最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第180話 リーゼとユファ
ヴェルトマーに励まされてようやくシスは、自分の気持ちに区切りをつける事が出来た。
もしもあの時レルバノンの屋敷で、ヴェルが消えるのを見送っていたらと思うとシスはぞっとする。
あの時必死にヴェルを留める事が出来て本当に良かったと、シスは心の底から思うのだった。
「ちゃんと、皆の墓を建ててあげないとね」
最後にシスはそう言うと、隣にいるヴェルトマーの顔を見る。
――ヴェルは笑顔で頷いてくれた。
そしてちょうどその時、シティアスの方でソフィの魔力を感知した二人だった。
二人の『魔王』はソフィの『魔瞳』。
『金色の目』の余波を感じて直ぐに頷き合ってシティアスへと向かうのであった。
……
……
……
ソフィ達は酒場の地下から地上へと戻る道中、リーゼに過去のレイズ魔国の事や、ヴェルトマーがこのレイズ魔国にとってどれだけの救いだったかを話してくれた。
ここ『レイズ』魔国の首都であるシティアスでは、ヴェルトマーがリーゼの後継として『レイズ』魔国のフィクスに就任した後にレイズの魔国軍の『魔法部隊』が編制し直されて、それまでレイズ魔国軍の中心であった『近接部隊』の代わりにとして『魔法部隊』が軍の最高部隊となった。
そうなった事で一気に『レイズ』魔国全体が様変わりを果たして、魔法使いや魔導士用の武器や防具、それに中級用や上級用の呪文スクロール屋等、前衛職の装備を取り扱っていた店が一気に魔導屋に鞍替えする程で『ヴェルトマー・フィクス』はこの国にとって甚大な影響を及ぼしたようである。
そしてこれが一番大きく変貌を遂げた事だが、ヴェルトマーが来る前までは『近接部隊』がレイズ魔国軍の中心で『魔法部隊』は『近接部隊』の援護に回る事が多かったのだが、ヴェルトマーを指揮官とする『魔法部隊』の台頭によって、再びレイズ魔国は前時代のエリス魔国王の時のような、魔法の国と呼ばれるようになり『レイズの魔女』と呼ばれる『セレス』女王と『最強の魔法使い』と呼ばれる『ヴェルトマー・フィクス』の二大魔法使いの存在によって、このレイズ魔国は紛う事無き『三大魔国』として、近隣諸国以外からも恐れられるようになったという。
(我が出会った時のユファは、自身の『魔』の追求以外全く興味がない者であったが、余程この『世界』の者達には気を許していたらしいな)
そのソフィの言葉は正しかった。まず要因となったのが過去に『レルバノン』が『レイズ』魔国を襲撃した際にシスやセレス女王、そして目の前に歩くリーゼ達がユファの為に動いた結果なのだった。
あの時の一戦によってヴェルトマーは、シスを守るついでにこの国を守ってやると当時のレイズ魔国王『セレス』に伝えたが、その言葉通りに『ヴェルトマー』は最強の魔法使いとしてこの国の守護神となった。
そして『鮮血のレルバノン』との初の戦闘から三千年近くヴェルトマーは、このレイズ魔国を守り続けた。
――言葉にすればあっさりに思えるが、自分勝手な者が多い『大魔王』領域に居る者が三千年間、他の国の為に身を費やして守ったのだ。
ソフィは自分の配下であったユファを誇らしく思った。
そして言いようのない嬉しさがこみあげてくるのであった。
(ユファよ、お主はよくやったぞ!)
ソフィもまた『アレルバレル』の世界で人間の為に、数千年統治をした経験がある身である。
ユファと統治に関して、二人で話し合ってみたいとソフィは思うのだった。
そしてそんな話をしてくれていたリーゼの案内で、三階建ての高さの建物の中にある二階の一室、会議室だったのであろう広い場所を紹介してくれた。
「ここであれば多くの者が入れるとは思うが……、すまない。少し埃っぽいな」
そう言うとリーゼは、魔法を使って部屋を綺麗にしていく。
瓦礫やゴミなどが分解されていく姿にリーネは感心したように目を輝かせる。
元々こういう魔法や建物を修復する魔法というのは、この『世界』では存在しなかった。
全てレイズ魔国のNo.2に就任した『ヴェルトマー』が考案した魔法とされている。
どうやらユファの編み出した魔法は戦闘面だけでなく、生活面でも大活躍だったようだ。
「さて、ソフィ殿。ご希望通りの場所になっただろうか?」
綺麗になった広いこの場所は、ソフィの望んだ場所だった。
「うむ。無理を言ってすまなかったな」
満足気にリーゼに頷くソフィだったが、その部屋にばたばたと足音を響かせながら『ユファ』と『シス』が緊迫した面持ちで入ってきた。
「ソフィさん!」
「ソフィ様!」
ソフィがヴェルマー大陸で何者かと交戦していると勘違いしたのか、ユファは既にいつでも戦闘が出来るように『淡く青い』オーラを纏った状態だった。
しかしそこに居たのはシス達を見て目を丸くしている、この国の過去のNo.2『リーゼ・フィクス』だった。
「……ひ、久しぶりね? シス女王」
リーゼは心の底から自分達の国の女王が生きていた事を嬉しく思ったが、その横に並び立つ女性が誰か分からない。
長身で長い黒髪、そして何処か『ヴェルトマー』の面影はあるのだが、目の前に居る女性の魔力がかつての『ヴェルトマー』の比ではない。
誰だか分からない女性を訝し気な目で見るリーゼに、その視線の意図を察したのかユファは笑みを浮かべたかと思うと、口を開いてゆっくりと言葉を吐き出す。
「こりゃ驚いた、あんた生きていたんだねぇ?」
背の高いユファがわざわざ腰を屈めながら、リーゼの顔を下からのぞき込みながらそう言った。
その言葉使いと仕草を見たリーゼは目を丸くして大きく驚いた後、ゆっくりと嬉しそうな笑みに変えていく。
「ふ、ふふふ……! ほんとに変わらないわね? 貴方は全く、ほんとに……。本当に生意気ですこと!」
リーゼはようやく目の前に居るユファの事を『ヴェルトマー』だと理解したようで、笑顔のままで嬉し涙を流すのだった。
もしもあの時レルバノンの屋敷で、ヴェルが消えるのを見送っていたらと思うとシスはぞっとする。
あの時必死にヴェルを留める事が出来て本当に良かったと、シスは心の底から思うのだった。
「ちゃんと、皆の墓を建ててあげないとね」
最後にシスはそう言うと、隣にいるヴェルトマーの顔を見る。
――ヴェルは笑顔で頷いてくれた。
そしてちょうどその時、シティアスの方でソフィの魔力を感知した二人だった。
二人の『魔王』はソフィの『魔瞳』。
『金色の目』の余波を感じて直ぐに頷き合ってシティアスへと向かうのであった。
……
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ソフィ達は酒場の地下から地上へと戻る道中、リーゼに過去のレイズ魔国の事や、ヴェルトマーがこのレイズ魔国にとってどれだけの救いだったかを話してくれた。
ここ『レイズ』魔国の首都であるシティアスでは、ヴェルトマーがリーゼの後継として『レイズ』魔国のフィクスに就任した後にレイズの魔国軍の『魔法部隊』が編制し直されて、それまでレイズ魔国軍の中心であった『近接部隊』の代わりにとして『魔法部隊』が軍の最高部隊となった。
そうなった事で一気に『レイズ』魔国全体が様変わりを果たして、魔法使いや魔導士用の武器や防具、それに中級用や上級用の呪文スクロール屋等、前衛職の装備を取り扱っていた店が一気に魔導屋に鞍替えする程で『ヴェルトマー・フィクス』はこの国にとって甚大な影響を及ぼしたようである。
そしてこれが一番大きく変貌を遂げた事だが、ヴェルトマーが来る前までは『近接部隊』がレイズ魔国軍の中心で『魔法部隊』は『近接部隊』の援護に回る事が多かったのだが、ヴェルトマーを指揮官とする『魔法部隊』の台頭によって、再びレイズ魔国は前時代のエリス魔国王の時のような、魔法の国と呼ばれるようになり『レイズの魔女』と呼ばれる『セレス』女王と『最強の魔法使い』と呼ばれる『ヴェルトマー・フィクス』の二大魔法使いの存在によって、このレイズ魔国は紛う事無き『三大魔国』として、近隣諸国以外からも恐れられるようになったという。
(我が出会った時のユファは、自身の『魔』の追求以外全く興味がない者であったが、余程この『世界』の者達には気を許していたらしいな)
そのソフィの言葉は正しかった。まず要因となったのが過去に『レルバノン』が『レイズ』魔国を襲撃した際にシスやセレス女王、そして目の前に歩くリーゼ達がユファの為に動いた結果なのだった。
あの時の一戦によってヴェルトマーは、シスを守るついでにこの国を守ってやると当時のレイズ魔国王『セレス』に伝えたが、その言葉通りに『ヴェルトマー』は最強の魔法使いとしてこの国の守護神となった。
そして『鮮血のレルバノン』との初の戦闘から三千年近くヴェルトマーは、このレイズ魔国を守り続けた。
――言葉にすればあっさりに思えるが、自分勝手な者が多い『大魔王』領域に居る者が三千年間、他の国の為に身を費やして守ったのだ。
ソフィは自分の配下であったユファを誇らしく思った。
そして言いようのない嬉しさがこみあげてくるのであった。
(ユファよ、お主はよくやったぞ!)
ソフィもまた『アレルバレル』の世界で人間の為に、数千年統治をした経験がある身である。
ユファと統治に関して、二人で話し合ってみたいとソフィは思うのだった。
そしてそんな話をしてくれていたリーゼの案内で、三階建ての高さの建物の中にある二階の一室、会議室だったのであろう広い場所を紹介してくれた。
「ここであれば多くの者が入れるとは思うが……、すまない。少し埃っぽいな」
そう言うとリーゼは、魔法を使って部屋を綺麗にしていく。
瓦礫やゴミなどが分解されていく姿にリーネは感心したように目を輝かせる。
元々こういう魔法や建物を修復する魔法というのは、この『世界』では存在しなかった。
全てレイズ魔国のNo.2に就任した『ヴェルトマー』が考案した魔法とされている。
どうやらユファの編み出した魔法は戦闘面だけでなく、生活面でも大活躍だったようだ。
「さて、ソフィ殿。ご希望通りの場所になっただろうか?」
綺麗になった広いこの場所は、ソフィの望んだ場所だった。
「うむ。無理を言ってすまなかったな」
満足気にリーゼに頷くソフィだったが、その部屋にばたばたと足音を響かせながら『ユファ』と『シス』が緊迫した面持ちで入ってきた。
「ソフィさん!」
「ソフィ様!」
ソフィがヴェルマー大陸で何者かと交戦していると勘違いしたのか、ユファは既にいつでも戦闘が出来るように『淡く青い』オーラを纏った状態だった。
しかしそこに居たのはシス達を見て目を丸くしている、この国の過去のNo.2『リーゼ・フィクス』だった。
「……ひ、久しぶりね? シス女王」
リーゼは心の底から自分達の国の女王が生きていた事を嬉しく思ったが、その横に並び立つ女性が誰か分からない。
長身で長い黒髪、そして何処か『ヴェルトマー』の面影はあるのだが、目の前に居る女性の魔力がかつての『ヴェルトマー』の比ではない。
誰だか分からない女性を訝し気な目で見るリーゼに、その視線の意図を察したのかユファは笑みを浮かべたかと思うと、口を開いてゆっくりと言葉を吐き出す。
「こりゃ驚いた、あんた生きていたんだねぇ?」
背の高いユファがわざわざ腰を屈めながら、リーゼの顔を下からのぞき込みながらそう言った。
その言葉使いと仕草を見たリーゼは目を丸くして大きく驚いた後、ゆっくりと嬉しそうな笑みに変えていく。
「ふ、ふふふ……! ほんとに変わらないわね? 貴方は全く、ほんとに……。本当に生意気ですこと!」
リーゼはようやく目の前に居るユファの事を『ヴェルトマー』だと理解したようで、笑顔のままで嬉し涙を流すのだった。
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