最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第196話 後悔先に立たず
現在シスとユファは修復した建物の一室に一緒に住んでいる。
シティアスの修復が終わるまでは、ここを拠点として活動する為である。
そして二人はいつものように修復作業を終えて部屋に戻ってきたのだが、ここでも非常に空気が重い。
やはりその原因は先程の『シティアス』の街外れで起きた出来事の所為であろう。
ユファは見るからに落ち込んでおり、何度も溜息ばかりついている。
「ま、またやりすぎてしまったわ……」
ユファは『ヴェルトマー』の時代でもこういった出来事が多々あった。
『レイズ』の『魔法部隊』に所属する部下達が、少しでも強くなろうと限界以上の無理をするのを見るといつも『ヴェル』はこうして叱咤を繰り返していた。
本人は何も憎くて怒る訳ではなくその子達の事を想って、休憩を取れと言う意味で怒るのだが、その叱咤が強すぎる余りに部下を怯えさせてしまうのだ。
そのたびにヴェルは『もう少し優しく言えばよかった』と言って自分を責める。
でも次にまた同じ事があると、何とかしてあげたいという気持ちが先行してしまい、再び彼女は怒ってしまう。
シスは何度もこの数千年間で、同じような事が起きてはヴェルの傍に寄り添ってきた。
『この優しすぎる姉』に気持ちを理解しているよと、口に出さずに態度で示しているのである。
そしてこの時リーネが自分にしてくれていた事と似ているなと思い、シスはふふっと笑ってしまった。
「何か面白い事があったのかしら?」
ヴェルはジト目で私を見る。どうやら自分を見て笑われたのだと勘違いしたのだろう。
――本当に可愛い姉である。
「ええ、とっても」
私がそう答えると、ヴェルは口を尖らせてそっぽを向いた。
「でもそうね……、大丈夫よ。彼はとても頭がいいしね? 冷静さを取り戻したら自分が悪かったと反省すると思うわ」
シスがそう言うとユファは何度も唸りながら、最後はゆっくりと頷いた。
「それにしてもびっくりしたわ。ラルフさんのことだけど、この前見た時よりもずっと強くなっていたわよね」
「そうね。だからこそ心配よ。魔族であればそこそこ無理をしても身体がついてくるけど、彼は人間よ? あんな無理を続けていたらいつか体がついていかなくなる時が来るわ」
シスはユファと違った感想を抱いていた。
人間の身であの戦力値の上昇の早さは恐ろしさすら感じる。
ソフィさんの配下として頑張ろうという気持ちや、他に何か目標があるのかもしれないけれど、それでも強くなる速度が尋常じゃない。
シスがミールガルド大陸に飛ばされた時に初めて彼に出会った時はまだ、戦力値が100万がそこそこという程度であった。
しかしこの前の戦争が終わった時にはもう500万を越えていた。
そしてそして何と今日は、その倍以上だったのである。
「人間の身で『魔王階級』になれるのかしら?」
ふと私がそう言葉を漏らすと直ぐにヴェルが返事をしてきた。
「人間の身で魔王になった者は見たことはないけれど、過去には魔王より強い人間は居たらしいわね」
「そ、そんな事もあるの……? 人間って凄いのね」
ユファが昔ソフィに聞いた話では『大賢者』と呼ばれる人間達が定めた『最高位階』に到達した人間で、曰くタイプは違うが大魔王『フルーフ』と同じく、魔法やその魔法を発動させる為の『理』を作る天才だったらしい。
「確か『エルシス』って言う名前の人間だったらしいわね」
「ほー……!」
説明を行ったユファに生返事を返すシスは、どうやら『エルシス』という人間にそこまでの興味は湧かなかったようである。
(私がこの話を聞いた時は興味津々だったのだけど、それは私が『魔』を追求する性格だからかしらね)
ふふっと私が笑うとこちらを見てまたシスが笑っていた。
「どうやら、少しは元気が出たみたいね?」
そういってシスは満面の笑みを浮かべていた。
どうやら私を励ます為にエルシスの話題を出させたのだろう。
『魔』に興味があるという事を知るこの心優しき妹にしてやられたというわけだ。私は溜息を吐いて苦笑いを返すのだった。
シティアスの修復が終わるまでは、ここを拠点として活動する為である。
そして二人はいつものように修復作業を終えて部屋に戻ってきたのだが、ここでも非常に空気が重い。
やはりその原因は先程の『シティアス』の街外れで起きた出来事の所為であろう。
ユファは見るからに落ち込んでおり、何度も溜息ばかりついている。
「ま、またやりすぎてしまったわ……」
ユファは『ヴェルトマー』の時代でもこういった出来事が多々あった。
『レイズ』の『魔法部隊』に所属する部下達が、少しでも強くなろうと限界以上の無理をするのを見るといつも『ヴェル』はこうして叱咤を繰り返していた。
本人は何も憎くて怒る訳ではなくその子達の事を想って、休憩を取れと言う意味で怒るのだが、その叱咤が強すぎる余りに部下を怯えさせてしまうのだ。
そのたびにヴェルは『もう少し優しく言えばよかった』と言って自分を責める。
でも次にまた同じ事があると、何とかしてあげたいという気持ちが先行してしまい、再び彼女は怒ってしまう。
シスは何度もこの数千年間で、同じような事が起きてはヴェルの傍に寄り添ってきた。
『この優しすぎる姉』に気持ちを理解しているよと、口に出さずに態度で示しているのである。
そしてこの時リーネが自分にしてくれていた事と似ているなと思い、シスはふふっと笑ってしまった。
「何か面白い事があったのかしら?」
ヴェルはジト目で私を見る。どうやら自分を見て笑われたのだと勘違いしたのだろう。
――本当に可愛い姉である。
「ええ、とっても」
私がそう答えると、ヴェルは口を尖らせてそっぽを向いた。
「でもそうね……、大丈夫よ。彼はとても頭がいいしね? 冷静さを取り戻したら自分が悪かったと反省すると思うわ」
シスがそう言うとユファは何度も唸りながら、最後はゆっくりと頷いた。
「それにしてもびっくりしたわ。ラルフさんのことだけど、この前見た時よりもずっと強くなっていたわよね」
「そうね。だからこそ心配よ。魔族であればそこそこ無理をしても身体がついてくるけど、彼は人間よ? あんな無理を続けていたらいつか体がついていかなくなる時が来るわ」
シスはユファと違った感想を抱いていた。
人間の身であの戦力値の上昇の早さは恐ろしさすら感じる。
ソフィさんの配下として頑張ろうという気持ちや、他に何か目標があるのかもしれないけれど、それでも強くなる速度が尋常じゃない。
シスがミールガルド大陸に飛ばされた時に初めて彼に出会った時はまだ、戦力値が100万がそこそこという程度であった。
しかしこの前の戦争が終わった時にはもう500万を越えていた。
そしてそして何と今日は、その倍以上だったのである。
「人間の身で『魔王階級』になれるのかしら?」
ふと私がそう言葉を漏らすと直ぐにヴェルが返事をしてきた。
「人間の身で魔王になった者は見たことはないけれど、過去には魔王より強い人間は居たらしいわね」
「そ、そんな事もあるの……? 人間って凄いのね」
ユファが昔ソフィに聞いた話では『大賢者』と呼ばれる人間達が定めた『最高位階』に到達した人間で、曰くタイプは違うが大魔王『フルーフ』と同じく、魔法やその魔法を発動させる為の『理』を作る天才だったらしい。
「確か『エルシス』って言う名前の人間だったらしいわね」
「ほー……!」
説明を行ったユファに生返事を返すシスは、どうやら『エルシス』という人間にそこまでの興味は湧かなかったようである。
(私がこの話を聞いた時は興味津々だったのだけど、それは私が『魔』を追求する性格だからかしらね)
ふふっと私が笑うとこちらを見てまたシスが笑っていた。
「どうやら、少しは元気が出たみたいね?」
そういってシスは満面の笑みを浮かべていた。
どうやら私を励ます為にエルシスの話題を出させたのだろう。
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