最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第248話 秘密裏
ソフィ達がヴェルマー大陸で会議を開いている頃、着々とレア達もリラリオへの侵攻の準備は進められていた。
現在レパートにいるレアの主だった戦力は、大魔王『レインドリヒ』に大魔王『ヴァルテン』、そしてレインドリヒ達の率いていた魔族にヴァルテンの率いてる魔族。更にはフルーフの配下であった元々の魔族達である。
とくにフルーフの配下であった者達は、かなり強い魔族達で『魔王』や『真なる魔王』階級に到達している者達もいる。
彼らはレアと同じくあらゆるフルーフの編み出した魔法を使い、他の魔王階級に到達している者達と比べても一線を画す。
そんなフルーフ達の配下は『レインドリヒ』や『ヴァルテン』よりも、直接のフルーフの配下であるレアを信頼している。
「……いよいよねぇ、あの魔王に報いを受けさせるわよぉ」
激しい恨みを抱えるレアは二色のオーラを纏っていた。
そんなレアの様子をヴァルテンは観察する。
元々アレルバレル出身であるヴァルテンは、他の世界の魔族を温いと感じていたが、この『魔王』レアに関しては『アレルバレル』という他の世界とは比較できない程に危ない世界でさえ、十分に生き残れる力を秘めていると感じていた。
(どこまで力を隠しているかは分からないが、私たちをあっさりと倒して見せたこの魔王であれば、あの化け物を抑える分には、十分に役に立つだろう)
今回の戦争はソフィを倒す事を目的としている訳ではなく、その配下であり『概念跳躍』を使える『ユファ』を倒す事をヴァルテン達は目標としている。
レアがあの化け物を抑える時間が長ければ長い程、とある作戦を別で行っている『ヴァルテン』達には余裕が出来るという事である。
大賢者の言葉では大魔王『ヌー』が秘密裏に動くというのだから、この作戦に穴はないとみるべきだろう。
いくら『災厄の大魔法使い』がソフィの配下である『九大魔王』であっても、ヌーというアレルバレルで最恐と恐れられていた大魔王の前には霞む。
我々の狙いで言えばあのソフィという化け物さえ、アレルバレルの世界に再び戻せなくすればそれでいい。
その為であれば本体を破壊されてもかまわない。
肉を切らせて骨を断つという言葉があるが、まさにその通りで傷はいつかは癒えるのだから、この計画さえ成し遂げられるというのならば安い代償である。
ヴァルテン達や組織の考えを知らないレアだけが、主であるフルーフの為に本気でソフィに勝とうとしているのだった。
…………
戦争の準備がほぼ終わり、近々リラリオに進撃が決まった。
そんな折にヴァルテンから『念話』で話があると言われたレインドリヒは、彼の屋敷に向かっていた。
先日ヴァルテンの本当の主である組織の首謀者『大賢者』に情報を伝えに行っていたのを知っている為、その話だろうと『魔術師』レインドリヒは推測する。
レインドリヒがヴァルテンの屋敷に到着したと同時に『念話』で伝えると、すぐに中から背の高い執事が出てきた。
「よくぞ参られました、レインドリヒ様。直ぐに主の元へ案内します」
そういって恭しく頭を垂れた魔族は、ヴァルテンの配下の魔族で『魔王』階級の一体だった。
「ああ……」
一言そう声を発してレインドリヒは執事の後をついていく。
ヴァルテンの屋敷はかなり大きく、主であるヴァルテンの書斎までにいくつもの部屋がある長い廊下を歩かされた。
「レインドリヒ様。こちらになります」
そう言って中へ入るように背の高い執事が促してくる。レインドリヒが中へ入ると、老獪な大魔王『ヴァルテン』が姿を見せる。
「おお……! よく来たレインドリヒ。あいつには気付かれていないだろうな?」
――あいつとは『魔王』レアの事である。
「ああ、今あいつは戦争の準備に夢中だからな。こちらに意識は向いてはいないさ」
レインドリヒの言葉を聞き、ヴァルテンはニヤリと笑みを浮かべる。
「クックック。フルーフを利用しているのは、あの『化け物』では無く、我ら組織側だと言うのに、哀れな魔王よな」
その言葉を聞いた時、レインドリヒはズキリと胸に痛みが走った。
今更ながらこの世界の同胞であるレアが貶された事を気にしているのかと、レインドリヒは自らのその痛みに気づかないフリをする。
「……それで、私をここに呼んだのには理由があるのだろう?」
レインドリヒは無理矢理本題に入り、同胞を裏切っているという良心の呵責の痛みを忘れようとする。
そんなレインドリヒを見て、厭味な笑みを浮かべながらヴァルテンは口を開く。
「……此度の戦争だが、あの『ヌー』が出てくるぞ」
たった一言だがその名前を聞いた時、レインドリヒは全身に鳥肌が立った。
「……何だって?」
大魔王『ヌー』とは、大魔王『ソフィ』と同じくして、アレルバレルという世界においても類を見ない程の化け物である。
数多いるアレルバレルの大魔王階級の魔族達は、かつての戦争後ソフィの配下についたが、ヌーだけはソフィに最後まで逆らい、大魔王フルーフを手中に収めた後にそのままソフィに復讐を誓って、アレルバレルの世界から消えた。
そして今もフルーフを操って利用して、何千年もありとあらゆる魔法をフルーフから得続けている。
神域【時】魔法、神域魔法、根源魔法、超越魔法。ありとあらゆる最高難度の魔法が作られて奪われ続けているのだ。
――そしてやはりその中でも突出しているのは『概念跳躍』の魔法であろう。
今では組織の魔族達の多くが使える魔法となり、大賢者やヌーに留まらず『レインドリヒ』や『ヴァルテン』でさえ『概念跳躍』魔法を進化させている。
魔王レアのみだけが過去のフルーフの教えから、正当に『概念跳躍』を別ルートで進化に成功させた。
だが、他の者達は皮肉な事にレアのかけた年数の半分程で『概念跳躍』の魔法の進化に成功させていた。
「いいか? 我らの目的は、あの化け物をリラリオに押し留める事だ。つまり『九大魔王』である『ユファ』を確実に葬らねばならない」
レインドリヒに再び胸の痛みが走るが、必死に顔に出さないように堪える。
「……分かっているが『代替身体』を使って、別の世界へ逃げるかもしれないが、どうするんだ?」
別の場所に身体を保管しておけば、本体が殺されたとしても消滅する事は無いのが大魔王領域に居る者達である。
特に『概念跳躍』を使える大魔王であれば、事前に用意してあれば別の世界で蘇る事も可能なのである。
「……クックック、今はあの化け物の周りから『概念跳躍』を使える者を引き離せばそれでいい。それ以上の事は、大賢者に任せておけばいいのだからな」
レインドリヒは経験から、即座にこの老獪な魔王の考えている事が読めた。
ここまで用意周到にしている計画の中で、そんな半端な真似をするとは思えない。
俺が知らない何か別の方法で、あのユファを仕留める手筈を用意しているのだろう。
(……俺も人の事は言えないが、こいつ等の話を全て鵜呑みにすることは危険だな……)
表面上納得した顔を浮かべたが、レインドリヒは全くヴァルテンを信用していなかった。
そして話はそれで終わらずに、ヴァルテンから予想だにしない言葉が投げかけられるのだった。
……
……
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とくにフルーフの配下であった者達は、かなり強い魔族達で『魔王』や『真なる魔王』階級に到達している者達もいる。
彼らはレアと同じくあらゆるフルーフの編み出した魔法を使い、他の魔王階級に到達している者達と比べても一線を画す。
そんなフルーフ達の配下は『レインドリヒ』や『ヴァルテン』よりも、直接のフルーフの配下であるレアを信頼している。
「……いよいよねぇ、あの魔王に報いを受けさせるわよぉ」
激しい恨みを抱えるレアは二色のオーラを纏っていた。
そんなレアの様子をヴァルテンは観察する。
元々アレルバレル出身であるヴァルテンは、他の世界の魔族を温いと感じていたが、この『魔王』レアに関しては『アレルバレル』という他の世界とは比較できない程に危ない世界でさえ、十分に生き残れる力を秘めていると感じていた。
(どこまで力を隠しているかは分からないが、私たちをあっさりと倒して見せたこの魔王であれば、あの化け物を抑える分には、十分に役に立つだろう)
今回の戦争はソフィを倒す事を目的としている訳ではなく、その配下であり『概念跳躍』を使える『ユファ』を倒す事をヴァルテン達は目標としている。
レアがあの化け物を抑える時間が長ければ長い程、とある作戦を別で行っている『ヴァルテン』達には余裕が出来るという事である。
大賢者の言葉では大魔王『ヌー』が秘密裏に動くというのだから、この作戦に穴はないとみるべきだろう。
いくら『災厄の大魔法使い』がソフィの配下である『九大魔王』であっても、ヌーというアレルバレルで最恐と恐れられていた大魔王の前には霞む。
我々の狙いで言えばあのソフィという化け物さえ、アレルバレルの世界に再び戻せなくすればそれでいい。
その為であれば本体を破壊されてもかまわない。
肉を切らせて骨を断つという言葉があるが、まさにその通りで傷はいつかは癒えるのだから、この計画さえ成し遂げられるというのならば安い代償である。
ヴァルテン達や組織の考えを知らないレアだけが、主であるフルーフの為に本気でソフィに勝とうとしているのだった。
…………
戦争の準備がほぼ終わり、近々リラリオに進撃が決まった。
そんな折にヴァルテンから『念話』で話があると言われたレインドリヒは、彼の屋敷に向かっていた。
先日ヴァルテンの本当の主である組織の首謀者『大賢者』に情報を伝えに行っていたのを知っている為、その話だろうと『魔術師』レインドリヒは推測する。
レインドリヒがヴァルテンの屋敷に到着したと同時に『念話』で伝えると、すぐに中から背の高い執事が出てきた。
「よくぞ参られました、レインドリヒ様。直ぐに主の元へ案内します」
そういって恭しく頭を垂れた魔族は、ヴァルテンの配下の魔族で『魔王』階級の一体だった。
「ああ……」
一言そう声を発してレインドリヒは執事の後をついていく。
ヴァルテンの屋敷はかなり大きく、主であるヴァルテンの書斎までにいくつもの部屋がある長い廊下を歩かされた。
「レインドリヒ様。こちらになります」
そう言って中へ入るように背の高い執事が促してくる。レインドリヒが中へ入ると、老獪な大魔王『ヴァルテン』が姿を見せる。
「おお……! よく来たレインドリヒ。あいつには気付かれていないだろうな?」
――あいつとは『魔王』レアの事である。
「ああ、今あいつは戦争の準備に夢中だからな。こちらに意識は向いてはいないさ」
レインドリヒの言葉を聞き、ヴァルテンはニヤリと笑みを浮かべる。
「クックック。フルーフを利用しているのは、あの『化け物』では無く、我ら組織側だと言うのに、哀れな魔王よな」
その言葉を聞いた時、レインドリヒはズキリと胸に痛みが走った。
今更ながらこの世界の同胞であるレアが貶された事を気にしているのかと、レインドリヒは自らのその痛みに気づかないフリをする。
「……それで、私をここに呼んだのには理由があるのだろう?」
レインドリヒは無理矢理本題に入り、同胞を裏切っているという良心の呵責の痛みを忘れようとする。
そんなレインドリヒを見て、厭味な笑みを浮かべながらヴァルテンは口を開く。
「……此度の戦争だが、あの『ヌー』が出てくるぞ」
たった一言だがその名前を聞いた時、レインドリヒは全身に鳥肌が立った。
「……何だって?」
大魔王『ヌー』とは、大魔王『ソフィ』と同じくして、アレルバレルという世界においても類を見ない程の化け物である。
数多いるアレルバレルの大魔王階級の魔族達は、かつての戦争後ソフィの配下についたが、ヌーだけはソフィに最後まで逆らい、大魔王フルーフを手中に収めた後にそのままソフィに復讐を誓って、アレルバレルの世界から消えた。
そして今もフルーフを操って利用して、何千年もありとあらゆる魔法をフルーフから得続けている。
神域【時】魔法、神域魔法、根源魔法、超越魔法。ありとあらゆる最高難度の魔法が作られて奪われ続けているのだ。
――そしてやはりその中でも突出しているのは『概念跳躍』の魔法であろう。
今では組織の魔族達の多くが使える魔法となり、大賢者やヌーに留まらず『レインドリヒ』や『ヴァルテン』でさえ『概念跳躍』魔法を進化させている。
魔王レアのみだけが過去のフルーフの教えから、正当に『概念跳躍』を別ルートで進化に成功させた。
だが、他の者達は皮肉な事にレアのかけた年数の半分程で『概念跳躍』の魔法の進化に成功させていた。
「いいか? 我らの目的は、あの化け物をリラリオに押し留める事だ。つまり『九大魔王』である『ユファ』を確実に葬らねばならない」
レインドリヒに再び胸の痛みが走るが、必死に顔に出さないように堪える。
「……分かっているが『代替身体』を使って、別の世界へ逃げるかもしれないが、どうするんだ?」
別の場所に身体を保管しておけば、本体が殺されたとしても消滅する事は無いのが大魔王領域に居る者達である。
特に『概念跳躍』を使える大魔王であれば、事前に用意してあれば別の世界で蘇る事も可能なのである。
「……クックック、今はあの化け物の周りから『概念跳躍』を使える者を引き離せばそれでいい。それ以上の事は、大賢者に任せておけばいいのだからな」
レインドリヒは経験から、即座にこの老獪な魔王の考えている事が読めた。
ここまで用意周到にしている計画の中で、そんな半端な真似をするとは思えない。
俺が知らない何か別の方法で、あのユファを仕留める手筈を用意しているのだろう。
(……俺も人の事は言えないが、こいつ等の話を全て鵜呑みにすることは危険だな……)
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