最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第300話 ヴェルマー大陸の魔王の初陣

 レア達がダイオ城で話をしている頃、着々と魔人達もダイオ城へ向かっていた。

 すでに拠点に駐屯していたダイオ魔国兵達は全滅し、残すはダイオ魔国城のみとなっており、魔人達の手がもう直ぐそこまで届くところまで来ていたのだった。

「もう少し楽しめると思っていたが、結局はこんなモンだったか」

 そう口にするのは『下級兵』の魔人達を率いる『幹部級』の魔人『』であった。

「そもそもレアっていう魔族の王が出てくるまでは、こんな大陸眼中にもなかったワケだしね」

 面倒臭そうにリオンに言葉を返すのは、女性の魔人であるリーベであった。彼女もまた『幹部級』とされる魔人である。

「そもそも魔族ってのはこんな弱い連中ばっかりなんだから、魔族の王になった『レア』ってやつも大した事ないんじゃねえか?」

「私に聞かれても知らないわよ。別に弱ければ弱いでいいじゃない? 『』様に魔族の王様を渡せば私たちの任務は終わりなんだし」

 二人は別に仲がいいわけではなく、任務だから行動しているだけである。

 この魔族の大陸に来た当初は、ある程度の緊張感をもって足並み揃えて行動を続けていた二人だが、今はもうそんな緊張はなく早く任務を終わらせて鍛錬に戻りたいと思うリーベだった。

「つまらないねぇ」

 そんな話をしている二人の前に、ダイオ魔国の城が視界に入ってきた。

 ようやく着いたかと二人が足を止める。

「ここがダイオ魔国ってところらしいわね。そろそろ本国に連絡しましょうか」

 ――それは当初の目的通りであった。

 このダイオ魔国の制圧を行った後、この場所を彼ら魔人の拠点にして本国から『中級兵』以上の魔人の軍勢を集結させて一気にこの大陸の支配を始める手筈だったのである。

 その為に『リオン』や『リーベ』達のような『幹部級』が二体も派遣されたのであった。

「そうだな。まだ城を攻め落としてはいないが、ちょっと遅いか早いかの違いだしな」

 もう彼らにとってだと思い込んでおり、ダイオ城も攻め滅ぼした気になっていた。

 リーベがその言葉に頷いて本国に『念話テレパシー』で連絡を取り始めた頃、一体の魔族がリオン達の前に姿を見せるのだった。

 …………

「あなた達がかしらぁ?」

 突如として小さな子供が姿を見せたかと思うと、リオン達にそんな言葉を投げかけてきた。

「なんだぁお前は? いつの間に此処に現れやがった?」

 先程まで姿がなかったというのに、突然視界に現れた事でリオンは警戒を始める。

「へぇ? 魔法を使わずともちゃんと言葉も通じるのねぇ? 見た目も私達『魔族』と変わらないし、もっと巨体で何か唸っているような種族なのかと思ってたわぁ?」

 そう言ってケタケタと笑い始める幼女。

 何を意味の分からない事を言っているんだという思いを抱いた二人だが、それ以上に自分達を見て嘲笑している子供に馬鹿にされたように感じたリオンは相当に苛立つのだった。

「おいおい! てめぇこっちが質問しているのに、何を関係ない事をごちゃごちゃ言ってやがる? 殺されてぇのか? クソガキが!」

 その言葉にケタケタと笑っていたレアはその笑みを止めた。

「貴方、一体誰に向かってそんな口をきいているのかしらぁ?」

 そう言うとレアは『青のオーラ』を纏い始める。

「!?」

 唐突に幼女の戦力値が跳ね上がり、リオンであっても無視が出来ない程の威圧感を感じ始めた。

「ちょっとリオン! その子、ただ者じゃないわよ?」

 リーベは本国に連絡を終えたようで、視線をレアに向けたまま慌てた様子でリオンに声を掛けてくる。

「ああ……。あのオーラは俺達魔人の『』に似ているな。どうやら俺達魔人達と同様に、戦力値を上昇させる類の技法なんだろうよ」

(※スクアードは魔族達で言うところの『淡いオーラ』の事であり、戦闘の時に自身の戦力値を上昇させる戦闘術の事である)

「ここに来るまで似たようなオーラを纏っている魔族もいたけど、纏っている色も違うしそもそも戦力値が桁違いよ?」

 レアから発せられる威圧感は『幹部級』である二人にも伝わるほどであった。

「面白いじゃねぇか! まずはお手並み拝見と行こうか!」

 リオンが振り返って一体の『下級兵』の魔人を指名すると、呼ばれたその『下級兵』の魔人はレアと戦うつもりなのか戦闘態勢を取り始める。

「うおおおっっ!」

 リオンに指名された魔人は小さな魔族『レア』に向かって突進していった。

「さて。魔人とやらがどれだけやれるのか、?」

 ……
 ……
 ……

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