のこと。
そんな時にフルーフに出会い、拾ってやるからついてこいと言われた。
レアはそんな甘い話を信じるわけもなく、一体誰に向かって上から目線で話しかけているのだと、苛立ちながら見た目は全く強そうにない老人に見えた『フルーフ』に殴りかかっていった。
――まさにレアを睨んでいたラクスと同じ目をしたままで。
だが、あっさりとフルーフにその拳をいなされて、気が付けば大の字で床にひっくり返されて空を仰がされていた。
そしてその後の言葉は、今もレアの心を掴んで離さない。
――お前は弱い。何も持っていないお前が何でも持っている奴に勝てるわけがない。何も持っていないならばせめて野心と野望を持て、強くなりたいと願わない者はいつまでも弱いままだぞ。
あの時のその言葉で捨てた親を憎み世の中を憎んでいたレアは、強くなりたいと願うようになった。
そしてフルーフに育てられていくうちに、このお方の為になら何でもしよう。何でも捧げようと思い始めるようになる。
それがレアの原点であり、フルーフの覇道を叶える事がレアの野望となった。
別に罪滅ぼしやましてやラクスに感謝されようとかは一切考えていない。
ただ単にレアは自分を拾ってくれたフルーフ様の気持ちを知りたくて、そして同じ目をしたラクスが、どう強くなっていくのかを見てみたくなっただけである。
一言でいうのならば、単に『自分勝手』な行いである。
しかしそれでも『ラクス』が成長した暁には魔人の大陸は、約束通り返してやるつもりではあった。
そしてこのお茶会の日を境にレアは、ラクスの相手を正面だってするようになるのであった。
ラクス本人はそのことに気が付いてはおらず、レアを殺すつもりで向かっていくのだが、それを利用してレアはラクスに修行をつけていく。
誰が見ても修行や稽古のようには見えず、完全にラクスを殺そうとしているような苛烈な戦闘であったが、イジメのようなシゴキを受けている張本人であるラクスは怯まずに、何度も何度もレアを殺すつもりで修行を続けていく日々を迎えるのであった。
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