最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第297話 魔族に戦争を仕掛ける魔人族
「レア様! た、大変です、レイズの支配圏にあった国の拠点の一つが、魔人達に襲撃されたとのことです!」
そういって部屋にものすごい剣幕で乗り込んできたのは、ラルグ魔国の前王ベイドであった。
「んぅ……?」
ラルグ魔国の玉座に座り若い女の魔族に、扇を扇がせて寛いでいたレアが声を漏らす。レアは面倒臭そうにベイドの顔を見ていたが、やがて溜息を吐いて口を開く。
「その魔人っていうのが、私の大陸に喧嘩を売ってきたってわけかしらぁ?」
レアの言葉にベイドは頷く。
「そ、その通りです! 昔から奴らは粗暴で野心家の集まりではあったのですが、どうやら向こうの大陸でも新たに出現した魔人が『ディアミール』大陸を統一して『魔人族』の王となった事で、その性質が増したようです……」
「あー、もういいわぁ……。それで規模はどれくらいなのぉ?」
魔人の説明を続けようとしていたベイドだが、レアが強引に打ち切る。
「は、はい……! ほ、報告では数はおよそ150体程です」
ベイドの報告にレアは眉を寄せる。
「は? 馬鹿にしているのかしらぁ?」
現在のヴェルマー大陸は魔族同士で争っていた時代とは違い、レアによって全ての魔国同士が手を組んでいる状態にある。
レイズ魔国が襲われているのであれば、トウジン魔国やこの大陸の統一国となった『ラルグ』魔国といった最大国家から数万の規模の魔族が救援に向かう事が可能なのである。
魔人という種族はまだこちらの情勢をよく理解していないのだろうか。
――それとも理解した上で、舐められているのだろうか。
「かもしれません……。魔族に比べて魔人という種族は数は少ないのですが、それでも150体というのは、余りにも少なすぎる数字です」
「うーん……。魔人かぁ。私はそこまでその種族のことには詳しくはないんだけどぉ、どれくらい強いのかしらぁ?」
彼女の居た『レパート』の世界では『魔人』という種族はいなかった為、強いのかどうかもよく分からないレアであった。
「そうですね。個体差がありますが、全員が最低でも我ら魔族の『最上位魔族』以上の強さを持っていると考えて間違いないでしょう」
その言葉にレアは感心したように頷く。
(へぇ? ということは魔人とやらの上限は『真なる魔王』くらいはあるのかしらね?)
すでにこの世界に来た時より強くなっているレアは、現在の自分の力を試す意味でも魔人と戦うのもありかもしれないと思うのだった。
「面白いわねぇ。襲われているのは『レイズ』の支配圏って言ったかしらぁ? 直ぐにエリスを呼びなさい」
突然機嫌が良くなったレアを、訝しながらもベイドは頷くのだった。
…………
そしてベイドに命じてから数刻程で『エリス』女王はラルグ魔国のレアの城に到着して彼女に会いに来るのだった。
「お久しぶりです。レア女王」
そう言ってレアの座る玉座の前で跪くレイズ魔国の『エリス』女王。
「堅苦しい挨拶はいいわよぉ? それより聞いたのだけど魔人に襲われているんですってねぇ?」
レアの言葉にエリスは痛いところを突かれたといった様子を見せる。
「はい……。現在は我が国の精鋭達が魔人共を抑えておりますが、予想以上に魔人の力が強く苦戦を強いられております」
その言葉にレアは面白くなさそうな表情を浮かべて、エリスを刺すような視線で視る。
「では何故すぐに伝えなかったのかしらぁ? この大陸に魔人達が攻めてきたのなら、まずヴェルマーの王である私に知らせるのが当然だと思うのだけどぉ?」
「も、申し訳ありません! 突然の事でしたので頭が回らずに、ほ、報告が遅れてしまいました!」
レアはその言葉に眉を寄せるが、それ以上問い質す真似はしなかった。
「へぇ……? そうなのねぇ、ふーん」
しかし問い質す真似はしないとはいっても、決して何もしなかったわけではなく、レアは視線でエリスを睨みあげると、その視線から恐ろしい程に重く圧し掛かる圧力を感じるエリス女王であった。
「エリスちゃん? 貴方には期待しているのだから、これ以上私をがっかりさせないでねぇ?」
「は、はい! 申し訳ありませんでした!」
エリス女王が素直に謝罪したことでレアは、機嫌を直したのか笑みを浮かべた。
「さて、それじゃあエリスちゃんには、魔人の居る場所へと案内してもらおうかしらぁ?」
その言葉に頭を下げていたエリスが驚いてレアを見る。そしてレアの後ろで控えていたベイドが慌てて口を開く。
「お、お待ちください。敵の数は少ないとはいっても魔人です! な、何もレア様自らが向かわれなくとも……!」
レアはベイドの言葉に耳を傾けながらも数秒間ベイドの顔を見る。
ベイドの言葉には演技の意図等は見られない。どうやら本当にレアを心配しての言葉だったらしい。
(この数年でこの男も変わったわねぇ? 最初の頃は私の寝首を掻こうと良からぬことを考えていたみたいだったけどぉ)
「忘れたのかしらぁ? この私は魔族をこの世界で最強の種族にしてやるとお前達に言ったでしょう?」
そう言うとレアは玉座から立ち上がった。
「エリス。三度目は言わないわよ? 魔人に襲われている国へ案内しなさい」
「わ、分かりました」
こうして魔人の王『シュケイン』の手によって『魔人』対『魔族』の戦争が始まりを告げるのだった。
そういって部屋にものすごい剣幕で乗り込んできたのは、ラルグ魔国の前王ベイドであった。
「んぅ……?」
ラルグ魔国の玉座に座り若い女の魔族に、扇を扇がせて寛いでいたレアが声を漏らす。レアは面倒臭そうにベイドの顔を見ていたが、やがて溜息を吐いて口を開く。
「その魔人っていうのが、私の大陸に喧嘩を売ってきたってわけかしらぁ?」
レアの言葉にベイドは頷く。
「そ、その通りです! 昔から奴らは粗暴で野心家の集まりではあったのですが、どうやら向こうの大陸でも新たに出現した魔人が『ディアミール』大陸を統一して『魔人族』の王となった事で、その性質が増したようです……」
「あー、もういいわぁ……。それで規模はどれくらいなのぉ?」
魔人の説明を続けようとしていたベイドだが、レアが強引に打ち切る。
「は、はい……! ほ、報告では数はおよそ150体程です」
ベイドの報告にレアは眉を寄せる。
「は? 馬鹿にしているのかしらぁ?」
現在のヴェルマー大陸は魔族同士で争っていた時代とは違い、レアによって全ての魔国同士が手を組んでいる状態にある。
レイズ魔国が襲われているのであれば、トウジン魔国やこの大陸の統一国となった『ラルグ』魔国といった最大国家から数万の規模の魔族が救援に向かう事が可能なのである。
魔人という種族はまだこちらの情勢をよく理解していないのだろうか。
――それとも理解した上で、舐められているのだろうか。
「かもしれません……。魔族に比べて魔人という種族は数は少ないのですが、それでも150体というのは、余りにも少なすぎる数字です」
「うーん……。魔人かぁ。私はそこまでその種族のことには詳しくはないんだけどぉ、どれくらい強いのかしらぁ?」
彼女の居た『レパート』の世界では『魔人』という種族はいなかった為、強いのかどうかもよく分からないレアであった。
「そうですね。個体差がありますが、全員が最低でも我ら魔族の『最上位魔族』以上の強さを持っていると考えて間違いないでしょう」
その言葉にレアは感心したように頷く。
(へぇ? ということは魔人とやらの上限は『真なる魔王』くらいはあるのかしらね?)
すでにこの世界に来た時より強くなっているレアは、現在の自分の力を試す意味でも魔人と戦うのもありかもしれないと思うのだった。
「面白いわねぇ。襲われているのは『レイズ』の支配圏って言ったかしらぁ? 直ぐにエリスを呼びなさい」
突然機嫌が良くなったレアを、訝しながらもベイドは頷くのだった。
…………
そしてベイドに命じてから数刻程で『エリス』女王はラルグ魔国のレアの城に到着して彼女に会いに来るのだった。
「お久しぶりです。レア女王」
そう言ってレアの座る玉座の前で跪くレイズ魔国の『エリス』女王。
「堅苦しい挨拶はいいわよぉ? それより聞いたのだけど魔人に襲われているんですってねぇ?」
レアの言葉にエリスは痛いところを突かれたといった様子を見せる。
「はい……。現在は我が国の精鋭達が魔人共を抑えておりますが、予想以上に魔人の力が強く苦戦を強いられております」
その言葉にレアは面白くなさそうな表情を浮かべて、エリスを刺すような視線で視る。
「では何故すぐに伝えなかったのかしらぁ? この大陸に魔人達が攻めてきたのなら、まずヴェルマーの王である私に知らせるのが当然だと思うのだけどぉ?」
「も、申し訳ありません! 突然の事でしたので頭が回らずに、ほ、報告が遅れてしまいました!」
レアはその言葉に眉を寄せるが、それ以上問い質す真似はしなかった。
「へぇ……? そうなのねぇ、ふーん」
しかし問い質す真似はしないとはいっても、決して何もしなかったわけではなく、レアは視線でエリスを睨みあげると、その視線から恐ろしい程に重く圧し掛かる圧力を感じるエリス女王であった。
「エリスちゃん? 貴方には期待しているのだから、これ以上私をがっかりさせないでねぇ?」
「は、はい! 申し訳ありませんでした!」
エリス女王が素直に謝罪したことでレアは、機嫌を直したのか笑みを浮かべた。
「さて、それじゃあエリスちゃんには、魔人の居る場所へと案内してもらおうかしらぁ?」
その言葉に頭を下げていたエリスが驚いてレアを見る。そしてレアの後ろで控えていたベイドが慌てて口を開く。
「お、お待ちください。敵の数は少ないとはいっても魔人です! な、何もレア様自らが向かわれなくとも……!」
レアはベイドの言葉に耳を傾けながらも数秒間ベイドの顔を見る。
ベイドの言葉には演技の意図等は見られない。どうやら本当にレアを心配しての言葉だったらしい。
(この数年でこの男も変わったわねぇ? 最初の頃は私の寝首を掻こうと良からぬことを考えていたみたいだったけどぉ)
「忘れたのかしらぁ? この私は魔族をこの世界で最強の種族にしてやるとお前達に言ったでしょう?」
そう言うとレアは玉座から立ち上がった。
「エリス。三度目は言わないわよ? 魔人に襲われている国へ案内しなさい」
「わ、分かりました」
こうして魔人の王『シュケイン』の手によって『魔人』対『魔族』の戦争が始まりを告げるのだった。
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