最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第239話 組織と大賢者
その頃ソフィの居なくなった『アレルバレル』の世界では、見た目が初老に差し掛かったとある大賢者が、数千年という長い年月を掛けて計画を立てていた事を逡巡していた。
その計画とは決して明るみに出してはいけない計画であり、その計画の為に『マリス』という勇者を使い過去の遺物ともいうべき、貴重な『根源の玉』を使わせて計画を成功させた。
後はソフィの配下である『九大魔王』をこの世から消しさえすれば、全ての計画は完了する筈だった。
――しかし、何の運命のいたずらか、跳ばした世界には『概念跳躍』という『世界間転移』を扱う事の出来る『九大魔王』の一体『ユファ』が存在していた。
『概念跳躍』自体は自身しか転移出来ない為に、あの化け物を直ぐにアレルバレルの世界に転移させる事は出来ない。
だが、問題なのは事情を知らされた『ユファ』が、各世界に跳んだ同じ『九大魔王』と結託する事である。
――ソフィの配下の『九大魔王』は、単なる『大魔王』の集まり達ではない。
各々が『アレルバレル』の大陸にあるあらゆる時代に影響を及ぼした、謂わば時代の征服者達である。
そんな奴らが主である『ソフィ』の為となれば、どんな事を行い始めるか分からない。
大賢者はソフィの跳ばした世界にユファが居る事を知った後、直ぐに行動を開始した。
実験体であるフルーフを洗脳して使い、他者を別の世界へ跳ばす魔法を編み出させた。
この魔法を使う事によって『アレルバレル』の世界に居る九大魔王を、あの化け物と同じようにあらゆる世界へ跳ばした。
紆余曲折があったが長年かけ続けた事で、この世界に残っている『九大魔王』は残り三体。
――残すは『九大魔王』の『処刑』の大魔王『イリーガル』同『破壊』の大魔王『ブラスト』同『智謀』の大魔王『ディアトロス』である。
すでにその『九大魔王』筆頭である『ディアトロス』は王城の地下深くで幽閉してある。
残された九大魔王達の中で、唯一居場所も普段行っている事も調べ尽くしている相手であったが為に、彼は上手く部下を使って『ダイス』王国の大臣として送り込んで見事に捕縛させる事が出来た。
残っている九大魔王達は『イリーガル』と『ブラスト』。
――彼らを滅ぼしさえすれば、アレルバレルの世界はこの初老の大賢者のモノである。
あとは実験体であるフルーフの直属の配下である『レア』とかいう若い魔王を使い、ユファを処理してしまえば、もう二度とあの化け物はこの『アレルバレル』の世界には戻ってはこられない。
本来であれば彼はこのような作戦をとる事もなく、力尽くで押し通したいところであったが『大魔王』ソフィに対して普通の常識は通用しない。
如何なる軍勢を用いたとしてもあの大魔王には敵わないだろう。それは過去の歴史が物語っている。
『大魔王』ソフィに唯一勝てるかもしれないと言われた、最初の大賢者『エルシス』。
彼でさえあの大魔王の前に引き分けたとされた後に、寿命によってこの世界から姿を消した。
人間がそもそも魔族に敵うわけがないという者もいたが、現実にはそんな事は決してない。
『金色』のオーラを纏いながらあらゆる大魔法を使いこなす『エルシス』には、魔族の単なる『大魔王』では足元にも及ばないだろう。
今の私でも『エルシス』に確実に勝てるかと聞かれると怪しい。
それ程の人間が数千年前に存在していたが、それでも尚ソフィを葬る事が出来なかったのだ。
――正攻法でどうにかなる存在ではない。
「手を出せないのは口惜しいが、その分慣れ親しんだ世界を離れて永遠に別の世界にいてもらおうか? 大魔王ソフィ」
そういって初老の大賢者は『ダイス』の王国城の玉座に座りながら、笑みを浮かべて口にするのだった。
……
……
……
人間達の住む国『ダイス』王国から遠く離れた魔族の住む魔界、その『中央大陸』にソフィが居を構えていた『魔王城』がある。
表向きは勇者マリスがこの大陸に蔓延る魔族達を討伐した事になっている。しかし実際は『大賢者』が属する組織が手を出していた。
現在主が居なくなった『魔王城』に、組織の魔族達が我物顔で占領している。
――その魔族を束ねる一体の男の魔族『イザベラ』は、ソフィの魔王城の玉座に座っていた。
「この世界の『大魔王』がどれ程強いかは知らぬが、あの『大賢者』のやる事に間違いはない。俺は上手く勝ち馬に乗らせてもらうとしよう」
『イザベラ』はそう言って、笑みを浮かべるのだった。
この『イザベラ』という魔族は元々『アレルバレル』出身の魔族ではない。元々は『ダール』という別世界に居た『大魔王』であった。
数千年前になるが『ダール』の世界を手中に収めた彼の元に、人間の年でいえば初老を迎えたぐらいに見える『大賢者』が現れた。
当初は人間など興味がなかった彼はその人間を配下の魔族に殺させようとしたが、目を疑うような光景を見せられた。
何とその『大賢者』と名乗った人間は、瞬きの合間に殺すように命じた魔族をあっさりと消して見せた。戦力値が億を越える配下をたった一撃で葬ったのだ。
そこでようやく彼は『大賢者』という人間が、ただの人間ではない事を理解した。
『ダール』を手中に収めた後は暇で仕方なかった日々だったが、面白い玩具を見つけたような気分だった。
「お前、そこそこに使えるそうだな? 俺の計画の為に組織に参加しろ」
この『ダール』の世界の王である『イザベラ』に対して見下すような視線を向けた後、そう宣ったのである。
『イザベラ』は流石にこの失礼すぎる人間に興味を持つどころか殺意を抱き、即座に殺そうとした。
――イザベラの戦力値は7億を越える程であった。
あらゆる世界が存在するが、平均的な世界の支配者は戦力値3億から5億程である。
この『ダール』という世界はそう言う世界に比べては、中々に強い支配者が治める部類の『世界』であった。
――しかし結果は『大賢者』にあっさりと敗北。
信じられないと言った表情を浮かべた『イザベラ』に対して、初老の見た目の『大賢者』は再度同じ事を述べた。
「お前は思った以上に使えそうだな。よし、お前俺の組織に入れ。断ればこの場で殺す」
――イザベラは呆気にとられた。
『大魔王』は『代替身体』がある為に、たとえ殺されたとしても違う場所で即座に用意した身体で復活できる。
しかし死なないとはいっても、本体の傷を癒すまで時間がかかる。
無駄な時間を過ごさせられるくらいならば、素直に従ったほうがいいとイザベラは考えた。
それにこの男についていけば、面白いものが見られるかもしれないと考えたことも大きかった。
結局イザベラはこの初老の見た目の人間の言葉に頷き、組織に参加する事にしたのだった。
その計画とは決して明るみに出してはいけない計画であり、その計画の為に『マリス』という勇者を使い過去の遺物ともいうべき、貴重な『根源の玉』を使わせて計画を成功させた。
後はソフィの配下である『九大魔王』をこの世から消しさえすれば、全ての計画は完了する筈だった。
――しかし、何の運命のいたずらか、跳ばした世界には『概念跳躍』という『世界間転移』を扱う事の出来る『九大魔王』の一体『ユファ』が存在していた。
『概念跳躍』自体は自身しか転移出来ない為に、あの化け物を直ぐにアレルバレルの世界に転移させる事は出来ない。
だが、問題なのは事情を知らされた『ユファ』が、各世界に跳んだ同じ『九大魔王』と結託する事である。
――ソフィの配下の『九大魔王』は、単なる『大魔王』の集まり達ではない。
各々が『アレルバレル』の大陸にあるあらゆる時代に影響を及ぼした、謂わば時代の征服者達である。
そんな奴らが主である『ソフィ』の為となれば、どんな事を行い始めるか分からない。
大賢者はソフィの跳ばした世界にユファが居る事を知った後、直ぐに行動を開始した。
実験体であるフルーフを洗脳して使い、他者を別の世界へ跳ばす魔法を編み出させた。
この魔法を使う事によって『アレルバレル』の世界に居る九大魔王を、あの化け物と同じようにあらゆる世界へ跳ばした。
紆余曲折があったが長年かけ続けた事で、この世界に残っている『九大魔王』は残り三体。
――残すは『九大魔王』の『処刑』の大魔王『イリーガル』同『破壊』の大魔王『ブラスト』同『智謀』の大魔王『ディアトロス』である。
すでにその『九大魔王』筆頭である『ディアトロス』は王城の地下深くで幽閉してある。
残された九大魔王達の中で、唯一居場所も普段行っている事も調べ尽くしている相手であったが為に、彼は上手く部下を使って『ダイス』王国の大臣として送り込んで見事に捕縛させる事が出来た。
残っている九大魔王達は『イリーガル』と『ブラスト』。
――彼らを滅ぼしさえすれば、アレルバレルの世界はこの初老の大賢者のモノである。
あとは実験体であるフルーフの直属の配下である『レア』とかいう若い魔王を使い、ユファを処理してしまえば、もう二度とあの化け物はこの『アレルバレル』の世界には戻ってはこられない。
本来であれば彼はこのような作戦をとる事もなく、力尽くで押し通したいところであったが『大魔王』ソフィに対して普通の常識は通用しない。
如何なる軍勢を用いたとしてもあの大魔王には敵わないだろう。それは過去の歴史が物語っている。
『大魔王』ソフィに唯一勝てるかもしれないと言われた、最初の大賢者『エルシス』。
彼でさえあの大魔王の前に引き分けたとされた後に、寿命によってこの世界から姿を消した。
人間がそもそも魔族に敵うわけがないという者もいたが、現実にはそんな事は決してない。
『金色』のオーラを纏いながらあらゆる大魔法を使いこなす『エルシス』には、魔族の単なる『大魔王』では足元にも及ばないだろう。
今の私でも『エルシス』に確実に勝てるかと聞かれると怪しい。
それ程の人間が数千年前に存在していたが、それでも尚ソフィを葬る事が出来なかったのだ。
――正攻法でどうにかなる存在ではない。
「手を出せないのは口惜しいが、その分慣れ親しんだ世界を離れて永遠に別の世界にいてもらおうか? 大魔王ソフィ」
そういって初老の大賢者は『ダイス』の王国城の玉座に座りながら、笑みを浮かべて口にするのだった。
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人間達の住む国『ダイス』王国から遠く離れた魔族の住む魔界、その『中央大陸』にソフィが居を構えていた『魔王城』がある。
表向きは勇者マリスがこの大陸に蔓延る魔族達を討伐した事になっている。しかし実際は『大賢者』が属する組織が手を出していた。
現在主が居なくなった『魔王城』に、組織の魔族達が我物顔で占領している。
――その魔族を束ねる一体の男の魔族『イザベラ』は、ソフィの魔王城の玉座に座っていた。
「この世界の『大魔王』がどれ程強いかは知らぬが、あの『大賢者』のやる事に間違いはない。俺は上手く勝ち馬に乗らせてもらうとしよう」
『イザベラ』はそう言って、笑みを浮かべるのだった。
この『イザベラ』という魔族は元々『アレルバレル』出身の魔族ではない。元々は『ダール』という別世界に居た『大魔王』であった。
数千年前になるが『ダール』の世界を手中に収めた彼の元に、人間の年でいえば初老を迎えたぐらいに見える『大賢者』が現れた。
当初は人間など興味がなかった彼はその人間を配下の魔族に殺させようとしたが、目を疑うような光景を見せられた。
何とその『大賢者』と名乗った人間は、瞬きの合間に殺すように命じた魔族をあっさりと消して見せた。戦力値が億を越える配下をたった一撃で葬ったのだ。
そこでようやく彼は『大賢者』という人間が、ただの人間ではない事を理解した。
『ダール』を手中に収めた後は暇で仕方なかった日々だったが、面白い玩具を見つけたような気分だった。
「お前、そこそこに使えるそうだな? 俺の計画の為に組織に参加しろ」
この『ダール』の世界の王である『イザベラ』に対して見下すような視線を向けた後、そう宣ったのである。
『イザベラ』は流石にこの失礼すぎる人間に興味を持つどころか殺意を抱き、即座に殺そうとした。
――イザベラの戦力値は7億を越える程であった。
あらゆる世界が存在するが、平均的な世界の支配者は戦力値3億から5億程である。
この『ダール』という世界はそう言う世界に比べては、中々に強い支配者が治める部類の『世界』であった。
――しかし結果は『大賢者』にあっさりと敗北。
信じられないと言った表情を浮かべた『イザベラ』に対して、初老の見た目の『大賢者』は再度同じ事を述べた。
「お前は思った以上に使えそうだな。よし、お前俺の組織に入れ。断ればこの場で殺す」
――イザベラは呆気にとられた。
『大魔王』は『代替身体』がある為に、たとえ殺されたとしても違う場所で即座に用意した身体で復活できる。
しかし死なないとはいっても、本体の傷を癒すまで時間がかかる。
無駄な時間を過ごさせられるくらいならば、素直に従ったほうがいいとイザベラは考えた。
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