最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第261話 始祖龍キーリの抱く恐怖の対象
ディラルクは前回と同様に運悪く、力ある『大魔王』の手によって意識を失っていた。
「大丈夫か、ディラルク!」
キーリの側近の龍であるミルフェンは、白目を浮かべながら気絶している同胞の傍に駆け寄り、トドメを刺そうと近寄ってきた『魔王』達に敵意を向ける。
そこへ頭上からレキオンが加勢にくる。
「俺がこの場は引き受ける。他の同胞達を頼む!」
レキオンがそう言うとミルフェンは直ぐ様頷き、そのまま苦戦している他の同胞の龍達の元へ向かっていくのだった。
その後ろ姿を見た魔王達がミルフェンの後を追いかけようとするが、それを留めようとレキオンが力を増幅させていく。
戦力値がみるみる上昇していくレキオンに、他の魔王達は後を追いかけようとするのをやめて、レキオンに視線を向ける。
「我々龍族を舐めるなよ!」
――『龍呼』。
レキオンの二段階目の『龍呼』が、周りに居た魔王達を対象に発動させる。
すると数体の魔王達はその場に膝から崩れ落ちていく。中には涎を垂らしながら、白目を向く者もいた。
力ある龍族レキオンの『龍呼』の二段階目。その効力は並々ならぬものであった。そしてその場に居た魔王達は全員意識を失って倒れるのであった。
「よし!」
そして意識を失って人型の状態になっている、同胞のディラルクを背中に担いでレキオンはその場を後にするのだった。
…………
「誰が図体だけだって……?」
『大魔王』ヴァルテンの発せられた言葉に怒り心頭と言った様子で、キーリはヴァルテンを睨む。
ヴァルテンの『天空の雷』が直撃したというのに、まるで何事もなく『ヴァルテン』の元まで上がってくる。
「ほう? 私の魔法をその身に受けて、まだそれほどの闘志があるかね?」
そこいらにいる魔王であれば、睨みだけで殺せそうなキーリの視線を一身に浴びて、平然とヴァルテンは口を開いた。
「お前、生きて帰れると思うなよ?」
そう言うとキーリは力を増幅させていく。
――キーリの奥の手である始祖龍の形態変化『始祖龍化』であった。
人型に戻ったキーリだが、その戦力値は白龍の姿の時より増していく。これこそがキーリの最終形態であり、始祖龍キーリの本気の戦闘態勢である。
【種族:龍族 名前:キーリ(始祖龍化) 戦力値:10億1400万】。
「俺達龍族を貶した貴様だけは確実に殺す……!」
キーリの射貫くような視線は、憎きヴァルテンだけを捉えていた。
「お前は確かに強い魔族だとは思うが、俺が最近戦った魔族に比べると全く怖さは感じられねぇな」
自信満々に笑みを浮かべながら、キーリはそう告げた。
「何だと?」
そんなキーリの言葉にヴァルテンは、少し苛立ちを孕んだ声を出す。
…………
――キーリの中で魔族の印象が変わる程の存在に出会ったのは、彼女の長い生涯の中でたった二体だけ。
一体目はこの世界で魔人にはるかに劣る種族だった『魔族』の地位を一気に高めた『魔王』レア。
そしてもう一体は当然の事ながら『大魔王』ソフィであった――。
レアも恐ろしい魔族だと認識はしているが、キーリの中でソフィという存在は決してそんなものではなかった。
戦力値や魔力値といったものではアレは測れない。ソフィと敵対してその恐るべき重圧をその身に経験した者でなければ分からないだろう。
あのソフィに頭を掴まれて自我を破壊されそうになった時に、キーリは心に誓った戒めがある。
――それはこの魔族には決して今後一切、逆らってはいけないという戒めである。
魔族や龍族に拘らずに口では強い言葉を発する者は多いが、実際にそれを成し遂げられる者はほとんど居ない。しかしキーリの自我を壊すといってのけた、あのソフィだけは違う。
何の誇張もなくただ必要だからといって、あっさりとキーリを人形にする為に心を破壊しようとした。
種族に拘らずどんな生物を相手にしてもあのソフィという魔族は、自分にとって必要ないと判断した者には、一切の躊躇いなく壊す事の出来る存在である。
この世界で最強の種族であり、他種族からも神に近い種族と呼ばれた龍族、その始祖龍キーリはソフィという魔族に対して今後抱く事のないであろう恐怖感を持った。
そのソフィと再び殺し合う事に比べたら、目の前の『大魔王』ヴァルテンとやらからには、何も怖さを感じない。
本当の恐怖を知るキーリにとって、目の前の魔族は単に魔法が強い――。
――それだけの生物である。
そんな生物にこの俺が負けてなるものか。そういった自信が、彼女の信念を突き動かしているのだった。
始祖龍キーリは本来の強さに加えて、これ以上ないという程の恐怖を彼女の生涯で経験することが出来た。それは皮肉にも彼女のバイタリティとなっている。
今後如何に力の強い種族の王や、別世界で最強と呼ばれる存在が現れたとしても、始祖龍キーリにとっては他愛のない存在に映ることだろう。
すでに数多の世界でも稀有な存在、大魔王ソフィという化け物を知ってしまったのだから。
……
……
……
「大丈夫か、ディラルク!」
キーリの側近の龍であるミルフェンは、白目を浮かべながら気絶している同胞の傍に駆け寄り、トドメを刺そうと近寄ってきた『魔王』達に敵意を向ける。
そこへ頭上からレキオンが加勢にくる。
「俺がこの場は引き受ける。他の同胞達を頼む!」
レキオンがそう言うとミルフェンは直ぐ様頷き、そのまま苦戦している他の同胞の龍達の元へ向かっていくのだった。
その後ろ姿を見た魔王達がミルフェンの後を追いかけようとするが、それを留めようとレキオンが力を増幅させていく。
戦力値がみるみる上昇していくレキオンに、他の魔王達は後を追いかけようとするのをやめて、レキオンに視線を向ける。
「我々龍族を舐めるなよ!」
――『龍呼』。
レキオンの二段階目の『龍呼』が、周りに居た魔王達を対象に発動させる。
すると数体の魔王達はその場に膝から崩れ落ちていく。中には涎を垂らしながら、白目を向く者もいた。
力ある龍族レキオンの『龍呼』の二段階目。その効力は並々ならぬものであった。そしてその場に居た魔王達は全員意識を失って倒れるのであった。
「よし!」
そして意識を失って人型の状態になっている、同胞のディラルクを背中に担いでレキオンはその場を後にするのだった。
…………
「誰が図体だけだって……?」
『大魔王』ヴァルテンの発せられた言葉に怒り心頭と言った様子で、キーリはヴァルテンを睨む。
ヴァルテンの『天空の雷』が直撃したというのに、まるで何事もなく『ヴァルテン』の元まで上がってくる。
「ほう? 私の魔法をその身に受けて、まだそれほどの闘志があるかね?」
そこいらにいる魔王であれば、睨みだけで殺せそうなキーリの視線を一身に浴びて、平然とヴァルテンは口を開いた。
「お前、生きて帰れると思うなよ?」
そう言うとキーリは力を増幅させていく。
――キーリの奥の手である始祖龍の形態変化『始祖龍化』であった。
人型に戻ったキーリだが、その戦力値は白龍の姿の時より増していく。これこそがキーリの最終形態であり、始祖龍キーリの本気の戦闘態勢である。
【種族:龍族 名前:キーリ(始祖龍化) 戦力値:10億1400万】。
「俺達龍族を貶した貴様だけは確実に殺す……!」
キーリの射貫くような視線は、憎きヴァルテンだけを捉えていた。
「お前は確かに強い魔族だとは思うが、俺が最近戦った魔族に比べると全く怖さは感じられねぇな」
自信満々に笑みを浮かべながら、キーリはそう告げた。
「何だと?」
そんなキーリの言葉にヴァルテンは、少し苛立ちを孕んだ声を出す。
…………
――キーリの中で魔族の印象が変わる程の存在に出会ったのは、彼女の長い生涯の中でたった二体だけ。
一体目はこの世界で魔人にはるかに劣る種族だった『魔族』の地位を一気に高めた『魔王』レア。
そしてもう一体は当然の事ながら『大魔王』ソフィであった――。
レアも恐ろしい魔族だと認識はしているが、キーリの中でソフィという存在は決してそんなものではなかった。
戦力値や魔力値といったものではアレは測れない。ソフィと敵対してその恐るべき重圧をその身に経験した者でなければ分からないだろう。
あのソフィに頭を掴まれて自我を破壊されそうになった時に、キーリは心に誓った戒めがある。
――それはこの魔族には決して今後一切、逆らってはいけないという戒めである。
魔族や龍族に拘らずに口では強い言葉を発する者は多いが、実際にそれを成し遂げられる者はほとんど居ない。しかしキーリの自我を壊すといってのけた、あのソフィだけは違う。
何の誇張もなくただ必要だからといって、あっさりとキーリを人形にする為に心を破壊しようとした。
種族に拘らずどんな生物を相手にしてもあのソフィという魔族は、自分にとって必要ないと判断した者には、一切の躊躇いなく壊す事の出来る存在である。
この世界で最強の種族であり、他種族からも神に近い種族と呼ばれた龍族、その始祖龍キーリはソフィという魔族に対して今後抱く事のないであろう恐怖感を持った。
そのソフィと再び殺し合う事に比べたら、目の前の『大魔王』ヴァルテンとやらからには、何も怖さを感じない。
本当の恐怖を知るキーリにとって、目の前の魔族は単に魔法が強い――。
――それだけの生物である。
そんな生物にこの俺が負けてなるものか。そういった自信が、彼女の信念を突き動かしているのだった。
始祖龍キーリは本来の強さに加えて、これ以上ないという程の恐怖を彼女の生涯で経験することが出来た。それは皮肉にも彼女のバイタリティとなっている。
今後如何に力の強い種族の王や、別世界で最強と呼ばれる存在が現れたとしても、始祖龍キーリにとっては他愛のない存在に映ることだろう。
すでに数多の世界でも稀有な存在、大魔王ソフィという化け物を知ってしまったのだから。
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