最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第237話 勇者の資質
ユファの放った神域魔法である『天空の雷』は『真なる魔王』階級の魔族ですら一撃で葬り去る程の威力であった。
ユファは『リディア』を殺すつもりでこの魔法を放ったのだと、多くの力ある者達は理解する。
それは当然特別室で見ていたソフィも理解しており、直ぐにユファの魔法を相殺しようと神域魔法である『天空の雷』よりも、さらに強い魔法を放つ準備をしたが、魔法陣を発動させる寸前で手を止めたのだった。
その理由は彼がユファの魔法を止める必要がなくなったからである。
リディアが纏っていた『淡く青い』オーラの色が変わり『金色』のオーラが輝いていた。
「あ、あれはまさか!?」
ソフィの声は驚きから歓喜の声音に変貌していく。
そしてユファの放った神域魔法『天空の雷』はあっさりと『柄のない二刀の光輝く刀』で斬られた。
ユファは雲散霧消していく自身の魔法を見ながら震える声を出した。
「う、嘘……でしょう?」
今の神域魔法は『終焉の雷』とは比べ物にならず、まさにユファの本気で放った魔法に相違無かった。
しかし、そのユファの魔法でさえ斬られたのである。その衝撃は放った本人にしか分からないであろう。
「くっ……!!」
そして『災厄の大魔法使い』の次の行動は早かった。
ユファはなりふり構わず上空へ飛びあがり、自身の最強魔法の『詠唱』を開始しようとする。
――雷系統を得意とする大魔王『ユファ』が放つ、神域魔法『天雷一閃』の詠唱であった。
ユファは大空を飛翔したかと思えば、ぴたりと空中で止まったかと思うと、そのまま両手を広げた後に大きく息を吐く。
先程放った『天空の雷』もすでに神域領域ではあったが、今ユファが放つ為の準備をしている『天雷一閃』は術者次第で『天空の雷』の魔法の凡そ2倍から5倍以上に威力が変わる『地』系統、そして雷の魔法の最上位である最強魔法であった。
今のユファと同じ『大魔王』の領域に居る者達でさえこの魔法に対策を施す事なく、その身に直撃させられたならば、死を覚悟する程の神域領域の中でも殺傷能力の高い魔法と言える。
すでにユファの目は金色に輝いており、その膨大な魔力を一点に集中し始めた。
――敵を確実に殺す為の魔力増幅である。
レパートの世界の『理』が描かれた『発動羅列』が次々と浮かび上がり、魔法の発動を必要とする魔法陣が空中に出現を始める。
『災厄の大魔法使い』の目が見開いたかと思うと『理』に意味をもたらす『発動羅列』をそのまま『詠唱』という形を用いて、彼女の口から強敵と認めた者に明確な死を届ける言葉を発していく。
大空で可視化出来る程のユファの『魔力』が迸る。彼女の目は金色に輝き、そして彼女の周囲に『結界』『魔法障壁』『絶対防御』いくつもの防衛手段が展開されていく。
――これこそは『災厄の大魔法使い』が、本気で相手を仕留める時に必ず行う循環手順である。
如何なる者からの妨害を回避する為のモノであり、これがおこなわれたという事は、次に『リディア』を確実に葬る為の『大魔王』の一撃が確定で発動されるという事である。
「『広大な空に雷鳴響け、雷神よ我の魔力に呼応し、存分にその力を――』」
迸る魔力はバチバチと火花を散らしながら、発動者となるユファの詠唱に応じるかの如く、魔法陣が回転を始めて行く――。
――しかしユファの魔力が魔法陣に吸い込まれていく寸前であった――。
(やめぬか!! もうリディアは戦える状況ではない!!)
「!?」
ユファはビクリと身体を震わせたかと思うと、ソフィからの『念話』にそれまでの全ての動きを止める。
強引に魔法を止めた所為で大空では行き場を失った『魔力』が暴走を始めていく。
あと数秒で『大魔王』から大陸を消し飛ばす程の一撃を放たれるところだったのだから、この暴走は必然であり当然の事であった。
「うっ、うくっ……!!」
ユファは自身の魔力の塊に、更に全力で魔力をぶつけて相殺を試みる。
『災厄の大魔法使い』が相手を殺す為に準備を整えていたその迸りながら暴走を開始する『魔力』に対して、新たにユファは自身がとれる最適解を出し惜しみせずに展開をする。
キィイインという甲高い音を周囲に響かせながら、魔瞳『金色の目』を発動させながら自分の魔力を精密に合わせていき、敵からの妨害を避ける為に発動していた『絶対防御』を強引に発動させると、自分が展開した殺傷能力が高すぎる『天雷一閃』を止める為に、その魔法を使用する為に使われた『魔力』の圧を上回る『魔力』を発動させて強引に暴走する魔力の向きを『魔瞳』で誘導させて『絶対防御』にぶつけるのだった。
『天雷一閃』用の先程の魔力はそれでも止められず、仕方なくユファは残りの全ての魔力を用いて、更なるオーラを纏わせる。
「ぐっ……! ずぁあっ!!」
――『二色の併用』。
大空でユファの魔力同士が恐ろしい衝突を起こした後、拡散されないように上手く魔瞳でコントロールをして『絶対防御』に衝撃を殺させると次の瞬間、大空で大爆発を起こした後に完全に相殺されて消え去るのだった。
「はぁっはぁっ……!」
『災厄の大魔法使い』が全力で敵を殺す為に『詠唱』を用いたその『魔力』の暴走は、自らの手で最小限まで威力を押し殺して、大空で大爆発を起こす程度に留められて地上には影響を及ぼさなかった。
そしてユファが地上の被害を確認しようとして、そこで対象であったリディアが倒れている事に気づき、ようやくユファは普段の冷静さを取り戻すのだった。
(す、すみませんソフィ様! つ、つい……!)
ユファは主への謝罪を行った後、ゆっくりとリング上へ降りていく。
そこで審判から勝者のコールを受けるのだった。
……
……
……
「焦りは禁物なのでしょうが、今の私では貴方に追いつける気がしませんよ……」
観客席からは大きな歓声が上がっていたが、その中央にいるラルフは複雑な表情でリングを見ていた。
……
……
……
「と、とんでもねぇ人間がいたもんだな」
上空で『天雷一閃』の後処理に齷齪していたユファがようやく無事に片付けたのを確認したキーリもまた、リング上に倒れている人間を見てぽつりと呟いた。
(あの大魔王があれだけ処理に困る程の魔力を用いてあの人間を殺そうとしやがったのか……! それだけあのリディアって野郎に脅威を感じたという事だ、全く信じられない事だぜ)
先程のユファの『天雷一閃』は過去に『魔王』レアが自分に向けて放ってきたとある魔法と酷似する程の魔力だったのを見たキーリは、その威力の規模を理解してそう胸中で呟くのだった。
その横でシスは武者震いをしていた。
『覚醒した魔王』であるシスは、先程の上空でのユファに何か思うところがあったのか、その顔には笑みを浮かべていた。
そしてソフィはユファに『念話』を送った後、ユファの神域魔法を斬った時のリディアのオーラを思い返していた。
(あれを纏える人間か。本当に我を倒せるとすれば……)
そこまで考えたソフィは近い将来、自分の願望を叶えてくれるのではないかと本気で考え始めるのだった。
『淡いオーラ』と違い、辺りを照らす程の『金色』のオーラを纏える者は数少ない。
それは数多ある『世界』であっても『金色』を纏う者は例外なく歴史上に名を残している。
例を挙げるのあれば、人間では『エルシス』。
そして魔族ではこの場に居る『ソフィ』のように――。
如何なる困難が差し迫ったとしても、難なく乗り越える『英雄』の証ともいえる『力』の体現である。
力ある魔族が纏う『淡いオーラ』は自らの武器を具現化させたり強化させる事が出来るが、すでにリディアは過去ソフィと戦っているあの時に、無意識の内に『金色』を纏っていたのではないかとソフィは考える。
その理由として柄の無い二刀の光輝く刀があげられる。
まだまだあの頃は戦力値もそこまで高くなかったが、ソフィの第二形態の身体に傷をつけていた事からもその兆候は表れていたとソフィは判断する。
『淡く青い』オーラで力を増幅させながら『金色』で具現化した武器――。
もしこのままリディアが更にその力の深淵に辿り着くことが出来るのであれば、リディアが勇者の領域に辿り着くのではないかと考えるのだった。
――我に本気を出させる者が、この世界から誕生するかもしれない。
ソフィはその可能性を考えると、笑みを浮かべずにはいられなかった。
ソフィの横に立つキーリもまた、色々と考えさせられる試合であった事は間違い無かった。
(俺達龍族が『最強』だった時代は、遠い過去になってしまったのかもしれねぇな……)
まだまだ『リラリオ』において、始祖龍キーリ程の強さを持つ者は数少ないが、それでもすでに『魔王』レアと横にいる『ソフィ』の両名は確実に自分より上の強さを持っている。
そして今戦っていた人間もまた更なる強さを持つことは容易に予想がつく。
神に近い種族と呼ばれた龍族ではあるが、このまま名声に胡坐をかいていると恥をかく事になると考えるのであった。
…………
闘技場の審判から勝利者宣言を受けた後、闘技場のリングを降りたユファを強く見つめる存在が居た。
――ユファはその存在を一瞥した後、頷きを見せるのだった。
それはこの後に顔を貸しなさいというユファから、教え子に対する声なき言葉であった。
ユファは『リディア』を殺すつもりでこの魔法を放ったのだと、多くの力ある者達は理解する。
それは当然特別室で見ていたソフィも理解しており、直ぐにユファの魔法を相殺しようと神域魔法である『天空の雷』よりも、さらに強い魔法を放つ準備をしたが、魔法陣を発動させる寸前で手を止めたのだった。
その理由は彼がユファの魔法を止める必要がなくなったからである。
リディアが纏っていた『淡く青い』オーラの色が変わり『金色』のオーラが輝いていた。
「あ、あれはまさか!?」
ソフィの声は驚きから歓喜の声音に変貌していく。
そしてユファの放った神域魔法『天空の雷』はあっさりと『柄のない二刀の光輝く刀』で斬られた。
ユファは雲散霧消していく自身の魔法を見ながら震える声を出した。
「う、嘘……でしょう?」
今の神域魔法は『終焉の雷』とは比べ物にならず、まさにユファの本気で放った魔法に相違無かった。
しかし、そのユファの魔法でさえ斬られたのである。その衝撃は放った本人にしか分からないであろう。
「くっ……!!」
そして『災厄の大魔法使い』の次の行動は早かった。
ユファはなりふり構わず上空へ飛びあがり、自身の最強魔法の『詠唱』を開始しようとする。
――雷系統を得意とする大魔王『ユファ』が放つ、神域魔法『天雷一閃』の詠唱であった。
ユファは大空を飛翔したかと思えば、ぴたりと空中で止まったかと思うと、そのまま両手を広げた後に大きく息を吐く。
先程放った『天空の雷』もすでに神域領域ではあったが、今ユファが放つ為の準備をしている『天雷一閃』は術者次第で『天空の雷』の魔法の凡そ2倍から5倍以上に威力が変わる『地』系統、そして雷の魔法の最上位である最強魔法であった。
今のユファと同じ『大魔王』の領域に居る者達でさえこの魔法に対策を施す事なく、その身に直撃させられたならば、死を覚悟する程の神域領域の中でも殺傷能力の高い魔法と言える。
すでにユファの目は金色に輝いており、その膨大な魔力を一点に集中し始めた。
――敵を確実に殺す為の魔力増幅である。
レパートの世界の『理』が描かれた『発動羅列』が次々と浮かび上がり、魔法の発動を必要とする魔法陣が空中に出現を始める。
『災厄の大魔法使い』の目が見開いたかと思うと『理』に意味をもたらす『発動羅列』をそのまま『詠唱』という形を用いて、彼女の口から強敵と認めた者に明確な死を届ける言葉を発していく。
大空で可視化出来る程のユファの『魔力』が迸る。彼女の目は金色に輝き、そして彼女の周囲に『結界』『魔法障壁』『絶対防御』いくつもの防衛手段が展開されていく。
――これこそは『災厄の大魔法使い』が、本気で相手を仕留める時に必ず行う循環手順である。
如何なる者からの妨害を回避する為のモノであり、これがおこなわれたという事は、次に『リディア』を確実に葬る為の『大魔王』の一撃が確定で発動されるという事である。
「『広大な空に雷鳴響け、雷神よ我の魔力に呼応し、存分にその力を――』」
迸る魔力はバチバチと火花を散らしながら、発動者となるユファの詠唱に応じるかの如く、魔法陣が回転を始めて行く――。
――しかしユファの魔力が魔法陣に吸い込まれていく寸前であった――。
(やめぬか!! もうリディアは戦える状況ではない!!)
「!?」
ユファはビクリと身体を震わせたかと思うと、ソフィからの『念話』にそれまでの全ての動きを止める。
強引に魔法を止めた所為で大空では行き場を失った『魔力』が暴走を始めていく。
あと数秒で『大魔王』から大陸を消し飛ばす程の一撃を放たれるところだったのだから、この暴走は必然であり当然の事であった。
「うっ、うくっ……!!」
ユファは自身の魔力の塊に、更に全力で魔力をぶつけて相殺を試みる。
『災厄の大魔法使い』が相手を殺す為に準備を整えていたその迸りながら暴走を開始する『魔力』に対して、新たにユファは自身がとれる最適解を出し惜しみせずに展開をする。
キィイインという甲高い音を周囲に響かせながら、魔瞳『金色の目』を発動させながら自分の魔力を精密に合わせていき、敵からの妨害を避ける為に発動していた『絶対防御』を強引に発動させると、自分が展開した殺傷能力が高すぎる『天雷一閃』を止める為に、その魔法を使用する為に使われた『魔力』の圧を上回る『魔力』を発動させて強引に暴走する魔力の向きを『魔瞳』で誘導させて『絶対防御』にぶつけるのだった。
『天雷一閃』用の先程の魔力はそれでも止められず、仕方なくユファは残りの全ての魔力を用いて、更なるオーラを纏わせる。
「ぐっ……! ずぁあっ!!」
――『二色の併用』。
大空でユファの魔力同士が恐ろしい衝突を起こした後、拡散されないように上手く魔瞳でコントロールをして『絶対防御』に衝撃を殺させると次の瞬間、大空で大爆発を起こした後に完全に相殺されて消え去るのだった。
「はぁっはぁっ……!」
『災厄の大魔法使い』が全力で敵を殺す為に『詠唱』を用いたその『魔力』の暴走は、自らの手で最小限まで威力を押し殺して、大空で大爆発を起こす程度に留められて地上には影響を及ぼさなかった。
そしてユファが地上の被害を確認しようとして、そこで対象であったリディアが倒れている事に気づき、ようやくユファは普段の冷静さを取り戻すのだった。
(す、すみませんソフィ様! つ、つい……!)
ユファは主への謝罪を行った後、ゆっくりとリング上へ降りていく。
そこで審判から勝者のコールを受けるのだった。
……
……
……
「焦りは禁物なのでしょうが、今の私では貴方に追いつける気がしませんよ……」
観客席からは大きな歓声が上がっていたが、その中央にいるラルフは複雑な表情でリングを見ていた。
……
……
……
「と、とんでもねぇ人間がいたもんだな」
上空で『天雷一閃』の後処理に齷齪していたユファがようやく無事に片付けたのを確認したキーリもまた、リング上に倒れている人間を見てぽつりと呟いた。
(あの大魔王があれだけ処理に困る程の魔力を用いてあの人間を殺そうとしやがったのか……! それだけあのリディアって野郎に脅威を感じたという事だ、全く信じられない事だぜ)
先程のユファの『天雷一閃』は過去に『魔王』レアが自分に向けて放ってきたとある魔法と酷似する程の魔力だったのを見たキーリは、その威力の規模を理解してそう胸中で呟くのだった。
その横でシスは武者震いをしていた。
『覚醒した魔王』であるシスは、先程の上空でのユファに何か思うところがあったのか、その顔には笑みを浮かべていた。
そしてソフィはユファに『念話』を送った後、ユファの神域魔法を斬った時のリディアのオーラを思い返していた。
(あれを纏える人間か。本当に我を倒せるとすれば……)
そこまで考えたソフィは近い将来、自分の願望を叶えてくれるのではないかと本気で考え始めるのだった。
『淡いオーラ』と違い、辺りを照らす程の『金色』のオーラを纏える者は数少ない。
それは数多ある『世界』であっても『金色』を纏う者は例外なく歴史上に名を残している。
例を挙げるのあれば、人間では『エルシス』。
そして魔族ではこの場に居る『ソフィ』のように――。
如何なる困難が差し迫ったとしても、難なく乗り越える『英雄』の証ともいえる『力』の体現である。
力ある魔族が纏う『淡いオーラ』は自らの武器を具現化させたり強化させる事が出来るが、すでにリディアは過去ソフィと戦っているあの時に、無意識の内に『金色』を纏っていたのではないかとソフィは考える。
その理由として柄の無い二刀の光輝く刀があげられる。
まだまだあの頃は戦力値もそこまで高くなかったが、ソフィの第二形態の身体に傷をつけていた事からもその兆候は表れていたとソフィは判断する。
『淡く青い』オーラで力を増幅させながら『金色』で具現化した武器――。
もしこのままリディアが更にその力の深淵に辿り着くことが出来るのであれば、リディアが勇者の領域に辿り着くのではないかと考えるのだった。
――我に本気を出させる者が、この世界から誕生するかもしれない。
ソフィはその可能性を考えると、笑みを浮かべずにはいられなかった。
ソフィの横に立つキーリもまた、色々と考えさせられる試合であった事は間違い無かった。
(俺達龍族が『最強』だった時代は、遠い過去になってしまったのかもしれねぇな……)
まだまだ『リラリオ』において、始祖龍キーリ程の強さを持つ者は数少ないが、それでもすでに『魔王』レアと横にいる『ソフィ』の両名は確実に自分より上の強さを持っている。
そして今戦っていた人間もまた更なる強さを持つことは容易に予想がつく。
神に近い種族と呼ばれた龍族ではあるが、このまま名声に胡坐をかいていると恥をかく事になると考えるのであった。
…………
闘技場の審判から勝利者宣言を受けた後、闘技場のリングを降りたユファを強く見つめる存在が居た。
――ユファはその存在を一瞥した後、頷きを見せるのだった。
それはこの後に顔を貸しなさいというユファから、教え子に対する声なき言葉であった。
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